バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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明日は投稿お休み…たぶん。


RE:ハロウィンの花嫁④

 

「俺の覚えている限り、あの日は萩原の墓参りの後に事件が起こっている」

 

 景光さんがゆっくりと話し始める。

 

「それって?」

「ビルの一つに爆弾が設置してあったんだ。犯人は取り逃したが、爆弾は松田が解除した」

「犯人の特徴は?」

「仮面で顔を覆っていて男女もよくわからない。身軽だったが、バーボンの鉄爪で右肩をズタズタにされたから、特別に治療でもしてない限り、おそらくは今も傷跡が残ってるんじゃないか?」

 

 そのように言って、景光さんは遠くを見るように回想した。

 コナン君が思考を回転させているのか、斜め下に視線を向けてぽつりと呟く。

 

「つまり、相手は安室さんがウルフドッグだって知ってる可能性もあるね」

「………そうだな。それをネタに脅してくる可能性も否定できない」

 

 降谷さんが苦虫を噛み潰したような顔をした。

 聞いた限りでは、降谷さんはゼロと呼ばれていたし、警官で銃を持っていることもバレていて、かつ顔も見られている。

 公安だと判断された可能性は非常に高い。

 

 そして爪を見せていることから、プラーミャの調査力を思えばすでに降谷零=ウルフドッグ=フォックステイルだとバレている頃だろう。

 

 とはいえ、ただ単純に黒の組織に正体をバラされても何も怖くはない。

 すでに私は敵対組織からのリークでKGBだったりCIAだったり色々な正体を噂されているからな。

 今更というか、単純に私を陥れる罠だと思われるだけだ。

 

 しかし、降谷零という名前を出されるのはまずい。

 データベースからは情報を削除しているが、人の記憶を消すのは難しい。

 特に警察学校で数々の(悪い意味での)伝説を打ち立てた降谷零は、多くの人の記憶に残っている。

 組織の手の長さを思えば、そこから私たちの正体に辿り着ける可能性は大きいだろう。

 

 同じことを考えたのか、降谷さんが半目で私を睨みつけている。

 

「おい、なぜ取り逃した。お前ならその場で処分することもできただろう」

「う……面目次第もありません。というか、その場で殺すと同期達の目が…」

「それで潜入捜査がオジャンになっていれば意味ないぞ」

「おっしゃるとおりです……」

 

 降谷さんの同期達の目があって動きづらかったことももちろんあるだろうが。

 私のことだから、なるべく原作に沿うような形でと思考停止で逃した可能性も否定できないからな。

 今では私が短慮を起こしそうになると降谷さんという外付け頭脳が指示してくれるが、当時の私はそれすらなかったのだ。

 

 私は元来頭脳戦ができる性質ではないから、多分純粋に考え足らずだったのだろう。

 すまねぇ…すまねぇ……。

 

 と、その時私たちのスマホがデフォルトのアラーム音を鳴らし立てた。

 風見さんから電話のようだ。

 

「どうした風見」

『捜査一課強行班三係の高木渉巡査部長と佐藤美和子警部補があなたのことを調べまわっています』

「なに?どういうことだ」

 

 コナン君がすぐさま電話に耳をそばだてた。

 別に直接聞かずとも情報共有ぐらいするのに。

 

 そして降谷さんが状況を把握できないとみて、すぐさま情報を補足してくれた。

 

「たぶん今日のお昼に起きた爆破事件の被害者の持ち物から、松田刑事の名刺が見つかったからだよ。そこから降谷さんの情報へ辿り着いた」

「………捜査一課強行犯三係の名刺が見つかったのか。墓参りに抜け出したときに、何者かに渡したから」

「!ゼロ、たしか松田が言ってた!件の爆弾事件の際、ビルの中に囚われていた外国人がいたから、名刺を渡して安心させたって」

 

 「『妙なところで変えたばっかの名刺を使うことになったな』ってぼやいてたんだ」と景光さんがうんうんと頷いた。

 

 やはりそこの流れは原作通りのようだ。

 松田陣平から名刺をもらった男はそのまま逃げ延び、本日プラーミャにより命を奪われた。

 捜査一課は爆破事件の足がかりを追ううちに降谷零の名前へと辿り着く。

 

 奇妙な運命のように、ずるずると事態は原作に収束していくのだ。

 

 風見さんが冷静な声で指示を仰ぐ。

 

『この案件を公安で巻き取って、捜査一課の方には緘口令を敷きますか』

「いや。どうせ佐藤美和子警部補なら独断で捜査も辞さないだろう」

『ならばどうしますか』

 

 風見さんが困惑の滲んだ声で聞き返した。

 私も内側で少しばかり首を傾げる。どうするつもりだ?

 

 降谷さんが少し目を細めた後、息をついて硬い声で応えた。

 

「俺が出る。コナン君に便宜を図るよう頼みたかったのもあるから、そのまま俺の立場を公開する」

『ッ正気ですか!?それがいかに危険か…わからないあなたではないはずです!』

「どうせ伊達や松田の残した荷物からふとした拍子に俺の映った写真なんかが出てきたら大騒ぎになるからな。それなら、内部から口止めしてもらえるよう手配した方が安全だ」

『ですが…』

「俺も彼らと接して、軽々に秘密を口にするような人間ではないことは知っている。問題ないさ」

『ならば、ひとまず今日のところの「降谷零」の捜査の中止だけを指示いたします』

「ああ。それで良い」

 

 それだけ言って電話を切った後、降谷さんはパンパンと二回手を叩いて解散の空気を伝えた。

 

「ひとまず、今日は夕飯を食って寝るぞ。もう遅いから毛利先生のお見舞いは明日行く。コナン君は送っていくから、準備しておけ」

「えー!?佐藤刑事に正体バラすんでしょ!僕も一緒にいた方が話がスムーズじゃない!?」

「どう見ても顔が100%野次馬じゃないか。君がいたら話が何倍も面倒くさくなる」

 

 胡乱な顔の降谷さんに、コナン君は「そんなことないよぉ」と嘘くさい愛想笑いを浮かべた。

 ニヨニヨしててどの角度から見ても野次馬以外の何者でもないんだよなぁ。

 

 降谷さんはずい、とコナン君と視線を合わせて真摯な顔を作る。

 

「それに、君は蘭さんをこれ以上心配させないこと。父親が意識不明で、孤独に震える彼女を放っておく気か?」

「……、そうだね。わかったよ」

 

 などと話している間にも、景光さんが冷蔵庫を開けて「お、なかなか揃ってるじゃないか。今日俺作って良いか?」などとキッチンを物色している。

 自由かよ。あと今日は降谷さんの当番なので今日の夕飯を誰が作るかは降谷さんと話し合ってくれ。

 

 

 

 

 

 はてさて。

 そんなこんなで翌日のこと。

 

 場所は万全を期し、警察庁の一室を用意した。

 きちんと盗聴器その他の有無を確認して、安全確保はバッチリだ。

 家付近からもプラーミャにつけられていないかしっかりと確認している。

 

 プラーミャが私たちの動向を見張っているのはよくよく理解しているからな。

 彼女はフィアンセである村中警視正と暮らしているからあまり自由には行動はできないだろうが……油断もできない。

 

 私達は別室で佐藤刑事達の来る部屋を監視している状況だ。

 

 部屋には風見さんを一人配置していて、先ほど付いてきた景光さんとも顔合わせした。

 地味に面白かったんだよな、風見さんと景光さんがお互いペコペコし合ってて。

 

 監視カメラからの映像がPCに映る中、時間がやってくる。

 扉をノックして入ってきたのは、先頭が佐藤刑事、そして後に続くように高木刑事だ。

 

『急に呼び出してどういうこと?』

 

 実に刺々しい佐藤刑事の声がインカム越しに響く。

 そりゃそうか。

 松田刑事の関わっている案件に、急に公安がしゃしゃり出てきて「調べるな」と命令してくるんだもんな。

 風見も公安らしく言い方が高圧的だし。

 気分は良いはずもなし。

 

 私たちと接している風見さんは割と愛嬌があるというか、子犬のような可愛いタイプの人なのだが、やはり公安は公安ということか。

 冷え切った硬質な視線で一瞥したあと、風見さんは口を開いた。

 

『降谷零について君たちに伝えなければならないことがある。もちろん、君たちには機密を守る義務が生じる』

『……随分勝手なのね。勝手に話して、勝手に喋るなと言い』

『これは命令です。あなた達に否やはない』

 

 今にも噛み付かんばかりの佐藤刑事に、「さ、佐藤さん!」と動揺した様子の高木刑事が待ったをかけた。

 空気は最悪だ。

 公安って前から思っているんだけどこういうとこあるんだよな。別にもう少し柔らかく出てもバチは当たらないと思うんだが。

 

 なんにせよ、私もそろそろ登場の時間だ。

 今いる部屋を出て、風見さん達の待つ部屋に入らねば。

 

 降谷さんが襟を直し、かつんかつんと革靴の音を響かせて廊下を歩く。

 その響きだけで顔も空気も先ほど高圧的だと思った「公安」そのものなのだろうと感じさせる。

 内側にいるだけで背筋がピンと伸びるようだ。

 

 そして軽くノックして、扉を開ける。

 部屋の中の視線が私たちに集中する。

 

「安室さん?一体どうして警察庁なんかに……まさか協力者?」

 

 佐藤刑事が困惑に眉を顰めた後、はっと目を見開いて疑問を口にした。

 そりゃ普通に考えればそういう発想にもなるか。

 

 降谷さんがゆるゆると首を振り、風見さんの隣の席に座った。

 

「いいえ。僕は風見の協力者ではありませんよ。今日はみなさんにお願いに来たんです」

「……それってどういう…」

 

 不意に、降谷さんがガラリと雰囲気を目を細めた。

 

「俺の本名は降谷零という。訳あって安室透という偽名を使って活動している。そのため、君達には『降谷零』の調査の中止と、今後同様の活動があった場合の阻止を命じる」

「ッ!!!」

 

 無機質で冷徹な空気とともに、降谷さんは警察手帳を見せた。

 そこに書かれている階級は警視。

 

 「安室……さん?」と高木刑事が僅かに腰を浮かせて訳がわからないと言った調子で私たちを見返してくる。

 

「この場では降谷でいい。だが、外でこの名前を出すのは禁ずる」

「潜入捜査…ですか?」

「それを君が知る必要はない。……が、多少の情報公開はしておこう」

 

 目の前の人物のことなどまるで興味がない、みたいな平坦な声だ。

 

 というか、ここまで来るとドラマとかで見る嫌なエリート公安そのものだな、なんて妙な感想が頭に浮かんできてしまう。

 降谷さん、嫌味なエリート公安似合うなぁ。

 風見さんより似合ってるぞ。

 

「とある裏組織を追っている。組織に関わる案件が起きた場合は、今回と同じように警視庁でも情報が伏せられることになる」

「そう、ですか」

「それと、江戸川コナンは俺の協力者だ。事件が起きた場合、彼には可能な限り便宜を図れ」

「ッ!」

 

 佐藤刑事が息を呑んで立ち上がった。そこには明確な怒りが浮かんでいる。

 

「子供を利用しているの!?彼はまだ小学生よ!?」

「伝えるべきことは伝えた。俺からは以上だ」

「降谷警視!!!」

 

 にこりと、降谷さんはすっかり「安室透」の仮面を被り直して人好きのする笑みを浮かべた。

 

 いやこれ逆効果じゃないか?コナンくんに隔意が生まれないか…?

 多分これなら彼らでも今後降谷さんのことを探らないし、組織関連の事件が起こっても突っ込んでいったりしないだろうが。

 

 何も知らないコナン君が可哀想だから、後でこの件について伝えておくべきだろう。

 

「では、僕は失礼します」

 

 静まり返る会議室に、パイプ椅子の軋む音だけが耳障りだ。

 終わり散らかしている空気に私は一人そっと両手で顔を覆い、嘆息したのであった。

 




・降谷さん
公安の流儀でお願いしただけ。他意はない。
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