バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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世紀末の魔術師①

 

 「揺れる警視庁 1200万人の人質」以後、コナン君の態度が軟化した。

 というか露骨に主人格相手には警視庁の刑事さんたちを相手にするように子供ぶりっ子を始めたのだ。

 相変わらず私には対黒の組織モードで塩対応だが。

 

 これには降谷さんもジト目でコナン君を睨みつけた。

 

「今更子供ぶっても遅いからな。───あと僕を露骨に蔑ろにするのは止めてほしい。純粋に傷つく」

「え、えへへ……気のせいだよぉ」

 

 姿かたちは小学生でも、その正体は高校生。そんな態度されても白々しいだけである。

 とはいえ、どちらにしろまだ子供だと思えば妥協の範疇内と言えなくもない。

 降谷さんは「はぁ、君は基本的に賢い子なのに、時々凄いクソガキ属性出してくるよな」と呆れていた。

 

 この間、彼女の蘭ちゃんに粉かけようとしたチャラ男の脳天をキック力増強シューズで吹っ飛ばそうとしたのには流石に私も驚愕した。

 嫉妬の化身過ぎるだろ君。

 

 両腕で羽交い絞めにして「どうどうどーう」「てめっ放せ!」と押し問答したのだが、普通に犯罪なので止めてほしい。

 というかキック力増強シューズで人の頭をサッカーボールみたいに蹴ったらとんでもねー大惨事になってしまうのでは。

 

 

 さて、今回は初めての平次君との邂逅だ。

 場所は大阪、鈴木財閥の出資する近代美術館へ、財閥が出してくれたリムジンで向かっているところだ。

 

 きっかけはロマノフ王朝の遺産・メモリーズエッグを怪盗キッドが盗み出した件が関係している。

 なんでも、警察の方から毛利探偵へ応援の依頼が来たのだという。

 私も一応毛利小五郎の弟子として鈴木会長に正式にお呼ばれしている。

 

 ここまでの流れで私もピンときた。

 ロシアの遺産、メモリーズエッグと言えば劇場版第三作、『世紀末の魔術師』に決まっている。

 

 これはロマノフ王朝の遺産を狙って暗躍する「スコーピオン」こと浦思青蘭が、次々とエッグを欲する人々を暗殺する物語だ。

 物語のラストで火事が起きるため私の木馬荘放火事件のトラウマが刺激されなくも無いが……基本的にはそう酷い心配事のない話となっている。

 

 問題があるとすれば、一つ。

 浦思青蘭と私は知り合いである、ということである。

 

 実は昔、私の武力を目当てにした浦思青蘭に「コンビを組まないか」と誘われたことがあるのだ。

 その時は黒の組織から抜けるのは本末転倒だし、普通に断ったのだが……。

 ウルフドッグとしてルパン三世の一味として地位を確立した私には、この手のお誘いは星の数ほどある。

 故によくあることとして処理したし、そのうえで恨みを買う事だってあった。

 

 リムジンから降り、鈴木会長の待つ近代美術館へと向かう。

 そこでバイクに乗った高校生二人と初遭遇。

 西の高校生探偵・服部平次と、その幼馴染の遠山和葉ちゃんだ。

 

 「よっ、工藤!」と遠慮なくコナン君の本名を呼んだあげく、「あの兄ちゃんが電話で言っとったおっちゃんの弟子か?」と朗らかにいうものだから、コナン君は色々な意味で絶叫。

 

「わーわーわー!!」

「なんや工藤そない大げさに叫んで。うるさいで。というかおっちゃんの弟子って……ほんま大丈夫かこの兄ちゃん」

「あむっ、安室さんの前で、おま、お前!?!?」

 

 もはや何が言いたいのかすら定かではない混乱具合だ。

 見ているこっちが可哀そうになったので、仕方なく助け舟を出す。

 

 コナン君の横にしゃがみ込み、こそっと内緒話をする体勢で耳打ちする。

 

「コナン君、悲しいお知らせがあるんだけど」

「……んだよ」

「志保ちゃんとお姉さんの再会をセッティングした時点で、君の正体は察しがついてるから。今更隠さなくてもいいよ」

「!?ッ…………俺を組織に報告しない理由は?」

「えー、なんとなく」

「なんとなくぅ!?!?」

 

 主人公にあるまじき怒りの顔芸だ。

 私は内心の降谷さんと一緒についつい吹き出して、笑いが止まらなくなってしまう。

 主人公をからかうのはこれだから止めれんのじゃわい。

 降谷さんが深層心理内であることをいいことに遠慮なく馬鹿笑いしている。箸が転がっても笑えるお年頃かな?

 

「ウソウソ。君のことを報告しちゃうと芋づる式に志保ちゃんのことも組織にバレちゃうからね。それは困るんだ」

「ったく、そうならそうと言え!俺で遊んでんじゃねーよ!!」

「あはは。楽しくてついね」

 

 プリプリと怒るコナン君をなだめ、私は服部君の方へと向き直った。

 え、そんなことをしてるからコナン君に塩対応される?百理あるな……。

 

 組織のことを話すことになるので、念の為後ろを振り返って蘭ちゃんや毛利探偵へと一言言い置く。

 

「すみません、先に行っててください。服部君とは積もる話があって」

「和葉、おまえも先行け」

 

 「えー、なんでなん?」と若干不満げな和葉ちゃんを「男同士にはいろいろあるのよ」と何某か察した園子ちゃんが奥へと連れていく。

 前から思っていたが、鈴木財閥ご令嬢は踏んできた場数の違いか、空気を読む力が非常に高い。

 まさに相手のほほえみ一つでどういうことを要求しているのかが分かる社交界の熟達者。

 機会があれば教えを請いたい人物の一人である。

 

 まだ夏真っ盛りの空気を避け、毛利探偵たちは次々と涼しい館内に入っていく。

 近代美術館前のロータリーにいるのは私と服部君、そしてコナン君のみになった。

 どうでもいいが、一週間前は11月7日だったのに今日が8月23日って絶対おかしいでしょ。

 降谷さんに聞いても「……?なにか不可解な点でもあるのか?」って疑問符浮かべてるし。ちょっとした恐怖体験だよ。

 

 若干厳しい顔の服部君が、その警戒を示すように半身を引いてこちらへと話しかけてくる。

 

「……兄ちゃん、あんた組織の一員っちゅー奴か」

「そうだよ。初めまして、バーボンこと安室透です。よろしくね」

「おお、よろしゅう…やないわ!よろしくする相手とちゃうで!?」

 

 おお、本場の関西のノリ!

 私はできる限り無害で虫も殺さなさそうな顔でにっこり笑い、コナン君の両肩を持った。

 

「大丈夫、僕は無害な組織幹部だから」

「あんなぁ兄ちゃん、反社の幹部に無害とかそういう概念は生憎無いねんて」

「本当だよ。だってほら、コナン君はまだ生きてるじゃないか」

「おぉい!?!?」

「ツッコミ待ちか?ツッコミ待ちなんかそれ!?」

 

 割と本音というか真実だったんだが、2人には受け入れられなかったようだ。

 バッと肩に置かれた手を払われて、嫌いな人に撫でられた猫みたいにコナン君に唸られてしまった。

 ウルフドッグと敵対しておいて周囲の人間が無事、かつ自身も逃げ隠れせず過ごせているのがどれだけ破格の状況か、裏社会の人間が聞いたら仰天するほどのことなんだがなぁ。

 悪名が広がりすぎという見方もあるが、それはそれ。

 

 そして遠慮のない疑心に包まれた西の探偵の視線を全身に浴びながら、無事近代美術館内へ。

 なお、途中で「アイツに真面目に付き合うのはやめたほうがいいぜ?揶揄われ損だ」とコナン君に諭されてその視線を緩めることになる。

 

「なんやそれ、工藤お前ほんまに組織の幹部と仲良うしとるんか」

「俺も色々事情があんだよ」

「…まあええわ。死ぬなよ工藤。何かあったら真っ先に電話するって約束せえ」

「……ああ。」

 

 しっかり私に聞こえるように会話してるあたり、服部君も確信犯である。

 俺が見張ってるからな、という威嚇というか。何かあったら俺が仇を討ってやるという決意表明というか。

 美しき友情かな。

 

 

 中に入れば、かの鈴木財閥会長が鷹揚な様子でようこそと出迎えてくれた。

 

 既に先客がいたようで、彼らの視線も一斉にもらう。

 ロシア大使館一等書記官のセルゲイさん。

 美術商の…乾さん?だったか。

 ロマノフ王朝研究家にして強盗、浦思青蘭。

 映像作家の寒川さん。

 

 浦思さんと目が合った瞬間、私の右目を貫くような細い殺気が飛ばされた。

 挨拶にしては随分と物騒だ。

 殺気への返事をするように私がニコリと微笑みかければ、彼女はその戦力の差を実感したのか殺気を収め視線を逸らした。

 

 なんだこれ、野生動物の格付けチェックか?

 

 悔しそうに目を細めてこちらをチラリと見る姿だけでもう言いたいことが丸わかりだ。

 2人きりで話がしたい。

 

 その言外のメッセージを受信したのが私だけじゃなかったのは幸か不幸か。

 鋭い視線でこちらを見る探偵コンビに、私は早くもため息が漏れそうになったのであった。

 

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