バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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休みのつもりだったけど勢いづいて来た。


夢のまにまに:警察学校編(コンビニ強盗)

 

 あれから、松田さんと降谷さんは悪友同士、と言った感じですっかり仲良くなった。

 

 私も輪に入れてもらって時折顔を出せば、ひそひそと「お前別人格だろ」と別人格当てゲームが開催されるのが最近のお馴染みの流れだ。

 どうやら松田さんの中で私と降谷さんを見分けるのがブームらしい。

 

 松田さんの勝率はまだ六割ほど。

 間違えると「残念、僕だ」「お前だったか!」などと笑い合う謎の爆笑タイムが発生。

 箸が転がっても楽しいお年頃かお前ら。

 

 さて、今日の午後一の授業は逮捕術だ。

 

 武道場に集まり、防具で全身を固めての授業は案外と動きづらい。

 私も、こうして改めて基礎を学ぶのはなんだかんだ初めてのことになる。

 実戦は嫌というほど経験したが、手加減や相手を殺さず無力化するという意味でなかなかにためになるものだ。

 

 なお、五エ門師匠も「基礎だから覚えるように」と言って私に基礎と言い張る何かを覚えさせたが。

 どう見繕っても基礎などではないことをここに明記しておく。

 例えばサブマシンガンの一斉掃射の捌き方から始まり、死角からニンジャが切り掛かってきた時の対処法とかそういうのだ。

 基礎……とは……?

 

 

 閑話休題。

 警察学校組は皆能力的に高くまとまっており、皆が皆優秀そのものだ。

 その中でも、この逮捕術に傑出した能力を持っているのが伊達班長になる。

 

 恵まれた体躯に鍛錬を重ねた技術を兼ね備え、連戦を行うほどの体力と気力もある。

 そのスペックは今期生一と言ってもいいだろう。

 

 もちろん私は除く、という注釈がつくが。

 

 私は今のところ負け無しだ。

 この授業で中途半端に力をつけたひよっこたち相手に手加減する練習を重ね、ひとまわりパワーアップした私は一味違うぞ。

 

 いや、相手が骨折など間違ってもしないように本当に気を遣ったとも言えるが…マジのマジで。

 犯人相手なら気軽にぶち折ることができるが、若き警察学校生をギプス姿にするなど許されんからな。

 

 軽く腕を回せば、厳しい訓練で筋力もかなり付いてきた降谷さんのしやなかな肉体の重みを感じることができた。

 若い肉体は現実とはまた違った軽さと生命力に溢れている。

 

 と、そこで「次!降谷!」と教官から声がかかった。

 降谷さんがチラリと私に視線を向ける。

 

───任せたぞ、もう一人の僕

───了解しました。お任せください

 

 相手はすでに10人抜きの状態の伊達さんだ。

 これは…伊達さんも少し苦い顔だ。

 どうやら松田さんとのやり合いで膝を少々痛めているようだし、このコンディションで私に敵うはずもなし。

 

 長ものはどうにも苦手だが、五エ門師匠に鬼ほどみっちり仕込まれた経験がある。

 一対一で使う分には何の問題もなかろうよ。

 

 はじめ!という掛け声とともに、伊達さんが威勢よく打ち込んでくる。

 どうやら膝を責められる前に速攻で勝負をつけにきたらしい。

 甘い甘い。

 

 それを竹刀で受け流し、そのまま緩いハイキックを面に叩き込む。

 「ッ、!」と息を呑んで腕でかろうじて防いだようだが、それが致命的な隙になっている。

 こういう時は軽く引くんだよ。

 

 そのまま一歩踏み出し密着して、極々軽い膝蹴りを腹へと決めてゲームセット。

 剣よりこっちの方が手加減が効くから、結局私はこの手の超近接戦ばかりになってしまうんだよな。

 

 ずるずると倒れ込んだ伊達さんを背後に、私は道場端に戻って面をとった。

 

 伊達班長は武器に気を取られすぎていたな。

 ブラフ混じりに振り回したとはいえ、よく観察すれば本命が蹴りなのは重心の動きですぐに分かったろうに。

 

 「まだだ、まだ俺には力が足りねぇか…」と、無念そうに伊達さんがうずくまったまま呻いている。

 

「正義を執行するには、お前のように力が必要なんだってのにな」

「………」

 

 降谷さんに返事をするつもりはないらしい。

 内側で無言のまま、腕を組んで俯いている。

 仕方ないので代わりに私が返事をする。

 

「力なき正義は無力なのは間違いない。僕もそう思うよ」

「ああ。俺もまだまだってこった…」

 

 無力感に苛まれている伊達さんもなんというか、極めて捻くれているものだ。

 

 力持つものである私に返答できる言葉は何もない

 あえていうなら、私は正義なき力であり、それ即ち純粋な暴力ということのみ。

 外付けの正義たる降谷さんがいなくては成り立たない、中途半端な存在である。

 

 

 

 

 その夜のこと。

 

 歯磨き粉を買いに行った私たちを待ち受けていたのは、噴出しそうなほど濃密な悪意が渦巻く深夜のコンビニのドアだった。

 

 普通に近付きたくないコンビニ過ぎる。

 なんだあれ、悪魔城とかか?

 遠回りしてドラッグストアに寄るか…などと思えど、放っておいたら一般客に被害が出かねないので泣く泣く断念。

 

 ちなみに、伊達さんも一緒だ。

 肩の力を抜き、連れ立って歩く姿は随分と打ち解けて見えたことだろう。

 呑気に「歯磨き粉以外に買うものなかったよな?」と私に聞いてくる降谷さんを含め、伊達さんもこの悪意を感じ取れはしないらしい。

 

 そのまま無情にも魔のコンビニへと入っていく。

 

───それどころじゃないですよ!ここ、絶対コンビニ強盗されますよ!?

───は?いやいや、まさか。コンビニなんてろくに金も置いてないだろうに、今更そんな割に合わない馬鹿なことする奴がいるか?

───えぇ…なら殺人事件ですかね…ともかく何か事件が起きます!

───ふわっとしてるな。やり直し、もっと設定固めてこい

───漫才のネタお出ししてるわけじゃないんですけど!?

 

 だめだ、全然信じられてない!

 私は焦って、ひとまず安全のために降谷さんを内側に押し込んで肉体の制御権を奪い、伊達さんの肩を掴んで位置取りを調整。

 背後から撃たれないよう商品棚の後ろに追いやった。

 

「っおい、降谷!?」

「動かずに、重心を下げて!」

 

 声を低くして伊達さんに指示を出す。

 ここまで近づけば、誰が悪意の出どころかぐらいはわかる。

 この狭い店内に五人もの犯人がいるというのなら、それはテロが強盗ぐらいしかないだろう。

 

 そうして直後。

 金属バット持ちのコンビニ強盗Aと、猟銃をこれみよがしにちらつかせたコンビニ強盗Bが堂々の入店を果たした。

 曰く「金出せよ」とのこと。素直でよろしい。

 まったく、やっぱりコナンワールドは格が違う。

 

 降谷さんが呆気に取られて呆然としている。

 

───ほら、危険だって言ったでしょう!

───いやいやいやいや……いや…未来予知とかか?

───そんな特殊能力はありません。単に人の悪意が感じ取れるだけです

───それも十分特殊能力だと思うんだが

 

 せやろか?………せやな。

 私は反省して頷いた。十分特殊能力だわ。

 

 ふむ。

 チラリと瞳だけで辺りを確認して武装を把握すれば、銃持ちが二人。

 金属バット等近接武器が三人の計五人のようだった。

 一部は一般客に変装しているようだ。

 意味がわからん。そんなんするなら宝石強盗でもすればいいのに。

 

 一般客がいるし、銃持ちが人質を取るのが一番危惧するところだろう。

 その前に制圧するのが一番だ。

 

 圧倒的な犯人の数の利に動けないのか、伊達さんが悔しそうに歯軋りしている。

 己の無力さを嘆くように俯き、しかしそれでも諦めずに周囲を観察する姿勢は評価できよう。

 

 「スマホをこのカゴの中に入れろ!」と怒号を上げた犯人Bが、客たちからスマホを取り上げようとしてるらしい。

 犯人Bは鉄パイプを商品棚に立てかけ、カゴに持ち替えた。

 

 ふむ。今だな。

 

 棚に立てかけられた鉄パイプへと瞬時に飛びつき、銃持ち二人に踊り掛かる。

 

 「ッ!?テメェ!!」「はぁ!?」「うう、撃て!!」と犯人たちが無事に動揺した。

 

 慌てて犯人Aがこちらに銃口を向け、そのまま発砲。

 鋭い銃声が狭い店内にこだまし、客たちの悲鳴が上がった。

 

 こんなスロウリィな銃弾を弾くぐらい、三徹明けでもできる仕事だ。

 そのまま弾いた弾丸を銃持ちの犯人Cの肩にぶち当てれば狙い通り。

 これで厄介な銃持ちの制圧は完了というわけだ。

 

 伊達さんがポカンと私を見てから、瞬時に意識を切り替えて猛然と鉄バット持ちの犯人を押さえにかかる。

 おっ、フォローサンクス!

 

 「野郎!」と素手で持って殴りかかってくる男の脳天をハイキックで薙ぎ払っておけば、相手は一瞬で昏倒した。

 軽い軽い。

 最後の一人は伊達さんに背後から殴りかかろうとしていたので、その前に鉄パイプで突きを放ってコンビニの壁へと叩きつける。

 流石に肋骨ぐらいは折れたかもしれないが、まあそれくらいは仕方なかろう。

 

 その余りの戦果に、唖然とした様子の伊達班長が犯人を押さえつけたままこちらを見ている。

 

 私は降谷さんのふりを続けながら、にこりと伊達さんへと笑い返した。

 

「正義を遂行するなら、最低限これくらいは必要だろう?」

 

 と言ってウィンクしておく。

 伊達さんは困ったように顔をくしゃくしゃにした。

 

「……おいおい、仮面ヤイバーかよお前は。相手は銃持ってたんだぞ」

「うまく弾ければ実質手数が2倍に増えるだけだ。僕にとってはボーナスでしかないよ」

「ありかよそんなの」

 

 それっきりだまってしまった伊達さんに、私は110番へと取り上げられたスマホを回収して電話をかけながら笑みを作った。

 

「力なき正義は無力ってのは、間違いないが」

「あん?」

「正義を執行できるだけの力を持つのは、個人じゃ無理だぞ?」

「………そうだな」

 

 それができるのは、ルパン一味など本当に限られたものだけだ。

 そしてそれでは大衆の平和は守られない。

 

 じゃあどうしろってんだよ、と若き警察官伊達航は迷子のような表情で言葉を漏らしたのだった。

 

 

 と、そこに平然と入店する萩原、松田、景光さんの3人である。

 どんなタイミングだよ。

 

 「おーうゼロ!何だお前も結局買い物に来てたのかよ」と言いかけて、そこでこの死屍累々に気づいた松田さんが絶句した。

 萩原さんも「や、……やるねー降谷ちゃん…」とドン引きの構えである。

 

 降谷さんが内側でなぜか胸を張っている。

 己の強さが誇らしいらしい。いいんかそれで。

 

 そのまま警察官が来るまでワイワイガヤガヤと犯人を縛ったり応急処置をしていれば。

 ふと、小さな声が耳のそばで聞こえた気がした。

 

…ろ……あむ……!…こえ…………おい!

 

 私はつい後ろを振り返り、そこに人がいないのを確認して首を傾げる。

 

───僕のこと呼びました?

───なんのことだ。僕は呼んでないぞ

───でもまだバカうるさい館内放送は続いてますよね。職務倫理を一生流すのはやめてほしいです

───ほっとけ!!!

 

 もうあの小さな小さな声は聞こえなくなっていた。

 

 何となく胸騒ぎのようなものを感じて、私は深層心理の内側にて我知らず拳を握っていたのだった。

 

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