バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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明日は旅行なので明日分を今日投稿しておく。
明日は投稿お休みです。


RE:ハロウィンの花嫁⑥

 

 毛利探偵はつい先ほど目を覚ましたらしく、空っぽの病室には誰もいない。

 

 時刻は翌日の昼だ。

 

 思ったより調べ物に時間がかかってしまった。

 プラーミャの行動歴や犯行の特徴、その他諸々調べた上で関係各所と連絡をとっていたら、気付けば1日経ってしまっていたのだ。

 

 とはいえ、1日でこれだけ調べられたのなら、ルパンも認めてくれることだろう。

 日付を跨いでしまったのは失敗だが、ここで下手なことをしてミスをしたら事だからな。

 

 「村中警視正の傷の定期検診」と言う名目で夫婦を呼び出し、待合室へ案内すると偽ってプラーミャを引き離す。

 

 そうして、私たちはプラーミャのいる個室へとゆっくりと手をかけた。

 

 病院の横開きの扉が滑らかに開いてゆく。

 中で椅子に座って待っていたプラーミャ…偽名、クリスティーヌ・リシャールは、「あら」と柔らかく笑って軽く立ち上がり、会釈をした。

 

「ええと、この病院の方ですか?」

「………、お久しぶりですね」

 

 あくまでシラを切るつもりらしい。

 見事な困惑の表情が浮かぶ奥の奥に、狡猾な知性が見え隠れする。

 

「うーん、どこかでお会いしたかしら」

「あんなに鮮烈な出会いだったのに、もう忘れてしまいましたか?」

「……その、いったいなんのことか」

 

 しかしいい加減面倒くさくなってきたな。

 対面に座り、そのままどうぞ、と腰掛けるように指示する。

 一瞬の躊躇は、この隙に部屋を飛び出そうかどうかと言う悩みなのだろう。

 しかし私の出す明確な殺気に、迂闊な行動は控えることにしたらしい。

 

 そのまま椅子に座り直し、首を傾げて怯えたふりをした。

 

「クリスティーヌ・リシャールさん。お会いするのは3年ぶりとなりますか」

「………あの。本当に私、知らないんです」

「貴方の肩に刻んだ傷、まだ痛みますか?」

 

 もしかしてシラを切り通せば公安も手が出せないと思っているのか?

 すっかり怯えた様子で「あの、もしかしたらツトムさんのお知り合いでしたら彼をお呼びしましょうか」と、言って夫を呼ぼうと立ち上がりかける。

 

 これだけ言っても本性を表さないと言うのなら、早めに本題を切り出すしかないだろう。

 

 私は手で目の前の女性の動きを制して、陰鬱に微笑んで見せた。

 

「プラーミャ。しらを切るなら仕方ないので先に言いますが。すでに貴方の本国とは連絡をとり、貴方の処分の許可をとりました」

「ッ!」

「少しやりすぎましたね、貴方。もう彼らは貴方のことは不要だそうですよ」

 

 ルパンの使っている伝手を貸してもらって、ロシアの要人に渡をつけたのだ。

 海千山千の政界の魔物達との交渉だ。話をつけるのはかなり難航したが、向こうとしてもプラーミャの暴走ぶりには頭の痛い思いをしていたらしい。

 

 私が明確にこの場でプラーミャを殺そうとしていることを理解したらしい。

 プラーミャはがらりと態度を豹変させ、心底忌々しそうに舌打ちした。

 

「あのゴミどもめ…」

「まぁ、ご同胞として同情しますよ。ですが日本でのこの狼藉はいただけませんねぇ」

「警視庁前での爆破の件か?それはうるさい蛆虫共が沸いたから駆除したまでのこと。非難される謂れはない」

「いいえ。ハロウィンに渋谷を彩るランタンのことですよ。流石に渋谷を更地にされるのは困ります」

「!!……業者を辿ったか」

 

 ニタリと醜悪に歪んだ笑みで、プラーミャは私を挑発した。

 人を人とも思わない、ただ自己の欲求のみを満たす真性の悪の発露。

 

 しかしこれは…私が正義感から感情を乱すのを狙っての行動だな。

 慎重に逃げ出す隙を狙っているのだ。

 

 ちなみにだが。

 この渋谷爆破計画を確認してすぐ、私と降谷さんは公安情報部と協議してプラーミャの処分へとこぎつけた。

 公安としてはプラーミャの凶行を止めることを至上命題にしていたのだが、ただ逮捕するだけだとロシア要人が嫌がって情報を出してくれなかったからな。

 

 両国とも関係悪化を望んでおらず……とすると手の打ちどころは、「プラーミャの秘密裏な処分」となったわけだ。

 死人に口なし。日本の平和も保たれる。

 まさにいいことづくめだというわけだ。

 

 しかしロシア要人が「ウルフドッグも渡りに船だろう?合法的に女のモツを切り裂ける機会だ。すでにとうは立っているが、迷う事はあるまい」などと言い放ってきたのはまだ許していない。

 あまりに酷い名誉毀損である。

 女のモツ切り裂くのが好きって誰発の噂?ジン?ジンなのか?

 

 ともあれ。

 プラーミャとしてもそれはわかっていたのか「あのゴミどもも意外と動きが早かったな」と額に手を当てている。

 

「派手にぶちまけてやろうと思ったのに。残念だよ」

「3年前、貴方を逃したのは間違いだったようです」

「はっ。大量殺人鬼であるオマエの言える筋合いなのか?この間も裏組織と繋がりのある製薬会社のアジトを潰したそうじゃないか。その時居た56人の職員を皆殺しにして」

「まぁ、それもそうですね」

 

 軽く言って、そのまま踏み込む。

 刹那の斬撃。

 奴が拳銃を取り出す隙も、パイプ椅子から立ち上がる暇すら与えなかった。

 

 机ごと奴の両腕を切断。

 プラーミャは声を上げることもできず、血を吹き出してパイプ椅子ごと床に倒れ込んだ。

 リノリウムの床が血溜まりに濡れてゆく。

 

 遅れて、絶叫が響き渡る。

 

「ぁぁああああああ゛!!!」

「叫んでも人は来ませんよ。公安に人払いをさせていますので」

「ぐ、ぅ、は、ははは!アタシ以上のイかれた人殺しが、よくもまぁ警察官の真似事などできたものだ!」

「遺言はそれでいいですよね」

 

 痛みで脂汗を流しながから、息も絶え絶えに蛆虫のようにプラーミャが床を這う。

 私は切り落とした奴の腕を拾い、プラプラと奴の目の前で振って見せた。

 

 そうやって黙るよう伝えたつもりだが、それでもプラーミャの嘲笑は止まらない。

 

「ナーダ・ウニチトージティだったか?連中もまったく鬱陶しい連中だった!オマエも、いずれ奴らのような熱狂的なストーカーに苛まれることになる!」

「………」

「あははは!先達として、奴らのようなゴミを始末するいい方法を教えようか?」

「結構です。その状態でよく声出ますね」

「ふ、ははっ、オマエと相対すると知って、私が対策を立てないとでも思ったか?」

 

 爪をプラーミャの首にひたりと当てたところで、プラーミャが私を睨め上げた。

 出血多量で青ざめた顔は、それでも私を嘲笑う余裕さを失わない。

 

 若干動揺した風を装って、「なに?」と私は聞き返した。

 何か隠し球があるみたいだし、これでこいつがいい気になってペラペラ喋ってくれるといいんだが。

 

 プラーミャは出血によるめまいに喘ぎ、上げていた顔を血溜まりに落として息も絶え絶えに口を開く。

 

「オマエに、正体を気付かれたら終わりだ。石川五エ門にも並び称されるオマエに命を狙われれば、必ず殺される」

「……そうですねぇ」

「今日の公安の、連中の…妙な動きには気付いていた。逃げようかとも思ったが、ルパン三世の情報網相手に逃げ隠れしても無駄だ」

「だからなんです?」

 

 プラーミャが己の流す血溜まりの中、仰向けになって末期の哄笑をする。

 

「ランタンには、非常用の、ッ、起爆機構を取り付けておいた。6万個全てにな。起爆時間は午後6時ちょうど!」

「ッ!?」

 

 心底愉快だとでも言うように、プラーミャは嗤っている。

 

「あーあ、残念だ。腕、が切られていて解除コードは送れそうに…ない。私もこの特等席で、渋谷が吹っ飛ばされるのを見届けるしかな…ガフッ!」

「心配せずとも、その光景をお前が見ることはない」

 

 なるほど。こりゃまずい。

 そのまま失血死を待つのもありだが、放っておく意味もない。

 内側で降谷さんが青ざめるのを見て、慌ててトドメを刺してから降谷さんに主導権を切り替える。

 ゴロリと転がった生首が邪魔くさい。

 

 降谷さんは部屋の外にいる風見さんへと声を張り上げた。

 それと同時に風見さんが部屋の中へと駆け込んでくる。

 

「風見!ヒロに連絡してくれ!」

「どうかしましたか降谷さん、ッ、これは…」

「プラーミャはこのままウルフドッグの伝手で処分しておく。所定の場所に運んでおけ。それよりだ!」

「ッ、はい」

「渋谷区民を全員避難させると同時に、ヒロに連絡して今日の昼調べてもらった爆弾の解除を急がせろ!」

「どういう事ですか?」

「あのランタン爆弾、自動で午後6時に爆破するとのことだ。恐らく今日の公安の動きを見て予定を変更し、追加で細工したんだろう」

 

 あまりのことに、風見さんが一拍おいてからさぁっと顔色を失った。

 

 プラーミャとしては、こんな情報伏せておいた方が確実に爆破できただろうに。

 きっと、どうせ死ぬなら悔しさに歪んだ顔を見たかったとか、そういう理由なのだろうが…性格悪すぎやろ。

 

 今から6万個もの爆弾を6時までに解体する余力なんてあるはずもなく。

 液体窒素に沈めるにしてもそんな量をすぐに用意できるはずもなし。

 

 私たちにできるのはギリギリまで解体を続けて、被害をできる限り少なくすることのみ。

 まったく、どんな経済損失か想像もつかない。

 

───失態だ。くそ!

 

 降谷さんが憤りを隠すことなく拳で壁を叩いた。

 私たちも公安から少なくないお叱りを受けることだろう。

 

 陰鬱な気持ちのまま、それでも迫るタイムリミットに降谷さんは走り出したのだった。

 




・プラーミャ
「爆弾を解除して欲しくば私を逃がせ」(解除するとは言っていない)をやろうとしたらその前に殺されそうになったからプラン変更で「バーカバーカどうせみんな死ぬんだよ笑」ルートに舵を切った。
公安の動きに勘づいた時点で自身の正体がウルフドッグにバレていることを察し、殺されることを前提に動いている。
世界トップクラスの実力者の底力である。
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