バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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血の取引(工藤優作の推理ショー)

 

 最近組織の手のものが工藤邸を見張っていたのだが、今日になって撤退したようだ。

 

 これまでの監視はRUMがICPOの知恵袋である工藤優作を警戒していたせいだろう。

 それが今日撤退したのは、やはりルパンの関係筋を警戒してのことか。

 

 静かな車内で、運転席に座る私へとベルモットが流し目を向ける。

 まだ時刻は午前中で、通勤の車で道はずいぶん混んでいた。

 

 今日はベルモットを現場に送ってから仕事がある。

 組織の任務だ。あまり気は乗らないが、これもまた仕方のないことである。

 

「……あの子がRUMとどういう話をしたのかわからないけれど、動きがなさすぎるのも不安だわ」

「コナン君なら大丈夫ですよ。その場に居合わせましたが、RUMもその頭脳を認めてましたから」

「余計に危険よ!はぁ、彼に何かあったらと思うと、胸が張り裂けそうだわ」

 

 若干憂いを帯びた顔で、助手席のベルモットは髪をかき上げた。

 

 ベルモットが心配しているのは、RUMが最近コナン君に接触して来ている件についてだ。

 ひいては工藤邸が組織に見張られている件について。

 まあ、もしもがあらばコナン君をその手にかけないといけない状況で気分が上向くはずもないか。

 情に厚い女性なのだ、ベルモットは。

 

「有希子は大丈夫っていうけれど。組織に目をつけられていることには変わりないのよ」

「そうですね。一応江戸川コナン君の方は僕が見ていますので、無事は保証しますが。流石にご親族までは難しいと言わざるを得ません」

「彼を守ってくれているだけで十分よ。ありがとうキティ、信頼してるわ」

 

 リップ音を響かせて投げキッスするベルモットに、降谷さんが内側で舌打ちした。

 

───しかし、あの天真爛漫な女性がベルモットと友人関係とはな…正直、今でも信じられない心地だ

───有希子さんのことですね。共通の師匠に師事したとのことですが、どんな人物か気になるところではありますよね

───千の顔を持つ魔女の、技術の出どころか……。危険極まりないな

 

 降谷さんはその技術が悪用された時のことを危惧しているのだろう。

 実際、その危惧は非常に正しい。

 なにせ彼女達の師匠の正体は初代怪盗キッド、怪盗1412号その人なのだから。

 

「ああ、そういえば今日の特番。録画しておきましょうか?」

「ありがとうキティ。もしかしたら有希子とあの子が映るかもしれないから見てみたいと思っていたの、後でデータをDVDに焼いて送ってちょうだい」

「かしこまりました」

 

 「泊まっているホテルに録画装置がなくて困っていたのよ」と言ってベルモットは微笑んだ。

 今日の特番とは、東都テレビで放送される予定の『緊急生放送!連続密室殺人事件完全解明!』のことだ。

 間違いなくこれは原作イベント「工藤優作の推理ショー」に違いない。

 

 原作ではRUMの手配によりベルモットが派遣され、工藤一家がそれをかわすために一騒動起きるのだが……。

 この時間軸においてはRUMはルパンに警戒して手を引いている。

 そのため、原作とは異なり普通にTV番組が放送されることになるだろう。

 

 ………「この時間軸」?

 自分で言っていて変な言い回しだ。

 

「では、この後僕は仕事ですので。ベルモットもお気をつけて」

「キティもね」

 

 そのままベルモットを次の任務先の近場で下ろし、車を走らせて待ち合わせ場所へと向かう。

 

 ちなみに、RUMと同乗する時以外は最近は運転だけを降谷さんに任せて私が喋っている。

 車の運転、やっぱりどうしても苦手なんだよな…。

 最近では気配を感じすぎるせいで対向車がどの程度自分に注意を向けていないのかがわかってしまってとても怖いのだ。

 走っていて不意に私の乗る車から注意が逸れるのが怖くて仕方がない。

 もっと全面に注意を向けんかゴラァ!事故ったらどうする!!!

 

 まあ、それはともかく。

 

 目的地に到着して、近場の有料駐車場に車を停めれば、ちょうど同時期に同じ駐車場に停める車が一台。

 真っ黒なプリウスが入って来て、向かい側に駐車した。

 

 車から降りて来たのは、やはりというべきか。

 今日一緒に仕事をする予定になっているウォッカであった。

 

「よお、久しぶりだなバーボン!」

「お久しぶりですねウォッカ!この間の飲み会以来でしょうか」

「だな。今日はこんな雑魚の対応に付き合ってもらって悪いな。どうも跳ねっ返りの多い奴ららしくて、オメェに護衛を頼みてぇんだ」

「勿論お任せください。ウォッカの頼みなのですから、喜んで駆けつけますよ」

 

 「嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか!」とウォッカは朗らかに笑って私と肩を組んだ。

 さすが、いつも通り生粋の陽の者といった風体だ。

 

 今回の私の仕事は、取引の場に同席するだけの簡単なものである。

 ようは私の武力でもって威圧するという意味なので、特筆すべき難しい点はない。

なので、特に特筆すべき難しい点はない。

 

「そういえば、珍しいですね。ジンはどうしたんです?」

「兄貴は別件でRUMに呼び出されていねぇよ。ま、今回の話し相手は小物も小物。オメェがいりゃ十分過ぎるってなもんだ」

「あはは。精一杯頑張ります」

 

 愉快そうにウォッカはくつくつと笑って、真っ黒なスーツを今一度確認して整え直した。

 

 この人は基本不機嫌な時がないから凄いんだよな。

 怒ったように見える時もそういうフリなだけで、完璧な自己感情コントロールを常にしている。

 私も見習わないといけない。

 

 目的地は大きな日本家屋だ。

 ウォッカと連れ立ってチャイムを鳴らせば、中から和服の女性が出て来た。

 

 「今日お約束の方ですね。どうぞこちらへ」と言って中へと案内される。

 縁側を歩き、広い畳敷の部屋に通されれば、その立派な客間があらわになった。

 鎧武者の飾り物に刀、そこにずらりと並ぶ下っ端達。

 

 その若干殺気立った様子に、両腕につけた鉄爪がガチャリと小さく音を立てる。

 ずっしりと重さの残るそれは、組織の開発した機甲鉄爪だ。

 

 師匠の研いだ斬鉄爪に比べて重くて切れ味もない。

 しかし頑丈で、私の膂力に問題なくついて来てくれる優れものだ。

 また巻取り式フックも内蔵して機動性もそこまで悪くない。

 

「ようこそ来てくださった。ワシら一同、歓迎しますよ」

 

 昇龍の刺青が背中から首、そして右手首までびっしり入った頭領さんが厳めしい顔を若干緩めて笑みの形を作った。

 まさに完璧なるヤーさんだ。

 指定暴力団旭組、だったか?

 名前がうろ覚えだがそんな感じの暴力団としては大手の部類だったはずだ。

 

 とはいえ、組織に比べれば資金力は下の下の下。

 フロント企業も貧弱で、そこまで気になるところのない雑魚である。

 

 用意された座布団に座れば、先ほど案内してくれた女性が和菓子と抹茶を持って来てくれた。

 

 悪意の感じられないことを確認してから、私は遠慮なくその老舗の高級和菓子をぱくついた。

 うん。抹茶も美味しい。

 それを見て、ウォッカも茶を口に含んでニタリと悪党じみた笑いを浮かべる。

 

「でだ。本題から行かせていただきやしょうか」

 

 

 

 

 会議は粛々と進んだ。

 

 意外にも、聞いていて取引内容としては公平な部類に思える。

 RUMがバックについている事もあり、この辺はしっかりしているのだろう。

 

 内容としては銃火器密輸と人身売買、死体処理契約あたりが大きなところだ。

 双方旨みがあるところで、格下に当たる旭組としてもこの内容は呑みやすいだろうと感じられる。

 

 だが、相手側は納得していないようだ。

 

 同席した部下の一人と思しき人物がチャカチャカとうるさく拳銃をいじっている。

 威圧しているのが丸わかりだ。

 相手方の副官と思しき男が青ざめて私と部下とを交互に見ている。

 どうも、私の悪名を副官さんは知っているらしい。

 

 「おい、おい!」と副官さんが部下を嗜めるが、部下である額に切り傷のある大男はそれに納得していないのかそのまま無視を決め込んだ。

 

 部下も御せないようではこの組織も長くはあるまい。

 同じ思いなのか、ウォッカが呆れたように口を開いた。

 

「おいおい、五月蝿ェなあ。静かにできねぇのか?」

「あぁ?調子乗ってんじゃねぇぞテメェ!そんな優男侍らせてよォ!舐めてんなよオイ!」

 

 随分な跳ねっ返りの部下だ。

 ただの部下ならすぐさま処断されていただろうから、もしかしたら次期若頭とかの難しい立ち位置の男なのかもしれない。

 

 焦った頭領と思しき年老いた男が一喝する。

 

「おいオメェ!ちったぁ黙ってねぇか!俺のメンツを潰す気か!」

「この調子乗った奴らをヨォ、解らせないでなにが旭組だ!?ぁあ?偉っそうにピーチクパーチク!これだからおやっさんが舐められんだよ!」

 

 それでも止まらないあたり、よっぽどの身の程知らずだ。

 

「こういう奴はな、一発入れてやらないとわからないんだろうが!!」

「馬鹿やめろ!お前、ふざけんなよ!」

 

 副官が激怒して立ち上がるも、もう動き出した男は止まらない。

 銃をおもむろに構え、私に向かって発砲してくる。

 両側の下っ端が止めに入るも、一瞬の逡巡のために止めきれなかったようだ。

 

 銃弾が迫り来る。

 それを軽々と切り落として、そのまま男に肉薄。

 畳に靴下ではあまり踏ん張りが効かないけれど、その程度何の問題にもならない距離だ。

 

 そのまま男の肋骨を切り落として心臓を鷲掴みにする。

 生暖かな感触が胸をなぜあげる。

 抉り抜き、ぶちぶちと血管が千切れる音が耳障りだ。

 

 そうして。

 どちゃりと、抜き取った心臓を机に落とす。

 

 男はシャワーのように血飛沫をあげて崩れ落ちた。

 

「失礼。取引進行の邪魔になりそうでしたので排除しました。どうぞ、続けてください」

 

 にこり、と血まみれの顔で平然と笑って見せる。

 にわかに色めきたったのは男の後ろに座っている3人組の小男達であった。

 

 「野郎!!よくも兄貴を!」「ぶっ殺してやる!」「この◯◯◯が!!」

 などと放送禁止用語も交えて各々の武器を持って立ち上がるも。

 

 爪をジャキンとわざとらしく鳴らして構えれば、すぐさま大人しくなった。

 

 私の出した濃密な殺気で身の程を弁えられる程度には、頭の出来は悪くないようだ。

 というか、先ほどの男が底抜けに馬鹿だっただけだな、これは。

 いつも跳ねっ返りで身内にも怒られていたみたいだし、後腐れなくて向こうもスッキリしただろう。

 

「おお、怖い怖い。助かったぜバーボン」

 

 大袈裟に身震いして、ウォッカが正面に立つ組長を睨みつけた。

 こんな大事件があったのだ。

 組織としても舐められないために強く出なければならないと意識を切り替えたらしい。

 恫喝するような調子でウォッカは足元の畳を叩いた。

 

「この落とし前はきっちりつけてくれるんだよなぁオイ?」

「……!」

 

 私がウォッカの隣で爪を広げ、にこりと笑んでみせれば。

 旭組の人員たちはその血まみれの刃がざわめいたのに慄いたようだった。

 

 捨て置かれた物言わぬ男の死体と、翼のように爪を広げる私の艶然とした笑み。

 目の前に在る脅威に、頭領さんはごくりと生唾を飲む仕草を止められなかった。

 

 確かこの人は旭組でも穏健派だったんだったか。

 この程度で動揺を隠せないようでは、RUMにいいように転がされるだけだ。

 

「じゃ、さっさと話の続きをしようか」

 

 なぁ?と悪辣にウォッカは口角を釣り上げた。

 

 

 

 その後、取引は30分ほどでスムーズに進んだ。

 

 私はその場でシャワーを借りてから帰宅したのだが、周囲から突き刺さる殺気の凄いこと。

 シャワー中を襲われたら適当に返り討ちにしてやろうと思っていたのだが、そんなこともなく。

 呆気ないほどに何事もなく旭組の屋敷を出ることができた。

 

 仕事中は私を慮って黙ったままだった降谷さんが、静かに話しかけてくる。

 

───ご苦労だった、安室。怪我がなくて何よりだ

───この程度の相手に怪我をする方が難しいですよ。あーあ、ベルモットに貰ったスーツが血でダメになっちゃいました

───あの女の贈り物なんて捨ててしまえ。とにかく、今晩の飯は俺が作るからお前はゆっくりしていろ

───はい。楽しみにしていますね

 

 しばらくの沈黙ののち。

 降谷さんはゆったりと口を開いた。

 

───……忘れるな。この選択は俺たちの選択だ。この罪は俺たちの罪だ

 

 駐車場に戻りRX-7に乗り込む。

 そうすればどこか自分からまだ血の匂いが立ち上っているような心地になる。

 血の生温かさが消えない。心臓の鼓動の柔らかな感触が手に残る。

 それでも。

 降谷さんの言葉で救われたような気になるのは、なんともまぁ現金で罪深いものだ。

 

───ええ。ありがとうございます、ゼロ

───俺はお前がいてくれるからここまで来れたんだ。誇ってくれ。辛かったらいつでも言え。俺はいつだってここにいる

───………はい

 

 降谷さんの声が静かで、染み渡るように心に響く。

 

 まだ血の匂いは消えない。

 それでも、今日の眠りは深く穏やかなものになりそうだった。

 




・バボ主
殺人によるSAN値が回復して来た。
フラッシュバックで吐きそうになっていたが、回復したため体調を崩さず済んだ。

・降谷さん
光の男。ここぞとばかりに光っている。
実のところ殺人にはそこまでダメージを受けていないし、しっかり覚悟してしまえば素で割り切って殺せる強いお方。
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