バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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高木と伊達と手帳の約束終

 

 結局、コナン君たちは推理で盛り上がり勝手に誘拐事件まで辿り着いたらしい。

 

 私が口を出すまでもなく、あれよあれよと言う間に半グレ集団のリーダーの名前まで辿り着き、攫われた人間がいるだろうことにも想定が行っていた。

 流石に攫われたのが自動車メーカーの子供だと言うことまでは掴めてはいないようだが…どうせ犯人を捕まえて吐かせればいいだけの話だ。

 遅かれ早かれと言うことだろう。

 

 軽く変装した梓さんが、コナン君の推理通りに身代金を用意するふりをして窓際の席に座っている。

 その顔は実に緊張していて、キョロキョロして忙しない。

 これはこれで本物の取引相手っぽくてリアリティがあるよね。

 

 ちなみに、変装用具は梓さんの私物である。

 ウィッグにリバーシブルの服に、肩幅を誤魔化すための新聞紙エトセトラ。

 私と不意に買い物に行かなければならなくなった時のための品らしい。

 あまりに追跡されてるエージェント過ぎて変な笑いが出る今日この頃。

 

 そして、ゲーム機越しに送られてくる犯人の指示通りに金を詰め替えるふりをして。

 犯人が出てきたところを、佐藤刑事が声をかけると言う寸法である。

 

 一応私も気配を注視しているから、半径200mほどなら目で見失ったとして追跡が可能だ。

 ウルフドッグの名は伊達ではないのだ。

 

 店内で息を殺してその時を待っていれば……お、急激に気配が動いた。

 佐藤刑事と追いかけっこに移行したようだ。

 

 「少し僕は出ます!」と言ってコナン君と共に店外へと飛び出る。

 コナン君は目を抑えて咳き込む佐藤刑事に駆け寄った。

 どうやら熊撃退スプレーに類するものを吹きかけられたらしく、ほぼ目が開けられないようだ。

 

 スプレーじゃ私も避けられん。

 目がつぶされても動くことはできるが目の状態を考えるとそう無理もしたくないし。

 

 犯人の気配だけが遠くへ向かう前に捕まえねばなるまい。

 

 私は把握している気配に向かって最短距離で回り込み、周囲を警戒する男をビルの狭間から突進して確保。

 押さえつけた男が「クソっ!?」と暴れている。

 私の後ろから、片目を赤くした涙目の佐藤刑事が慌てて追いかけてくるのが見える。

 

 目にスプレーが入った状態で動くとは、すごいガッツだ。

 視力低下や失明が起こることもあるし、顔が爛れることもあるので早く洗い流して病院へ行ってほしいのに。

 幸い片目ということは正面から浴びたわけではないようだが…無理はしないでほしいところ。

 

 私が提言のため口を開こうとしたその時。

 私の姿を見て、犯人の男の目に強烈な怯えが走った。

 

「ひいいい、どう、どうしてウルフドッグが!殺さないでくれ!!」

「ッ」

 

 私は咄嗟に息を呑んでしまった。

 佐藤刑事が鋭い瞳で私を見る。

 男はなおも言い募り、佐藤刑事の姿を見つけて助けを乞うように動かせる左手を伸ばした。

 

「あんた警察だろッ!助けてくれ!!俺の兄貴も、その仲間もみんなこいつに殺された!!なんでも喋る!だから助けてくれよ!!!」

 

 ああ、こいつ生き残りか。

 私が顔を見てようやく思い出し、深いため息を吐きそうになる。

 

 この男、私が泥惨会のアジトをつぶしに行った時、アジトにいたチンピラの一人だ。

 目の前で他の人員を残さず殺されて必死で逃げ回っていたから、面倒臭くて組織の後始末の人員に任せて放っておいたんだった。

 そうか、生きていたのか、

 

 しかしこの状況で喋られるのは本当に困ったな。

 殺して口封じもできないし、失敗したか。

 

 私が冷徹なことを考えているのがわかったのかそうでないのか、佐藤刑事が猜疑に塗れた顔で私を見つめている。

 軽く手刀を入れて黙らそうか…と思ったが、誘拐された子供達の居場所を吐かせるまではそうはできないな。

 

 まったく、面倒なことこの上ない。

 

「どういうこと……?」

「僕には一体なんの話か分かりかねます。薬でもやっていたのでは?」

「正直に答えて」

「………───君が知る必要はない」

 

 私が黙っているのを見かねてか、降谷さんが口を挟んだ。

 ただし、最悪な方向にだが。

 もはや空気は氷点下。警戒状態の佐藤さんに、未だ「助けてくれ!!助けてくれぇ!」と悲鳴をあげる男が周囲の一般人の注目を引いている。

 

 とりあえずこの男を早急に黙らして子供達の居場所を聞き出そう。

 そう思って男の胸ぐらを片手で掴み上げ、頬に手を添えて微笑んで見せる。

 もちろん、殺気をつけたウルフドックフルバージョンの脅し体制だ。

 

 男が恐怖のあまり痙攣し始めた。どうやら私のことがトラウマらしい。

 なのに私のいる喫茶店まで取引のため来ていたのか。

 結構上の命令に忠実なやつなのかもしれない。

 一年も同じ命令を愚直に守っているあたり、阿呆ではあるがこれはこれで使い用がありそうなやつである。

 

 私は意識してそっと撫ぜるような優しい声を出した。

 

「貴方、誘拐した人間を何処かに監禁してますよね。教えてくれますか?」

「!!!わ、わかった、言う、言うから殺さないでくれ!」

「勿論。殺したりしませんよ。さあ、教えてください?」

 

 私の声色に何故か緊張をあらわにしたのは佐藤刑事の方で、私が動き出したらいつでも動けるように重心を低く落としたようだった。

 なんでや。用済みになったら殺すとでも思っとんのか。

 

 いや、ウルフドッグの時はそのまま殺したかもしれんが。

 こんな白昼堂々、警察の目があるところで殺したりは流石にせんよ。

 

 男が怒涛のようにべらべらと情報を、聞いていないことも含めて全て喋ったあたりで手刀を落として意識を奪う。

 佐藤刑事の厳しい視線が私を捉えた。

 

「公安は違法捜査が常。潜入中はもっとそれが顕著になる。そうよね」

「…………」

「まさか貴方、本当に」

「さて。公安というのはTVで聞いたぐらいで詳しくは僕も存じませんが」

 

 肩をすくめて笑って見せる。

 軽薄な笑いを意識して出す。これは踏み込んでくれるなというメッセージと、それが本当であると肯定する意味が含まれている。

 

「ドラマとかですと、国を守るためにやってるんじゃないんですかね?汚いこととか、違法なこととか諸々」

「殺人は許されないことよ」

「やだな。ドラマの話ですからね?」

 

 カラカラと笑って、それから男を背負って背を見せる。

 突き刺さる視線が痛い。

 

 殺人は許されないこと、か。

 殺さないで成り上がれたんなら私だってそうしていたさ。

 すなわち恨むべくは私の力不足に他ならない。

 全ては私の責であり、私が負うべき負債である。

 

 降谷さんが内側で甘く蜜のような声を出した。

 

───大丈夫。お前はよくやっているさ。お前以上に上手くできた人間なんていない

───そうだと、いいのですが

───俺が保証しよう。お前は完璧だ。潜入捜査官として、降谷零として、お前は何よりも誰よりも上手くやった。佐藤刑事の戯言など気にするな

 

 まるで堕落に誘うような声だ。

 どろどろと煮詰まった声が私にまとわりつき、私の動きを鈍くする。

 

 

 うーーん、やっぱこれ今日の夜にでも河原で殴り合わねばなるまい。

 不健康に過ぎる。

 

 そのように決意して、私は佐藤刑事に一つ微笑んでから男を遅れてやってきた高木刑事へと引き渡した。

 未だ、佐藤刑事の猜疑の視線は私を捉えて離さない。

 

 まあ、一個一個解決していけばいいだろう。

 私はそのように思い、一人頷いてこの内側の病ん病ん系相棒をとりあえずぶっ飛ばそうと心に決めたのであった。

 

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