バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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鬼の居ぬ間に

 

「それで、話してくれるかしら、コナン君」

 

 佐藤刑事の言葉に、コナンはやや苦笑いするほかなかった。

 ここは探偵事務所から少し離れたファミリーレストランだ。

 

 わざわざポアロを選ばなかったのは、後から店員の梓が安室透に告げ口しないようにか。

 

 最近、安室は海外に出ていて留守にしている。

 そんな休日の今日、突然やってきた佐藤刑事と高木刑事はコナンを連れて近場のファミリーレストランへとやってきていた。

 

 コナンは刑事二人の顔色を慎重に伺った。

 二人がなんのために改めて安室透のことを聞くのかは分からない。

 まだ話を聞いてみないことにはコナンとしても出方を伺うしかない状況だ。

 

 もし降谷零に不利に働くことならば、コナンとしてもあるいは欺瞞で誤魔化すしかないだろう。

 子供のふりで無垢に首を傾げて見せる。

 

「なんのこと?」

「まず確認だけれど、君は安室透という男の正体を知っているのよね?」

「……安室さんが信念のある人だっていうことなら、知ってるよ。そのために手を汚してるってことも」

「!!」

 

 佐藤刑事が息をつめ、そしてぎゅっと拳を握りしめて歯を食いしばった。

 高木刑事が困惑した顔で隣の佐藤刑事を見つめている。

 

「あの、佐藤さん?僕、話がよく見えないんですけど…どうしてコナン君に聞き取りする必要があるんですか?」

「捜査一課にもまだ伝えてないことだけど」

 

 堪えた吐息と共に憤りを吐き出すと、佐藤刑事は声をひそめた。

 

「この間の泥惨会本部が何者かによって襲撃され、幹部以下22名が惨殺されていた件」

「ああ、あれですか。なんか公安が案件を持っていっちゃった奴ですよね」

「あれの犯人は………安室透よ」

 

 やっぱりか、とコナンは思った。

 泥惨会がバーボンにまとわりついて嗅ぎ回っていると聞いた時からそうなるのは時間の問題だと思っていたが、予想より動きが早かったのは意外だった。

 組織は己の足跡が残るのをひどく嫌う。

 それなのに邪魔くさく纏わりついてくる部外者が現れたのだから、早急に対処したくなるのは自然というものだ。

 

「ちょっと、え、ど、どういうことですか佐藤さん!?だってあの人は、」

 

 警察官、と言おうとして慌てて高木刑事は自分の口を自分で塞いだ。

 コナンは少しだけ考えてから、静かに言葉を紡いだ。

 

「そっか。泥惨会は組織からも目をつけられてたって言ってたから、そうなるんじゃないかとは思ってたけど。やっぱり安室さんが動いたんだね」

「……コナン君は彼のやってることがわかってて、協力者をしてるのね」

 

 どこか責めるような口調だ。

 コナンはアイスコーヒーのストローをくるりと回してから、何気なくミルクをそこに加えた。

 じわりと、白と黒の混ざりゆく液体をじっと見つめる。

 コナンはブラック派だが、なんともなしに加えたそれについ視線が向いてしまう。

 

 どう話したものか、悩ましい限りだ。

 

「安室さんの優先順位は至極明確だよ。まず『もう一人』を守ること。次に『もう一人』のためになること。それを優先してる」

「もう一人?」

 

 佐藤刑事が訝しげに眉間に皺を寄せた。

 

「ゼロさんだよ。降谷零さん。安室さんはいつだって自分の相棒を守るために動いてる」

「言ってる意味がわからないわ。安室透は降谷零の偽名でしょう」

「違うよ。彼らにとってそれは間違いなく本名だ。……だってさ、」

 

 コナンは言葉を切った。

 

「真っ当な正義感を持った若い警察官が、必要だとしても無辜の人間を殺害しなければなくなったとして。正気でいられなくなることって、当然想定されうるよね?」

「……!!!」

 

 佐藤刑事が鋭く息を呑んだ。

 対して、高木刑事は静かに目を伏せたまま無言だった。

 この人もどこまで知っていてどこまで理解しているか、コナンには分からなかった。

 案外聡い高木刑事なら、予想もつかぬところから真実を明らかにすることがあるから。

 

 しばらく考え込んでから。

 コナンは賄賂として渡されたケーキをモゴモゴと頬張った。

 

 佐藤刑事が鬱々と俯いたまま口を開く。

 

「私たちがいつも話していた彼が、作られた人格だったってこと?」

「だね。口ぶりからして、主人格はゼロさんの方じゃないかな。元来人付き合いが好きじゃないみたいであんまり出てこないけど」

 

 コナンから見て、二人は実に補完的な関係だった。

 それも当然、降谷零は精神的窮地にあたって、自分の望む相棒を生み出したのだから。

 

 自分に代わり人好きで人付き合いが得意で、人殺しも厭わない自らに忠実な絶対的肯定者。

 哀れな操り人形のように、親を慕う子供のようにただ一途に主人格を思っている。

 

 そうやって歪に己の心を支えねばならぬほど、降谷零にとって組織での活動は辛いものであったのだろう。

 

「佐藤刑事は許せない?ゼロさんのこと」

「………彼自身が許されたいと思ってないなら、私ぐらいは責め立ててあげないとと、そう思っただけよ」

「優しいんだね、佐藤刑事は」

 

 安室透は降谷零の絶対的な味方だ。どうであれ主人格を肯定し、守ろうとする。

 主人格のためなら親友すら切り捨てて悪事を働く、そのような決意を滲ませた歪な男。

 

 彼らの善性は降谷零が「日本を守りたい」と思っていることに担保される。

 主人格がそう思っている限り彼らは大局的に日本の不利益になることをしないし、だからこそ公安は彼らの悪事を黙認している。

 

 コナンが恐れてならないのは、主人格たる降谷零が日本への愛を捨て去ってしまわないかということだ。

 その時彼らは真に正義に対する敵になる。

 ただ手段として敵を殺す、怪物が誕生するのだ。

 

 ガヤガヤと騒がしいレストラン内にて、コナン達の重い沈黙は子供の喚き声、家族の団欒そのほかに紛れて消えていった。

 黙ったままの高木刑事が僅かに視線を横に逸らした。

 

「あの。改めて思えば。僕の目から見て、ですけど」

 

 コナンが視線を向ければ、高木刑事は運ばれてきていたジェラートをひと掬いして口に含んだ。

 

「安室さんと居ると、まるでそこに二人の人間がいるように思えました」

 

 多重人格とかじゃなくて、ただ体が一緒なだけの兄弟か何かのような。

 ………ああいえ、よくわかんない感想ですよね忘れてください。

 

 高木刑事はそう言ってもう一度ジェラートを急いで口にかっこんだ。

 そして冷たさが効いたのか、梅干しのように顔を顰める。

 

 兄弟。

 

 コナンは少しだけそれを思い、頷いた。

 彼らの関係性は、確かに唯一無二の兄弟のそれに似ていただろう、と。

 




リクエスト「佐藤刑事(と高木刑事)がコナンにバボ主/降谷のことを聞く」「第三者から見たバボ主」です。
次は…どうしようかな…。
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