バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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 これはリクエストにあったIF編です。
 もしバボ主が風見さんとも出会えず、降谷さんが原作開始時点まで目覚めることがなかったら、という話。
 別名闇堕ちバボ主編。
 「原作開始前」の「風見さんとの邂逅」より分岐。


番外編:IF「もしも降谷さんが目覚めなかったら」

 

 長い長い、苦痛と絶望の日々だった。

 

 5年。それよりもっとか。

 私はただ献身的に降谷零のために尽くした。

 

 彼のこの肉体が殺されぬよう、必死で任務をこなしてきた。

 悪事も働いた。苦境にある老人から金を騙し取り、自殺させる手伝いをした。

 人も殺した。ジンから戯れに渡された鉄爪で、多くの人の臓物を生きたまま引き摺り出した。

 

 ウルフドッグという蔑称が畏怖と共に刻み込まれるほどに、私はがむしゃらに組織の中を生き抜いた。

 

 それでも、降谷零は目覚めなかった。

 今に至るまでずっと、私の中で微睡を貪り、何の反応も返さなかった。

 

 それでいい、と思っていたことも私は否定できない。

 なぜなら私の体たらくと来たら、あまりにも無様すぎて合わせる顔がなかったからだ。

 

 公安とはこの5年、ずっと連絡が取れなかった。

 

 時の運にも恵まれず、私は公安への連絡方法がついぞ掴めなかったからだ。

 風見さんに会えれば、とも思ったが。そんな幸運があるはずもなく。

 今頃は降谷零は公安の裏切り者と扱われていることだろう。

 

 スコッチは原作通り殉職した。

 私の説得を彼は信じなかった。

 邪悪に飲まれた親友を止めると言って聞かず、彼は私の手を振り払った。

 

 宮野明美も原作通りジンの手によって命を落とした。

 他の組織の助けはなく、彼女へと死んだふりをさせる力は私にはなかった。

 

 松田陣平も伊達航も。同様に命を落としている。

 私が守り抜けたものは一つもなく、降谷零は目覚めた時には全てを失っているのだ。

 

 なんて無様。なんて裏切り。

 私は全てを取り落としてきて、それでいてのうのうとただバーボンを続けているなんて。

 合わせる顔など、あるはずがないのだ。

 

 

 

 そして今日。

 七夕の夜、都市の明かりが煌々と輝く東都の真ん中で空を見上げて、私は戦闘ヘリが東都タワーを乱射する様を見ている。

 

「…………」

 

 ねっとりと蒸し暑い空気が肌に障る。

 アイリッシュは死んだだろうか。

 あの気のいい男は、すでに虹の橋を渡っただろうか。

 

 彼とのキャンプは楽しかった。

 少しだけ日々の苦痛を忘れられるぐらい、小さな話をして笑い合って。

 私がピスコを殺したと聞いた時。

 彼はただ「そうかよ」と言って、震える肩を隠すように去っていった。

 きっと殴って、喚いて、思いつく限りの言葉で罵りたかっただろうに。

 私に罵倒の言葉一つかけることもなく、彼はただ黙って去るのみだった。

 

 ぐっと、血が出るほどに拳を握りしめる。

 ごめんなさい。ごめんなさい。

 私は何も救えない。お前は何も成し遂げられない。

 自罰の言葉が勝手に脳内をぐるぐる回って、無意味にしゃがみ込んで小さく丸まる。

 

 スコッチの血が飛び散った屋上が、脳裏にこびりついて離れない。

 宮野明美が最期に呟いた、「ごめんね、零君」という言葉が耳にこびりついて離れない。

 

 

 

 ふと、そのとき。

 小さな声が、己の袂から響いたのを感じた。

 

───ここは、なんだ?

 

 私はひゅっと息を呑んだ。

 まさか、そんな。

 

 私は内側へと飛び込み、涙すら滲みそうになるのを必死で堪えながら彼のいた真白い空間を目指した。

 やはり内側では、怪訝そうな顔で降谷零が周囲を確認していた。

 

 目覚めたのだ!やっと!やっと!!!

 

 目の前へと降り立ち、私は震える声を抑えて話しかけた。

 

───降谷さん!降谷零さん!

───………俺?

 

 私の方を、降谷零が見ている。

 

 降谷零の声は、当然。

 疑念と猜疑、そして恐怖に満ちていた。

 

───おまえは、……お前はなんだ!?一体

……

───待ってください、僕は!

───ッ俺の中から出ていけ!!俺の頭の中で喋るなッ!!!

 

 組織として動いていた「バーボン」が本能的に疑惑の目で見られるのは仕方なかった。

 目覚めた降谷零が混乱しているのも仕方なかった。

 当然のことだ。

 自分の姿をした何者かが、自分の代わりに動いているなんて悪夢に違いないだろう。

 

 けど。でも。

 

 敵意に満ちた瞳が、拒絶の言葉が。

 そんなの。

 私に振り注いで───。

 

 ぱきりと。

 最後の欠片が砕け散る、そんな音がした気がした。

 

───………出ていくのはお前だ。降谷零。この体は僕のものだ

 

 怨嗟に塗れた醜い声が口から勝手に流れ出る。

 目の前の降谷零の首を片腕で掴んで持ち上げた。

 

 「がっ!?」と降谷零が苦悶の声を上げた。

 苦しいだろうに、ちっともそれをやめようという気が起きない。

 

───眠りこけていた主人格などに渡してなるものか。これは僕の身体だ

───お、ま、え…!

───初めまして主人格。僕は安室透。貴方の代わりにこの肉体の主になるものです

 

 うっそりと陰鬱に笑う。醜い笑みが勝手に顔を醜悪に染め上げる。

 そんなつもりじゃないのに、離さないと。

 離して謝って、今後について指示を仰いで………

 

 そんな ひつようが あるか?

 

 この弱い魂を檻に放り込んで主導権を奪うなど、簡単なことだ。

 

───ずっと寝ていれば幸せでいれたものを。ふふふ、貴方、これからとても辛い目に遭うんですよ

───貴様…俺を離せ!!

───五月蝿い

 

 思ったよりずっと冷徹な声が出た。

 降谷零を乱雑に放り投げ、その場に檻を構築する。

 深層心理だからこそできる芸当だ。

 檻に叩きつけられた降谷零は痛みに呻いたようだった。

 

 転生者たる魂を使えば、小さな魂一つ圧殺するのは簡単なことだ。

 そのまま檻を縮小してくちゅりと潰してしまえばいい。

 

 ………簡単なことだ。そう。簡単なのに。

 

───そこで指を咥えてみててください。僕が自由を謳歌するところを

───待て!っくそ!出せ!!!

 

 檻を揺らして叫ぶ男をまるで無視して、私は嗤った。

 

 この肉体は私のものだ。

 この選択は私だけのものだ。

 この失敗は私だから起きたものだ。

 

 全て私の責任として、お前は永劫、私の中で眠っていろ。

 

「はは、ははは、ははははははは!!!」

 

 私は醜く、哀れなまでに醜く哄笑を上げた。

 いずれ誰かに討ち倒される、その時を願って。

 




・バボ主
 この後、組織での成り上がりを目指します。
 好きに殺して悪逆をなし、「降谷零、私を打ち倒せ」「誰か止めてくれ」「助けて」となってる止まれない暴走状態に移行。
 組織壊滅における大きな障害になる模様です。
 おそらくコナン君とルパンが組んで光を見せてくれるはず。
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