バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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世紀末の魔術師②

 

 浦思青蘭との会合は怪盗KIDを始末するのと同時刻、夜の倉庫街で行うことになった。

 

 探偵たちが怪盗KIDで忙しい間を狙ってのことだ。

 時刻は夜中。夜の街並みがKIDの変電所爆発とかいう重大犯罪のせいで停電してゆく。

 降谷さんが「あのコソ泥!!!」と怒り狂って叫んでいた。

 大阪という大都会でこれをやられたらちょっとしたテロだな。

 

 白いハンググライダーがビルの合間を抜け、その目元に一条のポインターの光を浴びているのが見える。

 夜の静けさに響く一つの銃声。

 硝煙が月明かりに煙る。

 私は彼女、浦思青蘭の狙撃を隣で見ながら「お見事」と軽く一言添えて拍手した。

 

 遠目に海へと落下したKIDの姿が見えたからだ。

 彼女から返ってきた返事はチッという短い舌打ちだけだったが。

 まあ、怪盗KIDはあの程度で死ぬことはないし心配はないだろう。

 

 浦思青蘭は私の方をちらりと見て、その後氷のような冷たさのまま言葉を紡いだ。

 

「それで、ウルフドッグ。貴方どういうつもりかしら?」

「どう、とは?」

「私の仕事に協力する気は無いんでしょう。ならなぜこんなタイミングで私の元を訪れたの」

「それは先ほども言いましたが偶然ですよ。毛利小五郎の弟子をしていて、怪盗KID捕縛の協力のためにここに来ただけで、あなたと出会ったのは運以外のなにものでもない」

「どうかしらね。獣の言葉は信用ならないわ」

 

 軽蔑する口調だが、それ以上に私を警戒する色が見える。

 例えて言うなら何をするかわからない不発弾。

 そのような脅威を前にして、彼女は一つの油断なく私の前に気丈に立っているらしかった。

 

 くすり、と嗤いが漏れる。

 

「私の仕事の邪魔をすれば、たとえあなただろうと容赦はしない。その右目を脳漿とともに鉛弾でぶちまけさせてやるわ」

「なるほど。良い意気込みですね。応援してあげてもかまいませんよ?」

 

 いわゆる、がんばれ♡がんばれ♡というやつだ。

 私の挑発が分かったのか、浦思青蘭は人でも殺しそうな顔で歯軋りした。

 そこで、ふと彼女が思いついた顔で悪辣に笑ってあげつらったのはコナン君のことだった。

 

「貴方と一緒にいたあの賢しらな坊や。彼らとはずいぶんと親しそうじゃない」

「ええ。あ、嫌ですよ先に取っちゃあ。彼は僕の獲物なんですから」

「……ウルフドッグが子供の臓物を引き裂くのが好きって噂は本当だったのね。趣味の悪いこと」

 

 思惑をすかされ、彼女は目元をひくつかせて憤りをあらわにしている。

 あえて噂の内容は否定しない。

 私はともかくコナン君たちを狙われると守るのが大変だからな。

 

「なんにせよ、僕にあなたの仕事を邪魔するつもりはありません。エッグなんてどうでもいいですし、秘宝なんてもっとどうでもいい」

「金より財宝より血なまぐさい狩りの方が好き。つくづく醜い獣ね、貴方は。だからこそ相棒として都合が良かったんだけれど」

 

 話にも飽きたし、ここらで解散としよう。

 

 するりと気配を消して背後に回り込み、目にもとまらぬ速さで浦思青蘭の首に鉤爪を添える。

 

 ひやりとした感触に浦思青蘭は全身を慄かせた。

 耳元で愛を囁くように、鋭利な殺意を込めて忠告を口にする。

 

「この業界、舐められては駄目だというのは常識として知ってますよね」

「……ッ」

「ですので、あまり舐めた発言をされると……趣味でなくとも、可愛がらざるを得なくなる。分かります?」

「…ヒッ!!」

「貴方は美人なのだから、もっと自分を大切にすべきだ。賢いあなたなら……理解できますよね?」

 

 つー、と。首に一筋の傷跡を残す

 垂れた血が月明かりを反射して白く光る。がくがくと病的に肩が震えている。

 

 ここから四肢をばらばらに引き裂いて無残な屍を作ることぐらい、二秒もあれば十分すぎるほどだ。

 とはいえ、これもウルフドッグの行う脅しとしてはごくごく軽いほうなのだが。

 

 では、僕はこれで。

 

 そう言って、私は彼女を置いてその場を後にした。

 追ってくる者もそのような気配もなく、ただ夜だけが深々と更けていった。

 

 

 

 

 

 翌朝早々、コナン君に泊まっていた部屋を襲撃された。

 

 朝っぱらからチャイムを連打され、ドアを開けると「おはよう安室さん!!!」と糞デカボイスで叫ばれたため、やむなく部屋の中に案内する。

 そんなバリバリに意図を主張しなくても追い返したりしないから。

 頼むから落ち着いてくれ探偵君。

 

「……昨夜はどこにいたの?」

「KIDの狙撃犯と一緒にいたよ。狙撃も見てた。赤井秀一には及ばないけれど、中々の腕前だよね」

「ブッ!?!?」

 

 コナン君は盛大に吹き出した。

 基本彼に嘘はつかないようにしてるので、私の回答はドストレートな真実一択である。

 探偵相手に嘘をつきとおせるほど優秀ではないし、言えないことは言えないと白状すればいいのだから楽なものだ。

 

 コナン君はシャーッと猫が威嚇するように吠えたてた。

 

「見てたんなら止めろよ!」

「嫌だよ。止めるのに都合のいい理由が無いし、理由もないのに助けたら僕の弱みになっちゃうだろ」

 

 裏社会は噂社会。

 例えばウルフドッグは怪盗KIDと組んでるだとか、そういう噂がまことしやかに広まるのも時間の問題だ。

 

 むう、とコナン君がくしゃくしゃに納得がいかない顔をしつつも押し黙った。

 私の言いたいことも理解はしているのだろう。

 

 じろっと私を睨め上げて、何事かを考えるように言葉を絞り出す。

 

「理由があれば、いいんだな」

「うん。例えば君を守るときは『獲物を横取りされたくない』って理由を使ってるし」

「物騒だなオイ!……え、大丈夫だよな?俺を殺る気じゃないよな?」

「殺らない殺らない。だから僕は快楽殺人鬼じゃないんだってば」

 

 私の全否定を聞いて多少は安心したのか、ほっと息をついてコナン君は思案顔をした。

 そして私にちらっとだけ視線をよこすと、いかにも聞きづらそうな様子で口を開く。

 

「ならいい。……このこと、KID狙撃の件をゼロさんはなんて言ってんだ?」

「───俺か?別に国際指名手配犯なんて日本の恥、どうなってもかまわないが…。居なくなればその分浮いた警察の資金を日本の治安維持のために使えるわけだし───とのことですが」

「うーんこれ俺はなんて答えれば正解なんだよ」

 

 鋭角ギリギリを攻める日本第一主義な降谷さんの回答に、コナン君はすぐさま白旗を上げた。

 色々主義主張が極まってて口出ししにくいのは分かる気がする。

 

 それにしても、降谷さんも自分の正体をストレートに示すかなり危うい答えをしたものだ。

 恐らくは…最近コナン君が赤井秀一と密に連絡を取り合っていることを踏まえての回答なのだろう。

 

 コナン君は私たちの正体が、組織に潜り込むNOCなのだとかなり高い確度で疑っている。

 

 KID狙撃の件をわざわざゼロと指名して聞いたのは「主人格である貴方の立ち位置を教えてくれ」という暗喩。

 それを解ったうえで降谷さんは「日本警察の所属だ」と返事したも同じだ。

 

 それは赤井秀一を通してNOCリストから降谷零の身元を探っているコナン君たちに、「危ない橋を渡るのは止めろ。俺の正体なら教えてやる」というメッセージも含まれている。

 

 コナン君が返答に困ってる旨を口にしたのも「今すぐ答えは出せない。NOCリスト確認による裏取りは続行する」と言っていたのだろう。

 

 本当にまだるっこしいな、コナン世界の住人の会話は!

 その時の気分とライブ感で喋ってる私の身にもなってほしい。

 もう少し知能指数低くして。

 

 

 と、そんな諸々もありつつ次の動きへ。

 コナン君が私の部屋に来たのは、鈴木会長からの連絡を伝える役目も担っていたかららしい。

 

 KIDの件を踏まえ、メモリーズエッグの展示を急遽中止して東京に戻るのだそうだ。

 帰りは電車ではなく、メモリーズエッグとともに優雅に船旅とのこと。

 

 船内では私は静観につとめ、映像作家の寒川さんが殺される件は完璧にスルーとした。

 下手に手を出して自棄になった浦思青蘭にコナン君たちを害されても困るからな。

 

 あらかじめ事件が起こるのは分かっていた。

 私は念のためアリバイ作りのため犯行時間帯に部屋を抜け出し、メモリーズエッグを見せてもらいたいと警備員さんに話しかけに行った。

 無論、鈴木会長の許可もなく狙われている秘宝を見せてもらえるはずもなく。

 1時間ほど警備員さんとあーでもないこーでもないと雑談するだけで終わった。

 

 ちなみに、警備員さんとはだいぶ仲良くなり、船での警備経歴から船に酔いにくい立ち方まで色々教えてもらった。

 

 この間お子さんが生まれたとかで、可愛い寝顔写真も見せてもらっている。

 コナン界の警備員って割と危険な目にあいがちだから、今後も二児のパパとして健やかに頑張ってもらいたいところ。

 

 一夜明け。

 自室で右目を撃ち抜かれて死んでいる寒川さんが発見され、船の中は大騒動だ。

 

 探偵として招かれている立場上そこまで心配はしていなかったが…。

 その時間帯警備員さんと一緒にいた私のアリバイはすぐさま証明され、犯人からは除外された。

 これまでの経歴を警察に根掘り葉掘りされると「安室透」として好ましくない。

 

 こうしていち早く犯人でありえないと証明することは必要なことだ。

 

 コナン君がちょいちょいと私の服の裾を引っ張って呼ぶ。

 私はコナン君の背の高さに合わせるようにかがんで、何かな、と首を傾げた。

 

「なあ、お前さ。右目を狙撃する強盗……スコーピオンと知り合いなのか?」

「あ、もう通名までたどり着いたんだね。知り合いと言えば知り合いかな。以前に仕事場でバッティングしたから、軽く薙ぎ払ったら逃げて行ったよ。僕の方もそこまで追う理由もなかったから見逃したけど」

「……そうか」

「───こんな凶行を繰り返すようなら、あの場で殺しておくべきだったか」

 

 冷徹な声が空気を震わせる。

 

 私はこの犯行を知っていたが、降谷さんは原作知識など知る由もない。

 だからこの犯行に憤っているし、ここまで近くにいて防げなかったことを悔いている。

 

 コナン君が眉をひそめて目線を落とした。

 

「そんなわけあるかよ。犯人は法の下で裁かれて、法の下で罪を償う。それが法治国家って奴だろうが」

「…、君はいつだってまっすぐだな」

 

 降谷さんが自嘲気味にコナン君を撫ぜる。

 私と違い、少々武骨でぎこちない撫で方だ。

 

 船が東京にもうすぐ着く。

 これからヘリでやってきた警視庁捜査一課の面々へとあいさつもしなければならないだろう。

 

 

 私はスコーピオンをどう処理しようか思いを巡らせた。

 




明日明後日は土日なので更新しない予定
……へへへ……我慢できなかったら更新するかも(感想中毒者の顔)
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