バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
護衛任務2日目と3日目はドタバタであった。
寝込みを襲おうとするホテルマンを縛り上げ、ようやく日も登ったころに寝ようとベッドに潜り込めば、朝食に再び毒が盛られていたので蜻蛉返りすることに。
しかも今回は例の配膳係と違って手口がひどく杜撰で、異臭騒ぎで何人ものホテルマンが病院送りになってしまった。
やるならもっとスマートにやれよ…そんな匂いでバレバレの毒を使うんじゃねぇ!!
また、お偉いさん同士の会談中に狙撃なんかもあったし、移動中に暴漢が襲ってくる事件も起きた。
とはいえ、全て私が打ち払ったから無事ではあったが……正直日本側の面目は丸潰れだ。
警備計画が甘いとかで上もこってり絞られていることだろう。
本来計画側の人間である降谷さんは、今回に限り実働部隊として動いているため絞られてはいないようだ。
ある程度の権限は認められているが、時間的不足から計画にはほとんど関与していないからな。
というか暗殺を防いだ1番の功労者だし。
それは良かったのやら悪かったのやら。
まあこんだけ敵さんが積極的だと間違いなく騒ぎは起きていただろうから、計画立案の人員も可哀想といえば可哀想か。
マッケンジー氏側が用意した黒服のSP連中も、すでに10人中3人が病院で治療を受けている。
襲撃は朝昼晩で3回みたいな頻度で行われ、余程相手が本気であることが伝わってくる。
よく本国で生きてられたなこの人。
私はその対応に追われて二日間ほとんど睡眠が取れていない。
そりゃ一週間ぐらい寝なくとも動けるし、雑魚に遅れをとることなんてないけどさ。
勘弁して欲しいものだ。
能用の面を被っているとどうしても視界制限されて見づらいし、息も若干苦しいのでだんだん眠くなるのよね。
そんなこんなで、本日は3日目の昼。
午後にはWSGスポンサーたる鈴木財閥会長と面会があるため、車で移動中だ。
運転手は手配した身元のしっかりした人物で、助手席に私、そして後方にSPとマッケンジー氏という構成だ。
こんな中でもリラックスした様子の胆力あるマッケンジー氏が気軽に声をかけてくる。
「しかし凄いな君は。この三日間で幾度死を覚悟したことか。それを全部防ぎ切るとは…スーパーヒーローもびっくりだよ」
「恐縮です。しかし私も手が届く範囲には限界があります。ゆめゆめ油断されぬように」
「わかっているさ。だが実際、君がいなければ間違いなく命を落としていただろう」
目の前での超人的活躍に、マッケンジー氏はいたく感動したようだ。
感慨深く目を閉じる様子は素直な賞賛に満ちていて、率直な反応に照れ臭いやら恥ずかしいやら。
「今日のご予定は鈴木次郎吉氏との会談のご予定ですよね」
「そうだ。私も彼と会長の鈴木史郎氏の経営的手腕には一目置いているんだ。我が同盟国たる日本を代表する財閥として、有益な話ができると思っている」
「そうなることを僕も願っております」
マッケンジー氏は司法長官だが、それと同時にいくつもの役職を兼任している。
WSG会長もその一つだ。
その関係でお仕事には数限りがないが、そのどれもが顔つなぎという側面が大きい。
特に彼は来期の大統領選に立候補すると噂されている身。
対立する有力候補がでてきていない状況で、ほぼマッケンジー氏の一人勝ちと目される側面が大きいらしい。
そうなると彼と会う人間というのも、自然と日本においてビッグネームとなってくる。
と、そこでバックミラーに低空飛行する不審なヘリコプターが一機、こちらを追跡してきているのが映った。
見れば機銃を搭載した歴とした戦闘ヘリではないか。
思わず吹き出しそうになりながら、私はひどく咳き込んだ。
私の視線でヘリの存在に気づいたか、車内が騒然とする。
ええ加減にせえよ!ここ日本だぞ!!
シートベルトを外し、私はマッケンジー氏に振り返って安心させるよう微笑みかける。
…あっ、私は面をつけてるから表情が見えないんだった。
失敗失敗。
「失礼、守りに入りますので車外に出ます。できるだけ運転手さんはまっすぐに走ってください」
「君は…どうするんだ!?相手は軍用ヘリだぞ!早く頑丈な建物の中に…」
「この程度、逃げるまでもありませんよ」
そう言い放ち、ドアを開けてぐるりと腕の力だけで車の屋根の上に立つ。
風が強い。
バタバタと警官制服の裾が揺れて、髪の毛が荒れている。
瞬間。
戦闘ヘリの一斉掃射がバババババ、と特徴的な音階を伴って発射された。
そのまま刀の峰を鈍器のように振り回して、いつも通り全ての銃弾を弾いていく。
五エ門師匠なら弾丸全てを切り落とすこともできたのだが……。
刀に慣れていない私では刃をそこまでジャストフィットさせられないんだよな。
刀に銃弾が当たる甲高い音が幾条も響き渡り、街中に悲鳴と絶叫が響き渡る。
もちろん弾いた弾丸は全て戦闘ヘリの方に返してはいるが、狙いのそれた弾は手が届かないのでそのままアスファルトに当たって跳弾し、あらぬところを掠めたりもしている。
全く危険極まりない。
機銃の一斉掃射が終わったところで、軽く跳躍して戦闘ヘリへと肉薄。
最近五エ門師匠に貰った斬鉄脇差を懐から取り出し、そのまま戦闘ヘリを真っ二つに引き裂いた。
この脇差は最近になって作られたものだ。
私も斬鉄爪にもしものことがあった時のために手入れの方法を学ぶ必要があったのでね。
折れた斬鉄剣の打ち直し方や欠けたときの作成法を実践として五エ門師匠に教えてもらったのだ。
その時に一緒に作ったのがこの斬鉄脇差である。
私の練習用のため、斬鉄剣より遥かに劣る切れ味だが。
それでも斬鉄剣と同様の製法で作られた刀だ。
高く澄んだ樋鳴りの音がして、私は満足して頷いた。
そのまますたりと着地すると同時に、崩れ落ちるように鉄屑となった戦闘ヘリがガラガラと落下していく。
無事一件落着、と思ったところで。
おっと、そのまま路地裏から雑魚黒服の下っ端達がわらわらと湧き出してくる。
ヘリを落とした私に慄かずに銃撃してくる胆力は認めてやってもいいが、致命的なバカなのは違いない。
そのままサブマシンガンの弾を全て弾き返し、打刀を振るって素早く全員を無力化。
死屍累々の中、私は刀についた返り血を振り払った。
能面姿に警官制服、そして刀。
周囲の通行人の視線が集中するあたり、悪目立ちしまくりといったところだ。
まぁいいか、と私は刀を納め、マッケンジー氏の乗った車に戻ったのであった。
マッケンジー氏の開口一番の言葉は酷く興奮したような「Oh, amazing!!!!(とてつもないな!!!)」であったことを、ここに追記しておく。
・バボ主の持ってる打刀
人間国宝作の現代の名刀。美しい白い波のような波紋が特徴的。
拵全体はシックな紫に金の装飾が上品にあしらわれている。
降谷さんのお気に入り。
・斬鉄脇差
最近になって降谷さんとバボ主が練習で五エ門の指導を受けながら作ったもの。
五エ門が眉を顰めるていどにはイマイチな出来栄えだが、ギリギリ斬鉄には耐えうる。