バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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ウイスキートリオ

 

 今日は久しぶりの休暇である。

 

 黒の組織だってブラックとはいうもののお休みくらいあるということ。

 午前はゆっくり羽を伸ばして風見さんと連絡を取り合い、午後は体が鈍らないよう全身運動とお仕事スキルの復習。

 やっぱりブラックじゃん、という意見は受け付ける。

 だって一般人が黒の組織でやってくにはこれくらいしないととてもとても。己の命が懸かっているのだから豚だって木に登るさ。

 

 そうこうしているうちに夕方だ。

 休日だというのにウォッカに呼び出されているのは、まぁ飲み会のお誘いだろう。

 このご時世、新米ペーペーに断る術などなく、私は笑顔でお誘いを受けたのであった。

 

 待ち合わせ場所に行けば、そこには既に黒ずくめな3人の男がたむろしていた。

 

 しまった。十分前には着いているものの、結果的に重役出勤してしまった。

 何か言われるだろうか、と怯えながら恐る恐る顔を出せば、まず私に気がついたのはウォッカであった。

 

「なんだ、お前にしては遅かったじゃねぇか、バーボン」

「すみません。電車が遅延してまして」

「ははは、そんな日もあるわな。今日はオフなんだから気にしなくていいぜ。俺らが早く来すぎちまっただけだ」

 

 快活に笑ってウォッカは半分だけ身を引いた。

 その向こうには見知らぬ……否。画面越しに良く知る男が二人、こちらを鋭い目つきで値踏みしている。

 

「お前と同時にコードネーム持ちになった奴らだ。早めに紹介しときたくてな」

 

 ウォッカが言う。

 どうやら今日の用事は飲み会以外に顔合わせもあったらしい。

 この辺り本当にマメなウォッカには頭が下がる。

 日本人的根回しというか、足場作りに余念がない彼に付いているといろいろ学ぶことも多い。

 

「ありがとうございます、ウォッカ。話は聞いてました。この方々がそうなんですね」

「そうだ。胡散臭ェ野郎どもだが、これから一緒に仕事することもあるだろう。顔をつないでおくのも悪くねぇ」

 

 私が一歩踏み出せば、二人は身じろぎした。

 長い黒髪に鋭い目つきのスナイパー、ライこと赤井秀一。

 そして降谷零の幼馴染で諸伏警部の弟、スコッチこと諸伏景光。

 

 生の登場人物に会えた震えるほどの感動をギリギリで隠し、私は笑顔を作った。

 

「初めまして。僕はバーボン、あなた方と同じコードネーム持ちです」

「……ガキがこんな所で何の用だ」

 

 チッ、とライが無感動に吐き捨てた。

 ピクリとウォッカが眉を跳ね上げる。

 

 原作知識から思うに、恐らくは「子供がこんな組織にいるのは危ないからすぐに逃げたほうがいいぞ。こんな所で遊んでる場合じゃない」くらいの意味合いだと思われる。

 降谷零は童顔だがとっくに成人済みだし、ライはライで言葉のチョイスが面白すぎる。

 

 冨岡さんかな?と吹き出しそうになるのを堪えながら笑顔を保てば、慌ててスコッチが前へ出てきた。

 

「お、俺はスコッチでこっちはライだ。よろしく、バーボン」

「よろしくお願いしますね、ライ、スコッチ」

 

 どうやらスコッチには私が怒りをこらえているように見えたらしい。

 間を取り持つようにワタワタとしている。

 まぁ本物の降谷零なら当然怒りに震える場面だから、間違いとも言い切れない。

 

「俺たちの主な任務は狙撃だから、出張時の色々な準備をバーボンにはやってもらうこともあると思う」

「ええ、その時はお二人のため力を尽くさせていただきます」

「………俺は、こいつが拠点強襲の任務を請け負ってると聞いたことがあるが」

 

 ライがふむ、と表情を変えないまま訝しげに口を開いた。

 こんな武力とか何もなさそうな奴が、と言いたいのだろう。

 気持ちは分かるが、強襲を抜いた私とか一山幾らの雑魚側仕えになっちゃうので幹部入りとかあり得なくなってしまうんだよね。

 

 この埒外の膂力と身体能力で幹部陣営のボディガードも務められるからこそ、私は側仕えとして幹部入りを果たすことができたのだ。

 

「間違いありませんよ。僕はこれでも近接戦には自信がありまして。試されますか?」

「……いや。気になっただけだ」

 

 威圧するように僅かに殺気を乗せれば、ライは表情一つ動かさず一つ瞬いただけだった。

 ちらりと私の四肢を見て、一定程度の体格があることは理解したらしい。

 重心やら構えやらは無し。なにせ野の獣なので。

 感覚を研ぎ澄ませれば銃弾も直感で避けられるので、肉体性能様様である。

 

 ライは一応満足したのか納得したのか、「行くぞ、スコッチ」と会話もそこそこに身を翻した。

 「おい、ちょっと待てよ!」と慌ててスコッチも後に続く。

 本当に自由だな、赤井秀一。

 8割ぐらい素だろうに、組織の幹部として完璧に馴染んでやがる。

 

 遠ざかっていく後ろ姿をぼんやり眺めていれば、黙ったままだったウォッカがようやく口を開く。

 

「……ライの野郎、好き勝手言いやがって。あんな野郎のことバーボンも気にするんじゃねぇぞ」

「はは。僕の容姿が侮られやすいことは初めからわかってることでしたから」

「馬鹿言え。お前の優秀さは俺が一番よくわかってるんだ。姿形なんざで馬鹿にされてたまるかってんだ」

 

 私はプリプリと怒るウォッカに何だか感動しながら、「……僕の代わりに怒ってくれてありがとうございます、ウォッカ」と礼を言った。

 私に怒るべき箇所など何一つ無かったが、それでも私のことを思ってウォッカは怒ってくれたのだ。

 ホント身内思いだよな、ウォッカって。

 

「お前も、次からはああ言う奴にはビシッと言ってやれよ!この業界、舐められたら終わりなんだからな!」

「はい、ウォッカ!ビシッと言って見せます!」

「いい返事だ!よし、なら今日は一緒に飲みに行くか。ほら、前言ってた幹部就任祝いだ」

「ほ、本当にいいんですか?」

「遠慮すんなって。ほら、焼肉か?寿司か?懐石か?好きなの選べよ」

 

 慌てる私をニヤニヤした顔で小突くウォッカが意気揚々と夜の街に繰り出していく。

 その後ろを急いで付いていく私の表情を見るものは誰もいない。

 

 今度はライを飲み会に誘ってみよう、とか、明日のキュラソーの任務用具の準備どうしようか、とか。

 いろいろ煩悩はあれど。

 

 ライの後ろを追うスコッチが最後に見せたあの表情に、私は内心ひどく悩むことになるのであった。

 

 

 ああ、今後どうしよう。

 スコッチのあの顔、絶対私のことを訝しんでたよなぁ。

 

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