バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
本日は北海道、函館まで来ております。
毛利さん達について片道2万円、一時間半ほどの空の旅だ。
「いつもの礼だ!これぐらい俺が持つ!」とか言って往復4万の旅費を毛利さんが払ってくれそうになったので、慌てて丁寧に断るシーンもあり。
家事手伝いは私の気持ちの問題だし、この程度マジで端金だからな。
そんなことで毛利さんに負担をかけるわけにはいかない。
毛利探偵には「ったく、お前は人を頼るってことを知らねぇ!」と苦言を呈されたあげく私の髪をぐちゃぐちゃにされたが、それはそれ。
私としても毛利さんには助けられているので、恩を感じているのは私達の方なのだ。
偽りでしかない私たちを家族扱いして大切にしてくれる。
怪しい点を飲み込んでそれでも信じて力になってくれる。
それだけで、私たちは毛利探偵に救われた気持ちになるのだ。
ああそれと、今のところ私がマスコミに追われることもなく、平和に過ごせているところである。
だから毛利さんやポアロに迷惑をかけることなく過ごせている。
おそらく写真に写った私の特定に時間がかかっているのだろう。
喫茶ポアロの店員・安室透は有名のため時間の問題ではあるのだろうが。
まぁ、そんなわけで現在、北海道なり。
要件は斧江財閥に届いたという怪盗KIDの予告状についてだ。
東窪榮龍という、無名の鍛治師が打ったとされる脇差2本を狙っているのだという。
ビックジュエル専門の怪盗KIDにしては奇妙な予告に、捜査二課の中森警部も首を傾げるばかりだ。
しかし私は知っている。
その真相は、先代怪盗KIDである黒羽盗一氏が盗まなかった理由を探るためであり、子が親の足跡をめぐる事件であると。
それ即ち、「劇場版名探偵コナン 100万ドルの五稜星」に違いない。
屋根の上で月を眺めて、私は目を細めて函館の風を感じていた。
いい景色だ。
捜査会議を抜け出してこっそり斧江財閥の屋敷の屋根に登ってまったりしていたのだが、きっとバレたら怒られるだろう。
追及されたら「KIDは大抵空から逃げるので先回りしていた」とでも言い訳するつもりだが。
たぶん毛利探偵にはゲンコツを食らってしまう気がする。
秋の北海道の冷たい風が肌を打つ。
私はそっと目を閉じて息を吸った。
降谷さんが少しだけ笑って声をかけてくる。
───どうした、やけに感傷的じゃないか
───いえ。いつか僕たちの犯した罪を毛利さんが知った時。彼はどんな反応をするのかなと思っただけです
───そんなの決まってるさ
降谷さんが私を押し退け、体の主導権を奪い取って立ち上がった。
「───それでも俺たちにまっすぐと向き合い、家族として真摯に『罪を償え』と言うのだろうさ」
眼下の街の明かりが美しい。時刻は夜10時。
月明かりが雲の狭間から差し込み、静謐な冷気が胸を満たす。
ふと、下が俄かに騒がしいことに気がついた。
───どうやらKIDが動き出したようだな
───うわっ、この位置取りって服部君バイクで2階の窓突き破ってくる気じゃないです!?今のうちに避難しときましょう!
───マジか。弁償どうする気だ。あのステンドグラス結構するぞ?
などと話している間にも急激に下から上がってくる気配が二つ。
怪盗KIDと服部平次君だ。
天井のガラス窓が破られ、そこから巻取り式のフックを使って怪盗KIDが屋根の上へと顔を出す。
そして屋根の上に立つ私を認め、うげっ!?!?という顔をした。
「やあ怪盗KID。いい夜だね」
「いやなんでアンタここに居んだよ…ハシゴも何もなかっただろ」
「君と同じように巻取り式のフックを使ったんだよ。君も来るとは思ってたからね」
じり、とKIDが重心を落として私の動きを警戒する。
この距離だと私から逃げるのは不可能に近いからな。
KIDとしてはライオンの檻に迷い込んでしまった気持ちなのだろう。
流石に鉄爪を使う気はないが、彼にはそれは分からないだろうし。
後ろ手に煙幕玉をするりと出し、KIDは冷や汗を流しながらニタリと笑って見せた。
「そういや、アンタに伝言だぜ」
「僕に…誰からだい?」
「とある魔女からだよ。『旅は楽しめたかしら、高次より来たりしもの。神より降りたヒト』ってな」
「!」
ご丁寧にKIDは声色を変えて戯けたように肩をすくめた。
自分で言っていて意味がわかっていないらしく、「俺に意図を聞いても無駄だぜ。俺だってわかんねぇんだから」と首を振る。
魔女、と言うと「銀翼の奇術師」の時に出会ったマジック快斗の登場人物、小泉紅子が当てはまるだろう。
私のことを「高次よりこぼれ落ちたるもの」と言っていたし、多分間違いない。
しかし……旅?神より降りた?
なんのことかわからない。本物の魔女が言うんだから意味のあることなのだろうが…。
まさか、私に未来の記憶としか言えない何かがあることと関係があるのだろうか。
「ふむ。伝言ありがとう怪盗KID。お礼に今回僕は君のことを見逃すよ」
「マジ?っしゃあ!」
「……とはいえ、僕以外の動きは知らないから頑張ってね?」
言葉と同時に建物中央のステンドグラスが派手に砕け散り、そこから怒り心頭という顔をした服部君がバイクに乗って飛び出てくる。
「えぇぇえ!?!?」
「逃がさん言うたやろ怪盗KID!!舐めんなやボケ!!!」
「いやお前、後からすごい怒られんだろそれ…」
それはそう。私はKIDの隣で頷いた。
そして脇差で切り掛かった平次君の邪魔にならないように脇に避けて観戦に徹する。
おお、さすが剣道部のエース。基礎がしっかりしていて安定感があるな。
体も鍛えているのだろう。真剣を振っているというのに重心が流れた様子がない。
私なら飛び道具での横槍を警戒してもう少し周囲にも警戒を向けるが…基本一対一の剣道に身を浸していたらこれでも警戒している方か。
お、均衡が崩れた。
やはり斬り合いとなれば服部君の方に軍配が上がるな。
押し切られて体勢を崩したKIDが、そのまま帽子をギリギリ切りつけられる。
月明かりに晒されるのは怪盗KIDの素顔。工藤新一のいとこたるそっくりの御尊顔である。
そのまま、焦ったKIDはハンググライダーを広げて夜の街へと消えて行った。
呆然としたままの服部君が刀を納め、思わずと言った調子で呟いた。
「あいつ……工藤にそっくりやったな」
「だね。親族と言われて違和感のない顔つきだったよ」
「うおっ!?!?いつからおったんや安室サン!」
「……え、今まで気づいてなかったの?唇の恨み強すぎないかい?」
「ちゃうわい何言うてんねん!!!!」
顔を真っ赤にして服部君は怒鳴った。
「キッドVS高明 狙われた唇」で中途半端に和葉ちゃんと服部君の関係を煽ったからな。
その影響でより濃密に和葉ちゃんに化けたKIDといい雰囲気になっていてもおかしくない。
ふふふ……すまんね青少年。
せいぜい幼馴染との恋を頑張るがいい。
などと若人を揶揄いながら、本日の夜は過ぎて行ったのであった。
当然、ド叱られる服部君を添えて。