バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
本日、東都の婚活パーティーに参加しているなり。
……いや、違うんだよ。
誤解しないように言っておくと、探偵業の一環で結婚前に女性の素性を調べて欲しい、と依頼があったのだ。
バビロンの黄金伝説を終えて日本に戻ってからは、ジンへの直接の報告を済ませて、公安にもある程度仕事の報告をして。
その後は探偵業の実績積みだ。
それで素行調査依頼を受けて、女性について調べていたのだが……婚姻間近だというのにその女性は婚活パーティーに参加することが発覚。
それでどういうことか調べる、ということで私も件の婚活パーティーに参加することになった、というわけだ。
だから私が婚活しているとかそう言う話ではなく。
至極不愉快そうな降谷さんも据え置きである。
そんなわけで。
私が東都23区内にある会場の部屋の隅で声をかけられないようにスマホをいじっていれば。
ふと、声をかけてくる影が一つ。
「あれ、奇遇じゃないか。こんなところで会うなんて」
「貴方は……ああ、萩原千速さんですね。阿笠博士が攫われた時にはお世話になりました」
声をかけてきたのは、隣に大柄の男を連れた女性……萩原千速さんであった。
大柄の男はおそらく神奈川県警の横溝重悟だろう。
横溝警部はむむむという顔をして片眉を上げてこちらを見た。
「誰だ、そこの男は」
「前にあった事件で知り合った探偵ってだけさ」
ふーん、と訝しげな様子を隠そうともせず横溝警部が口を引き結ぶ。
まぁ確かに知り合いの女性にチャラそうな髪の男が近づいてたら警戒するわな。
などと考えたら、降谷さんが内側でムッとして声を上げた。
───俺はチャラくない。訂正しろ
───人の思考に文句つけないでくださいよ。しかもですね、これはあくまで他人から見たらの話でして
───理解はできるけど納得はできない
ぶすっと降谷さんは腕を組んで私を威圧した。
しかも隣にずずいと近づき、そのまま私をドスドスと肘打ちするではないか。
まあ、降谷さんとしても自分の地毛で不当に軽く見られるのにはほとほと嫌になっていたのだろう。
よしよし、落ち着きたまえ降谷零。
あと肘が脇腹にめり込んで痛いからおやめなさい。
とまあ、その場はその程度の話をして千速さん達とは別れた。
お互い要件は別だからな。
イベントが始まれば、まず最初に自己紹介タイムだ。
バラバラに割り振られた席に座り、それぞれ10分間トークタイムとなる。
割り振られた席は男3女3のオーソドックスな席だった。
あくまで仕事だし特に自分から行くつもりはなかったので聞きも喋りほどほどに。
相槌を打つことに重点を置き、振られたら少しばかり気の抜けるトークをする。
これで嫌われることはないだろう。
だが、同席した男性が少々不甲斐なく、私に対してみるみるご婦人達の好感度が高まっていくのが感じ取れた。
まて、想定ではもう少し好感度を分散させるつもりだったのに…。
右隣!もうちょっと自慢話は少なく!人の話を遮らない!
くっ、私が話題の流れを乗りこなせない…だと!?
私がいくら立てても誤魔化しようのない地雷臭に、女性陣は反動のように私に好感度を集めてゆく。
どうすんだよこれ。早く席替えしてくれ…!
まぁ、ちょっとした地獄絵図が繰り広げられる事故は起きたものの、イベントは順調に進んでいく。
そんなこんなで、フリータイムには私の周りに女性の人だかりができるに至っていた。
30代ほどの女性が数人、手を取って腕を組みたそうにうっとりと私を見つめている。
うーーん、おさわりは厳禁ですので。当方はそういう店ではありませんので。
そのせいで動きづらいわ目標の女性に接近できないわで散々である。
まさに完璧に失敗だった。これには降谷さんも小言をぶつぶつと漏らさざるを得ない。
───安室、任務失敗だ
───はい。面目しだいもありません
───もっとほどほどにできただろう。ほんの少し無愛想にするとか、色々
わざと嫌われる行動もできなくはなかったのだが、心が痛すぎるので実行に移せなかったんだよな。
あのちょっと「うわ…」って思われるあの瞬間が心に大ダメージを与えて、その。すんません……。
しゅん、と心の中で正座している私に対して、向こう側では神奈川県警のお二人は二人で親しげな空気に包まれている。
周囲の男性に嫉妬の視線を喰らっているのにまるで気づかないのか、横溝警部がなにやら話し込んでいる。
萩原千速さんもとびっきりの美人だからな。
そりゃ男性陣も放ってはおかないだろうさ。
とそんなふうに千速さんを見ていたら女性達に袖を引かれた。
「ねえ、どこに住んでらっしゃるの?」
「お仕事は?料理ができる女性は好み?」
「僕は私立探偵を少々。貴方はたしか都内のベンチャー企業に勤めてらしたんですよね?あの辺りというとゲームの新興企業がありましたっけ」
「!!ええ、そうよ、私もゲームの企画デザインの仕事をしてるの!覚えていてくれたのね!」
「さすが探偵をしてらっしゃるだけありますのね!」
「ははは。この程度自慢できるほどではありませんよ」
と、その時緩んでいた仮面の紐がするりと解けて、素顔が丸見えになってしまった。
嘘でしょ、エロ本じゃ無いんだからそんなハプニングある!?!?
まあ!きゃあ!と喫茶ポアロを思わせる黄色い悲鳴が響き渡る。
慌てて仮面を拾って付け直すも後の祭り。
女性の視線を一心にカッさらい、男性陣の「けっ」「わざとらしくしやがってよぉ」というやさぐれた視線も同時に行き交う。
少しふくよかなお嬢さんが前へ出て、「まぁ、素敵!この会の後どこかで飲み直しません?」と堂々と誘ってくる。
もはや何のためにこの場所にいるのかわからない。
イライラし出した降谷さんが「チッ」と舌打ちして内心でせわしなく彷徨いている。
ホントすんません降谷さん…この会が終わったら気軽に宅飲みしましょう…。
「すみません、このあとは僕には知人と予定がありまして。お誘いいただき光栄ですが…」
「あら、その知人というのは?」
「仕事の上司です。気難しい方でして、ご同席していただくわけにもいかず」
上司(降谷零)である。
気難しいし女性嫌いで人嫌いだ。
決して他人を同席させるわけにはいかない飲み会なので、これは間違ってはいないのである。
と、フリータイムが終われば次はお互い選ばれたカップル同士で別室対談だ。
もはや帰りたい気持ちでいっぱいだったし、苦し紛れに私は千速さんを選んだ。
どうやら千速さんは人気らしく、アプローチタイムと称して10分間の素顔での話し合いがあるらしい。
まぁこれ以上面倒くさいことにならないならなんでもいい。
そのようにして順番を待っていれば。
凄まじい悲鳴が聞こえて、次の瞬間コナン君が脱兎の如く外からエントリーしてきたのであった。
いやホントどこでもいるなコナン君!?