バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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誰も見てはならぬ

 

 あれから、ピンガは身の安全を考慮してしばらくは公安預かりとなった。

 

 勝手に連絡を絶ってうろついているのを組織のメンバーに見られたら間違いなく殺されるからな。

 ピンガもそれには同意して、おとなしく公安の人員に見張られて隔離されているらしい。

 

 あとは直美・アルジェントのことが残っているか。

 こちらは老若認証のネットの開通式が一週間後に控えている。

 

 組織もピンガが突然連絡を絶ったことに裏切りを確信するまで時間がかかるだろうから、組織が動くのはしばらく先になるだろう。

 

 コナン君はと言えば、風見さんに付き添われてパシフィックブイへと無事入ることができたらしい。

 あの濃ゆい開発者メンツならば、きっとすぐに仲良くなることができるだろう。

 

 そして私だが。

 野暮用で、都内にある泥惨会の現在の主拠点に来ていた。

 

 元々計画してあった泥惨会殲滅作戦だ。

 あの「高木と伊達と手帳の約束」で触れたが、組織の方でもやはり動きが目に余ると言うことで私への殲滅命令が下っていたのだ。

 

 ピンガの一件でトラブルはあったが、任務は滞りなく行わなければ不審に思われるのは間違いないからな。

 

 和の日本屋敷といった面持ちのそこは、広い敷地内にたくさんの気配がひしめき合っていた。

 緊張感に肌がピリピリとする妙な気配だ。

 

 どうやら事前に私がカチコミする情報を入手していたようだ。

 どこの下っ端が情報を漏らしたんだか。これは適当に吐かせて組織に報告しないといけないな。

 

 拠点は厳戒態勢で、拳銃や刀などで武装したチンピラ達が表をうろついている。

 大きくて立派なドーベルマン3匹もクンクンと匂いを嗅いでいて、一般的な人間であれば即座に突入を断念することだろう。

 

 が、残念。

 相手は私だ。ウルフドッグ、血濡れの殺人鬼である。

 

 鉄爪を翼のように広げて近づく私を目に止めて、下っ端達が顔を青ざめさせた。

 

「きっ、来たぞ!!!本当に、狼犬が来た!!」

「馬鹿野郎!行け!」

「囲んで撃っちまえば問題ねぇ!!やるぞ!」

 

 そう言って拳銃持ちが私に銃を向け、釘バットや刀で武装した輩が私をぐるりと囲んだ。

 

 うーん、完全に舐められているようだ。

 サブマシンガンも戦闘ヘリもミサイルランチャーもないとか、肩透かしにも程がある。

 

 降谷さんが冷徹に目を細めて私に忠告する。

 

───内部の人間が裏口から出ようとしているな。元々逃げ出せるように準備していたらしい

───ですね。まあ、この程度の輩を片付けるのに2分もかかりませんよ

 

 どうも、あの合一から降谷さんも私と同じレベルで気配の察知をできるようになったっぽいんだよね。

 おそらくは置いてきた魂の半分を使って感覚の共有みたいなことができるようになったのだろう。

 いいことだ。

 不意打ちを防げるし、頑張れば戦闘ヘリの一斉掃射だって防げるように…。

 

 間髪入れず、「無理」という思考が降谷さんから飛んできた。

 そっか……無理かぁ……。

 

 ともあれ。

 

 私は嗤い、一歩踏み込んでまず周囲の下っ端へと切り掛かった。

 日本刀やらバットやらで殴りかかって来るものの、軽く刃ごと両断してやればあっさりと処理できた。

 頭蓋骨ごと縦に割れた被害者が、噴水のように血飛沫を撒き散らして倒れ伏す。

 下っ端達はその凄惨な有様に狼狽えたようで、叫んだり慌てて逃げようとしたりと戦意喪失の状態だ。

 

 「来るなぁぁああ!」と怯えた拳銃持ちのアロハシャツ男が至近距離から銃を乱射する。

 それを全て丁寧にアロハシャツ男自身へと弾き返してやれば、全弾見事に男の頭部へと命中。

 男は白目を剥いて痙攣して倒れ込んだ。

 

 そのようにして2分もかからず───30秒ほどだろうか───全員を始末し終えることができた。

 いいタイムだ。

 

 ちなみに、番犬3匹はキュウンキュウンと怯えて伏せのポーズを取ったまま動かない。

 私の殺気に怯えたらしくて、哀れなほどヒィヒィ鳴いている。

 

 よかった、かかってきたら殺さねばならなかったからな。

 武力の差を分かっているいい子達だ。

 

 犬はそのまま放置して、急ぎ屋敷の裏側へ向かう。

 すると、そこには車で逃走しようとしてた老人連中が驚愕の表情でこちらを見たようだった。

 逃げるの早ェよ。急いだのにギリギリだったじゃんか。

 

 運転手がアクセルを踏み込もうとしたので、慌てて車二台ともタイヤを切り捨ててパンクさせる。

 勢い余ってホイール諸々切り裂いてしまったが、走らないならそれで構わないだろう。

 

 では、メインディッシュをいただきます。

 

 後部座席のドアごとぶち抜いてまず一人。

 筋肉質な全身昇り龍の刺青をしたオッサンが胸から血を吹いて事切れる。

 

 続いて後ろに並んでいた車のフロントガラスを切り裂き、正面にいた運転手の首を刎ねた。

 返り血が盛大に私の服へとかかり、血まみれで鉄臭い。

 

 後部座席から決死の形相で恰幅のいい老人が一人、転がり出て逃げようとする。

 さっき前の車に乗ってた男が泥惨会のボスで、こいつが相談役だろう。

 逃すわけにはいかないので、背後から心臓を抉り取って引き摺り出す。

 

 まだゆるく鼓動する心臓を顔に近づけ、ハイチーズ。

 新鮮な心臓を掲げて軽く自撮りする。

 きちんと死体も映るように画角は工夫した。

 

 これはジンへの報告メールに添付する画像だからな。

 これ一本で報告になるのは楽でいい。

 

 報告メールを送れば、自撮りに使った心臓はぽいと捨てる。

 本来私にそんな趣味はないし、心臓なんて持ってても何も嬉しくないからな。

 あとは真面目に掃討と洒落込もうではないか。

 

 お偉方の絶叫を聞いて、ワラワラと激昂した下っ端達が湧き出て来る。

 

 「頭領!!!」「テメェ、ぶっ殺してやる!」「犬コロ如きが調子乗ってんじゃねぇ!!」などなど。

 

 出てきた人員をバッサバッサと切り倒してやれば、身の程というものをすぐに思い知ったようだ。

 すぐに蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。

 逃げる人間は適度に殺し、私は屋敷の奥へと進んでいく。

 

 一応中に立てこもって隠れている幹部がいないかの確認だけはせねばならないからな。

 

 気配察知を駆使して、一人ずつ隠れている下っ端とかを始末していく。

 そんな押入れの中とかに隠れても…私には丸わかりなんだよなぁ……。

 

 と、そこで私は動かない気配が一人、地下に残っていることに気がついた。

 

 まさか地下通路でもあるのか?

 幹部レベルを逃したら面倒だ。

 私が周囲を適当に物色すると、地下への入り口らしい階段を発見することができた。

 

 入り口は本来隠されているのだろうが、ドタバタから開きっぱなしで放置されていた。

 周囲には見張りの気配は無し。

 

 入ってみると、地下は軽い物置になっているようだった。

 昔は何か非合法なことに使われていたようだが、組織の縮小に伴い、今では単なる物置になっていたようだ。

 

 中は真っ暗だ。

 埃っぽい空気が喉にイガイガと刺激をもたらす。

 

 警戒する気配が私の様子を息を潜めて伺っている。

 どうしてかそこから一歩も動かないようだ。

 流石にここまで光がないと、顔の方は見えない。

 

 私がまず入口の電気をつけると。

 

 不意につけられた明かりに瞬いた気配の主は、私を目にして大きく声を上げた。

 

「貴方、安室さん!?」

「……佐藤刑事ですか、どうしてこんなところに?」

 

 なんと驚くべきことに、その気配は椅子に縛り付けられた佐藤刑事だったらしい。

 私の血でぐしょ濡れの姿に、まず心配の視線で眉間に皺を寄せた。

 

「貴方それ、血でしょう!?大丈夫なの、どこか怪我をしてるんじゃ…!」

「いえ。これは全て返り血なので問題ありませんよ」

 

 「返り血……?」と佐藤刑事は不審そうに眉を顰めた。

 

 私はまず、縛られていた佐藤刑事の縄を鉄爪で切り落とした。

 そして未だ血を垂らす鉄爪に佐藤刑事が目を見開く。

 

「貴方……」

「ひとまずここを離れましょう。後片付けの人員が到着すれば面倒です」

「待って、まだ何も貴方から聞いてないわ!!」

 

 佐藤刑事の言葉を無視し、彼女の手を引いて地上へと戻る。

 

 そこには、私が先ほど殺し尽くした凄惨極まる光景が広がっていた。

 首を切り離されたもの。

 体を縦に三つに割かれたもの。

 胸を一突きにされて血を滝のように吐き出したもの。

 

 廊下は鮮血がこびり着き、真っ赤に染め上げられていた。

 

 佐藤刑事が顔色を真っ青にして私へと振り返る。

 

「まさか、これ…」

「それで、どうしてあんなところで捕まってたんです?もしかして、先日の誘拐事件に関連して余罪がないか調べてたら…みたいな感じですか?」

「貴方……なんて、ことを」

 

 どうも衝撃がひどすぎて会話できる状態じゃないらしい。

 嘆息して私は首を振った。

 そしてメモ帳を一枚切り取り、そこに風見さんの電話番号と近場の公衆電話の位置を記した紙を渡した。

 

「帰りは少し歩いてここを離れて、その上で風見さんを呼んでください。電話番号は渡しておきます。これ以上ここに残れば命の保証はできません」

「……貴方が殺すっていうこと?」

「そうせざるを得ないかもしれません」

 

 佐藤刑事の視線は鋭い。

 ……仕方ない、か。

 

 するりと目を細めて本気の殺気を叩きつける。

 恐怖に怯える瞳は、しかししっかりと私を捉えて離さない。

 

 まったく、ここにいたチンピラどもの誰よりも精神力がある人だ。

 怯えて逃げようとしてくれれば楽だったのに。

 

 内側で降谷さんが満足そうに「警察官かくあるべし、だな」と笑っている。

 やっぱ降谷さん、佐藤刑事のこと気に入ってるんだよなぁ。

 気に入っているのにあの態度。これがわからない…。

 

 確かに。

 この局面ならば殺した方が早いのは確かだ。

 

「けれど、僕はそうしたくない。だから早くここを離れてください」

 

 真摯さを含めて私が視線を合わせれば、佐藤刑事は息を呑んだようだった。

 

「……貴方は人殺しよ」

「ええ。否定はできませんね」

「………」

 

 何か痛みを堪えるような顔で、佐藤刑事は私に背を向けた。

 

 それでも何も言わないのは、彼女とて私が公安の仕事としてそれを行なっていることぐらい分かっているからだ。

 許されざる行いが、それでも国の選択として肯定されていることを知っているからだ。

 

 実際、私は行なった犯罪行為の全てを事前に報告をあげている。

 今回の件とてそれは同じ。

 私の大量殺人は、警察組織に黙認されたものなのだ。

 

 所詮指定暴力団なんて皆殺しにされたところで問題ないと判断されたか。

 あるいは私という武力を繋ぎ止めるためには、多少の犯罪は必要経費だと妥協されたか。

 それはわからない。

 

 被害人数46人。

 その深夜の事件は、組織同士の抗争として処理された。

 

 私の名はなく、ただ組織の暗躍の結果だけがそこに残ったのだった。

 




リクエスト「佐藤刑事がウルフドッグの仕事現場を目撃する」より。

•佐藤刑事
あまりの惨状に内心荒れ狂っている。
あの公安は本当に殺人鬼かもしれない、でも私を殺したくないと言っていた、殺し過ぎている、でもそれが仕事だったら?
実は「伊達と高木と手帳の役坂」の追加捜査中に拉致監禁されていた。
きちんと救助後は風見さんを呼んだようだ。
車内で一言二言、風見さんと会話した。
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