バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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RE:ハロウィンの花嫁①

 

 東都タワーで爆破テロを起こして逮捕されていた男が、留置場から脱走したらしい。

 

 男は降谷さんにとっても、私にとっても因縁の相手だ。

 それは松田陣平と萩原研二、親友2人の命を奪った「揺れる警視庁 1200万人の人質」の犯人のことを指す。

 

 その男が逃げ出したということは、これすなわち劇場版名探偵コナン、ハロウィンの花嫁の始まりに違いない。

 

 「ハロウィンの花嫁」は3年前に諸伏景光、降谷零両名によって肩に傷を負わせられた爆弾犯、プラーミャをめぐる物語だ。

 プラーミャはその恨みから二人の抹殺を目論み、動き出す。

 

 イライラとステアリングを指先で叩く降谷さんは、いつにも増して威圧感モリモリだ。

 隣に座る風見さんが可哀想になるぐらいイラついている。

 なんらかのハラスメントにならないか、これ?

 

 たまりかねた風見さんがおずおずと口を開いた。

 

「ふ、降谷さん。本当に来るのでしょうか」

「所詮匿名のタレコミだ。期待し過ぎないほうがいいだろうな」

 

 現在、私たちは車の中で張り込み捜査中だ。

 匿名のタレコミで「逃げ出した爆弾犯をこの近くで見た」と通報があったからだ。

 

 まぁこれもプラーミャの仕組んだ罠なのだろうが…今の私にはそれを証明する術がない。

 降谷さんが残り少ない缶コーヒーの中身を少しばかり傾けて、チラリと風見さんの方を確認した。

 

「それに、お前は来なくて良かったんだぞ。これは俺の独断だ。公安のヤマ…と言えなくもない程度の話だからな」

「いいえ。やつは日本のランドマークを爆破した凶悪なテロリストですから。逃せば何をするかわかりません」

「……生真面目なやつだ」

 

 降谷さんはわずかに笑ってから、もう一度周囲に注意を向けた。

 風見さんはああ言ったが、そのような言は建前で、本当は降谷さんのことが心配なのが丸わかりだ。

 それを指摘せずに飲み込む降谷さんも、この右腕のことを随分と信頼しているのだろう。

 

「ところで、あの男の逮捕をしたのは降谷さんでしたよね」

「ああ。安室は記憶にないようだが、俺の方は問題なく覚えている」

「そう、ですか」

 

 私としては、1200万人の人質の犯人は気付いたら逮捕されてた的な認識だ。

 私とコナン君がタッグを組んで動いたらしいが、正直わずかに取り戻した記憶の中にも存在しないため知りようが無い状況だ。 

 まあこちらは降谷さんが実際に確認しているから、特に心配はしていない。

 

 問題は降谷さんが寝ていた時期と重なる、3年前にプラーミャの起こした事件の方だ。

 

 恐らくは原作を崩さないように降谷さんのフリをして私が参加したのだろうが……。

 どんなバタフライ効果が発生しているかわからない以上、未知なる部分が多すぎる。

 

 降谷さんが窓の外を見て目を細めた。

 窓の外では雨が降りしきり、どんよりとした空は厚く雲に覆われている。

 低気圧の影響か、どうにも気分が乗らない日だ。

 

「胸糞悪い男だったよ。取り調べの際も道理の通らない逆恨みをわあわあと喚き立てて」

「そうですか……って、姿を見せたんですか!?犯人に!」

「バカ言え。背後から近づいたから姿は見られてないはずだ。取り調べも他の刑事がやってるのをマジックミラー越しに見ただけだ」

 

 その遠くを見つめる瞳は鋭い。

 あの爆弾事件で親友二人を失った記憶が、未だに癒えぬ傷となって降谷さんの心に爪痕を残しているのだろう。

 

 降谷さんは息をついて、運転席のシートに体重を預けた。

 私もちょいとばかり口を挟むことにする。

 

「───なんにせよ、資料を見た限り爆弾の知識はあれど脱走を実行できるような知恵があるとは思えませんでした。───つまり、手引きした何者かがいるということか」

「な、なるほど」

 

 頷いてはいるが、風見さん話についていけてるか?

 それに対して降谷さんは私の言葉を聞いて考え込んでいる。

 なんのために、ということが分からないのだろう。

 これが降谷零個人を狙った犯行であるということを、まだ考えもしていないのだ。

 

 正直、敵が多いのはバーボン・安室透であって、経歴上における降谷零は恨まれる謂れのない極々一般人だからな。

 

 と、その時。

 

 車の前を一人の男が横切った。

 見覚えのある風貌。首元を押さえ、必死の形相で走る男の様子は尋常ではない。

 あの萩原・松田両名の命を奪った爆弾犯だ!

 

 すぐさま風見さんが車から出ようとしたので、手で制して視線を合わせる。

 

「風見さんは車がすぐ出せるように待機していてください。───俺たちが爆弾犯を追う」

「かっ、かしこまりました!」

 

 実際には風見さんが犯人の首にくくりつけられた爆弾の爆発に巻き込まれないようにという処置だが、この判断も意外と悪くないものだ。

 なにせ、地上を走る分においてよほどのことがない限り私たちの足なら追いつくからな。

 気配の探知もあるから振り切られることもない。

 

 爆弾犯は私たちの姿を見て、血相を変えて逃げ出した。

 警察に助けを求めたら爆破する、とでも言われているのだろう。

 彼の首には遠隔操作型の爆弾がくくりつけられているのだ。

 言わずもがな、この罠を仕組んだ者こそがプラーミャなのだが。

 

 体の操作を私主導として素早く切り替え、走り出す。

 しばらくの逃走の末。

 ぴっ、と小さな駆動音。

 男の顔が絶望に引き攣った。

 

 斬鉄爪を袖からずるりと引き出して男の首を狙って爆発的に踏み込む。

 

 そしてそのまま、爆薬液の入ったタンクを避けて斬鉄の技にて両断、素早く男の首からむしり取って遠くへと放り捨てる。

 男が尻餅をついて濡れた立体駐車場の床に転がった。

 

 補助装置が駆動したのか、その爆弾首輪は空中にて本来のそれに比べて小さく爆発して粉々になった。

 

 万が一切断などの強引な手で外されても、機構を解析されないように起爆装置が仕組まれていたのだろう。

 用意周到なことだ。

 

 降谷さんが内側で困惑の表情で首輪の残骸に目を凝らしている。

 

───今何をしたんだ?首に、あれは何だ?

───あの男、首のところに何か爆弾のようなものを巻いていたので、外したんです

───首?コートでよく見えなかったが…そんなものをどうして…

 

 爆弾犯が傷ひとつない首をさすり、信じられないという面持ちで私を見上げる。

 そして「あ、ありがとう…わ、私は…」と涙の滲む目を擦って起きあがろうとする。

 

 瞬間、降谷さんの瞳にドス黒い炎が宿った。

 

 胸ぐらを掴み、ごうごうと怨念に燃える瞳孔を開かせて震えそうになる声を必死で抑える。

 そして自制に自制を重ね、ようやっと絞り出した声とともに手を離す。

 

「………貴様のためじゃない。勘違いをするな」

 

 そうして男に手錠をかけ直して、もう一度男の意識を手刀にて落とした。

 そこにどれほどの憎悪があるかをまるで感じさせない、無機質な手つきであった。

 

───それで、これはつまり俺を狙っていた、ということか?

 

 降谷さんの言葉に、私はゆっくりと頷いた。

 これは、この爆弾犯が逃げ出したと知って追ってくる刑事を狙った犯行だ。

 そんなの、降谷零より他に無い。

 

───でしょうね。何か因縁に心当たりはありますか?

───恨みなら安室透として売るほど買っている覚えはあるが。この男が俺と関わりがあると知っているような輩に覚えなんて……

 

 そこまで言ってから、「いや」と降谷さんは首を振った。

 

───俺が寝ていた期間に、何かあったのか?

───………としか、考えられませんが。あいにく僕も記憶がまばらにしか戻っていません。

───覚えている中にそれに該当する記憶はない、と。面倒なことになったな。命を狙われているのに覚えもないなんて

 

 

 3年前に松田陣平が死んだ時期、降谷さんは意識を深く心象世界に沈めて眠っていた。

 斬鉄爪を腕に戻し、髪をかき上げて眉間に皺を寄せる降谷さんは心底困ったように見えた。

 

───なら、知っている人に聞いてみましょうか

───!

 

 パチクリ、と瞬いて降谷さんはパッと顔を明るくさせた。

 

───ヒロか!そうだな、この爆弾犯を追う人間として当てはまるのはヒロも同じだ!

───ええ。ですから、このトラップで諸伏景光さんが引っかかっていた可能性ももちろんありました。とすると、景光とゼロ、どちらが罠にかかってもよかった可能性がある

 

 などと話している間に、風見さんがヒィヒィいいながら駆けてきた。

 私たちも男を追って立体駐車場を三階分ほど駆け上ったからな。

 車からここまで走るのはなかなかに体力を必要としただろう。

 

「どうしたんですか降谷さん!先ほどものすごい爆発音がしましたが!」

「……風見、お前はこの男を連れて警視庁へ戻れ」

「へ、あっ、こいつは!?もう捕まえていたんですか!?というか、降谷さんはどうするんです!?」

「俺は行くところがある。じゃあ任せたぞ風見。これが俺の車の鍵だ」

「え、ちょっと、降谷さん!」

 

 そのままRX-7の鍵を風見さんに預け、私達はタクシーを拾うべく軽快に階段を降りていったのであった。

 




・バボ主と警察学校組
3年前、萩原のお墓参りにてスコッチとバボ主の二人は必死こいて降谷さんのフリをしていた。
二人はバレてないと思っているが、松田も伊達もあまりに変なので割と気づいていたという。
「いやあれで誤魔化せたと思ってんのかよ?」「だな……何があったんだか」「っつーかあれは誰なんだよ。兄貴とかか?」
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