バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
米花百貨店立てこもり事件発生より15分。
不愉快げに眉をひそめたベルモットが、あわただしく走り回るスタッフさんを尻目にベレッタナノをそっと取り出している。
これはかなりご機嫌斜めだ。
犯人たちも可哀そうに。こんなことで黒の組織の幹部から敵意を持たれるなんて。
私は警棒を取り出してから、多少屈伸して筋肉を伸ばした。
「ベルモットはここから動かずに。僕が制圧してきます」
「いえ。後が面倒だからここから動かなくていいわ。……あら、それ。前に言ってたクールガイからの贈り物?」
「ええ。僕の腕力で振り回しても小揺るぎもしない、いい品ですよ」
「よかったじゃない。あの爪もキュートだけど、その警棒もスーツに似合ってるわよ」
下の階を見下ろせば、客達を一か所に集めて一人一人縛っていく様子が確認できた。
犯人たちも結構な人数だ。十人前後か。
さすがコナンワールド、米花町。犯罪の規模も頻度も天下一品だ。クソみてぇな町というなかれ。
チラリと見た人数を頭に叩き込み、私はベルモットに視線を流した。
「長丁場になりそうですね。僕らだけでも退避しましょうか?」
「できるの?」
「ええ。経路は確認済みです。ダクトを伝うので服が汚れてしまうのが難点なのですが、安全に脱出可能です」
「……いいわ。キティが私を思って頑張ってくれるんですもの。文句なんてあるはずもないわ」
「かしこまりました。では、行きましょうか」
視線が離れた隙を見計らって物陰へ移動し、素早くベルモットを抱えたまま高い米花百貨店の天井へ張り付く。
そして換気扇を取り外し、ダクトへin。
「埃っぽいものの、意外と綺麗ですね」
「げほ、早く抜けましょうキティ。あまり長居したい場所ではないわ」
スルスルとダクトを使い階段付近へ。
階段も見張りがいたので、天井から落下と同時に捻りあげてそのまま壁へと叩きつける。
手加減下手なのは許してくれ。
こんな真っ昼間のショッピングモールを占拠する奴らの一味をしたんだ。死んでも恨みっこなしということで一つ。
……とはいえ本気で全身粉砕骨折なんてことにはなってないよな?過剰防衛にもほどがあるし。
10階まで上がれば、あとは立体駐車場を経由し隣の建物に大ジャンプだ。
恐怖にか重力にか、背負ったベルモットが呻いている。
そして、一瞬天窓から見えた景色に私は思わず息を呑んだ。
コナン君たちだ。1Fホールに集められた客の中にコナン君と蘭ちゃんがいた!
服についた埃を払うベルモットが、思いっきり顔をしかめてため息をついた。
「まったく、散々な目にあったわ。せっかくの休日が台無しよ」
「そうですねベルモット。僕も悲しいです」
「奴ら、後から大雑把な経歴を調べてくれないかしら。私から下に探らせるわ」
「分かりました。それと……先ほど見えたデパート1Fに、コナン君と蘭さんがいるのを確認しました」
「なんですって!?」
私の目撃証言にベルモットが目をむいて悲鳴を上げる。
急いで現場へと戻りたそうな顔をするが、彼女のベレッタナノだけでは少々心もとない。
私は片手で軽く彼女を制し、言葉を続けた。
「僕が制圧してきます。僕なら特段の銃器も必要ありませんので、後で取り調べを受けても後腐れありませんから」
「……頼んだわ、キティ」
ベルモットが私の額にキスをする。ホント私のこと犬扱いしてくる人である。
ポプテピピックみたいなキレ方をする降谷さんをステンバーイステンバーイと取り押さえてベルモットに一礼し、またすぐさま中へ。
ひとまず一匹ずつ仕留めていけばいいか、と私は天井に張り付いたままダクトをするすると移動して思案する。
この辺の移動方法はルパンに教わったものなので、一応降谷さんにも可能ではあったり。
ダクト下に迂闊にも一人行動している犯人グループの一味がいたので、軽く背後から滑り降りて胴を蹴り上げる。
一人行動しているものを上から順に襲っていけばいいか、という雑な計画だ。
男は衝撃で胃の中の物を吐き戻した挙句、白目をむいて痙攣している。
うーん、やっぱりちょっと強すぎた模様。まぁ死にはしないだろう。
人数はいても必ず二人行動で、という基礎が身についていない素人連中など恐るるに足らず。
いやまあ、基礎のしっかり身に付いた特殊部隊とかでも、今の私なら特に恐れはしないのだけれど。
20分経過後。
私のプレデター的強襲の成果もあり、犯人はあっという間に数を減らして残り3人となっていた。
次々通信の途切れた仲間たちに残りの人員も焦りと恐怖を感じざるを得ないようだ。
何かしらの怒号を上げて苛立たしげに銃を客に突き付けている。
1F子供服売り場に隠れていて見つからなかったらしいコナン君の後ろにトンと立ち、私はそっと声をかけた。
「コナン君」
「おわぁ!?ってバーボン!?なんでここに、つかびっくりさせんな!」
「ごめんごめん。僕も実は買い物途中で巻き込まれてしまってね」
「なら……さっき犯人の男が動揺していたのもオメーの仕業か」
「仕業って。まぁ、そうだけど」
半目でジトッとこちらを見るコナン君に私も正直に答える。
「ひとまず11人中8人は仕留めておいたから、あとはあのホールに残る3人だけだよ」
「おい、殺しちまってねーだろうな?」
「もちろん。君から貰った警棒で足の骨を砕いたぐらいだ。あれなら意識を取り戻しても動くことはないよ」
「…………」
すっごい苦い顔するじゃん……。
コナン君が苦悩に苦悩を重ねた顔でしばらく考え込んだ後、気持ちを切り替えたらしい怜悧な顔で私を見た。
こういうそれはそれ、と割り切れるところコナン君凄いよね。
「俺が首謀犯を麻酔銃で眠らせる。オメーは残りの二人を頼む」
「首謀犯がもうわかっているのかい?」
「ああ。会話からだいたいな。目的も……一応」
「なら安心だ。君の計画に従おう」
私は内側の降谷さんとともにニヤリと笑い、おどけたように一礼をする。
我が主人、僕はどこのだれを狙えばいい?なーんて。
私たちは豹のごとくに目を細めてコナン君を見る。
捕らえるも嬲り殺すも、全て君のご随意に。
冷や汗を一筋垂れ流す彼の姿は緊張に満ちている。
それでも。だからこそ。力を得てなお、君は君の真実を追い求めていくのだろう。
なお、この後すごく制圧した。
楽勝だったが、ベルモットにはメッチャ褒められた。役得役得。
なだれ込んできたSITに事情を説明すれば白目をむかれ、「危険なことは止めてください!!」と激怒されたけどどこ吹く風よ。
他の客に銃弾を当てさせるなんて間抜けな真似、私はしないからな。
私、失敗しないもの。
ややドヤってたのがばれたのか、後から来た目暮警部から倍の説教が加算されることとなった。
なお、横にはニヤついているコナン君もいるものとする。
私が君の麻酔銃を黙っているのは温情だと分かっていないのかハハハこやつめ。
トントン、と腕時計を人差し指の先でたたくような動作をすれば、私の怒りが伝わったのか急いで蘭ちゃんの後ろに引っ込んでいった。
僕おなかすいちゃったー、とか白々しい真似しやがって。
長い長い説教に飽きた降谷さんが内側でお昼寝用のハンモックを取り出している。
待って一人で寝るなんて酷いなんで私だけ、降谷さんも共犯だろうがおい!!!
そんな感じに今日の午後は過ぎていった。