バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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来葉峠の顛末②

 

 あれからは原作通りにキールが組織によって取り返されたらしい。

 

 私はあくまで蚊帳の外、病院のベンチで寝ていたら慌ただしくFBIやら病院のスタッフやらが駆けていたぐらいだ。

 どうやら外で火事が起こったらしく、煙を吸った一般人が大量に押し寄せたのだとか。

 これもきっと組織によるキール奪還の計画の一環だろう。

 

 一連の流れにウルフドッグこと私の動員はされなかった。

 単純に人手が足りていたのか、それとも私に不向きな諜報系の動きだったからかは定かではない。

 

 ちなみに。

 私が寝ていたところを捕縛しようとした無謀なFBI人員を何名か行動不能にしてしまったが、瑣末なことだろう。

 コナン君に「寝てるのにオートで身体が動くとかオメーは仮面ヤイバーの世界の住人かよ」と呆れ顔で言われてしまったが、京極さんだってたぶん似た様なものだからノー問題ノー問題。

 

 捜査官個人の独断先行としてジェイムズ氏が謝罪に来たが、どこまでが本当なのやら。

 氏の老獪さを思えば、独断先行と偽ってジャブを仕掛けてくることぐらいは十分にあり得そうだ。

 

 といった雰囲気で呑気にFBIと戯れながら過ごしていたのだが、そこで着信音が私を呼び立てた。

 一気に緊迫する場の空気、すかさず電話の音声を一緒に聞こうとするコナン君。殺気立つFBI。

 

 そんな中で出た相手はもちろん組織の幹部、ジン。

 内容は今すぐ来い、というシンプルなものだった。

 

 騒然とするFBIを尻目に平然とコナン君が「これ、持ってろ」とにっこり笑って盗聴器を持たせようとする図太さよ。

 

「いやぁ、流石にそれはできないかな。ジンは僕の次ぐらいには勘が鋭いし、バレる危険性も高いからね」

「ケチ」

「駄々をこねない。きちんとあとで情報は共有するから、間違っても後を付けようなんて思わないように!」

「ちぇっ……はーい」

 

 全っ然聞く気のない「はーい」をいただいてしまった。

 制裁として降谷さんがコナン君の両頬をつかんでこねくり回した。

 ほへんははいやめへ痛い痛いから!などともごもご言っているが聞こえんなぁ。

 

 ニヤニヤと子供をいじめる組織幹部の図は受けが悪かったらしく、途中で赤井さんが割って入る。

 

「子どもの虐待が趣味か、ウルフドッグ?」

「これは躾です。第一、本当に僕の後をついてきてしまったら最悪命がありませんよ?それに比べたらこの程度、可愛らしいものでしょう」

「………ボウヤにも困ったものだ」

 

 流石の赤井秀一も反論できないらしい。

 大きなため息をついて、赤井さんは自分の後ろへ逃げてきたコナン君の頭を乱雑に撫ぜた。

 

 

 その後。

 私は降谷さんの運転するRX-7でひとけのない倉庫街へ来ていた。

 

 もちろんコナン君は撒いてきた。

 

 普通に私をターボエンジン付きスケートボードで追ってくるから、降谷さんが軽くカーチェイスで振り切ったのだ。

 いくらスピードが出ると言っても所詮はスケートボード。最高時速180kmに及ぶスポーツカーにはついてこれまい。

 

 まあ、それでも機転とルート選択でかなりの間食らいついてきたから「嘘だろあの子…いくら市街地とはいえスケボーで俺のRX-7についてくるとかどんな運動神経してるんだ?」と降谷さんも驚愕していたが。

 マジでアクロバティックお化けだからな、劇場版の彼って。

 

 そんな様子で激しいカーチェイスを繰り広げた後、私たちは倉庫街へと到着。

 待ち合わせちょうどの時間に姿を現すのは黒づくめに銀の長髪。ジンだ。

 

 ジンは私の姿を認めるとニヤリと凶悪に笑い、黒のコートを翻した。

 

「よお、バーボン。来たか」

「お久しぶりですね、ジン。毛利探偵事務所での一件は命令を遂行できずすみませんでした」

 

 一発目は謝罪から。

 実際、あの命令遂行失敗はかなりグレーのラインだった。

 幹部の判断如何では「任務失敗」として責めを負う可能性もある内容である。

 

 フン、とジンは鼻で笑って私の緊張を一蹴する。

 

「テメェはあのシルバーブレットの必殺をかわした。奴の一撃がいかに無力かを示してみせたんだ。それ以上の功績はねぇよ」

 

 そしてこのベタ褒めだよ。

 ウォッカ相手でもそうだが、ジンの兄貴は懐に入れた相手をめっちゃ好遇するタイプらしいんだよね。

 少しでも疑わしい相手は言い掛かりつけてでも消しにいくのがライフワークなのに、一度懐に入れてしまえばこのベタ甘具合。

 

 やはり好感度稼ぎ。好感度稼ぎこそが世界を制するのだ。

 

 かーっぺっ、と虫唾が走ったらしい顔で主人格が唾を吐いている。

 こらこら、行儀が悪いぞ。

 

「それで、なにかありましたか」

「赤井秀一をキールに処分させる。奴はFBIに言いくるめられた可能性があるからな…あの方直々の命令だ」

「!それはそれは。キールも重役ですね」

「それが正しく遂行されたか、テメェが見張れ。もし何かヘマでもすれば、その場でキールを始末しろ」

 

 私はその言葉にうっそりと嗤った。

 いい流れだ。赤井秀一死亡偽装がよりスムーズになるし、最悪私の方で赤井秀一の死体の偽装ができる。

 キールもCIAのNOCだし、ほんと黒の組織のNOC率半端ねェな。

 

「畏まりました、ジン。ご命令の通りに」

 

 優雅に従順に一礼して見せれば、ジンは三白眼を細めてたいそう邪悪そうに笑った。

 本当にすまないジン。私もNOCなんだ。

 

 

 

「というわけだから、赤井秀一の死亡を偽装するときは僕も潜んでいるからね」

「いやそれバラしていい情報かよ!?」

「勿論。ジンとウォッカは離れた場所からカメラで確認するみたいだけど。僕は崖上の茂みにいるから」

「お、おう」

 

 引き気味にコナン君がたじたじと返事をする。

 どうやら本当に私が情報をくれるとは思っていなかったらしい。

 

 ジンと別れた後。

 

 私は病院に戻り、事の次第を包み隠さずコナン君へと伝えた。

 もちろんFBIには伏せなくてはならない情報のため、FBIの人員がいない部屋でこっそりコナン君に耳打ちするという方法だが。

 

 ちなみに、当たり前のように私が赤井秀一の死亡偽装を知っていることに関しては、「何処から嗅ぎつけてんだテメェ!!」とかなりの切迫顔で掴み掛かられてしまった。

 

 まあトップシークレットだしな。

 赤井秀一自身の命に関わる情報ゆえ、知る人もFBIではジェイムズ・ブラックのみという徹底っぷり。

 

 まさに原作知識様様であるよ。

 

 あと、降谷さんは「お前の聴覚ほんとやばいな」と私の原作知識を聴覚による盗み聞きと誤解してらっしゃった。

 常人より耳が優れているのは確かだが、それは霊体、魂としての帯域の広さがゆえだから。

 別に超遠くの声を聞き分けられるモンスターってわけじゃないから。

 誰に言うでもないむなしい言い訳である。

 

「もちろん、赤井秀一生存の報は組織には黙ってるよ」

「……信じて、いいんだな」

「明美さんの彼氏をみすみす殺させたりしないさ。いずれ彼に会わせてあげると約束したしね」

 

 コナン君に向かって軽くウインクすれば、じとっとした半目で睨まれてしまった。

 信用の無さが著しいが、今回ばかりはこの言葉に嘘はない。

 

 恨まれようが憎まれようが、私は彼らを愛すだろう。

 神の愛に従って、神が彼らを愛するように。

 

 

 そうして、来葉峠の夜が来る。

 

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