バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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黒鉄の魚影④

 

 あの後、すぐに私たちは公安へと報告を入れた。

 

 黒田管理官はしばし絶句して無言。

 すぐさま緊急会議が開かれ、侃々諤々の議論が始まった。

 

 議題はもちろん、八丈島付近に位置するインターポールの監視施設、パシフィックブイをどう保全するか。

 これには警察情報部が揃い、長時間にも及ぶ激論が交わされた。

 

 パシフィックブイの警備強化、軍の配備、エトセトラ。

 降谷零の引き上げ…すなわち任務中止も視野に入れられたが、これには公安部の反対意見も多かった。

 これまでの黙認してきたのは何のためだったのか分からなくなる、あの組織の壊滅まで待ってほしいと陳情があったのだ。

 

 紛糾した議会はぐるぐると同じところを回るばかり。

 

 お偉方に「何かいい方法はないのかね」とこの場だけで何十回と聞かれたものだ。

 そんなものあったらとっくに実行しているというのに、まったく。

 

 一応、降谷さんの方でルパンに連絡は入れている。

 

 彼も心情的には力になってもいいそうなのだが、ルパンとしてのメンツがありそう軽々に動くわけにもいかず。

 体良く動かされると悪い先例になってしまうからして。

 公安に「ルパンを動かせないか」なんて毎度妙な頼みをされるようになっては困る、と。

 要約すればそのように一旦断られたのだった。

 

 万事休す。万策尽きたとはこの事だ。

 

 会議は深夜から翌日の朝まで続き、私も家に帰り着いた頃にはヘトヘトになっていた。

 

 まあ、この局面で一旦家に帰れただけ僥倖と言えるだろう。

 風見さんとか土気色の顔してたし。

 あまりずっと警察庁に残っていては組織に不審がられるからと帰ることができたが、そうでなければ永劫閉じ込められそうな勢いであった。

 

 泥のような体を動かしスマホを確認すれば、どうもコナン君からの着信がいくらか残っていることに気がついた。

 

 この時間であればコナン君も起きていることだろう。

 彼のことだから折り返した方がいいだろう。

 

 スマホをタップして一コール、二コール。

 コナン君はすぐに出た。

 

「電話かけてきてくれてたみたいだけど、どうしたんだい、コナン君」

『って安室さん!?こんなに連絡取れないなんて何かあったの?』

「いや、公安の会議が長引いただけだよ。組織に動きがあったのも確かだけど…それより、僕に電話って何かあったのかな」

『組織に動き!?じゃなくて、そうだよ、安室さん僕の住所ピンガにバラした!?』

 

 一瞬意識が組織の動きに集中しかけたらしいが、ハッと我に返って本題を話してくれるようだ。

 善きかな。組織の動きについて今ここで話したら話題など吹き飛んでしまうからな。

 

 しかし……ピンガに住所をバラした?なんだそれ、ピンガが自宅凸でもしたのか?

 

 降谷さんが素早く表に出て肉体の操作権を握った。

 自分で話すことにしたようだ。

 

「───ピンガのことで何があった?」

『あ、ゼロさん。その、昨日の夕方に突然ピンガが毛利探偵事務所を訪ねてきて…大変だったんだから』

「どういうことだ」

 

 え?マジで自宅凸なことってある?と私は内心で宇宙を背負った。

 あのおバカ!組織が身柄を探してるからあんま出歩くなっつったのに!

 頭痛を堪えるかのように降谷さんが頭を押さえた。

 折檻が……足りなかったようだな……。

 

「ピンガの要件は何だったんだ」

『それが、うーん。終始ジンへの愚痴だったよ。あと幹部みんな性格悪いとか、ウルフドッグにやられた傷が痛いだとか』

「本当に何しに出歩いてるんだあのガキは」

 

 たぶん鬱憤が溜まってるのに付き合ってくれる相手がいなかったから、ピンガ自身イライラはしていたんだろう。

 そのあたり、キュラソーは非常にクールだからな。

 

 あと物見遊山的な側面が6割ほどあったと思われる。

 あのウルフドッグが畜産業を営んでまで殺すのを我慢している餌が、一体どんなものか…と遠路はるばるやってきたというべきか。

 

 まったくもってこの忙しい時に!

 私たちは大きくため息を吐きたい気持ちを堪えてコナン君へと問いかけた。

 

「その他に余計なことは言ってなかったか?」

『ううん。ちょうど少年探偵団の奴らがきてたから、一緒にゲームしたのと、ちょっとプログラミングを見せてくれたぐらいで』

「何故そこで馴染んでるんだピンガは!!!」

 

 降谷さんがたまらず叫んだ。

 いやほんと何でだよ。

 たぶんゲームの裏で動いているプログラムの解説とかを鼻高々でしていたのだろう。

 こういうのピンガも割とオタクだからな。

 

『あいつらがすげーすげー言うから、ドンドンアングラなところにアクセスして紹介していくから止めるのに苦労したよ…』

「それは…ごめんねコナン君。アレにはよく言って聞かせておくから」

『最後には組織の潜水艦にアクセスし出してさぁ。「バックドアを仕掛けておくとこんなこともできるんだぜ?」なんて言い出して』

「───っコナン君!」

 

 降谷さんが不意に焦ったような声を出した。

 一体なんだ?

 

『えーっと、なに?どうしたのゼロさん』

「ピンガは今でも組織の潜水艦に不正アクセスできるということか?」

『だろうね。「この程度俺にかかればチョロいもんよ!」って自慢してたし』

「………」

 

 にやり、と光明を見出したような…にしては少々悪辣な笑みを浮かべて降谷さんは目を細めた。

 私のウルフドッグ仕草が映ったのか、それとも先日の夢の影響で笑顔にバーボンが出るようになったのかは分からないが、とにかく怖い笑顔だ。

 

───どうしましたゼロ

───この情報を海自へ流して例の潜水艦を潰してもらおう

───!

 

 私はわずかに息を呑んだ。

 

 ピンガが潜水艦のシステムにどの程度まで不正アクセスできるかは分からない。

 だがもしその位置情報の入手ができるのなら。

 私たちは、国の武力でもってそれを撃沈させることが可能だ。

 

───組織の保有している潜水艦は3隻。そのうちパシフィックブイを攻撃できるような大型艦は一つだけだ

───潰せば後はない、ということですね

───ああ。俺たちに課された任務自体、潜水艦ありきの計画だった。それを先んじて潰せば、俺たちが動く理由もなくなるだろう

 

 なるほど。

 計画では、私たちがパシフィックブイを混乱に陥れ、その隙に潜水艦で雷撃することになっていた。

 その要である潜水艦を潰せば、計画自体がおじゃんになるというわけだ。

 

 降谷さんがはやる気持ちを抑えて内側でどう報告を持っていくか思案しだした。

 私が代わりにコナン君の電話へと意識を戻す。

 

「ええと、コナン君。ひとまずピンガは心配いらないから、僕は用があるからこれで!」

『え、待って!そっちで何が起こってるの!?僕も、』

 

 返事も待たずにぶつりと電話を切って、私はスマホをズボンのポケットへとしまった。

 コナン君には後ですごい臍を曲げられるかもしれないが、今は潜水艦の方が先決だ。

 

 そのまま急ぎ外へ出て、車を走らせてピンガとキュラソーのところへと向かう。

 

 現在、ピンガとキュラソーは表向きの立場として顔を変え、都内で子供向けプログラミング教室を開いている。

 ピンガはあまり乗り気ではないので裏方としてホームページ作成やら教材の開発やらをメインに動き。

 キュラソーの方が主に教師として働いているようだ。

 

 まだ開設されたばかりで生徒もほとんどいないが、キュラソーのためにも何とか軌道に乗ってほしいところである。

 

 チャイムを鳴らすと、眠そうな目をしたピンガがガチャリとドアノブを開けた。

 

「あん?なんだよこんな朝っぱらから!」

「もう朝の10時ですよピンガ。夜型過ぎでは?」

「うっせーなイチイチ。で、なんだよ」

 

 ピンガがボサボサの髪をかいたので、私はにんまりと笑みを模ったのだった。

 




・組織の潜水艦
昔ピンガがバックドアを仕掛けた。
楽しそうだったから色んなところに仕掛けた、暇な時にアクセスして遊んでいた、などとピンガは供述している。
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