バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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気が付いたら身体が感想を求めて続きを書いてた。
休みのつもりだったのに…


赤井秀一が思うに

 

 彼女を置いていったことを、今でも後悔している。

 

 赤井秀一にとって、宮野明美は間違いなく恋人で、そこに抱く感情も恋以外の何物でもなかった。

 始まりこそ組織に潜入するための偽装でしかなかった。

 しかしその強い意思に、美しい瞳に。

 騙している罪悪感が常に胸をひっかくほどに、赤井は彼女への愛を自覚せざるを得なくなった。

 

 潜入先で恋をするなど、潜入捜査官失格だ。

 せめてもと抜けるときは彼女とその妹を連れて逃げようと、そう考えたこともある。

 

 しかし実際にやむを得ずFBIとバレて組織を抜けることになった時、そんなゆとりなんぞあるはずもなく。

 苛烈な銃撃と追手から逃れるのに精いっぱいで。などと自分の理性に言い訳をして置いていった。

 理由はどうあれ、彼女のことを二の次にしてしまった。

 その上で、妹の幹部としての立場から早々に明美が処理されることはないだろうと楽観した。

 

 

 逃げてたどり着いたFBIの仲間たちの元に、一つのビデオファイルが届くまでは。

 

 

 映像は一人の男の笑顔から始まった。

 にこにことしているくせにまるで温度のない、張り付けたような笑顔。

 ケダモノが人の皮をかぶっている。

 人を象った醜悪な怪物が、形だけでも笑みを浮かべてこちらを嘲笑っている。

 

『聞こえますか、赤井秀一』

『これは組織からの処罰の証、見せしめの証です』

『よくよく、ご覧になってくださいね』

 

 そう言い置いて、良く研がれた獣の象徴、組織の開発した鉤爪を画面に映す。

 恐怖に顔をこわばらせる宮野明美へ近づき、嗤い、弄ぶように胸に一筋の傷をつけて。

 そうやって明美を散々に辱めてから。

 心臓を抉り出し。

 

 喜悦に歪んだ顔で、獣はぐちゃりと明美の命の証を握りつぶしたのだった。

 

 一緒にその動画ファイルを確認していたFBIの面々の息を呑む音、悲鳴、口をつくFワードが耳障りだ。

 世界に己一人だけとなったかのような孤独感と後悔が波のごとくに寄せては返す。

 

 ああ、その心地を、なんと表現すればいいのだろうか。

 

 怒り、憎しみ、絶望、悲哀、五臓六腑を焦がすような感情の嵐。

 またやってしまった。スコッチの時と同じだ。

 もっと、もっと自分がうまくやれていたら、彼らの命はウルフドッグによって奪われなかっただろうか。

 目の前で失われた命が重くのしかかる。

 何に悩まされようと顔に出ないのが赤井秀一の長所だったが、だからこそこの自省は誰にも知られずに進行していった。

 

 あの、人の血に飢えた獣をこれ以上野放しにするわけにはいかない。

 

 そう決意するまでに時間はさほどかからなかった。

 

 

 

 次に会ったのは独断専行で組織を追い始めたジョディの監視のため、高速バスに乗り込んだときのことだ。

 

 偶然に会ったウルフドッグはその獣性を上手く隠し、無垢な子供たちに囲まれて幸せそうに笑っていた。

 まるで大きく優しげな犬ころとでも言うかのように子供のいう事を聞く姿に、赤井は怒りと恐怖とを同時に覚えた。

 まるで無害そうに振舞ってその実、一つ命令があれば同じ手で子供たちを喰い殺すであろう危険な獣。

 そんなものがのうのうとのさばっていることに、強い危機感を覚えたのだ。

 

 バスを降り、詰問の途中で彼に駆け寄ってきた子供の姿には一瞬かなり焦りもした。

 ここで人質に取られれば、赤井は動けない。

 

 話を遠くから盗み聞けば、どうやら今現在ウルフドッグは小学生の子らの集団と行動を共にしているようだった。

 羊の群れに巧妙に隠れる狼が、藁の家を吹き飛ばして今にも子供を取って喰わんとしている。

 赤井はそのように捉えたし、事実としてそうなのだろう。

 

 だから、ここで仕留めるつもりだった。

 

 子供たちのため、奴に無防備に近づいたジョディのために。

 

 準備は丹念。

 位置取り、ライフルの整備、肉体的コンディション。すべて万全だった。

 毛利探偵を狙っていると聞いて、ウルフドッグを使うかキャンティ達の狙撃に任せるかは賭けになるとは思ったが、その程度は想定の範囲内。

 

 風が凪ぐ。

 スポッターはいないが、この天候ならばさほど問題にはならない。

 

 まず一発目で、あのさえた頭脳を持つ子供、江戸川コナンが誤って仕掛けてしまった盗聴器を破壊。

 寸分たがわず命中。盗聴器はガムとともに焼け焦げ塵となった。

 

 そして間髪を容れずに二発目。

 ウルフドッグの脳幹を狙う。頭蓋骨で弾が滑って難しい位置取りになるが、その程度赤井秀一にとってみればどうということはない。

 

 狙い、狙い、狙い、穿つ。

 

 身体すらも一個の機械にして、呼吸すらも支配して、鼓動はすべからく読み切って。

 引き金を、引く。

 

 弾が、ニコリとこちらを見て笑ったウルフドッグに予見していたかのように優美な動きで避けられる。

 

「F****!!!」

 

 口から思わず行儀の悪い言葉が漏れ出る。

 

 先ほどのあれは必中の弾だった。間違いなく当たっていたはずだった。

 それを奴は野性的直感で赤井の殺意を察知し、未来予知のごとくに避けてみせたのだ。

 

 ちらりと目の合ったウルフドッグの、あの表情。

 此方を見て笑っていた。優雅に、愛玩動物を可愛がるかのような顔で。

 無駄なのに頑張って偉いね、と駄々をこねる赤子を嘲笑うように、ウルフドッグは笑っていたのだ。

 

 ぎり、と我知らず赤井秀一は奥歯を強くかみしめていた。

 

 奴は俺が殺す。必ず。

 撤退して安全圏まで逃走した後、口にくわえた煙草はずいぶん苦く感じられた。

 赤井に追いついたらしいジョディがタクシーから降り、こちらへと駆け寄ってくる。

 

「ちょっとシュウ!こんな街中で何を考えているのよ!!」

「……そちらこそ、ウルフドッグに軽率に近づいて何を考えているジョディ」

「あれは偶然よ。まさかクールキッドの車に乗ってるとは思わなかったのよ!」

「殺されたらそこで終いだ。奴は女子供を切り裂くことに悦を覚える獣。お前とて近付けば命は無いぞ」

「……」

 

 ジョディに忠告すれば、彼女は珍しく黙ったまま目線をそらした。

 

「彼、本当にあのウルフドッグなの?」

「どういう意味だ」

「そんな風には見えないというか。普通の優しげな好青年に見えたから」

「…それが奴だ。優しげな顔で臓物を引き裂き、隣人へ親切にするように人を殺す。そういう獣なんだ」

 

 納得いかないような顔のジョディを諭して、赤井秀一は苦い苦い煙草の煙を胸へと吸い込んだ。

 

 ライとして暗躍していたころ、赤井だってかの男の朗らかさと人の好さは思い知っていたのだ。

 実際共にいて居心地が良かった。

 テンポの良い会話に阿吽の呼吸と錯覚する用意の良さは、赤井としても組織が崩壊してからもともに仕事がしたいと思わせる有能さに満ちていた。

 

 吐き出した息に煙が混じる。

 喉に絡むような不快感は、果たして煙草のせいなのか。

 

 赤井はじっと毛利探偵事務所のある方角を見つめ、物思いにふけっていた。

 




赤井「殺さなきゃ(使命感)」
降谷「言いがかりだぞ赤井秀一!FBIは国に帰れ!!」ワーワー
バボ「そうだそうだ!」ワーワー
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