バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
函館山の麓にある漁港で殺人事件が起こったらしい。
すでにネットニュースに上がっているが、今日の早朝に弁護士の男が殺傷されると言う事件があったと取り上げられている。
それを受けて付近の小中学校は臨時休校となったのだとか。
私は開いていたその記事を閉じ、そっと目の前に佇むホテルを見上げた。
ここは函館市内にあるホテルだ。
そこの最上階のスイートルームに、私の目的としている人物が宿泊している。
ブライアン・D・カドクラ。
日系アメリカ人の投資家で、裏では武器商人をしているバリバリの悪党だ。
無論世情にも耳が早く、裏社会の怪人であるウルフドッグが北海道に来てKIDと対峙したことも情報として入手していたらしい。
今朝、私の部屋に手紙が差し込んであったのだ。
「話がしたい。このホテルにて待つ」と。
私はそれを受けてやってきたわけだが……ここからでも感じる悪意の濃密なこと。
部屋に入った瞬間銃火器の一斉掃射でお出迎え、とかあっても何もおかしくない濃密さだ。
降谷さんが眉間に皺を寄せてため息をついた。
───どうする?あからさまに罠だが
───罠ごと踏み潰してしまえばいいでしょう。この手の輩は放っておいても絡んできますから。早めに潰すに限ります
───なるほど。一理ある
というわけで、正面からお邪魔します。
ホテルの受付にて「最上階のブライアン・D・カドクラさんに呼ばれて来た者ですが」と言えば。
「ああ、話は伺っています。どうぞこちらへ」といってスムーズに通してくれた。
専用のカードキーで最上階まで登ると、入ってすぐに部屋の扉が見えた。
どうやらワンフロア全てが一部屋になっているらしい。
ノックすれば、部下のスキンヘッドの男が出迎えた。
男は随分と緊張した様子で私を見た。
「………入れ」
「ご丁寧にありがとうございます。失礼しますね」
ニコリと微笑んで威嚇しておく。
男はごくりと生唾を飲んだようだった。
広い窓の並ぶ開放的な作りの部屋に、ソファが二つ。
そこに座るのは葉巻タバコを加えたブライアン・D・カドクラだ。
カドクラは灰皿でタバコの火を捻り消し、小馬鹿にするように笑った。
「流石はウルフドッグ。誰とも知らん奴の拠点に単独で乗り込むことぐらいわけもないと言うことか」
「この部屋にいる方々のことですか?どうも皆さんサブマシンガンで武装しているようですが……僕はただお呼ばれしたから来ているだけですよ?」
「フン。これは私の単なる自衛手段に過ぎん。かの有名な化け物を相手に、私も多少は武力を持っておかんと格好がつかんのでな」
この部屋に屯するカドクラの部下は皆銃火器で武装した実に物騒なものだ。
とはいえ、この程度なら全て弾き返して全滅させるのに10秒もかからないだろう。
新しいタバコを一つ、火をつけてカドクラは私を正面に見据えた。
「それで、貴様も斧江圭三郎の残した宝を狙っていると言うことでいいのか?」
視線は鋭い。
なんとも、みみっちいものを狙う御仁である。
「そんなことで呼び出したのか」と降谷さんが内側で鼻白んだ。
斧江圭三郎の宝とは、斧江財閥の最盛期に当主の斧江圭三郎が隠したとされる「戦況を一変させるような兵器」だ。
当時は第二次世界大戦中。
その戦況を一変させるというのだから、カドクラが狙うのも当然といったところだろう。
だが残念ながら、私たちはその正体をすでに知っている。
以前にルパンが酒のつまみに話していたことで、その呆気ない…というか肩透かしの顛末を聞いていたからだ。
私はうーん、と唸って腕を組んだ。
「正直、宝には興味ありませんね」
「なら我々の邪魔をするな。邪魔立てすればこちらも対応を考えねばならん」
威圧的に周囲の部下たちがこちらへ銃口を差し向けた。
うーん、もう少し穏やかに話してくれるのなら宝の正体を教えてあげても良かったのだが。
これはちょっと私たちを舐め過ぎである。
私はするりと両腕に仕組んだ鉄爪を取り出して、ペロリと舌なめずりした。
「立場をわきまえてくれませんか?僕は僕の好きなように動きます」
「お前が連れ立っていた毛利小五郎とかいう探偵のその家族の命が惜しくないのか?」
「あはは!やだなぁ、一緒にいるのは組織の命令で毛利小五郎を探れと言われてるだけですよ」
「………」
「まぁ、調査対象を殺されるのは面倒なので………ここで全員」
殺しておきましょうか。
殺気を全開にして鉄爪を遠慮なく広げて見せる。
毛利さんの名前を出されれば、私たちも黙ってはいられない。
降谷さんも内側でするりと目を細め、「死にたいらしいな、こいつ」と酷薄に微笑んでいる。
そこでカドクラの動きが変わった。
思わずトリガーを引こうとした部下を、カドクラが「やめんか馬鹿者が!!!」と激昂して止めた。
どうやら私の方の戦力を測っていたらしい。このままでは殺されるのは自分たちだと気付いたのだろう。
冷や汗を流してカドクラが部下の男を蹴り飛ばした。
カドクラも危ない賭けに出るものだ。
「……ふん。ただの冗談だ」
「なんだ、冗談だったんですか。それは失礼をいたしました」
「貴様が斧江圭三郎の残した宝に興味がないならそれでいい。手を出してくれるなよ」
「ふふふ。僕の仕事の邪魔をするようであれば確約はできませんが。努力はしましょう」
これ即ち「毛利一家を狙わないなら手は出さない」と言う意味で、コナン君は間違いなく刀に手を出すからイコール「約束を守る気はないぞ」という意味である。
これぞ玉虫色の回答ってやつだ。
私は「それでは」と言って部屋を後にする。
慄いたような部下たちの視線を浴びながら扉を閉め、エレベーターにて一階へ。
すると、ホテル入り口で中森警部に扮した怪盗KIDと鉢合わせした。
うーん、このままだと対私用に全力武装したカドクラとKIDが対峙する羽目になってしまう。
私はKIDをちょいちょいと手招きした。
「KID、ちょっといいですか?」
「…なんで当たり前みたいに俺の変装を見破ってくんだよアンタは」
「まあそれはいいから。今カドクラの部下はサブマシンガンで武装してるから、正面から入る時は気をつけてね」
「うげっ!?なんでそんな、日本だぞここ…いやそれお前対策ってことだよな!?」
「大正解」
「ウッソだろおい、責任取れよ!!!それ用の装備持って来てねーぞ!」
「まぁそこはほら、気合いでなんとかするとか」
「適当いってんじゃねーよ!」
がっくしと肩を落としたKIDを適当に慰め、私は手を振ってからその場を後にした。
若人よ、頑張るがいい。
サブマシンガンの弾は割と気合いで避けられるから、頑張るのじゃぞ。
・カドクラの毛利一家殺害発言
地味にバボ主も降谷さんも二人とも「屋上へ行こうぜ…久しぶりにキレちまったよ…」となっていた。