バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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 これはリクエストにあったIF編です。
 もしバボ主が原作一話時点から物語に関わらず、中盤になって不意に現れたキャラだったら、という話。
 「原作開始前」章終了時点からの分岐になります。

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番外編:IF「もしバボ主が原作一話時点で関わっていなかったら」

 

 どうも、転生者の安室透です。

 

 眠りについた降谷零の代わりに、憑依者として日々邁進する現在であります。

 この頃はバーボンとして名前も売れて、ジンにも気に入られて立場は安泰。

 時折ある鬱々しいNOCの処分の仕事も6割ぐらいはそっと逃がせるようになり、心配することは何もないわけだが。

 

 ……とはいえ。

 原作が始まって随分経つが、今までずっとそちらにはノータッチであった。

 

 今の今まで何をしていたかと言うとだ。

 主に海外での仕事に従事していて、敵対組織の壊滅から交渉の威圧役までマルチにこなしていた。

 選んで海外の仕事をしていたとも言う。

 

 実際、コナン君に任せておけば基本はいい方向に話が進んでいくからな。

 私が下手に首を突っ込むと、上手くいくものも上手くいかなくなるだろうと危惧したのだ。

 まぁ降谷さんは海外任務にずっとブスくれていたが……下手に国内仕事をしているとコナン君と変なところでぶち当たるかも知れないし。

 原作通り「ウェディング・イブ」事件になったら顔を見せようと思っていたのである。

 

 しかし、ここに来て動きがあった。

 どうやらなかなか見つからないシェリーの行方を追えとのことで、痺れを切らした組織から指令が降ったのだ。

 

 裏切り者の処刑役として呼び戻された私が今現在何をしているかと言うと……。

 

 観光名所巡り!である!

 

───ゼロ!見てください!あそこがこの間組織に一斉掃射された東都タワーですよ!

───お前の観光のセンスを疑う

 

 率直な感想が私の心に突き刺さる。

 ええやろコナン世界に来たんだから聖地巡りぐらい!!

 

 狙撃されたベルツリータワーや戦闘ヘリに一斉掃射された東都タワー、ちょっとマイナーなところだと、森谷帝二に爆破された米花シティビルなんかも観光済みだ。

 どれも皆すでに綺麗に再建されて、お客さんでいっぱいであった。

 相変わらず建築速度バグってんな…などと思うなどする。

 

 

 そうして、観光の最後にやってきたのは工藤邸と阿笠邸である。

 地味にシェリーの逃げ出した研究所近くで、シェリーの行方探しの一環と言えなくもない位置だ。

 こうして改めて見ると、幼い足では遠くまで逃げられなかったと言うことがよくわかる。

 

 徒歩で米花町周りをめぐってから、阿笠邸をぼんやりと見上げていれば。

 ふと、視線を感じて隣の工藤邸のほうへと視線を向ける。

 

 誰かと目があったような気がして、私は少しだけワクワクしたのであった。

 

 

 

 

 

 

『ボウヤ、緊急事態だ』

 

 通話を繋いで開口一番、赤井秀一は緊張の滲む声色で言い切った。

 

「どうしたの?」

『ウルフドッグがここを嗅ぎつけた。まだ踏み込む様子はないが、非常に危険な兆候だ。彼女を裏口から逃がせるか?』

「ウルフドッグ?」

 

 まず疑問を口にすれば、赤井秀一もやや己の語り口が焦りすぎていると気付いたらしい。

 小さく「すまない」と言った後改めて説明してくれた。

 

『君にはバーボン、と言った方がいいか。組織の幹部にして裏切り者を始末する処刑人だ』

「!!」

 

 コナンもベルモットから名前だけは聞いてる人物だ。

 あのハロウィンパーティの時に、「キティ」と呼ばれるバーボンの手助けがあったことを記憶している。

 

『奴はこれまで多くの潜入捜査官を殺害している、組織の中でも一等危険な幹部だ。羽多製薬会社の工場で火事があったのは知っているな?』

「あの63人が死んだっていう、例の……それもまさかバーボンの仕業なの!?」

『ああ』

 

 報道では薬物に発火して爆発が起きたことから、大惨事になったとされていたが。

 コナンは思わず息を呑んだ。

 それほどの被害を組織がだしていたとは、コナンも知らなかったことだ。

 

『FBIからの情報では、死体はどれも燃える前に既に殺されていたことがわかっている』

「!」

『奴らのいつものやり口だ。ウルフドッグに殺しをさせて、死体は皆焼いて証拠隠滅を図る』

 

 どれも刃物で抉るように殺されていたらしい。

 内臓を抉り抜かれていたり、首と胴を切り離して弄んだり。

 凶悪極まりないその所業こそがウルフドックたる所以だ。

 ジンのペットとも言われていて、その残虐性は他に類を見ないという。

 

 淡々と説明する赤井秀一の声色は、底知れぬ憎悪を裏側に隠していた。

 

 それに触れるほど、コナンはいつもの無神経さを出せなかった。

 赤井秀一との関係を壊したくなかったし、それに何より彼の心が触れるなと訴えていたからだ。

 

「僕も今から灰原のところへ向かうよ」

『ああ。頼んだ。こちらの方でもやつを見張っておく』

 

 

 そうして急いで探偵事務所を飛び出し、ターボエンジン付きスケートボードで阿笠邸へと向かう。

 5分も掛からなかっただろう。

 

 はたして、そこには一人の金髪の優しそうな表情をした男が佇んでいた。

 

 ぼんやりしていて、単に豪邸が物珍しくて見ているだけのようにも見える。

 コイツがバーボン、か?

 なんだか随分気を抜いているようだが……。

 スケボーを降り、ゆっくりと慎重に近付いて声をかける。

 

「お兄さん、どうしたの?」

「っ!?!?」

 

 なぜか凄くびっくりしたようで、飛び上がってギョッとした顔でコナンを見た。

 なんなんだ本当に。特徴は一致しているようだが、コイツがバーボンなのか?

 

 バーボンは慌ててパタパタと手を振って、コナンに謝罪して見せた。

 

「あ、いや、ごめんね。ここのうちの子かな?」

「ううん。僕の親戚の人のうちだよ。何かあった?さっきからこの家を見てるみたいだけど」

「いや、僕は工藤家のファンで…ついつい見てしまって。不躾だったよね、ごめんね」

「工藤家の、ファン…???」

 

 恥ずかしげに笑う男はとても組織の危険な幹部には見えない。

 やっぱり人違いなのか…と思うコナンを放って、なぜか早口で男が語り出す。

 

「ナイトバロンシリーズは王道だよね。全巻持ってるし何回も読んだよ。もちろん藤峰由希子さんの主演の危ない刑事恋物語も見たよ。煽情的なシーンが話題だけど、あれはあれで結構王道で燃える展開も多くてさぁ」

「そ、そっか…」

 

 やや押され気味のコナンがやっぱり人違いだったと確信して、赤井秀一に連絡を取ろうとその場を後にしようとしたその時。

 男がうっそりと笑った。

 

「でも最近は新一君の活躍が見れなくて残念だよ」

「そうなんだー、あの、僕この辺で」

「足取りはトロピカルランドで途切れていることは確認が取れている。それと入れ替わるように………君が現れた。江戸川コナン君?」

「ッ!!」

 

 ばっと男を見上げれば、男は怪しく笑みを深めてコナンを見下ろしていた。

 獲物を狙う肉食獣のごとき冷徹な瞳が、コナンを捉えている。

 

 これは、まずい。

 

 己の武装を確認し、腕時計型麻酔銃を後ろ手に瞬時に構える。

 男はわざとらしく苦笑した。

 

「………なんてね。冗談冗談。そんなに警戒しなくていいよ」

「僕に、何が言いたいの」

「特に何も。あーいや、一個頼みがあったんだった」

 

 男が懐に手を入れる。

 死んでくれと、そう言われてもおかしくない状況に、否応なくコナンの緊張は高まる。

 拳銃か……と、思ったそれは。

 なぜか、男が取り出したのは一冊の本であった。

 

「これ、ナイトバロンの文庫本版なんだけど、工藤優作さんのサインとかってもらえたりしないかな……一生大切にするから」

「へ」

「頼む!君のことは組織には内緒にするから!」

 

 頭を下げて頼む姿は実に必死そうだ。

 もう何が何だかわからない。

 ちょうど頭を下げたので隙をついて発信機を仕掛けたが、それも気付いた様子もない。

 

 コナンは混乱しながらも恐々と頷いて、男から手渡された本を受け取った。

 

「組織が何かはわからないけど、今は優作おじさんは留守だから、貰えた時のために連絡先をくれる?」

「いいよ。これ、こっちならすぐに連絡がつくから。あ、遅くなったけど僕は安室透と言うんだ。よろしくね」

 

 安室と名乗る男はコナンにメモ帳の切れ端を渡し、そこに大人しく電話番号を書き込んだ。

 素直にくれるんだ……。

 本当に読めない男である。妙に気の抜けると言うか、独特なマイペースさを持つ男である。

 

 それでも、油断は禁物であった。

 

「じゃあ、僕はこれで。それと……このあと仕事だから、後はつけないこと」

 

 ばきり、とこっそり襟元につけたはずの発信機を握りつぶし、うっそりと微笑んでわざとらしくパラパラと盗聴器のかけらを落として見せる。

 それは間違いなくコナンへの警告に違いない。

 

 濃密な殺気が一瞬吹き荒れ、全身の肌が粟立つ。

 

「っ!!」

「身の回りの人間が大切なら、イタズラもほどほどにね」

 

 そのまま悠然と去っていく後ろ姿を見送りながら。

 コナンはただ、殺人鬼たる男の後ろ姿を噛み締めながら手の中のメモを握りしめていたのだった。

 

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