バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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祝!300話!


黒鉄の魚影③

 

 本日、急遽組織のメンバーに召集があった。

 どうやら本格的に老若認証を狙うことになったようだ。

 

 第三アジトに集まったのは私たちの他にキール、キャンティ、コルン、ベルモット、ジン、ウォッカ、スタウト。

 ほぼフルメンバーだが、アクアビットとリースリングは任務の都合で来ていないらしい。

 まぁ、彼らは国外がメインの拠点だから、呼び寄せるのも面倒だしな。

 

 アジトの駐車場に集まった私たちを一瞥しジンは上機嫌そうに鼻を鳴らしたようだった。

 

 というか、なぜ駐車場なんだ。ここ蒸し暑いんだが。

 

「制作者の女を攫ってこい、ウルフドッグ」

 

 そして出し抜けにこの発言である。

 相変わらずというか、言葉足らずというか。

 私はきょとんとした顔を作って瞬いて見せた。

 

「僕ですか?」

「ああ。手間をかけて悪いな、ウルフドッグ。以前にパシフィックブイに入ったことがあるお前が適任だろうとRUMから指名があった」

 

 私はふうむと内心で思案した。

 これはRUMからの牽制だな、と降谷さんと頷きあう。

 ピンガが捕まった時点で、直美・アルジェントが狙われていると公安が理解する可能性を考慮しないはずがないからな。

 

 だがひとまず今はジンの話に耳を傾けるとするか。

 私が続きを促すように視線を向ければ、ジンが素直に言葉を続ける。

 相変わらず私には好意的なんだよなぁ。

 

「どうやらピンガの野郎がヘマをしたようでな。本来なら奴の手引きでパシフィックブイに入るはずが、計画がオジャンだ。まあ、あのガキはいつも使えねぇ野郎だったから仕方ねえことではあるが」

「ピンガの奪還には動かないんですか?」

 

 私の言葉をジンは鼻で笑った。

 極上の冗談でも聞いたような凶悪な笑顔だ。

 

「あの浅はかな野郎のことだ、司法取引を自分から持ちかけている可能性が高い。裏切っている可能性のある奴を奪還する意味はねぇよ」

「なるほど。つまり…」

 

 にたり、と私は意識して悪辣な笑みを浮かべた。

 キールが嫌悪に顔を歪めながら言葉を補足する。

 

「処分、ということね。ピンガは始末すると」

「ああ。テメェの幸運に感謝することだな、キール」

「………」

 

 状況としてはピンガのそれはキールが置かれていた状況に近い。

 すなわち敵方に捕まり、裏切りを疑われているということ。

 

 しかしそれでもキールが助かったのは……逆を言えばピンガがすぐに処分の決定を下されたのは、ジンの一存にすぎない。

 ジンの気分次第で生き死にが決まるのだ。

 やはり稼ぐべきはジンの好感度ということだろう。

 

「では、優先順位としてはまずは直美・アルジェントの確保。そして次にピンガの始末、ということですね」

「ああ。できるか、ウルフドッグ」

 

 ちなみに、こうして可能か否かを聞いてくる時点でどれだけジンが私を思ってくれているか分かる。

 普通の幹部なら「行け」の一言で口答えでもしようものなら銃口突きつけられるからな。

 

 だからあまり反対はしたく無いのだが…こればっかりは意見しなければなるまい。

 私はジンの呼吸と機嫌を元に繊細にタイミングを図り、口を開いた。

 

「それが……ここ最近で動きがあったようなので、僕単独では少し難しいかもしれません」

「なに?」

 

 ぴくりとジンが表情を動かした。予想外の返答に少し驚いてしまったようだ。

 ウォッカが眉を険しくして聞き返した。

 

「どういうことだバーボン」

「現在、直美・アルジェントは公安に保護されて姿をくらませています。僕としてはピンガが余計なことを喋ったんじゃないかと思っているんですが」

 

 これは事実だ。

 狙われている直美・アルジェントをそのままにしておくのは愚策でしか無いからな。

 すでにその辺りは手配済み。

 

 同じようにピンガに関しても、最近退院したキュラソーと一緒に身を隠してもらっている。

 変装は私たちが直々に教えたから、昴さんみたいに顔と名前を変えてひとまずは安全に過ごせるだろう。

 

 つまり。ピンガが全部悪い作戦、始動ということだ。

 

 ジンが盛大に舌打ちして凶悪に顔を歪ませた。

 

「チッ……あの野郎、相変わらず下らねぇことばかりしやがる」

「これは親しくしている捜査一課の世間話に出ていた情報ですので、恐らくは確かだと思われます」

 

 ついでにパシフィック・ブイの警備も見直させている。

 あんな超重要拠点、清掃員に紛れれば誰でも入れるような状況はいいとは言えないし。

 

 ジンはもう一度舌打ちして、自分を落ち着けるようにタバコに火をつけた。

 暇そうにネイルを確認しているキャンティと銃の手入れをしているコルンはまったくもって興味なさげだ。

 対してキールとスタウトの二人は緊張に身を固くしている。

 ジンが機嫌悪くて良いことなど何もないからさもありなん。

 

 しかし機嫌が多少悪い程度、ここまで好感度を稼いだ私には関係のないことだ。

 そして苛つきを抑えたジンは、眉をハの字に下げて申し訳なさそうに私へと向き直った。

 

「そうか。なら直美・アルジェントの行方は下っ端共に探させる。ドブさらいは狼犬の仕事には相応しくねぇからな」

「すみません、ジン。僕が力になれなくて」

「フン。だが、あのお方の命令は他にもある」

 

 ……なんだ?この局面で私に他に命令?

 そう思って内心身構えている隙間を縫うように、その命令は私の意識の不意をついたのだった。

 

 

「バーボン。パシフィックブイに侵入し、人員を皆殺しにしろ」

「………」

 

 

 空気が凍りつく。

 息を呑んだのはスタウトだろう。迂闊なことだ。

 私は必死で平常心を取り繕って笑顔を作った。

 

「……それなら僕にも可能そうですね。ただ、どうしても人目につくのは避けられなさそうですし、爆発物で出口を塞がれてしまうと流石の僕でも生きての脱出は難しいかと」

「メインルームの操作ができない程度に殺せればそれでいい。目標はパシフィックブイの撃墜だ」

 

 なるほど。そこまで説明を受けて、私も組織が取ろうとしている作戦が把握できた。

 

 老若認証を手に入れるのが無理なら、組織の脅威となる老若認証システムを確実に沈める。

 そのように方針を転換したのだろう。

 

 パシフィックブイは本来ガチガチの軍事施設だ。

 原作では組織の潜水艦による魚雷で撃墜されたが、それはパシフィックブイのプログラムをハッキングして武装を封じることができたからだ。

 武装の数から言えば本来あんな潜水艦のひとつ、沈められないはずがない。

 

 だから内部を壊滅状態にしておく必要があったんですね!

 RTAの文脈で私は内心絶叫した。

 降谷さんも言葉もなく顔を真っ青にしている。

 私は白目を剥きそうになりながら、この大ピンチをどう潜り抜けるか必死で思案する。

 

───どうする、安室

───正直いい方策が思い浮かびません。僕を止めるには警察では脆弱にすぎる

───……少し、こちらで策を練る。ジンの対処はお前に頼んだ

───承知しました。お任せください

 

 おそらく私がパシフィックブイに正面から入り込んで混乱に陥れ、そのまま他幹部の手引きで脱出。

 その後潜水艦で混乱の最中にあるパシフィックブイを砲撃する、という手筈になっているのだろう。

 

 随分と強硬な手を打つものだ。

 まぁ、このシステムを使えばあの方の居場所が判明してしまうという危険を思えば、あらゆるデメリットを考慮しても老若認証を沈めたくなるのはわかるが。

 

 しかし、流石にパシフィックブイを沈められるのはまずい、と私は歯噛みした。

 同時に警察の特殊部隊程度で止められる私でもない。

 かなりまずい状況には違いなかった。

 

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