バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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今日は一話のみの投稿のつもりが、うっかり書きあがっちゃったので投稿する。


謎めいた乗客

 

 今日はバスジャック日和のいい天気だ。

 

 あの14番目の標的事件の後、降谷さんに

「僕に引っ張られすぎですよ」と指摘すれば、憮然としつつも彼は内省したようだった。

 「悪かった。俺も、いつの間にかお前の殺人に慣れすぎていたんだろう」とは彼の言葉だ。

 

 正しく公安警察として有るのならば、独断専行は御法度。

 殺人を許容するのも場合によっては間違いではないのだろうが、少なくとも報連相は必要だからな。

 

───お前には助けられてばかりだ。もう一人の俺、別人格。言い方はたくさん有るが…。

 

 降谷さんは言葉を切って、改めて私をまっすぐに見た。

 

───相棒、と。俺はお前のことをそう思ってる。

───……降谷さん、そんな、僕はただ……

───ゼロでいい。その方が、俺も俺の志を容易く思い出せるようになる。

───わかりました。ゼロ。というか、唐突なデレはやめてください。心臓に悪いです。

───誰がデレたって?

 

 軽口を叩き合いつつ内心で朗らかに笑い合う。

 私達はこうして互いにバランスを取り合い、この闇深い非日常を歩んでいくのだろう。

 

 そんなこんなで本日。

 スキーに行くためにと少年探偵団の子らとバスに乗っているのだが……。

 

 新出先生に扮したベルモットがジョディ先生に絡まれて困ったふりしてるわ。

 そのジョディ先生を監視するために赤井秀一は乗り込んでくるわ。

 バス内だけでちょっとした勢力図が出来上がるほどの混沌具合だったのだ。

 

 これがまったくの偶然?嘘でしょ?

 

 そして赤井秀一はわたしの姿を認めた瞬間凄まじい殺気を発し、それに気が付いたコナン君が完全警戒モードに移行。

 あまりの黒の組織密度にもはや声すら出ない灰原さんを庇って緊迫した顔で周囲を確認している。

 ベルモット(新出先生)が私を咎めるように見た。

 

 なんだねこれ地獄かね。

 

 FBIと黒の組織のたむろする魔の高速バスに当然のように乗り込んでくるバスジャック犯が哀れになる程だ。

 

 突然バスに入ってきたスキーヤー風の男二人組は、拳銃を乗客へと突きつけて叫ぶ。

 

「騒ぐな!騒ぐとぶっ殺すぞ!」

 

 悲鳴がそこら中から上がり、内部はパニック状態。

 あの程度は私にとって脅威でもなんでもないため、軽く処分しようか……と思えど、赤井秀一の刺すような殺気が気がかりだ。

 ヘタをすると背後から赤井秀一に襲撃されかねないからな。

 

 と、そうこうしているうちに犯人が床にスキー板に偽装した爆弾を並べ始める。

 それを見て、コナン君がメモ帳に軽く書き込んだ文字で対話を図ってきた。

 

『オメーなら、この状況で犯人達を制圧できるか?』

『できるよ。拳銃二つ、爆弾係の無力な女性が1人。どうとでも料理できる』

『なら俺が合図するから、お前は銃を持った犯人を取り押さえてくれ』

『了解』

 

 コナン君が未だ恐怖の残る車内で静かに腕時計型麻酔銃のエイムを定める。

 狙いはこちらにやってくる短気な男の犯人か。

 

 チュンッ、という鳥の嘶きに似た短い発射音。

 

 ふらっと倒れ込んだ男の様子に、もう1人がわけも分からず逆上した。

 何が起こったかも理解していないだろうに、「テメェが何かしたのか!」とコナン君へと狙いを定めたため隣の私が素早く飛び出す。

 

 ちなみに、私の隣にコナン君が座っているのは私の監視のためらしい。

 まるで信頼されてなくて涙が出るね。

 

 素早く警棒を取り出し、銃弾の流れに沿って逸らすように振り払う。

 

 この警棒は阿笠博士の発明品で、頑丈かつ軽量なこと以外に特殊な機能はない。

 「鉤爪じゃなくて今度からそれ使えよ」とコナン君に放り渡された品だ。

 短刀ぐらいの長さで伸縮性があり、携帯しやすく超頑丈。

 

 私がこうして至近距離で銃弾を受けてもひび割れひとつないのだから、流石は阿笠博士の発明品だ。

 

 そしてそのまま蹴りを一発。

 窓ガラスに頭を叩きつけられた犯人はズルズルと座席にもたれかかり、動かなくなった。

 しまった、強すぎたか?いや生きてる大丈夫。

 

 驚いた女性共犯者は首トンで落として試合終了。

 わあっと歓声に包まれる乗客達に紛れ、新出先生が私に囁きかけた。

 

「キティ、クールガイを守ってくれて礼を言うわ」

「任務お疲れ様です、ベルモット。別にこのくらいお礼を言われるまでもありませんよ」

「貴方ならクールガイとエンジェルを必ず守ってくれる…そう感じた直感に間違いはなかったみたいね」

 

 1人ずつバスから降りていく頃には警察も出動して、周囲一帯は封鎖される大事件の様相を呈していた。

 そりゃ爆弾に拳銃二丁なんて豪華な品揃えのバスジャックだ。

 背後関係を調べるために警察もこれから夜通し仕事せねばならないだろう。

 

───拳銃の入手ルートが気がかりだな。俺の方で洗っていいか?

───分かりました。スケジュールを調整してゼロが自由に動ける時間を作ります

───助かる

 

 そして最後にバスから出たのは、FBI捜査官。赤井秀一その人だった。

 

 バス横で佇む私の姿を認め、無言で視線だけが絡み合う。

 停車したバスとその周辺に広がる喧騒をまるで無視するかのように静まり返る、ピンと張った糸のような繊細な空気。

 

 慎重に、噛み締めるように赤井秀一が口を開いた、

 

「久しぶりだな、バーボン」

「ライも元気そうで何よりです。あの時から僕ら、話をできていませんでしたから。ちょうどよかった」

「はて。お前との間に話すような内容があったか。悪いが思い出せなくてな」

 

 赤井の服の内側で銃のセーフティロックをはずす音がする。

 殺気は強まるばかりだ。

 吹き荒ぶ嵐のような凄まじい殺気が、私に叩きつけられている。

 

「無駄ですよ。僕にその程度の銃器など意味がないと分かっているでしょうに」

「………何を企んでいる、バーボン。そんな風に人のフリをして人間社会に溶け込んで」

 

 私が人間でないみたいな言い方は名誉毀損だぞ赤井秀一ィ!

 

 中の降谷さんと共にブーイングやら帰れFBIやら騒ぐが、顔には出さず。

 今一つ赤井秀一がなにを聞きたいかが判然としない。

 

「別に、僕にプライベートな時間があるなんて当然でしょう」

「お前は人間などただの獲物としか考えていない、野蛮な獣だ」

「嫌だなぁ、そんなことありませんよ?」

 

 遠目に私が赤井と会話していることに気がついたのか、コナン君が震える灰原さんをおいてこちらへと駆け寄ってくる。

 赤井秀一がその小さな影を見て目を細めた。

 

「あれはお前のペットか?」

「違います。ただの近所の子供ですよ。可愛いでしょう?」

「チッ」

 

 私が子供を人質にしたとでも勘違いしたのか、赤井秀一は舌打ちをして道の向こう側へと消えていく。

 曲解にも程があるぞ赤井さん!別に私は「これ以上やるなら子供を殺すぞ」なんて言ってねーぞ!

 

「安室さん?」

「あ、コナン君。哀ちゃんは無事かい?」

「無事だよ。犯人制圧、協力してくれてありがとな。それより…さっきの人は?」

「ああ、昔の知り合いだよ。組織を抜けたFBIの潜入捜査官でね」

「!!!…潜入、捜査官」

「今も組織に狙われている身さ」

「……それはオメーもあの人の命を狙ってるって意味か?」

「いや。僕には赤井秀一殺害の命令は来てないし。仕事でもないのに動くほど僕は社畜じゃないよ」

「しゃ、社畜ってお前な…」

 

 赤井の消えていった方向を見るコナン君に、私は特段声をかけることもなく見守るだけにとどめた。

 

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