バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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発狂モードに突入したから三話目を投稿する


キール①

 

 コナン君速報。

 気がついたら彼、キールに盗聴器を仕掛けていた也。

 

 なんてことはない休日の昼。

 阿笠博士の携帯に来たそんな連絡に、私は思わず食べていた昼食を吹き出しそうになった。

 

 これ原作だ!確かvsキール編!

 

 黒の組織幹部・キールの本名は本堂瑛海という。

 表向きの名は水無怜奈。

 売れっ子のテレビアナウンサーとして活動しつつ、本来はCIAからの潜入捜査官だ。

 

 そんな彼女に偶然とはいえ盗聴器を仕掛けてしまったらしいのだ。

 まあ仕掛けたというか、事件に使っていた盗聴器をうっかり回収し忘れ、それが偶然キールに引っ付いてしまったという方が正しいようだが。

 全くの偶然だからこそ、有能な潜入捜査官であるキールも気が付かなかったんだろう。

 

 そんな偶然ある?と私もにわかには信じがたい心地だ。

 中の降谷さんも「こんな風に盗聴器が仕掛けられたら俺でも気付けないぞ…」と嫌そうに顔をしかめている。

 私なら盗聴器の電波で直感的にわかるが、降谷さんは無理だもんな。

 

 以上は阿笠邸で電話を盗み聞きして分かったことだ。

 電話を受けたのは阿笠博士だが、漏れ聞こえてくる会話は私の鋭敏な聴覚なら楽に捉えられる。

 

 私はちょうど阿笠博士に発明品である警棒の所感を伝えに阿笠邸に来ていたところだったのだ。

 そこで室内で灰原さんと雑談しながらまったり過ごしていた。

 

 私はスマホを片手に目を白黒させる阿笠博士を認め、そっと背後に忍び寄る。

 するりと後ろから電話を抜き取って、私はコナン君との会話に割り込んだ。

 

「やあ、コナン君。聞いたよ、キールに盗聴器を仕掛けたって?」

『おまっ……バーボン!』

「不味いよ、この後たしか彼女はジン達と仕事が入ってる。見つかれば毛利探偵の命はない」

『ッ!!!』

「キールが直前に寄ったのは毛利探偵事務所。なら、キールが毛利先生に盗聴器を仕掛けられたと思うのは至極自然だ」

 

 ギリっと奥歯を噛み締め、コナン君が息を呑んだ。

 ことは結構な緊急事態だ。下手をすれば毛利探偵だけでなく蘭ちゃんとコナン君も消される可能性がある。

 コナン君が絞り出すような声で私に問いかけた。

 

『オメーなら回収は可能か?』

「仕事が無事終わった後なら、任務補佐の名目で靴を回収できるかな。それまであの勘が鋭いジンに盗聴器がバレてなかったらの話だけれど」

『……クソっ!』

 

 「ともかく、新…コナン君を迎えに行かねば!」という阿笠博士の言葉に、私は目を細めたまま頷いた。

 色々と心配だったので一緒に阿笠博士のビートルに乗れば、灰原さんがえ?という顔をした。

 

 こんなに至近距離に近付いたというのに怯えた様子はない。

 ただ、「なぜあなたが一緒に行こうとするの」という疑問だけが感じられる顔。

 私は思わずきょとんと間抜けな顔で聞いてしまっていた。

 

「僕に怯えないのかい?」

「貴方が敵じゃないってわかったもの。いい加減おびえてばかりじゃいられないわ」

「……強いんだね、君は」

 

 凪いだ表情の中に芯の通った強さが滲む。

 姉妹そろって本当に強い人たちだ。

 「ともすれば、俺よりも」。

 共有する思考が交じり合い、降谷さんと声が重なる。

 

 

 コナン君との合流地点までビートルを走らせれば、そこには緊迫した顔で待つ彼の姿があった。

 そして後部座席に座る私の姿を捉え、驚きに目を見開く。

 

「なんでオメーがいんだよ!!」

「だって君が突っ走らないか心配で。君が処理されたら次はシェリーの番なんだよ?」

「…わぁってるよそんな事!!」

 

 表で降谷さんがじとっとコナン君を見れば、彼は気まずげに目線を逸らしたようだった。

 心当たりがありすぎるもんな。

 

 さて、コナン君によると黒の組織が次に狙うのは『DJ』らしい。時間は13時、場所は『エディP』とのことらしい。

 いや私だって組織の一員だし彼に聞かなくても知ってはいるけれど。

 

 今回、たぶん原作回だと思うが…私は計画メンバーではないので詳しい内容は分からないのだ。

 たしか杯戸公園でキールが行うインタビューの最中を狙い、組織にとって邪魔な人間を狙撃する予定だったか。

 

 盗聴器から聞こえる声に耳を傾けながら、コナン君が急いで後部座席の灰原さんに問いかけた。

 

「キャンティとコルンって聞き覚えがあるか、灰原!」

「え、ええ。腕利きのスナイパーって聞いてるけど」

「トリガーハッピーの類だね。人間を撃てればなんでもいい、みたいな所がある厄介な職人達だよ」

 

 私も横から口を挟めば、コナンはトリガーハッピーとの評にウゲェという顔をした。

 研究職のシェリーより補佐役・荒事担当の私の方がずっと組織の内部事情に詳しいんだが、その辺はコナン君もあまり知らないから仕方ない。

 

「じゃあキールは?」

「オールラウンダーで、アナウンサーとしての立場を使っての潜入や情報の奪取を主な任務としてる人だよ。一度一緒に行動したけど、胆力があってとても優秀だった」

 

 諜報の苦手な私の仕事内容ではあまり絡むことは少ないが、危険のある任務における幹部の護衛として一度だけ一緒に行動したことがある。

 ただ、彼女の方はそっけなくて「貴方の出る幕はないわ」とあくまで一人行動を貫いていた。

 潜入捜査官として死人を出したくなかったのだろうが、比較的危険度の高い仕事だ。

 彼女も無茶をしたもので、脇腹に一発銃弾を喰らって傷口を押さえながら帰還してきたのだ。

 

 それをジンに「功を焦った馬鹿」と嘲られ、悔しそうな顔をしていたのを覚えている。

 

 コナン君が盗聴器から聞こえてくる次なる疑問に顔を上げた。

 

「おい、DJとエディPってどういう意味だ!?」

「それ、僕が言ったら現場に飛んでいくじゃないか。余計に危険だよ」

「どっちにしろ盗聴器がバレたら終わりなんだ。それぐらいの危険は冒さなきゃ状況改善はできねぇよ!」

 

 仕方ないなぁ、と事前に聞いていた記憶を脳の底からまさぐり出す。

 

「DJはターゲットのギャンブル好きからつけられた名前だ。エディPはエドワードパークの略。これでいいだろう?」

「エドワード……エドワード・ハイドにかけて杯戸公園か!」

 

 そして。

 自分で言ってから、コナン君ははっとした顔で私を見た。

 

 そう、エドワード・ハイドとは二重人格の殺人鬼を描いた作品、『ジーキル博士とハイド氏』の主人公にして殺人鬼人格の名だ。

 前々から私の様子には違和感を覚えていたコナン君のことだ。

 たったそれだけで、これまでの私に対する疑問に答えとなるべきものを見つけ出してしまったのだろう。

 

「ん?」

「お前、もしかして……」

 

 私はいたずら心がわいて、くすりと心の袂で笑った。

 そして降谷さんと二人で頷きあう。

 

 ここで誤魔化してもずっと疑われ続けるだけだろう。

 なにせ彼はすでに答えを得てしまっている。

 下手に煙に巻くよりも、出せる範囲だけを正直に公開してしまった方がいいだろう。

 

 『私達』はコナン君を見つめたまま妖しく目を細め、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「なにかな、コナン君。───俺が、なんだって?」

 

 

 がらりと変わる雰囲気と気配に、隣の灰原さんが息を呑む。

 

「お、前……!」

「俺達に勘付いたのは君が初めてだ。中々やるな、小さな名探偵君」

 

 嘘ではない。

 ルパンは感付くとかそう言ったレベルではなく、「あーなるほど、そゆことね」の一言で普通に見破って来たからだ。

 あのルパンおじさんホントどんな感覚をしてるんだ?

 

 コナン君は驚愕する思考を素早く立て直し、怜悧に目を細めて私達へと問いかけてきた。

 

「どっちだよ」

「何が?」

「どっちがバーボンなんだ、オメーら」

「それは僕の方だね。ウルフドッグたる組織幹部は、君もよく知る僕、安室透の方だ。───だからと言って、俺はジーキル博士のように善良とはいかないがな」

 

 くるくると変わる気配に、思考回路に、主義主張に、コナン君は混乱しているようだった。

 灰原さんが何かに気が付いたのか驚きに目を見開き、私の方を信じられないといった様子で見る。

 私の方──正確には降谷さんの方か──を指さし、恐る恐る口を開く。

 

「自分を俺と呼んでる方のバーボンから、組織の気配が感じられない…!」

「…な、二重人格っつったってそんな顕著に変わるもんか!?」

 

 私に比して強く挑戦的な視線で、降谷零が大胆不敵にほほ笑む。

 これまでの君に敬意を表して、組織を単独で追う君を応援して、俺も名乗ろう、と。

 

 硬く高慢、威圧的にも聞こえる声色で、降谷零は名乗ったのだった。

 

 

「俺はゼロ。安室透の、別人格だ」

 




明日は一話のみの更新……のつもりです
たぶん。
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