バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
佐藤刑事達がポアロに来店した理由。
それは、伊達さんが一年前に残した手帳に残るメモの謎を解き明かしにということらしい。
どうやらその時「お前を男にしてやるよ」と言って高木刑事を誘ったとのことで。
メモには暗号で日時と店名が示してあり、それは日曜昼のポアロだった。
総合して考えるに、警察官として手柄を立てさせてやりたかったのだろう。
これには降谷さんも気になるようで、やや顔を明るくして目を細めていた。
───「お前を男にしてやる」か。班長、やはり高木刑事のことを思っていたんだな
───言い回しは如何わしいので、もし彼らが聞いたら散々揶揄われそうですけどね
───だな。萩原が口笛でも吹きそうだ
彼ら、とは警察学校組のことだ。
郷愁の滲む声色は言いようもなく孤独をはらんでいて、私もそれを汲み取り、少々おどけた口調で問いかけた。
───どうします?コナン君に任せていても解決はすると思いますけど
───勿論、関わるに決まってるだろ。班長のやり残した仕事だ。俺達が見届けないでどうする
───ですね
伊達班長のやり残し。
それ即ち「高木と伊達と手帳の約束」に違いない。
これはフランスの自動車メーカー副社長の息子が誘拐された事件が発端になる。
犯人は半グレ集団のリーダーで、目的は身代金。
リーダー自体は別件で死んだが、今もなお部下が身代金の入手のため動いている…と言った状況だ。
ちなみに、リーダーの死因は突如酔っ払いにビール瓶で頭を殴られたことによるものだ。
普通に米花町の治安の悪さを見せつけてくるいい事例である。
ともかく。
最速はもうすぐ来る半グレ集団の車をとっ捕まえて吐かせるだろう。
コナン君がてけてけと小さな足取りで私に近づき、内緒話をしてくる。
「ねぇ、安室さん。一年前のお昼の12時ごろ、何か来なかった?」
「一年前は僕もポアロには勤めていなかったからわからないけど…でも、窓際で拾ったゲーム機ならあずささんが見つけて保管してるよ。そして、同じゲーム機を持って今も毎週やってくる不審な車もね」
「!!」
「ちょっと奥から持ってくるよ」と言って私は一旦奥に引っ込んだ。
そうして忘れ物コーナーにある電池の切れたゲームを持って戻る。
この事件、実は前々から知ってはいたのだ。
なにせ毎週日曜日のお昼に来るからな。流石に降谷さんも気づくというもの。
ただし、原作と違って人質の男の子は連れてきていなかった。
だから降谷さんも不審には思っていたようだが、事件性は確認できないし組織関係かと思って警戒するだけだった。
この違いはどうやら私……というか「安室透」の立ち位置の変化にあるようだ。
もともとこの半グレグループ、泥惨会というヤクザの下部組織にあたる組織だ。
そして私は一度、ウルフドッグとして泥惨会のアジトの一つを潰して中にいる人員を皆殺しにしている。
比較的小さな組織で、かつ幹部が集まっているところを狙ったこともあり、この打撃で一時壊滅状態にもなったようなのだ。
最近では少し復興してきているらしいものの、それでも影響は甚大。
だから泥惨会の人員には、日頃から割とちょっかいをかけられていた。
恨みここに極まれり、ということらしい。
鉄砲玉の類は全て返り討ちにしているが、鬱陶しいことこの上ない。
まぁ、というわけでポアロに来るのもその一環だろうと降谷さんも思っていたというわけだ。
私の方も、勘違いには気付きつつも原作で放っておいても大事には至らないと知っていたから放置していた。
人質の少年たちには悪いが、下手に関わって人質が殺害されたら可哀想だからな。
原作補正を受ける前に手を出すのは避けていたのだ。
人質の少年がいないのも私がポアロに勤めていることを察知し、万が一私がちょっかいかけないようにと警戒してのことだろう。
ならいっそのこと取引場所の変更とかすればいいのに、とも思うのだが……。
リーダーが一年も音信不通でも何も手を打たない連中だ。
そんな能はないということなのだろう。
コナン君が持ってきたゲーム機をまじまじと見つめながら、私に問いかけてくる。
「毎週来ているって車、どんな車かわかる?」
「ナンバープレートから、車がこの辺で活動する半グレグループの使っているものだとはわかってるよ」
「調べたの!?それならなんで…」
「恥ずかしながら、僕関連の話かと思ってね。下手に触れてポアロで一触即発の事態にしたくなかったんだ」
「僕関連……まさか、組織と関係があるの?」
殊更に声を潜めてコナン君が表情を鋭くする。
そこで、ひそひそ話を聞いていた佐藤刑事がずいと割り込んできた。
「その話、私も聞いていいかしら」
「えっ、さ、佐藤刑事!?あのね、これは…」
コナン君がもごもごと口籠る。
降谷さんと頷きあって、すぐに降谷さんが表に出る。
「いいですよ。───少しばかり俺の潜入先の案件に関わっている。ここだけの話にしろ」
威圧的な口調は公安としてのもの。
わかりやすく降谷さんという人格が公安なのだと印象付けるための交代だ。
私が降谷さんのフリをしてもいいのだが、どうしてもあの公安流コミュニケーションが真似できなくてふんわりな降谷零になってしまうんだよな。
後ろでは高木刑事が子供達の相手をして、子供達がこっちへ来ないように押し留めている。
地味にナイスプレイだ。
コナン君が私と佐藤さんを見比べてあわあわと百面相している。
そういえばコナン君には佐藤刑事と高木刑事に正体をバラしたことは伝えていなかったな。
というか、今の今まで知らなかったということは、本当に佐藤刑事達はコナン君に組織について聞くことも匂わすこともしなかったらしい。
あれだけ険悪な関係だったというのにコナン君にはおくびにも出さなかったということだ。
凄い自制心だ。流石は佐藤刑事。
「あの、安室さん、もしかして…佐藤刑事に何か喋った?」
「二人には俺の立場を伝えてある。君への協力依頼もな」
「だから二人とも最近僕を遠巻きにしてたというか、なんかいいたげにしてたの!?」
ふむ。佐藤刑事もモヤモヤとした感じに言い淀むことぐらいはあったらしい。
そりゃそうか。
「ごめんなさい、どう声をかけていいかわからなくて…」と佐藤刑事が申し訳なさそうにコナン君に謝っている。
まぁ、降谷さんの公安流コミュニケーションの洗礼を浴びたんだ。
言い淀むぐらい誰だって許されるだろうさ。
降谷さんは内側で「協力しろと言ってあったんだから普通に協力すればいいだろう」と疑問符を飛ばしているが、それはそれ。
これが公安に染まってしまったものの末路か…。
まあそれはいいとして、そろそろ本題に入るべきだろう。
降谷さんが一つ咳払いしてから、何事もなかったように淡々と話を進め始めた。
空気読んでくれ頼むから。
「俺の潜入先と、毎週日曜昼にポアロに来る車の所属先…泥惨会は敵対関係にあってな。俺の関係かと思って表面を攫う程度に調査していたというだけの話だ」
「泥惨会!なんで指定暴力団が毎週こんなところへ…!」
「さあな。一年前ということは、俺目当てで来ていたわけじゃなさそうだ」
降谷さんが何か情報がなかったかと考え込んでいる。
佐藤刑事が険しい顔で降谷さんを睨みつけた。
「もしかして、恨まれているの?潜入捜査で、泥惨会と接触して」
「それを知る必要はない」
淡々とした声色にはなんの熱もこもらない、機械的なものだった。
佐藤刑事が視線を鋭くする。
ここに降谷さん的には業務連絡程度の話で、特に何か思うところはないのだ。
それどころか、好意的ですらあるという脅威の絵面だ。
あーーもーー。
心がイガイガするんじゃあ。誰かなんとかしてくれ……!!!
内心チベスナ顔になりながら、私は事の次第を見守っているのであった。
・バボ主
そろそろ降谷さんと河原で殴り合いでもしようかと考えている。
素手でボッコボコにしてやんよ、などと思えど実際に降谷さんを殴るなんてできない人。