バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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番外 バビロンの黄金伝説③

 

 なーに仕事だってのに乗り気ではない顔してんの。

 

 片眉を上げたルパンに言われたので、私はふーむとどう答えたものかと唸った。

 電車でゴトゴト揺られての旅だ。

 バビロンにある黄金を求めて、バビロン南の発掘現場まで、飛行機と電車を使っての旅だ。

 バグダッドまで着いたら、そこから二時間で遺跡に到着するだろう。

 

 メンツは五エ門師匠、ルパン、次元さんに加えて私だ。

 高級な寝台列車は快適で揺れもあまり感じない。

 食堂車も付いていて、そこでは本格的なフランス料理も楽しむことができる。

 

 今はそんな食堂車に男4人で来ている。

 ちょっと絵面がむさ苦しいが、そこは仕方ないと諦めよう。

 

「そりゃブルーにもなりますよ。僕を追いかけてコワルフスキー傘下のマフィア達が大挙して押し寄せて来てるんですから」

「いーのいーの。気にせず一杯」

「というか良かったんですか、ルパン?今の僕もいると迷惑が100倍になりますよ」

「もっちろん。なにせ安室ちゃんは聞かれたらなんでも答えてくれるタイプだし?」

 

 にひひひ、とルパンが笑う。

 

 あれからマルチアーノが没するに伴い、マフィア組織は若頭のコワルフスキーが全権を握ることとなった。

 半壊したアジトを立て直すのに必死で規模は縮小したようだが、それでもニューヨークを牛耳る巨大マフィアであることは変わりない。

 残党はコワルフスキーのもとに集い、急速に勢力を持ち直している。

 

 というか、帰りがてら探したんだがコワルフスキーは瞬時に逃げ出してしまったようで見つからなかったんだよな。

 逃げ足の速いことだ。

 

 それから、メンツを潰した私へと復讐しようと付け狙っているのがめんどくさいのなんのって。

 人がいるところでも構わずサブマシンガンを乱射するような輩が四六時中私の周囲に出没するのだ。

 別に私に命の危険はないが、ろくに食事にも行けないからな。

 

 ルパンが背を椅子に預けると、次元さんは難しい顔をしてタバコを手に取った。

 

「で、こいつが何を知ってんだ?」

「なんかバビロンの黄金について訳知りみたいでね。不二子ちゃんと組んで動いてるみたいなんだよな」

 

 うげ、とカエルの潰れたような声が次元さんから漏れる。

 

「よくあんな女とつるめるな…ぜってーお前騙されてるぞ」

「それはまぁ、そういうこともあると知った上でお話しさせていただいてますから」

「かーっ、ルパンといいお前といい物好きな野郎だ!」

 

 臭いものにでも近づいてしまったかのようにしっしっと追い払われてしまった。

 まぁこれまで幾度も騙されてとんでもないめに合わされて来たのだから、そういう反応になるのも理解はできる。

 

 「……こいつの物好き加減は俺も同意する」と降谷さんが内側で息をついた。

 降谷さんまでなんたること。

 

 ごほん、と私が咳払いすると、視線が集中する。

 

「ええと、何から話せばいいのやら。ええと、まず。バビロンにはすでに黄金はないと思います」

「はぁ!?」

 

 次元さんがいきり立った。

 

「ああいえ、語弊がありますね。大半の黄金が別の場所に移動してるってだけなので、まだ残りの分はあるかと思います」

「おいおいおい、どういうことだルパン。話がちげぇじゃねぇか」

 

 ルパンがポリポリと頭をかいて、私に視線を向けてくる。

 

「どゆこと?」

「ええと、これはバビロンの時代に何が起こったかに関わってくるんですけど。まず、宇宙人の実在を前提に置く必要があります」

 

 次元さんが露骨に渋い顔をした。

 この手の宇宙人とか神様とかオカルトとかは苦手だからな、次元さん。

 

「で、その宇宙人がどう関わってくるんだ?」

「かつて、宇宙人は地球に資源回収に来訪したようなのです。目的は貴金属である金。彼らはバビロンの古代人に命じてそれを集めさせ、母星に持って帰ろうとした」

 

 別にわざわざ人間のいる地球を狙わなくとも、小惑星なんかを丸ごと採掘してしまえば楽でいいと思うのだが、その辺は謎だ。

 地球で知的生命体と揉め事を起こす火種を作らなくとも、と私は考えるが…。

 まあ、宇宙人の考えは私には分からんということだ。

 

 ピンと来た顔をして、ルパンが手を打った。

 もう話の顛末に気がついたらしい。

 ルパンって素で探偵組かそれ以上に頭が回るしな。

 

「なるほど。そこでなにかしらの事故が起きて、金を落っことしちまったと……それがニューヨークか!」

「そうだと、僕は踏んでいます」

 

 私が大きく頷けば、次元さんがむっつりと黙り込んだ。

 特に興味がなさそうに五エ門師匠は座ったまま目を伏せている。

 

「おいおいおい、俺らははるばるニューヨークからバビロンまで出て来ちまったんだぞ」

「今頃不二子さんは金塊を掘っているでしょうね」

「おまっ、あの女に俺らをお宝から引き離すように言われてやがったな!」

「それは誤解です。僕はバビロンの方に残るお宝のありかを教えに来ただけですから。それに、あの金塊の量なら、不二子さんがどんなに頑張ろうと僕たちがバビロンの宝を手に入れて帰ってくるまでに1割も掘れません」

 

 不二子さんとの契約はあの場での協力限り。

 聞かれたら割と正直に話すことを信条としている私が隠し事に向くわけもなく。

 その辺は不二子さんにも自由にしていいと───ため息と共に───許可をもらっている。

 

 それに、超巨大な塔丸々一つ分だからな。

 隠れて掘り尽くすのは正直無理ってもんだ。

 あれだけの金塊の量を直上に立つコワルフスキーのマフィア達に気付かれずに運び出すには、ひとりでそーっと掘り進めるのが一番だ。

 ただし、単純に掘り進めること自体が重労働だから、そううまくはいかないだろう。

 

 不二子さんがコワルフスキーに近づいて代わりに掘ってもらい、その一部をもらう……無いな。

 コワルフスキーの強欲さを思えば、不二子さんがそんな悪手を打つとは思えない。

 

「だからバビロンの宝を手に入れてから、残りの黄金を狙えばいい。それに、貴方達は不二子さんに横取りをされず、ゆっくりとバビロンの方に残るお宝を売っぱらえるとも言えますから」

「こーの裏切り者ぉ……」

「う……勘弁してください。僕は聞かれたことは嘘偽りなく全て答えましたよ」

 

 嘘偽りなく答えたが、聞かれるまで黙っていたのは本当のことだ。

 私は無意識にやや俯き加減になってしまった己を自覚する。

 

 遺跡に残る宇宙人ロゼッタさんの思念をルパンに感じてもらう必要があるし、この遺跡巡りをキャンセルするわけにはいかなかった。

 永劫の孤独に苛まれるロゼッタさんのためにも、秘密を追いかけるルパンのためにも、私の妙な知識で流れを邪魔をするなんて私自身が許せなかったのだ。

 

 だがそんなのルパンには知る由もないこと。

 これは不信を招いてしまうかなぁ…と思っていたら。

 

 なぜか二人とも、ため息をついただけでその瞳に不信の類は見られなかった。

 どうしてだ?と思っていると。

 

 ポコン、とルパンにグーでぶたれる。

 

「痛っ!?!?!」

「考えすぎだっつの。なーに変なお節介焼こうとしてんだ」

「いえ、その…」

「お前は色々気にしすぎ考えすぎ繊細すぎ。なぁ次元」

「おう。俺は黄金が手に入れられんならそれでいいってもんだ。へんな気回してんじゃねぇよ」

「………僕は、」

 

 言葉を続けようとしたそのとき。

 

 天井のその先から、圧倒的な悪意が降って来た。

 五エ門師匠と素早く視線を交わして、爪を構える。

 

 瞬間、上から機銃より放たれた弾丸の雨が降り注いだ。

 轟音、悲鳴、火薬の炸裂する音、音、音。

 それをなるべく全弾、人に当たらないように天井へと向かって弾き返していく。

 

 ……っくそ、範囲が広すぎる!

 だめだ、他の客へ降り注いだそれを防ぐには手が足りない!

 

 崩れ落ちた天井から屋根の上へと踊り出れば、戦闘ヘリは電車と並走する形でピッタリとこちらに銃口を向けていたのだった。

 

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