バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
景光さんの思い出の地、県境の秘密基地にやってきている。
この付近に景光さんの実家があるのだが。
郷愁なのか利便性の問題か、諸伏高明警部の家もこの辺にあったりする。
一応、今回は帰宅する諸伏警部の仕事終わりを狙って家付近で待ち伏せする予定だ。
それで帰宅までの時間を潰すため……という名目でこの思い出の秘密基地に私たちは来ているのだ。
まぁ、実際は諸伏警部がここに来ることを知っていて私が誘導したのだが……それはそれ。
時間的にちょうど会えるかどうかも不明だし、ノーカンということで。
景光さんは懐かしそうに目を細め、秘密基地の入り口の垂れ幕をめくった。
「懐かしいなぁ、ここに座ってみっちゃんとカードの交換とかしてたんだ」
「みっちゃん?」
「長野にいた頃、ミサオって名前の友達がいたんだよ。ちょっと抜けてるけど明るくていいやつで、よくここで遊んだよ」
「俺の他にお前の幼馴染がいたと思うとちょっと妬けるな」
「ははは!そればっかりはしょうがないだろ?」
この幼馴染というのは山村ミサオ警部のことだろう。
クワガタムシをとったり秘密基地を作ったり、二人は幼い日を全力で遊んでいたことだろう。
しかしその平和も長くは続かず。
両親が殺害されて親戚に預けられることになった時、そのドタバタで二人は何も言えずに別れ別れになったらしい。
原作知識だが、警察学校の夢の中で本人に聞いたことでもある。
あの夢、ほんとなんだったんだろうか。
降谷さんの記憶が作り出した仮初の世界だとは思っているのだが。
それにしては降谷さん本人も知らない情報が出てきたりして謎が多いんだよな。
景光さんが少しだけ目を細め、思い出の日々を振り払うように私たちへと微笑みかける。
「しかし、ゼロは大人になっても秘密基地を作る夢を捨てられなかったわけだ」
「うるさいぞヒロ。せっかく自由になる金があるんだから夢を形にして何が悪い」
「たしかに。でもあんなにカラクリだらけで、うっかり仕掛けを踏んだ明美がびっくりしてたんだぞ?」
「って、大丈夫だったか!?危険な仕掛けは普段触るところにはないはずだが」
「問題ないよ。掃除中に彫刻が光って変な図形が投影されたぐらいだからな」
カラカラと笑って、景光さんは秘密基地の入り口にあるプレートを愛おしげにそっと撫ぜた。
私はその様子を見て、どうにもざわめきに似た感情を抑えられない。
幼馴染かぁ、いいものだ。
「───そういえば、僕の幼馴染って誰になるんでしょうね。ウォッカ?」
「ブッ!?!?いや、安室が生まれたのって5年前だったとしても、それは流石に!」
「幼馴染組織幹部説。ちょっとほのぼのしません?───やめてくれ、自動的に俺の幼馴染もウォッカってことになるだろ!」
降谷さんに怒られて私はややしょぼんとした。
ちょっとした冗談だったのに、そんなに幼馴染ウォッカが嫌か?
かなり当たり枠だと思うのだが。
………それに。
幼馴染というなら、先輩的な側面の強かったウォッカよりもアイリッシュの方が適切だろう。
共にピスコの元で交渉の基礎を学び、ジムで組み手をして高め合い。
一緒にキャンプに行ったこともある。
肌寒い星空の下で食べるアイリッシュ特製のチーズダッカルビを作って、笑い合って。
………。
まぁ、詮無い話だ。
はっ、と何かに気づいたように景光さんが私を見て口を開いた。
「もうすぐ…6歳…就学児……!!」
「わかりました僕が変なこと言ったのが悪かったです!!もう知育玩具は十分ですから!!!」
「ゼロ、お前本気で知育玩具渡したのか?マジで?」
「───だって相棒の情緒に効くと思って───効きましたねぇ、より世を儚んで捻くれる効果がありました」
やさぐれて言えば、降谷さんはすかさず「悪かった、悪かったから!」と頭を下げた。
知育玩具、割と虚無なんだよな。恐竜発掘キットとか懐かしさしかないわ。
まぁ、ボードゲームとか意外に楽しいやつもあるんだけど。
などとワイワイガヤガヤしていれば、複数の足音が耳を打った。
思わずと言った様子で景光さんが重心を落として身構える。
振り返れば、総勢7人の大所帯ががさがさと薮をかき分けてこちらへと来ていた。
毛利さん達のほか、長野県警の警部さん達と群馬県警の山村警部のようだ。
どうやら「県境の遺体」は無事解決したようだ。
その帰りに山村警部の思い出巡りのためについでにここへと寄ったのだろう。
私たちの姿を認め、諸伏警部がわずかに目を細めた。
景光さんが小さく身構えているのに気付いたのかもしれない。
「おや、あなた達はいったい、」
「あーっ、それは僕の思い出の秘密基地ですよ!?何してくれちゃってるんですか!?」
そこで諸伏警部の言葉を遮るように、山村警部がずずいと顔を近づけてくる。
景光さんは両手をあげて降参のポーズをした。
しかし、そこには抑えきれない喜びのようなものを滲ませている。
「あー、ええと。俺達はこの辺をたまたま散策してたら妙なものがあったから見にきただけで。怪しいものじゃないぞ?」
「うっかり壊してくれちゃったりしてないでしょうね!?」
「もちろん!少し見てただけで、ここには何もしてないさ!」
訝しげな顔で二人の会話を見守る諸伏警部は、ちらりと私に目線をやった。
今の景光さんは赤井さんが使っているのと同じ喉に巻くタイプの変声機をつけているから、声で気付かれることはないだろうが……。
諸伏警部なら、季節外れのハイネックに違和感は抱くだろうからな。
「失礼。この辺の散策とはなんでしょうか。ここは私有地で、山菜取りや筍狩りなどは違法ですが」
「ああ、なるほど。勝手に入って悪かった。昔この辺に住んでたから、待ち人が来るまで待つ間、懐かしくなって入っただけなんだ」
「そうでしたか」
至極ものいいたげに私を見る諸伏警部に、私は笑みだけをもって応えた。
ここでは話せない、とだけ伝わればそれでいい。
毛利探偵が大袈裟に咳払いして胡乱な表情で私に話しかけてくる。
「っつーか、安室はどうしてんなとこに来てんだよ。用事があったんじゃなかったのか?」
「すみません毛利先生。彼について尋ね人に会いに行くのが用事でして」
「尋ね人だぁ?」
周囲の視線が集中する。
警察官がこれだけいると、やはり取調べ的な感じは拭いきれない。
私は平然と首肯し、ニコニコと景光さんの隣にたった。
「ええ。長野県警の諸伏高明警部に、会うつもりだったんですよ」
・アイリッシュについて
親友だった。
キャンプが趣味のアイリッシュについてよく一緒に山へ行っていた。
アイリッシュも意外と料理上手であったため、よくレシピを交換などもしている。料理仲間。
なお、バボ主の後悔が直接心に流れ込み、降谷さんは静かに鬱になっていた。