バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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加速加速ゥ!


夢のまにまに:警察学校編/バーボン編(目覚めの時[前])

 

 それからも事件は続いた。

 特に記憶に残っているのは暴走トラックの件と、今日の夕方に起きた爆破未遂事件だ。

 

 特に暴走トラックの件、あれは割と死んだかと思ったものだ。

 

 降谷さんとしては萩原さんの運転技術に興味があるようで、教えてもらえないか隙を伺っていたが…なるほど。

 降谷さんのあのヤバ過ぎる爆走はここから始まっていたのか、と納得する。

 便利だからいいけど、やっぱり怖いのでやめてほしい今日この頃。

 

 ……あむ……聞いている……か?

 

 あの小さな声は、日に日に大きさを増してゆく。

 今では割と聞き取れるぐらいになってきて、私はいつもそれに耳を傾けていた。

 

 今日は……組織の…財界の大……原氏の暗…任務があって……

 

 やはりこの世界は夢なのだと、声を聞けばよくわかる。

 私が気絶して寝こけている間、現実で降谷さんが頑張っているのだろう。

 うーん罪悪感。

 

 早く目覚めねばと思えど、どうやって目覚めればいいのかも分からない状況に歯痒さばかりを感じてしまう。

 

 頬をつねってもきちんと痛いだけで目覚める気配もないし。

 現実ではどれぐらいの時間が経っているのだろう。

 あまり長くないと嬉しいが……まぁ、夢を見れているということは死んではいないということだ。

 それだけでラッキーだと思おう。

 

 

 などと一人頷いて、私は手に持ったモップを無心に前後に動かす作業に戻った。

 

 ちなみに現在、風呂掃除中である。

 やらかしが積み重なりすぎてついに私たちに鬼塚教官の雷が落ちたのだ。

 というか今回は景光さんの家族の仇討ちのため風呂掃除をバックれたのがトドメだったな。

 

 景光さんの両親は、昔家に押し入ってきた男に殺害されて亡くなっていたらしい。

 景光さん本人の口からは聞いたことがなかったが、そりゃまあ軽々に口に出すことでもないか。

 

 そんな未解決事件も今日で解決した。

 推理に関しては文殊の知恵たる警察学校組が揃い、見事犯人を暴き出すことに成功し、私たちは犯人の元に乗り込んだのだ。

 

 事件の真相は逆恨み。

 詳細は割愛するが、景光さんは恨みを乗り越えられたらしい。

 犯人も無事捕まり、犯人の用意した爆弾も解除できた。

 

 というわけで、大立ち回りを演じてから全力での風呂掃除である。

 きちんと容赦してもらえるように、とっさに駐在さんに口添えしてもらったのが功を奏したか。

 

 普通に「次は見逃してやらんからな!!」と激怒されるだけで済んだ私たちである。

 

 ちなみに、降谷さんは「やってられるか!」と私に風呂掃除を押し付けて中で自主学習に励んでいる。

 

 松田さんはガワに出ているのが私だと気付いたらしく、むっつりと私の方を掴んで不満を表明している。

 

「いいよなぁ、ゼロは掃除を任せられる相棒がいてなぁ!」

「───結局僕がやってるのに変わりないんだ。いいだろ別に」

「いーやよくない。公平じゃないね!」

 

 ひそひそと言い争いをする二人に、伊達さんが訝しげな顔をしておる。

 

 松田さんは今回、爆弾解除のすべを降谷さんに教えてくれたのだが、私も大変参考になる授業であった。

 松田さんには空き時間にちまちま爆弾やらメカやらの構造を教えてもらっているのだが、やはりこういうのはためになる。

 

 私なんかでも覚えておけば、苦手な爆弾の対処の時に切っても爆発しないように斬鉄を使うことができるからな。

 

 今回の爆弾も、台所にあった包丁で爆弾の入った洗濯機を斬鉄で切断して解体時間を節約できた。

 どれもこれも彼のおかげだ。

 

 

 こんなふうに、降谷さんは一個ずつ今の知識と力の源となるものを蓄えていったのだろう。

 

 それをひとつひとつ後追いする日々が、こんなにも愛おしい。

 まだここにいたいという気持ちと、早く目覚めなければならないと焦る気持ちが拮抗してもどかしい。

 

 それでも、そろそろ夢は終わりにしなければ。

 

 松田さんと降谷さんが言い争う騒がしい空気の中、私が静かに瞼を開ければ。

 

 不意に。

 

 光が溢れた。

 

 

 

 

 

 降谷零は走っていた。

 

 必死で、脇目も降らず、息を荒らげて、何もかも投げ打って。

 降谷はビルの何十段もある階段を駆け上がっていた。

 

 どんよりとした曇り空の夜を都市の光がギラギラと空を照らし上げ、冷たい空気が肺に突き刺さって痛みを生じる。

 でも1秒だって立ち止まれない。

 

 今日の深夜、何故かスコッチの正体が明るみに出た。

 

「はぁ、はぁ、ヒロ、ヒロ……!」

 

 公安からのNOC、諸伏景光にはもうすでに抹殺指令が出ている。

 誰よりも早く駆けつけなければ、待っているのは死だけだと誰よりも降谷は理解していた。

 

 先ほど一階付近で鍵をこじ開けた痕跡を見つけたのは本当に僥倖だった。

 

 必死で階段を駆け上る時間が狂おしいほどに遠く長い。

 無事でいてくれ、お願いだ、お願いだから!!

 そのように願い、願い、願って息が切れるのも構わずに走り抜ける。

 

 カン、カン、カン、と非常用階段を登る音がこだまして、あたりに響き渡る。

 

 パァン、と発砲音が上階から空へ響く。

 それも聞こえないふりをして必死に走って上を目指す。

 きっと当たっていないはずだ。きっと死んでいないはずだ。

 ただ上へ上へと駆け上がり、あと25段、あと13段、あと─────。

 

 

 しかして。

 

 屋上には、ぶちまけられた血が花のように広がっていた。

 

 

 つんとした鉄の香りが鼻を突く。

 ライが銃口からまだ硝煙を立ち上らせている拳銃を手に、無感動にこちらを振り返った。

 頽れた死体が目の前にひとつ。

 力なく、胸を撃ち抜かれてビル屋上の手すりにもたれかかって動かない。

 

 ライがゆっくりと、嫌になる程ゆっくりと口を開いた。

 

「裏切りには、制裁をもって応える。だったよな」

「─────」

 

 その時、降谷の心に満ちるのは怒りでも悲しみでもなかった。

 

 黒々と視界が狭まる。

 深い深い、自己への絶望に。何もできぬ己への失望に。

 

 降谷は声もなく立ち尽くしていた。

 

 所詮お前だけでは何一つ成し遂げられないのだ。

 敵を打倒することも、友を救うことも、なにもかも。

 手のひらを見る。

 力を入れすぎて爪が食い込み、手には血が滲んでいた。

 

 降谷はそこに至ってなおも冷静だった。

 組織におけるあらゆる経験が降谷を強くした。

 こんな日が来るんじゃないかと心を準備する時間を与えてくれた。

 

 だから気付いたのだ。

 

 スコッチの手についた返り血の形がおかしい。

 あれはスコッチ自身が拳銃を自分に当てて撃ったのだ。

 なぜそんなことを?拳銃をライから奪えたなら、自分を殺すよりもライを始末した方が早かったはず。

 

 ────カン、カン、カンと、己の足音が耳に反響する。

 

 

「………………ぁ」

「ずらかるぞ、バーボン。報告は頼んだ」

 

 そう言って、ライが長い黒髪を揺らして階段を降りていく。

 カン、カン、カン、と足音がこの屋上まで届いている。

 

 あああ。

 

 声が出ない。ただ阿呆のように立ち尽くしたまま、表情ひとつ作ることもできなった。

 己の袂で眠る相棒がうっすらと目を開けていることにすら気がつけない。

 

 相棒がゆるゆると目を開け、「ゼロ?」と声をかけたのも、耳に入らなかった。

 

 どくどくととめどなく血が流れ、屋上を赤く汚していく。

 もはや諸伏景光の息はない。なのに動けない。

 

 ああ。

 ああ、あああああああああああああ。

 

 

 何か欠けてはいけない部分が、欠けた音がしたようだった。

 




・夢
当人の想いに支配された過去想起の交差。
降谷さんは「自分では相棒以上にできない」と思っているので悪夢に変わり、バボ主は「なんとかなるだろ」と能天気なので全体的にイージーモード。
まぁ所詮は夢である。
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