バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
目暮警部がボウガンで撃たれた!
少年探偵団の子供達とハイキングに行く途中で、警視庁から連絡があったのだ。
毛利探偵も共に急いで病院に駆けつければ、病室でベッドに横になる病衣姿の目暮警部の姿があった。
たしか本名が目暮十三で、トランプの13に合わせて狙われたんだったか。
運良く腹の脂肪に守られたらしく、ベッドの上での様子も意外と余裕があるように見える。
拳銃の方が殺傷力があるように思えるが、そこは日本という立地が幸いしたのだろう。
これでボウガンでなく拳銃だったら、最悪臓器を貫通してお亡くなりになっていた。
それにしても、ボウガンなんて風切音がするし弾速もあくびが出るほど遅い。
あんなの半分寝てても避けられるだろうに。
などと呟けばすかさず、内心から「そんなのお前だけだ」と呆れたような声が響いた。
冗談冗談。私もそこまで人外感性じゃないよ。
心の底で降谷さんとコントをしつつ、気付けば話題は毛利小五郎の警察時代の拳銃の腕前に移っていた。
毛利小五郎が拳銃上手なのは幾度か原作でも言及があったか。
あまり覚えがないが、すかさず降谷さんが表に出てニコニコ笑顔で毛利探偵をヨイショする体勢に入る。
最近はその時その時の2人の気分で表に出る人格を変えている。
私が黙ってる時は降谷さんが顔を出したり、逆に降谷さんが他所ごとを考えてぼうっとしてる時は私が話したり。
フレキシブルに運用することで咄嗟の時も自在に動けるようにするためだ。
「へぇ、本当に凄いんですね毛利先生!」
「いやー、昔のことだよ昔のこと!」
目暮警部の手前珍しく謙遜する毛利探偵だったが、予想外にも表情は鼻高々という感じではない。
やはり仕方なかったとはいえ、かつて人質に取られた妻を撃ったという事実が彼の心に重くのしかかっているのだろう。
降谷さんが内側で若干苦いものを見たような顔で頷いている。
───凄いよな。俺でも警察学校で彼の記録が抜けなかったぐらいだ
───貴方が!?それはまた…意外なところにプロは居るものですね
プライドが高い降谷さんだからこそ、敗北が苦い思い出として残っていたらしい。
正確性という点だけ見れば、表の世界では相当な使い手じゃないか、それ。
ちなみに私の腕前は無惨も無惨、撃っても全弾的から外れる悲しみのそれである。
分かりやすく言うと、ちょっと様子を見に来た次元大介が無言で首を振って帰っていくレベル。
失敬だなぁ。
私は今後の流れについて思案した。
トランプの数字に合わせてカウントダウン方式で狙われていく人々。
13が目暮警部で、12でクイーンの妃弁護士。
次いで11の阿笠博士、だったか。
妃弁護士は私と接点がなさすぎるので守れないが、阿笠博士ぐらいなら私が近場にいても不自然じゃない。
数日のことだろうし、ちょいと張り付いてみるか。
事件の3日後。
ターボエンジン付きスケートボードの整備をしていた阿笠博士のもとに、1人の招かれざる客が現れた。
ピンポーン、というオーソドックスなチャイム音が阿笠邸に来客を示す。
庭の外から漏れ出てくるのは悪意、殺意の類だ。
コナン君も一緒にいるが、流石にこの距離だと感じ取れないらしい。
僕が代わりに出ますよ、と言ってそれとなく場を代わる。
せいぜい無防備に見えるよう、力を抜いて気楽に阿笠邸のドアを開けた。
「開けちゃダメだ!安室さん!!」と、コナン君の叫び声。
鋭く飛来する影。
ああ、遅い遅い。あくびが出るほどスローリィ。
発射されたボウガンの矢を左手で軽く打ち落とす。
掴み取ることもできたが、こんなことで火傷をしたくなかったからな。
バキッという軽い音と共に払われたボウガンの矢が二つに割れ、ドア面に叩きつけられる。
私も素手だが、コレくらいならいくらでも可能だ。
呆然としたコナン君がギョッとした顔でこちらを見た。
「嘘だろ……防げるもんじゃなかったろ、さっきの」
「これなら君の麻酔銃の方が防ぎ辛いぐらいだよ」
「おいおい…」
ドン引きのコナン君を尻目に、犯人はこちらを二度見三度見したあと勢いよくバイクで走り出した。
ハッと我に返ったコナン君が私を押し退けて飛び出す。
「逃すかよ!!!」と修理されたばかりのターボエンジン付きスケートボードのスイッチを踏み、ロケットスタートで後を追う。
私はその後ろ姿と「だ、大丈夫だったかね安室君!!」と泡食って駆け寄る阿笠博士をぼんやり見ながら思考に耽った。
何事かと奥から出てきた灰原さんが不安そうな顔をしている。
───殺します?
───いや、この件は警視庁に任せるべきだ。俺達が手出しするほどのことではない
───そうですね。やるならコナン君のサポートぐらいでしょうか。とはいえ……僕は手加減が苦手なんですが
警視庁に状況を軽く電話しながらコナン君の後を追って走り出す。
阿笠邸の塀を乗り越え、そのまま三角飛びの要領で屋根へと駆け上がり、家々の屋根と樹木と塀とをつたって全速力で移動する。
流石にターボエンジン付きスケートボードの速力には敵わないが、ここは住宅街だ。
入り組んでスピードの出し辛い場所で、かつ追跡しながらとなると本来の性能の10分の1にもならないはずだ。
コナン君のスケボーならではの特徴的なエンジン音を聞き分けながら追いかければ、その小さな後ろ姿はすぐ見つかった。
「よっと、犯人は見つかったかい?」
「いま少年探偵団の奴らに電話…って、今どこから降りて来たあんた!?」
「どこって、この信号機の上からだけど」
近隣住宅の屋根から信号機を足場に降りれば、コナン君にまたドン引きされてしまった。
君だって劇場版でおんなじようなこと沢山やってるだろうに。
そうして気が逸れたのも束の間、繋がった探偵バッジからの通信を聞いてコナン君は鋭く目を細めてみせた。
「やっぱこっちか!それと、アンタは阿笠博士についててくれ。本来狙われたのは阿笠博士の方だからな」
「そんなご無体な。せっかくここまで来たのに」
「犯人をアンタに殺されちゃ敵わねーからな!大人しくしてろ!」
「うーん、もしかしてだけどさ。コナン君てば僕のこと無差別殺人犯だと思ってる?」
内心の降谷さんとともに「あくまで仕事だからな!」「そうだそうだ!差別反対!」とシュプレヒコールをするも、声には出さず。
遠くなっていくコナン君の後ろ姿を見送った後、すごすごと阿笠邸に帰るのであった。
ちなみに、阿笠邸に帰った後目暮警部から「犯人を追っただと!?バッカモーン!!!」と雷を落とされた。
殺されていたかもしれないんだぞ!と怒りの中に確かな心配の見える説教をされては、私も反論の術がない。
ボウガン持った殺人犯1人なんて、私にとって可愛いシマリス君程度でしかないのに。
おお、愚かなシマリスよ。
覚えておけ。海洋娯楽施設アクアクリスタルで殺さない程度に捻り上げてやるからな。
なんて、あらぬ方向に憎しみを向けつつ、今日の夕日は沈んでゆくのであった。