バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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14番目の標的③

 

 トランプの11で狙われたのは阿笠博士のはず……なのだが。

 私、即ち安室透も狙われていたことになってしまった。

 

 警察に事の顛末を話したところ、安室の室に十一の漢字が含まれていたと判断されたのだ。

 実際、犯人としても私と阿笠博士どっちが出ても良かったのかもしれない。

 なにせこの襲撃は本命から目を逸らさせるためのブラフでしかないからな。

 

 なお、素手でボウガンの矢を払ったことに関しては「そ、そんなのできるものなんですか…?」と白鳥警部補にドン引きされた。

 対外的には偶然振り払った手が矢に当たって大事には至らなかった、ということで処理されたようだ。

 嘘じゃないんだがなぁ。何故みんな化け物を見る目で私を見るんだ。

 

 と、そんな感じですっかり当事者になってしまった私は、その立場を利用して目暮警部達と行動を共にすることに成功した。

 

 次はトランプの10、プロゴルファーの辻弘樹という人だ。

 

 辻氏が趣味で乗っているヘリコプターの離着陸場に駆けつければ、彼は青天の霹靂といった顔で私たちを出迎えた。

 

「そんな、このくらい大丈夫ですよ。十が僕だという話かもしれない、という程度なんでしょう?」

「そうは言いますがね…」

 

 目暮警部と押し問答している。

 

 楽天的なのもプロスポーツ選手として必要な資質かもしれないが、この場合死んでも知らんぞ。

 「万が一のため、僕と目暮警部を後部座席に乗せていただけませんか?」と妥協案を打診してみれば、辻氏も渋々頷いた。

 

 ヘリの操縦を中止した方が間違いなく良いんだが……。

 まぁ、中止したところで別の方法で狙われるだけだから、ここで処理しておく方が楽か。

 

 ヘリコプターの後部座席に乗り込めば、コナン君がしれっと助手席に乗り込んでいた。

 そしてしーっ、と内緒話のポーズ。

 私は小さく頷いて黙ったまま窓の外を見つめることにした。

 

 ちなみにだが、毛利探偵は地上で白鳥警部補と一緒に目的地へと先回りしている。

 「パスパスパス!安室、代わりに乗れ!」と高所恐怖症を全面に出しておられたからな。

 呆れたような目暮警部の視線は冷たかったが、それなら仕方ない。

 

 さてはて、時を早めて離陸より30分。

 

 案の定、目を押さえて蹲る辻氏は光に過敏に反応して苦しんでいた。

 無論、目も開けていられずまともに運転もできない。

 

 急速に安定性を失っていく機体に、コナン君が慌てて叫んだ。

 

「安室さん!たしか飛行機とか運転できるって言ってたよね!?」

「ああ。ヘリコプターなら僕、免許も持ってるんだよね。最近だと半年前に飛んだばかりかな」

「なら辻さんと代わってあげて!犯人の仕込んだ薬のせいで目が開けられないみたいなんだ」

 

 「こ、コナン君何を言っているのかね!?」と動揺する目暮警部を置いて運転席に座る。

 目を閉じたままの辻氏には助手席に退いてもらった。

 

 車の運転は苦手だが、空を飛ぶものはまだ比較的何とかなる。

 どちらかと言えば専門知識に近い分野になってくるから、個人の感性によらない部分が大きいからだ。

 

「大丈夫、辻さん!?」

「あ、ああ。でも眩しくて目が開けられない…!」

 

 苦しそうに呻く辻さんに、私はそういえば確か、と言葉を落とした。

 

「散瞳剤かな」

「僕もそうだと思う。犯人に仕込まれたんだ」

 

───悪質だな。俺達がこのヘリに乗らなければ、間違いなくヘリは墜落していた

───そして下にある住宅街に直撃していた、と

───やはりテロの芽は早く摘むべきだったか

───仕方ありませんよ。まさかこんな単なる個人的な殺人犯がこんな大胆な手を使ってくるとは思いませんから

 

 目暮警部が帽子を押さえながら叫ぶ。

 

「サンドウザイとはなにかね!?」

「瞳孔を拡散させるための医療用薬品です。その系統の薬品を目薬に混ぜられたんでしょう」

 

 出発前にさしていた目薬が悪意ある人間によって差し替えられていたのだろう。

 目暮警部がスマホで救急車を呼ぶ中、私は出発したヘリポートへと機体を進ませた。

 

 辻氏はその後病院に運ばれて行った。

 内心で深刻な顔をした降谷さんが、「万が一の時は許可する」と呟いたので「了解」と答えておいた。

 鉤爪を準備しないとな。

 

 

 

 

 場所は移って海洋娯楽施設、アクアクリスタル。

 

 招待客として集まった4人の名前を聞き、コナン君は怜悧に目を細めた。

 どれも名前に数字が入っていたからだ。

 降谷さんも「罠だな。ターゲットを一箇所に集めて纏めて殺害しようとしているんだろう」と暗い表情だ。

 

 中に入れば、豪華な内装がお出迎えしてくれた。

 

 高級ホテルのロビーのように広々とした空間に、巨大水槽を用いた熱帯魚の展示が涼やかさをもたらしている。

 展示用のスーパーカーは冴えるような赤。

 金持ち専用の高級ラウンジみたいな場所だが、それに喜んでいるのは事情を知らない招待客ぐらいのものだ。

 

 軽く目配せした目暮警部と毛利探偵が、素早く内部の確認に走った。

 不審人物が潜んでいないかの確認のためだ。

 

 その様子を見送って、コナン君にこそっと耳打ちする。

 

「僕の感覚だとここには特に誰かが潜んでいる感じはないなぁ」

「いや、部屋に隠れ潜んでる犯人の気配が分かるわけねーだろうが」

「僕、この手の気配には敏感でね。敷地内に潜む人数だってわかるよ?」

「嘘つき」

 

 だから嘘じゃないもん!!!

 

 まったくダメな大人を蔑むかのような顔のコナン君に、降谷さんと2人してヴッとダメージを受けた。

 その顔はよすんだ!

 子供にそんな顔で見られると思うと、柔らかいハートがズタズタに引き裂かれる心地がするから!

 

 さて、暫くまったりしていれば。

 8の人がブービートラップで仕留められそうになったり、9の旭さんが水槽で無惨な死体となって浮いていたりと色々あった。

 

 原作映画の細かい箇所は覚えていないが、少なくとも助けられる人ぐらいは助けておこう。

 

 と、その瞬間。

 ブレーカーを落とされたか、室内が真っ暗に染まる。

 光の入らない目の潰されたような空間で、それでもぼんやりと光る光源をその場にいた全員が目撃する。

 

 爪だ。

 7番目の女性の爪が、夜光塗料の含まれたマニキュアがぼんやりと光を放っている。

 

 私は無言でそっと女性のそばに張り付いた。

 

 暗闇の中、ぐんぐんと近づいてくるもう一つの影には悪意が満載だ。

 間違いなく女性を殺そうとしている。

 

 その男が女性の肩を掴んで。

 長いナイフのようなものを目一杯振り上げて。

 

 私はその腕を捻り上げ、その無防備な腹に回し蹴りを叩き込んだ。

 ごすっという重い肉の沈む音が耳に届く。

 

 犯人は数メートルぶっ飛んで、設置されたソファの上に落下した。

 そして痛みにもんどりうって転がり落ち、そのまま立ち上がって逃げていく。

 どうやら少し威力が弱すぎたらしい。

 降谷さんに「おい」と不機嫌そうな声で咎められてしまった。失敗失敗。

 

 まあ、私にかかれば電気なんて点いてなくとも気配と空気の動きで位置なんてバレバレだ。

 

 犯人も轢き逃げされて味覚障害、なんて実に哀れだが……目暮警部や阿笠博士を狙ったのはいただけない。

 

 ブレーカーが元に戻されたのはそのすぐ後だ。

 光に照らされた剣を持ったままの犯人……ソムリエの沢木公平が己の失敗を悟り呆然と立ち尽くしている。

 

 私はその背後に立ち、にっこり笑った。

 

「貴方ですよね?この一連の事件の犯人は」

「な……んの、ことでしょう?」

 

 沢木氏はこの段階になってもシラを切るつもりらしい。

 表に浮上した降谷さんが見下すような声色で指摘する。

 

「僕にボウガンを撃った人間は右利きでした。犯人と目されていた村上は左利きですから、村上は犯人ではない」

「それだけで私を犯人扱いですか?それに私も命を狙われた被害者だ!」

「別に僕は刑事ではないので証拠をあげつらう必要性も感じませんが……貴方の持っているその短剣、現行犯というには十分すぎる気がしますね」

 

 ぐう、と沢木氏が呻いた。

 こればっかりはどう足掻いても逃げられない。

 推理とかそういう次元の話ではないのだ。

 加えて、殺されそうになった7の女性も騒ぎ立てる。

 

「あたし!あたしそいつに掴まれた時、コルクをポケットに入れてやった!!」

「!!」

 

 ポケットから出てきた彼女の描いた絵付きのコルクに、沢木氏は醜悪に顔を歪ませた。

 

 何事かね!?と次々集まってくる刑事達の姿を認めて、もう逃げられないと判断したのだろう。

 短剣を捨て、右手でこの建物を爆破する爆弾のスイッチを───。

 

「させると思いますか」

 

 飛び出して横薙ぎに腕を薙ぎ払う。

 素手なので特別な威力はないが、骨を折りスイッチを手放させるには十分すぎる威力だろう。

 

 ッグァァアアアアア!?!?と骨を折られた絶叫があたりに響く。

 

 状況が理解できない目暮警部達に代わって、コナン君が「あの人が犯人だ!爆弾でこの建物を吹っ飛ばそうとしてたんだ!早く取り押さえて!早く!」と叫ぶ!

 すまんなコナン君、君の推理タイムを奪ってしまって。

 

 Aの予感…キスの予感もキャンセルだ。

 まぁどうせ修学旅行とかで色々機会はあるだろうから、恋人とはそこで楽しんでくれたまえ。

 

 しかし、今回は爪を持ってきたのだが、使う機会がなかったな。

 

 なにせ私が爪を持っていることを悟って、コナン君が凄まじい警戒具合で私を監視していたのだ。

 持ってるだろ、とは聞かれなかったが。

 私のふところに切れそうなまでの鋭い視線を向けてくれば分かるというもの。

 

 いったいどこでバレたのやら。

 

───まあいい。犯人はすでに警察によって捕縛されている。無理に殺害する意味もないからな

───分かりました

 

 冷酷に水面を震わせる降谷さんの言葉に、私は従順に頷いた。

 どうでもいいが、降谷さんちょっと闇堕ちしてね?

 

 うーん、と私は腕を組んでちょっとばかり思案した。

 




次回、赤井さんとの再会
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