バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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RE:ハロウィンの花嫁⑤

 

───いやゼロ、その、さっきのなんとかならなかったんですか!?

───何がだ?

 

 あの地獄の正体バラし大会を終わらせてすぐ。

 警視庁の廊下を歩きながら私は耐えきれず苦言を呈した。

 

 まあ当の降谷さんは全く全然、これっぽっちも私の苦痛をわかっていないようであった。

 首を傾げてから、「それよりだ」とさらっと話題を変えてしまった。

 

───佐藤刑事というのは捜査一課で話題だった松田の彼女候補だよな。やはり強くて芯がある警察官だったな。松田もいい仲間を持ったものだ

───あの氷点下のやり取りした感想がそれですか!?!?感性死んでません???

───だから何がだ

 

 本当に分からないらしく、降谷さんは訝しげに眉間に皺を寄せて唇を尖らせた。

 嘘だろ、吐きそうな空気の終わり方してたあの空間にいて、感想がそれなのか!?

 

 そういえば公安での会話って終始みんなあんな感じだったけど……。

 

 いや。今思えば、あの場面では降谷さんもかなり譲歩している様子だった。

 というより、降谷さん的には割とリップサービスしているつもりだったのだろう。

 そう思えば思うほどに戦慄を隠しきれなくなる。

 

 公安的コミュニケーションに慣れ切った先があれか……。

 私がどれだけ気をつけて警察とコミュを繋いでいると思ってんだこの男は!

 

 うおおこの憤りをいったいどこにぶつければ…!!!

 

 静かに怒りを燃やし、深層心理内の畳の上で激しくゴロゴロしていると、隣を歩くヒロさんが「ちょっと説明不足すぎたかもしれないぞ」などと眉を下げてアドバイスした。

 あの空気はそういう問題じゃないと思うんだけどな。

 

「そうか?むしろ過分に伝えすぎて迷いを生じさせかねないかと思ったぐらいだが」

「あー、そういう面もあるかもな」

 

 何故か納得してしまった景光さんが難しい顔をして唸っている。

 

 まぁ、そう言われれば、公安においては情報を持つことに伴う責任を非常に強く意識している人が多かった。

 教えないことは責任を押し付けないこと、有無を言わさぬ事は判断責任を命令者が負うこと。

 ひいては優しさとなると言うべきか。

 

 独特の文化だ。

 普通は教えてもらえた方が安心するぐらいなんだが。

 

 ふと、スマホがマナーモードで振動している感覚が太ももを揺らす。

 どうやらコナン君からの電話のようだ。

 

 降谷さんが着信を取ると、すぐにコナン君の焦ったような声が耳を打つ。

 

『安室さん!渋谷近くの廃ビルに今すぐ来れる!?』

「今すぐか。可能だが、どうしたんだ?」

『あ、ゼロさんなんだね。今、安室さん達が話していたのと同系統と思われる爆弾が爆発したんだ!』

「ッ、狙いは?」

『罠にかかったのは僕だけど、狙いは最近結婚式を挙げる村中警視正の奥さんだと思う』

 

 それを聞いて降谷さんが心配そうに口を引き結んだ。

 

「君に怪我はないのか?」

『大丈夫。それより、脱出の際に薬液を採取したから解析に回せる?』

「ッ!!車を飛ばす!所轄にはこちらから連絡を入れておくから、20分待っていてくれ!」

『わかった!』

 

 流石コナン君。

 原作通りとはいえ、あの短時間で薬液の採取に成功するとは。

 脱出だけでも相当な命懸けだったろうに。

 

 スマホをポケットにしまってすぐに目的の物を探しに倉庫へと駆け込む。

 爆弾の薬液採取というと、ある程度それ専用の容器が必要になるからな。

 

 走り出した私たちに慌てて景光さんが後ろから声をかけてくる。

 

「どうしたんだ、ゼロ!」

「村中警視正の婚約者が3年前の例の爆弾犯に狙われているかもしれないと連絡が来た!」

「ッ奴が動き出したのか!」

「たしか脅迫状が届いていたということで、捜査一課が動いていたが。村中警視正と関係のある人物ということか。どう思う、ヒロ」

「……それは、俺も分からないな。その二つの関連に心当たりのあるものが無いんだ」

 

 二人ともわからないとなると、あとは意見を求められるのは私だけ。

 二人の意識が私に集中するのがわかって、軽く嘆息しそうになる。

 

 今後の展開を予測しながら、腹を括って私は口を開いた。

 

───勘は働きましたが、まだ裏付けのある段階ではありません

───言ってくれ。今は少しでも情報が欲しい

 

 降谷さんの真摯な目と視線が合う。

 多分私が答えれば、待っているのはプラーミャとの正面対決だ。

 

 なにせこの時間軸のプラーミャは原作と違い、肩に弾丸が埋まっていない。

 ということは、追い詰める証拠たり得るものがないということでもある。

 

 それでも被害を許容できないとするなら、あとできるのは正面から潰しに行くことのみ。

 

───村中警視正の奥さんが、怪しいです

───なに?だが今回爆弾犯に狙われている人物こそが警視正の奥方だったはずだが。自作自演ということか?

───わかりません。直接会えばもっと明確に分かることもあるのでしょうが…

 

 言葉を切り、申し訳なさに俯いてしまう。

 こればっかりは勘以外のどうとも説明がつけられないからな。

 それでも降谷さんは私がそれ以上言葉を紡がないのを見て、深く頷いて得心する様子を見せた。

 

───そうだな。お前が言うならその女が怪しいのは間違いない。現段階で直接の接触は危険か。

───ルパンの伝手を使っては?

───……そこまで緊急を要するのか?狙われているのは現時点で個人に限られているぞ

 

 不思議そうな顔の降谷さんの疑問は最もだ。

 だがこれを放っておけば、渋谷の広域爆破につながりかねない。

 原作でも一歩間違えれば大爆発、数えきれない死傷者を出しかねない状態だったのだから。

 流石にあそこまでの大惨事をみすみす見逃すつもりはない。

 

───放っておけば日本史に残るレベルの大惨事になる予感がします

───はぁ!?!?どんな規模だそれは!

───ともかく、時間をかけるのは非常にまずいです

───………わかった。なら早急にその村中警視正の婚約者とやらを調べるとするか

 

 そのように意見をまとめて、降谷さんはしばし止めていた足で再び歩き出した。

 

 「安室は何だって?」と景光さんが問いかけてくる。

 こう言う時、私を含めた3人以上で話すのは面倒だよな。

 私が降谷さんの口で喋れば話は早いんだが、それだと私の言葉なんだか降谷さんの言葉なんだかわからなくなるからな。

 

 降谷さんが景光さんの方にやや振り返った。

 

「コナン君の元に向かった後、少し寄るところができた」

「どこへだ?」

「行ってからのお楽しみ、かな」

 

 

 

 

 警視庁から渋谷区までは車ですぐのところにある。

 車の後部座席に薬液を入れるための容器を放り込んで急ぎ向かう。

 

 目標の場所はすぐわかった。

 なにせ空にもうもうと黒い煙が立ち上り、消防車が次々にけたたましくサイレンを鳴らしながら向かっていたのだから。

 

「あっ、安室さんです!」「大変だったんだぜ!!俺たちの前で扉がバーンって」「歩美も歩美もあのねあのね!」

 

 到着すれば、子供達が私たちの姿を確認した瞬間わあわあと口々に叫び出し始めた。

 

 こら、一斉に喋らない。

 聖徳太子じゃないんだから聞こえないでしょ。

 いつも通り後ろからよじ登ってくる元太君をひょいと背負い、降谷さんが苦笑した。

 

 蘭さんも騒ぎを聞きつけて駆けつけていたのか、やや離れた場所で不安そうに駐在さんと話をしていた。

 

 降谷さんが景光さんに視線だけ向けて回収の指示をする。

 自分でやっても良いんだが、普通に子供達に囲まれてるのでやりづらいんだよな。

 子供達が触ったらまずいし。

 

 視線を受け、子供達にもみくちゃにされる私達に代わり景光さんが容器を持ってコナン君へと近づく。

 

「で、少年。例のものは?」

「これだよ。お願い」

 

 渡されたのは電気ケトルと薬液に浸されたと思しきジャンパーだ。

 そこには青とピンクのケバケバしい薬液が見える。

 

 おそらく色は作り手の趣味だろうと思われる。

 派手にぶちまけてやろうという悪意が濃密に練り込まれたそれは、改めて見ると、凄まじい刺激臭のような悪意に満ちている。

 

 景光さんがさきほど警視庁から持ってきた密閉容器に入れて、少しばかり眉を顰めた。

 

「やっぱり色も3年前のそれにそっくりだ」

「写真も撮ってあるよ、これ。……日色さんは同一犯の仕業だと思う?」

「うわ…ここまで機構がそっくりなら、少なくとも同一の作者である事は確実だろうな」

 

 見せつけるように薬液の入ったタンクを露出させておいて、それを取り外そうとするとアウト。

 中身を抜いて一定量以下になってもアウト。

 ともかく作り手の性格の悪さが現れる底意地の悪い爆弾だ。

 

 「松田から聞いただけだけどな」と景光さんは遠く回想するように言った。

 考えれば考えるほど、コナン君は非常に危うい橋を渡ったようだ。

 

 お、コナン君が先ほど駆けつけた捜査一課の面々に呼ばれている。

 これからはおそらく事情聴取でかなり時間を取られることだろう。

 

 捜査一課の方へ駆けていくコナン君を目で追えば、先ほど話し合いに参加していた佐藤刑事と高木刑事の姿が見えた。

 

 わずかに交わす視線には、やはり佐藤刑事の穏やかならぬ不満と不信が見え隠れする。

 それをチラリとも考慮せず、降谷さんは腕にぶら下がっていた元太君を下ろして頭を撫ぜた。

 

「君たち、僕たちは用事があるから良い子でね。よし、回収は終わった。いくぞ日色」

「良いけど、そろそろどこへいくか教えてくれてもいいんじゃないかな?」

 

 「そうだな、そろそろ教えたほうがいいか………ルパン一味のアジトの一つ。足の付かない調査のための設備があるからな」

 

 それだけ言ってなぜか降谷さんは笑い、そのまま私にバトンタッチしてきたので。

 

 私はすぐさま降谷さんと肉体の主導権を代わり。

 左手は児戯じみた狐の形をとって、景光さんへと妖艶に微笑んで見せた。

 

 そういうのを求めてたんだろ?

 つまりフォックステイル仕草というかちょっとイタズラ心を働かせたいんだろ、と意図を込めて降谷さんを見る。

 

 降谷さんは実に満足そうな良い笑顔でサムズアップした。

 突然小僧みだしてくるやん。別にいいけどそのノリは大学生の兄ちゃんやで。

 

 そんな内心を知らず、景光さんはほうと息をついて。

 

「なんというか、本当にゼロはあのフォックステイルなんだな」と。

 

 そのような感想を漏らしたのだった。

 

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