バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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明日こそ多分お休み…かな?


100万ドルの五稜星③

 

 夕方。

 多少の観光と買い物をしてホテルに帰ってくると、蘭ちゃんと服部君がロビーのソファでまったりとしていた。

 

 むっつりとした顔で観光名所に丸をつけた地図と睨めっこする服部君と、それをそわそわとした様子で遠巻きに眺める蘭ちゃんのセットだ。

 しかし服部君は何をしているんだ?

 

 気付かれないように観察すれば、服部君の顔が若干赤い。

 さりげなさを装って蘭ちゃんの隣に座る。

 

 ああ、なるほど。告白ポイントの選定か。

 

 私が大きく頷くと、それに同調したように蘭ちゃんが声を潜めて話しかけてくる。

 

「ねえねえ安室さん!あれってやっぱり…」

「ですねぇ。告白、するんじゃないですか?」

「わぁ…!」

 

 高揚に頬を赤く染める蘭ちゃんは実に女子高生といった感じだが、集中しているように見えて耳ダンボだったらしい服部君はたまらない様子だ。

 聞いていられなくなったのか、「ちちちちゃうわい!!そんなんやないわ!!」と叫んで振り返った。

 

「でもそろそろ告白はしたいと思ってたんだろう?それもいい景色の雰囲気満点のところで」

「うぐっ…」

「いいと思う!服部君、頑張って!!」

 

 蘭ちゃんの声援を受け、服部君はぐうの音も出ないのか地図の後ろに顔を隠した。

 そのうぶな様子に蘭ちゃんと二人してにっこり顔を合わせるものだから、余計に服部君は恥いるばかりである。

 

「……そ、そんなことより。安室サンもハリウッド女優とラブラブだって話やないか。そっちはどうなんや?」

 

 その言葉に蘭ちゃんが驚愕に目を白黒させてこちらを見た。

 服部君も余計なことを…。

 

 内側で降谷さんが吐き気を催したような顔になっちゃったじゃないか。

 

「え、え、え!?!?安室さん、そうなんですか!?」

「いやぁ、誤解ですよ。彼女は単なるクライアントで」

「女優の方はアメリカの超有名人。一緒に高級レストランで食事をして、いい雰囲気だったそうやないか」

 

 服部君は形勢逆転とばかりにニヤついている。

 こなくそ…。

 写真を撮られた時はマジで仕事の話をしていたというのに、米国での報道は加熱。

 「そのままホテルへと入って行った」だとか「濃密なキスをした」だとか言いたい放題だったからな。

 

 私は「ごほん」と咳払いしてジト目を作った。

 蘭ちゃんがドギマギした顔をしているので、頭を撫でておく。

 

「本当に仕事の話しかしていないから。それと、ムードのある告白絶景ポイントなら僕としてもおすすめがあるよ」

「!……どこや、言うてみ」

「夜の函館山からの景色は100万ドルの夜景とも言われていて、雰囲気抜群じゃないかな。明後日なら夜も晴れていてちょうどいいと思うよ」

 

 やや考え込んだ服部君が口の中で函館山、と数回転がした後、やや遠くを見て独り言のように言葉を落とす。

 

「それ、ビックベンよりも上か」

 

 どうやら工藤君以上の告白を成功させたい意地があるようだ。なんともはや。

 優しい蘭ちゃんは「断然上よ!!」と力強く頷いた。

 

 そこでするり、と今まで黙ったままだった降谷さんが唐突に表に出た。

 

「───女々しいぞ、君。好いた女のためならその人にとって最良を求めるのみだ。他の男を引き合いに出すべきじゃない」

「!」

 

 降谷さんの言葉を聞いた服部君はややムッとした顔をしたが、言い返したりはしなかった。

 どうやら一理あると思ったらしい。

 「まぁ、せやな」と言って函館の地図を折りたたみ、ポケットの中にしまった。

 

「というか、なんや今の。なんでキャラ変すんねん」

「ちょっとワイルド系の安室さんでしたね。似合ってました!」

「そうかな?僕もちょっと雰囲気変えてみようと思ってね」

 

 などと適当な言い訳をすれば、怪訝な顔をした服部君が「ほーん」と私をまじまじと見て唸ったのだった。

 

 

 

 

 

 そんな一幕がありつつの、翌朝である。

 少し寝坊したら、どうも函館が騒がしいようでパトカーの音が鳴り響いていた。

 

 慌ただしくパトカーに乗り込む警察官達の話に耳を傾けてみれば、どうも函館市内で銃撃戦が繰り広げられているらしい。

 とんでもねーな。

 

 凄まじいデッドレースが繰り広げられているようで、ここからでは足のない私たちでは追いつけそうにない。

 どうしたものか、と考えて降谷さんに声をかける。

 

 降谷さんはとっくの昔に目が覚めていたようで、肉体を多少の筋トレで動かしていたらしい。

 体の主導権を私へと投げ渡して降谷さんはふうと息をついた。

 

───先回りしたいんですけど、ルートとかわかりますか?

───どうも大まかには警察署に向かっているようだ。コナン君が指示を出している。ルートを計算すれば先回りもできるが、どうする?

───そうしましょう。流石にコナン君が銃撃されているのは看過できません

───よし、ならタクシーで行くとしよう

 

 私がそう言い出すのを降谷さんも予想していたのだろう。

 すでにコナン君と探偵バッジで連絡を取り合っていたのか、出しっぱなしで机に置いてあるバッジを懐にしまって肩を回した。

 

 ホテルから出れば、すでに呼ばれていたらしいタクシーが私たちを迎えてくれた。

 うーん。これは完璧に寝坊してしまったらしいな。

 いや、これは叩き起こされる直前だったのかもしれないな。

 

 車で1分。

 ほんの近くの先回りした坂道の長く続く場所に降ろしてもらい、そのままふらりと道を歩く。

 

───彼はここに来るんですか?

───コナン君と探偵バッジでやりとりした。相手の追ってくる方向にもよるが、おそらくはここに逃げ込んでくるだろう

 

 降谷さんの予想通り。

 程なくして、肩を掠めたのか力なく走るコナン君が傷口を押さえながら走ってきた。

 

 その後ろから拳銃で二発、三発と銃弾が掠める。

 黒塗りの車から伸びる腕には拳銃が握られている。

 歩行者を巻き込むことをよしとしない彼は「みんな逃げて!!」と叫んで必死で逃げている。

 

───………。

 

 その痛ましい様子に、思わず目を細めて舌打ちしてしまう。

 降谷さんが私の肩を掴んで静止した。

 

───冷静にいけよ、安室。殺せば情報が取れなくなる

───気をつけます。しかし、鬱陶しい男だ、ブライアン・D・カドクラ。僕がウルフドッグとわかっていてあの態度。余程死にたいらしい

 

 いらつきのままに声を低くすれば、降谷さんが呆れたようにため息をついた。

 

───お前、俺のことをよく「妖怪プライドエベレスト男」とか呼ぶけどな、お前もプライドの高さは大概だからな?

───……えっ、嘘ですよね、僕そんなことないですよね?

 

 嘘でしょ、私そんなプライド妖怪じゃないよね???

 と、私が心外そうな顔をすれば、降谷さんにジトっとした目で睨まれてしまった。

 「特に舐められるとキレるの早いもんな、お前」とのこと。

 

 ちちち違うわい!ウルフドッグ仕草が叩き込まれててついイラッ★としちゃうだけだし!勘違いしないでよね!!

 などと言い訳がてらコナン君と銃撃の射線に割って入る。

 

 なにはともあれ、手を出したのは向こうだ。

 毛利一家に手を出す輩は例外なく死すべし。

 

 警棒を取り出して前に出れば、カドクラの手のものの車が私たちを囲んだ。

 そして拳銃やサブマシンガンを手にしたまま男たちが降りてくる。

 

 ニヤニヤとした様子は自分の優位を信じて疑っていないようだ。

 私はそれをせせら笑い、阿笠博士の発明品である警棒を手の中で遊ばせた。

 

「慈悲です。殺さず全員薙ぎ払いましょう。もっとも、銃を持ち出すのなら…」

 

 下っ端の一人が、話を聞く気はないとばかりに私へと発砲した。

 そのまま間髪入れず銃弾を弾き返し、男の太ももを撃ち貫く。

 

 下っ端は「がぁっ!?!?」と叫んで太ももを押さえて倒れ込んだ。

 

「このように、銃弾が四肢を貫くことになりますが、どうします?」

「っ……!」

 

 カドクラは一応、ウルフドッグの人外じみた噂話を知っていたらしい。

 その噂話でしかないものが事実だと理解して、慄いて「撤退だ!」とか言って逃げ去ろうと背を向ける。

 

 だが、そんな撤退認めるわけにはいかない。

 法令に反しない小さな投げナイフを取り出して、降谷さんと二人纏めて表に出る。

 

 コンビ技だ。

 降谷さんが投げ、私が膂力を提供する。

 降谷さんの操作性で私のノーコンを補うためには、結構なコンビネーションが必要だ。

 しかし私たちは魂を分つ関係。

 瞬時に心でやり取りするそれは私たちに咄嗟の連携をスムーズにこなせるだけの環境をもたらした。

 

 投げナイフはあやまたずタイヤを掠め、車三台はすみやかにパンクした。

 体をぴくりとさせるカドクラに、私ニコリと微笑んだ。

 

「逃すと思います?」

「……手は出さないと言ったはずだ!」

「毛利探偵の預かっている子供を銃撃しておいて、面白い言い訳ですねぇ」

「っ、撃て撃てェ!!生かして帰すなッ!」

 

 下っ端達が掛け声を合図に、一斉に私へと発砲する。

 しかし、生かして帰すな、か。

 

 私は凄絶に微笑み、ペロリと唇を濡らした。

 

 

 ─────本当に、舐めてくれる。

 

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