バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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飼い主ムーヴ

 

 あの後、ジンから任務中止の命令が来た。

 

 なぜかわざわざ直接会いにきて「……すまなかった。お前の期待を裏切った」とか腐った魚みたいな目で言うから何事かと思ったものだ。

 足取りは鬱々としてるし、いつもツヤツヤの銀髪は艶を失ってるし。

 

 あんまりにもしょげかえっているから、どしたん?話聞こか?というイメージで寄り添えば。

 感極まったらしいジンに強制連行されてそのまま飲み会に突入。

 全てジンの奢りということで高い酒をジャンジャカ流し込まれることになったのだった。

 

「いいかウルフドッグ、お前ほど美しい獣は他にない」

「ちょっとジン、飲み過ぎですよ」

「爪で裂き、食い尽くす姿そのものが裏の世界における芸術に違いない…」

 

 何言ってるのかさっぱり分からん。

 が、とりあえず褒めてくれているっぽいことは伝わってくる。

 どうも、ひどく罪悪感に駆られているらしい。

 

 ああ、そうか。

 ジンは私にパシフィックブイの殺戮任務を提供できなかったことを気に病んでいるのだ。

 裏では私たちが計画して任務をオジャンにしたのだが、それをジンが知るよしも無く。

 こうして「殺戮任務のお預けを喰らって不機嫌なウルフドッグ」を宥めに来たのだろう。

 

 なんというか、自分で関係を築いておいて違和感しかないな。

 そもそもジンのせいじゃないんだから気にする必要ないだろうに。

 

 などと言うわけにもいかず。

 どんよりと背後に暗雲を背負ったジンをひたすら慰め続ければ、ジンはもぞもぞと自分のポケットを漁り出した。

 

 そして取り出したスマホで「……見ろ」の一言とともにおすすめの動画を見せてくれた。

 

 いやこれ私やんけ。

 

 よく見てみれば、それは私の任務中の動画をカットや編集して総集編にしたもののようだ。

 サイコパス面を晒した私が画面の中で笑って臓物を引き摺り出している。

 恥過ぎるんだが今すぐ帰っていいか?

 

 「お前がこれまでで一番殺った任務での記録だ。警備の雑魚どもの表情を見ろ、哀れなほど怯えてやがる」とジンがボソボソと口に出した。

 え、なんでさも動物のなごみ動画かのような顔して私に見せてくるの?

 普通にR-18Gスプラッタだが???

 

 しばらく動画を無言で鑑賞した後。

 ジンは勢いよく酒をかっくらってから、重たい口をなんとか開いた。

 

「……今回は悪かった、ウルフドッグ。テメェをぬか喜びさせた」

「ですから、僕は気にしてませんってば。そうやって配慮してくれるジンに僕はいつも感謝してるんですよ?」

「組織も使えねぇ奴らばかりだ。お前やウォッカのように素直で優秀な奴がもっと多ければ俺も楽なんだがな」

 

 新人殺しのジンの言葉とは思えないほど、多くの憂いを秘めた声色であった。

 

 これはこれでジンとしては本音なのだろう。

 ジンは最もRUMからの信頼の厚い部下として多くの任務がのしかかっている。

 つまり忙しいのだ。

 下っ端を使い潰してやりくりしているようだが、ウォッカの尽力があっても間に合わないレベルの忙しさに苛まれている。

 

 まぁ、優秀な新人をみんな処分していったジン自身のせいだから私は口出ししないが。

 

 私はマンハッタン──バーボン・ウイスキーとスイート・ベルモットを使ったカクテルの女王だ──を注文した。

 この場の飲み会はジンの奢りなのだから、せいぜい飲んで食ってやらねばジンも浮かばれまい。

 

 なお、降谷さんは付き合ってられんとばかりに中で公安に提出する報告書の草案を作っている。

 助かるからいいけどジンの話も少しは聞いてあげて…。

 

「そんなことより、だ。お前の記憶の状態はどうだ、ウルフドッグ。最近は調子も戻ってきたようだが」

「そちらは順調です。まだ完璧とは言えませんが、だいぶ記憶も戻ってきました。あなたとの任務全てを思い出すまでには至っていないのが残念ですが」

「………そうか」

 

 酒を傾け、ジンは目を伏せて口を噤んだ。

 そして何かを決意するようにドン!とジョッキを置いて頷いた。

 とりあえず質より量を飲みたいらしいジンの選択によって来た酒だが、流石に飲み過ぎな気がする私である。

 

「忙しさにかまけてお前をしっかり見てやれなかった俺にも非はある」

「うん?」

「少し待て、いい任務は優先的に回してはいたが、やっぱりお前に足りねぇのはのびのびとできる空間だ。野を駆けてこそ思い出すものもある。窮屈そうにしているお前は見ていられねぇ」

 

 止める間もなく、ジンは素早く手に持ったスマホでどこかへ電話をかける。

 1コールですぐに繋がったその先はどうやら彼の右腕、ウォッカのようだ。

 

「おい、ウォッカ、例の任務の予定を変更する。……そうだ。ああ。ウルフドッグを投入する。準備をしておけ」

 

 それだけ言ってガチャ切りする姿はいかにもコナン世界の住人と言った感じだ。

 私はどうにも展開が読めず疑問符を飛ばしながらジンに話しかけた。

 

「あの、一体何を…」

「海外任務だ。食い尽くして後腐れのねぇ肉を用意した。思う存分引き裂いてやれ、ウルフドッグ」

「!」

「三週間後の便でロシアへ飛べ。その次はイタリアだ。今までは本部の命令ですぐ動かせるように日本に滞在してもらっていたが、構わねぇさ」

 

 ま、また面倒くさいことを…!

 私は明後日の方向に爆進しようとしている親切心をどう捌こうか頭を悩ませて、ひとまず摘んでいたホタテのムニエルをジンにも勧めた。

 

「ご命令とあらばどこまでも。あ、ジン。これ美味しいですよ。酒ばかりでは胃の調子も心配ですから、どうぞ」

「悪いな。それとこの任務には俺も付いていく。のびのびとした場所で思い出の一つでも語れば思い出すことも出てくるだろうさ」

「!ありがとうございます、あなたに見ていただけるとあらば気合も入るというものです」

 

 ありがた迷惑なんだよなぁ!!!

 ジンはその凶悪な双眸をより凶悪にギラつかせて笑った。

 

「テメェは自由に殺し喰らえばそれでいい。俺もなんとかして予定を空けておく。三週間後を楽しみにしてるぜ、ウルフドッグ」

「はい!」

 

 そんなわけで、ジンの完全なる親切心により、急遽私の海外任務が決定した。

 地獄みたいな展開である。

 

 が、そんなことをおくびにも出さず、私は大きく頷いて満面の笑みを浮かべて見せたのであった。

 




リクエスト「記憶喪失なウルフドッグを元気付けたい飼い主思考なジン」でした。

また、マシュマロとXのアカウントをあらすじにも記載しました!
もしリクエストや感想などあればどしどしお送りください!(乞食)
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