バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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宝石花計画、始動!

 

 ぐでっと私たちは深層心理内の畳の上に寝転がり、へたり込んでいる。

 

 ああ、疲れた…あまりに疲れた……。

 

 プラーミャの一件の後、私たちは結局謹慎処分となった。

 もとから潜入捜査中でほとんど公安に近寄らないから、あまり影響はないと言うか実質お咎めなしではあるが。

 

 本題は始末書の山と格闘するという仕事が与えられたことだろう。

 

 この渋谷の避難騒ぎで警察は記者会見もすることとなり、多くの人に騒ぎは知れ渡ることとなった。

 渋谷の爆破を目論んだ犯人は、警察に捕まる前に自殺。

 六万個もの爆弾は起爆待機状態で時間を待つのみだったが、こちらは爆発物処理班の対応で停止させることができた、と。

 

 大部分が伏せられ嘘ばかりの内容を作るのに、私たちは白馬警視総監をはじめとしたお偉方に散々詰められた。

 

 基本は何もわからない私に代わり降谷さんが対処したのだが、連日のこの忙しさともなると降谷さんの体力でも限界ギリギリ。

 

 あまりのストレスに、帰宅した降谷さんが食べ切れない量の夕飯をひたすら作り続けるヘルモードに突入した。

 鬼のように天ぷら焼き魚丼ものエトセトラを能面のような表情で作り続け、そのまま食べもせず降谷さんは気絶するように眠りに落ちた。

 

 あーっ、天ぷらが冷める!というか、同じように死んでる風見さんに差し入れるにしても多過ぎるだろ!

 などと私はブツブツいいながら寝ている降谷さんに代わり食器等の後片付けをするなどね。

 

 まさに修羅場も修羅場。

 ルパンへの返礼も用意しなければならないし、組織にも呼び出しがかかってるしで忙しさ極まれりな状況だ。

 

 実はプラーミャ、爆弾以外にも嫌がらせをしていたらしいのだ。

 爆発物騒ぎと同時期、組織のサブサーバーの一つが攻撃を受けて停止した。

 そのアクセス元を調べると暗号化されており、なぜかソレを辿ると「バーボンはNOC」という短文に到達するのだ。

 

 勿論よくある他組織の嫌がらせとしてメッセージは処理されたが。

 やはりDDoS攻撃の攻撃元の情報について何か知らないかと私に聞き取り調査がされることになった。

 全く面倒なことをしてくれるものだ。

 

 こうして深層心理内でへたっていても仕方ない怒涛の一週間であった。

 

 

 しかしながら、私たちにグダっとしている暇はない。

 

 なぜなら、本日は工藤優作氏と会う約束が入っている。

 爆弾騒ぎと前後してメールが入っていたのだが、なんでも「暗号ができたからお渡しするついでにお茶会をしませんか」とのことだ。

 

 前回のお茶会では赤井さんが天然ぶしを炸裂させていたからか、降谷さんは酷く警戒していた。

 

 おさらいといこう。

 私が記憶を取り戻したかつてのこと。

 

 私は宝石花を使った暗号を世界に公開することを目論んでいた。

 光を底面に当てれば暗号が浮かび上がるように宝石花を複数作り、一個の大きな暗号とする。

 

 そうして暗号を解いた先に辿り着くのは、宝石花を壁一面に彫った群生地だ。

 その美しさに満足してもらう……というロマンしか考えてない子供の企み。

 以前工藤優作氏に相談したところ、宝石花に刻み込む暗号の作成協力を快諾してくれたのだ。

 

 というわけで、件の暗号が完成したから来て欲しい、と優作さんに誘われていると言うわけだ。

 それだけじゃなくギミック等も盛り込みたいから相談したいとのこと。

 

 

 グダった身体に鞭を打ち、シャワーを浴びて精一杯パリッとした服を身に纏えば、近所の工藤邸まで歩いていく。

 まだ気候がいいから助かった。

 

 到着した工藤邸の立派な門の前でチャイムを鳴らす。

 やや目を釣り上げて降谷さんが「またあのFBIがノコノコ出てくるんじゃないだろうな」と警戒している。

 可哀想に赤井さん、相変わらず徹底的に嫌われているようだ。

 悪い人じゃないんだがなぁ。

 

 さてはて、玄関からひょこっと顔を出したのは、満面の笑みを浮かべた工藤有希子さんだった。

 

「あらまぁ!いらっしゃい透ちゃん!どうぞ上がって!」

「お久しぶりです有希子さん。宝石花のデザイン以来でしたか」

 

 パァッと大輪の花が咲くように華やかな笑みで有希子さんの顔が彩られる。

 綺麗な人は色々見てきたが、ここまで人を惹きつける華やかな人も中々いない。

 さすがは伝説的女優といったところか。

 

「あの宝石花、すっごく綺麗で感動しちゃったんだから、今も大事にお部屋に飾ってあるのよ!」

「気に入っていただけて何よりです。作り手冥利に尽きますよ。それで……優作さんは?」

「客間で待ってるわ。あの人、ここのところずっと楽しそうで。やっぱり楽しいのね、自分の手で秘密を作るのって」

 

 「そういうの、男の子は好きなんでしょう?」と有希子さんが内緒話でもするように顔を寄せた。

 降谷さんが図星を突かれたようにやや赤面して咳払いする。

 まあ…ロマンではあるわな。なにせ私たちのロマンだけでこの企画を立てたんだし。

 

 客間に案内されると、そこは品のいい調度品がならぶ、まさにクラシックな洋館といった風体であった。

 前回工藤邸に来た時に赤井秀一が待っていたのと同じ部屋だ。

 なんとなく記憶が蘇り、降谷さんがわざわざ内側に入ってきて小石を蹴っ飛ばしてそのまま何食わぬ顔で戻っていく。

 庭石に当たるな庭石に。

 

「優作さん、ご無沙汰しています」

「いやいや、報告が遅くなってすまないね。ついついあれもこれもと取り込みたくなってしまって」

「構いません。俺たちはあなたの力を借りられただけで十分過ぎるほどなのですから」

 

 かの世界的小説家直々の謎を借りられるのだから、そんな名誉なことは他にあるまい。

 マカデミー賞の受賞者ということは、世界各国で小説が翻訳されていることでもある。

 ドラマや映画の原作ともなり、取材もあり、コラムも対談も企画されていることだろう。

 つまり非常に多忙。

 そんな彼の時間を拘束するのだから、これだけで千金の価値がある。

 

 だが、ホクホク顔の優作氏を見て若干の危惧も消えた。

 暗号作りを本当に楽しんでいたのは間違いなさそうだ。

 

「では早速だが。基礎となる暗号の話をしよう。そこにかけて、紅茶も用意しよう」

「はい。ではお言葉に甘えまして」

 

 茶菓子の用意されたそこに深く腰掛け、降谷さんは眦を緩めた。

 

 

 

 

 

 一時間半ほど、私たちは詳細を詰めるために話し合った。

 

 暗号についての詳しい解説は省略しよう。

 私がうまく説明できるほど理解していないから語ることができないとも言う。

 おバカって言うな。スペックだけ肉体労働向きなだけだ。

 

 少なくとも、降谷さんは「これは……そうか、だからここに繋がっているのか」とか「この表現が疑問でしたが、なるほど。後半のギミックのヒントになっていたんですね」とかってすごい理解を示していた。

 

 ギミック、と言うのは優作氏からの提案だ。

 宝石花だけでは暗号が直線的だということで、アジトの一室などの家屋を用意して、そこに光と美術品を使ったギミックを用意しようと言う提案があったのだ。

 

 そこで示された答えが最終地点に導く鍵になる、と言う二段構えにしようと言う話らしい。

 これには私と降谷さんも一も二もなく頷いた。

 実に凝っていてベリーグッド。

 からくり屋敷ってやっぱりロマンの一ジャンルとして不動の位置を保つよな。

 しかも優作氏の構想では、私の彫刻作品が所狭しと並ぶ美術館みたいなのをイメージしているらしい。

 

 優作氏がややソワソワとした様子で私の方を伺ってくる。

 

「このギミックを作るには伝手とある程度の資金がいるが、君の方で用意できそうかな?」

「はい。伝手はルパンのアジトの施工に関わった業者を頼ります。資金についても問題ありません」

「ならよかった。完成したら私もお邪魔していいかな?ギミックの確認とデザインチェックも兼ねてね」

「勿論。宝石花の方も見本ができましたらお見せしに来ます」

 

 優作氏はしきりに頷いて、「これで一本書けそうだ。ノンフィクションは書いたことがないんだが…うむ。いいかもしれない」などと漏らしている。

 

 建物についてはルパンからアジトを一個ばかり買って改装しようかとも思ったが。

 ルパン自身がネタバレにめちゃくちゃ渋い顔しそうだからその案は却下。

 普通に災害がない気候のいい場所に一軒家を建てようということになった。

 

 本当は湿度の低く地震などもない土地がいいのだが、日本に建てたい降谷さんの意見を尊重して田舎の一軒家を購入することに。

 地面をコンクリでガッチリ固めれば、廃墟になったとしてある程度は長持ちするだろう。

 

 ………。

 じゃあいっちょ、秘密基地、建てるか!!

 

 内側で降谷さんと頷き合い、がしっと肩組みしてステップを踏む。

 ひみつきち!ひみつきち!なんていい響き!

 

 これまで使っていたルパンのアジトはあくまで一味共用としてのものだった。

 セーフティハウスも各地にあるが、仕事用ですぐ撤退できるようにしなければならないから、細かな趣向も凝らせず単なるモデルハウスに止まらざるを得ないし。

 

 自由に色々仕掛けていい一軒家!しかも小説家工藤優作がデザインした謎付き!

 素敵!!!

 

 降谷さんがニコニコした肉体の裏側で、猛烈な勢いでデザイン画を引いている。

 どうやら秘密基地に飾る彫刻をどうするか考えているらしい。

 その顔は小僧のように純心でワクワクした思いが全面に現れている。

 

───内装デザインは別途業者に頼むとして、ギミックデザインはルパンの伝手を使うと話を通しておく必要があるな

───ですね。あとアレです、暗号の浮かび上がる宝石花シリーズをどうするかですね。

───発想元になったメモリーズエッグを模して、卵形の水晶に閉じ込められた宝石花を作るって発想があったな。その方が頑丈で暗号を探すときに手に取りやすい

───完成したらコナン君にも渡しましょうか。きっと楽しいですよ

───だな。

 

 100年後にも残るロマンを作ろう。

 そんなふうに私たちはヒソヒソと声を潜めて話し合って、工藤邸を後にしたのであった。

 

 有希子さんがその姿を見て、「みんな子供みたいなんだから」と上機嫌そうに笑ったとかなんとか。

 

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