バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
祝!宝石花にまつわる仕掛けの全工程完了!
卵形暗号宝石花80個、ついに完成!
予想より早い仕上がりは、降谷さんとのシンクロ率が上がって細かい作業への適性がより上がったことによるものだ。
これらは今日以降順次オークションに出される予定となっている。
事前に不二子さんが宣伝していることもあり、その光を取り込んだ時の煌めきと美しさは富裕層を中心に一大ムーブメントとなっているほどだ。
きっと価格も高騰することだろう。
宝石花洞窟の作成は結構前に完了済み。
五エ門師匠の紹介で来たそこは、奥の奥まで蛍石の原石が洞窟表面に突き出した実に神秘的な空間であった。
そこにある蛍石を一心不乱に彫り進め、広大な地下洞窟に花々の咲き誇る一種の楽園と化した。
奥まで進むと高く天井に空いた穴から差し込んだ太陽光がこぼれ、それはもう美しい景色になるのだ。
また、夜になれば太陽光を蓄えた蛍石がぼんやりと明るさを灯し、一種異界のような幻想さを醸し出す。
暗号の中間地点となる美術屋敷の竣工も済んでいる。
こちらは住む人間がまだ決まっていないので、これから勧誘しに行くところである。
「というわけで、ヒロと明美さんには邸の管理を任せようと思ったわけだ」
「どういうわけだ???」
降谷さんがさらっと鍵を渡せば、「いやいやいやいや」と景光さんが首を振った。
そりゃそんな反応にもなるわな。
降谷さんは「別に鍵を渡せばそれで済むだろ」とか言ってたが、済むわけないんだよなぁ。
現在地は完成した屋敷前。
車で二人を連れて東京のやや郊外までやってきたわけだが。
景光さんはひたすら困ったように眉間に皺を寄せている。
目の前には凄まじい豪邸が一軒。
それを「今日からここがお前たちの家だ」とか言われてはいそうですかとなるわけもあるまい。
断られたことに疑問符を飛ばしながら降谷さんが向き直った。
「なんでだ?確かに彫刻の装飾は多いが、最低限家が痛まないよう住んでくれればいいだけだし、都心からも程近い。今いる場所より志保さんとも会いやすくなるぞ」
「それは魅力的……じゃなくて。こんな豪邸受け取れないって言ってるんだ!」
豪邸は、新築の300坪に建てられた和モダンの平家だ。
大きな日本庭園風の庭には手入れされた美しい松の木も植えられている。
駐車場には前祝いとしてプレゼントする予定の日本産高級車も停まっている。
もちろん、二人で維持するのはあまりに大変なのでハウスキーパーを手配済みだ。
こちらの雇用費は私たちが負担するのでなにも心配はいらないだろう。
また、地下には広大なからくり仕掛けの空間が広がっている。
その奥に工藤優作が用意した光と宝石を使った世紀の暗号が仕掛けられていて、基本そちらは生活空間ではない。
地下は危険だし掃除ができないだろうから、それを考慮して作ってはいるが…。
念のため一年に一回ぐらいは様子を見てほしいと伝えておかねばなるまい。
「受け取れないって、なんでだ?」と困惑した降谷さんが首を傾げている。
あまりのことに、ぽやっと口を開けたまま一言も発さず屋敷を眺めている明美さんが若干哀れだ。
「なにが不満なんだ?俺は日本邸宅が好みなんだが…お前は洋風の方が良かったか?」
「金銭感覚狂いすぎだろ…普通家族でもない他人にこんな大豪邸任せるとか正気じゃないぞ」
「お前だから任せるんだ、ヒロ。もちろん、生涯住んでくれていい。働かずにこの家の面倒を見てくれるだけでもいいし、もし気晴らしに働きたいんなら仕事は斡旋する」
「うーんこのままだとゆりかごから墓場まで面倒見られそうな予感」
はっとようやく我に帰った明美さんが、今思いついたとでも言うように大声を出した。
「零君、ペットは飼ってもいいかしら!?おっきいワンちゃんを買ってみたかったの!」
「もちろん。床や家具が汚れたら変えればいいし、その辺はなにも心配いらないさ」
「っよし!」
明美さんは小さくガッツポーズをした。
これには私たちもほっこりである。ええんやで…ペットは金かかるだろうから、金銭的援助もするやで…。
───ペット用のドッグランも用意した方がいいかもしれませんね
───床も一部柔らかい素材に張り替えさせるか?犬にフローリングは酷だろうし
───ですね
などと会話していると、明美さんはひたすら困惑する景光さんへとずいと迫った。
「ヒロ君、私としては賛成だわ。この家には色々と事情があるって話だし、口の硬い屋敷番と思えばいい仕事じゃない」
「いやまぁ、それはそうなんだが」
「零君、その屋敷の事情って、危険もあるのよね」
「………ああ」
降谷さんの言葉に、景光さんが目を見開く。
流石に個人の仕掛け相手にそう強硬なことはしないだろうが、将来的にお宝を求めてやってくる輩がいないとも限らないからな。
あの難易度だと半世紀は先だと睨んでいるが。
だからこそ、信頼のおける景光さんを配置したいと私たちは考えている。
ふっと笑って、ようやく踏ん切りがついたらしい景光さんが口を開いた。
「なるほど。そういうことなら任された。それで、一体どんな厄ネタの眠っている屋敷なんだ?」
「その前に中に入ろう。立ち話も何だろう」と言って私たちはそのまま新築の引き渡されたばかりの家へと入っていった。
中にはどれも一級品の家具が並んでいて、その中には宝石彫刻がインテリアのように適度にさりげなく置かれている。
きちんと水回りや白物家電は最上位モデルを全て揃えてある。
新しい高級フランスベッドもあるし、当座を凌げるようにアメニティの類も用意した。
あとは人間がINするだけにセッティングしてあるため、気分は民泊である。
ここにずっといてくれてええんやで。
一応全てが高級品なので、セキュリティの面もバッチリ整えられている。
もしもの時は地下施設の方に避難すればよっぽどのことがない限り安全だろう。
廊下右手に見える居間に胡蝶蘭を模った大きな水晶花が飾ってある事に気付いたらしい。
その立派な装飾を見て、景光さんがほへぇと口を開けた。
「これ、たしかゼロが作った奴だろ?凄いな…」
「綺麗…!壊しちゃったら怖いわ」
「いいさ。また彫ればいいだけの話だ。だろ、安室───ですね。気にしないでください」
一部暗号に関わる宝石花だけ気をつければ、あとは壊れたら捨ててしまっても構わないくらいだ。
客間へと案内して、私たちは彼にじゃらりと各鍵を渡してから、改めて向き直った。
なお、これに乗じて車の鍵もそっと渡しておくものとする。
セコいというなかれ。
法的手続きのために書類を色々書いてもらうついでに説明を少し。
ようは私たちのロマンの塊であること、ここがお宝の中継地になっていること、それらは全て工藤優作氏の作った暗号で隠されていることを景光さんへと伝えていく。
彼は頭が痛いみたいな顔をして手のひらで顔を覆った。
「ゼロ、ほんと自由になったよな…最近変な電話もかけてくるようになったけど」
「悪かった。俺も色々あったんだよ」
「だけど『生きてるか』なんて、俺はどう答えれば良かったんだよ。死んだふりもしてるし、あえて言うならやや生きてる…?」
むむむ、と唸る景光さんも大概マイペースだ。
降谷さんの深夜のヤンデレ鬼電も半分以上伝わってなかったみたいだし。
そんなわけで、家の引き渡しは無事に済んだのである。
どさくさに紛れてこの家と共に多額の金の贈与もしたし───巨額を振り込んでおいたし、申告書も紛れ込ませておいた───贈与税を引いたとしても、この家の税金関係で困ることはないだろう。
ただ住まわせておくだけにしても良かったのだが、安室透の名義から拠点の位置がバレるのはロマンが薄れるからな。
あとは卵形宝石花が全て分散したら、ルパンに暗号仕掛け完成のお知らせを送るだけだ。
これでこの間のお礼になればいいな、と私たちはそっと未来に含み笑いをしたのだった。
後日、明らかに桁のおかしい通帳の額を見て景光さんが鬼電をかけてくるのは、また別の話である。
・宝石彫刻屋敷
家のいたるところに宝石彫刻が置かれた美術館みたいな豪邸。
卵形宝石花の暗号を解くとこの屋敷の位置が分かり、屋敷内の彫刻の暗号を解くと地下が開き、地下の全ての暗号を解くとNo.0の宝石花の存在が示唆され、ルパンの持つNo.0の宝石花の意味を踏まえて暗号を全て解き直すと宝石洞窟の位置がわかるという仕掛けになっている。