バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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風見さんと飲み会

 

 今日は難しいミッションを終わらせてきた風見さんを労っての飲み会である。

 

 ここはルパンに教えてもらったいい店であり、料理もサービスも超一流。

 つまり、何を喋っても問題ない場所となっている。

 値段もわりかし高額だが、まぁそれはそれ。

 私の奢りのつもりだから問題なかろう。

 

 風見さんが恐る恐ると言った調子で革張りの上品な丸椅子に座り、私へとオドオドとした視線を向けた。

 

「その、あの後捜査一課との関係は…どうなりましたか?」

「問題ないさ。佐藤刑事も高木刑事も、私情を仕事に持ち込むような人間じゃない───つまり私情では全然敵対関係ってことですけどね───余計なことは言うなよ」

「そ、そうですか」

 

 私たちの特異性にもすっかり慣れたのか、私たちが二人同時に喋る姿もとくに突っ込まずに風見さんは頷いた。

 内心では色々思っているようだが、そこまで気にすることはあるまい。

 

 カクテルをいくつかと、運ばれてきたおつまみを口に含む。

 うん、いい味だ。

 ウイスキーにはチョコレートも合うとは聞いていたが、カカオのコクがウイスキーをよく引き立てている。

 

 隣では、洗練された店の空気に当てられた風見さんが精一杯かっこよく決めようと背筋をピンと伸ばしてキメ顔をしている。

 面白いかよ。

 別にそんな気を張らなくても自然体でいれば十分なのに。

 

 それから二言三言会話して、ゆったりと時間が流れる。

 降谷さんも私も実にリラックスしているのだが、沈黙に耐えられなかった風見さんがソワソワし出した。

 

 そして、おずおずと私たちに質問を投げかけてくる。

 

「あの……前々から思っていたのですが、『銃弾を弾く』ってどういう意味ですか?」

 

 調書を読んでいると頻繁に登場する文言なのですが、よくわからず…と困ったような顔をして風見さんが肩をすくめる。

 降谷さんがパチクリと瞬いた。

 

「意味って、そのままの意味だが。隠語でも暗号でもなんでもないぞ」

「に、人間に銃弾は弾けませんよ?野球ボールじゃないんですから」

「コツを掴めば一緒さ。とはいえ、俺も何とかタイマンなら視線と相手の呼吸に集中して実行できるという程度だが」

 

 「タイマン……呼吸……」と風見さんが見事な宇宙猫顔を晒している。

 それに気付かず、忸怩たる思いを隠さず降谷さんがスコッチウイスキーを一口含んで吐露する。

 

「やはり戦闘ヘリからの一斉掃射に耐えられるのは安室の特権だな。俺にはとても真似できそうにない」

「いやいやいや、タイマンで避けられるのも可笑しすぎるんですが」

「そんなことはない。なにせ毛利探偵の一人娘…毛利蘭もこの間やっていたことだし」

「!?!?!?」

 

 そうなのだ。

 近くにあった骨董屋を襲撃した銃持ちの犯人が、蘭ちゃんを人質に取ろうとして銃口を向けた時に見事やってのけたのを私たちは確認している。

 さすがは元祖銃弾避けの蘭ちゃん。

 見事避けた上で相手を叩きのめし、後で私に「髪が焦げちゃったんですよ!!」と愚痴っていた。

 

 どこから突っ込んでいいか分からないという顔をした風見さんが絶句して哲学に思いを馳せている。

 

 「あれだけ深層心理で練習したのに、こうもあっさり女子高生に達成されるなんて俺もまだまだだな」なんて降谷さんがひとりごちているが。

 普通に蘭ちゃんが人外すぎるだけである。

 

「な、なるほど…勉強になります……」

「───タイマンでの拳銃弾きは正直武道の延長線上、動きを読み切るに尽きますからね。経験値がものをいう感じです。それに対して、」

 

 言葉を切って、至極高級なスコッチウイスキーを舐めるように味わう。

 

 しかし、ちょっと風見さんがハイペースかな?

 美味しそうなちょっと重めのおつまみを頼んで、私は隣の風見さんを観察した。

 あまりに酒が回りすぎるから、まず胃になんか入れた方がよかろう。

 ひとまず私の方で注文して、「俺のおつまみが食えねぇのか」論法で押し付けるのが最善か。

 

「あー、死角からの攻撃やサブマシンガンなどの一斉掃射については、勘がものを言いますからね」

「勘……ですか?」

「ええ。相手の悪意、空気の違和感、ゾワっとした感じ。そういった勘としか言いようのないものが必要不可欠です」

「なるほど???」

 

 風見さんは深遠な哲学の講義でも聞いているかのような顔をしている。

 

 そういえば、降谷さんと魂を二分したから、理屈の上では降谷さんもサブマシンガン避けが可能なんだよな。

 魂の感性みたいなものが共有されているわけだし。

 

 おっと、またしても風見さんが酒に手が伸びている。

 ちょうど注文したパスタが届いたので、半分を取り分けて風見さんに押し付けた。

 ホタテとレモンのペペロンチーノだ。美味しそうだろう。

 

「───食え。俺に一皿は多いからな」

「は、はいっ!いただきます」

 

 降谷さんがわざと命令口調で言えば、勢いよく風見さんはパスタを口にかっ込んだ。

 そんなに急いで食べなくてもいいのに…というか緊張しすぎ。

 大丈夫?この飲み会、慰労のつもりだったけど8割罰ゲームになってない?

 

 どうにも風見さんの酒のペースが早いのでよく観察してみれば。

 そこには、自分への疑念や自己嫌悪というものが読み取れた。

 

 先ほどの話題からして、「自分は降谷さんの部下として相応しいのだろうか」「もっと自分を高めなければ」といったところだろうか。

 うーん、降谷さんといい風見さんといい、似たもの上司部下とはこのことだ。

 

 などと考えたのが伝わったのか、降谷さんにじとりと睨まれてしまった。

 恨みというか恥ずかしそうな視線は、降谷さんも自覚があるが故のこと。

 むっつりとしたまま降谷さんは咳払いした。

 

───ごほん。まぁ、風見が己の力不足を危惧するのもわかる。お前は規格外中の規格外だからな。

───それをいうならゼロも似たようなものだと思いますよ。少なくとも、頭脳の出来では逆立ちしたって敵いませんから

 

 なにせ思えば通じる関係になったというのに私たちがこうして内心の言葉を紡いでいるのは、私の思考がお粗末極まりないからだし。

 

 魂を分つことで、私たちは思いがダイレクトに相手に通じる状態になっている。

 お互いにテレパシーを開通させたようなものだ。

 思考が直で相手の手元に届けられるのに、なぜ私たちは未だ言葉でやりとりしているのか。

 

 それは、私の思考は雑然とし過ぎていて、届いたところで降谷さんが宇宙猫になるだけのどうしようもない代物だったからだ。

 

 「なんて???」「つまりどういうことだ?」「結論から言ってくれ」とは、この間今日の予定について降谷さんに聞かれた時に返した答えへのコメントである。

 思考がうるさくてすまんな……。

 

 対して、降谷さんの思考は理路整然として常に分かりやすく整理されて理解しやすい。

 

 常時の思考レベルでこんなにも違うとは、IQが離れすぎると会話が出来ないなんて俗説も真実味を帯びてしまうというものだ。

 

 と、少し思考にのめり込みすぎてしまったらしい。

 風見さんがパスタを食べながらカパカパとバーボンを呷っておる。

 ハイペースすぎる。これでは潰れてしまうだろう。

 

───どうします?ひとまず風見さんを止めます?

───いや、俺の方が無礼講と言ったんだ。気の済むまで飲むくらいはさせてやろう

───……そうですね。酒の力を借りたくなる夜だってありますからね

 

 公安なんて大変な部署に勤めているんだ。飲みたい日だってあるだろう。

 優しく風見さんを見守っていると、風見さんがこちらの視線に気付いて雑絡みをしてくる。

 

「聞いてましかふうやしゃん…」

「───ええ、聞いてますよ。風見さんはいつも頑張っていますね」

 

 そろそろ風見さんの呂律が怪しくなってきたようだ。

 もう少ししたら完全に落ちる前にお暇するべきだろう。

 

 「降谷しゃんは無理を通しすぎるんでふ」「いつもいつも…」「わたしがどえだけ苦労してうか!」と本音を一つずつ解いてゆく。

 こうして本音を漏らす風見さんに、降谷さんも優しく微笑んで慈しんでいるようだ。

 いつもは厳しい関係でも、確かな絆があるということなのだろう。

 

 しばらくのち、限界だと判断した降谷さんが立ち上がって風見さんを介抱する。

 

「ほら、水を飲め。歩けるか?」

「わたしらって頑張ってるんでしゅよ…うう…」

「酔いが回るのが早いな…酒に弱いタイプか?───かもしれませんね。家はわかってますし、僕らで送って行きますか───だな」

 

 「まったく、世話の焼けるやつだ」と降谷さんは苦笑した。

 苦笑しながらも嫌そうではないということは、これはこれで、降谷さんも風見さんのことは可愛がっているということなのだろう。

 

───今度風見さんにも銃弾除けの授業をしますか

───それはいいな。任務での生存率も関わるし。だが場所をどう確保するかだな。サバゲー用の山を借りるか

───それが一番堅いですかね

 

 などと話しながら、すっかり酔っ払ってヘロヘロの風見さんを肩に担ぎ、私たちはタクシーを呼んだのだった。

 




・風見さん
昨夜の記憶が…途中から…無い……どんな無礼を働いてしまったんだ…。
そして急に呼び出されて拳銃の弾避け訓練に参加させれる定めにあるので、余計に顔が真っ青になる人。
これでも全幅の信頼を置かれている部下なのである。
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