バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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遅くなったけど投稿ッ!!!


瞳の中の暗殺者④

 

 現在、午前8時。

 私達とコナン君、そして距離を取って私たちを付ける風見さんの3人で「松田刑事の墓参り計画」を実行中である。

 

 松田刑事の墓は米花町から車で約三時間。

 走行中の襲撃もあるかもしれないので、念の為私がRX-7の運転を行っている。

 

 純白のスポーツカーが風を切って高速の真っ直ぐな道路を走っていく姿はまるで車の宣伝CMみたいに見えたことだろう。

 実際には運転席で私が憂鬱全開の顔でハンドルを握っているのだが。

 

 ただでさえ運転が苦手なのに高速道路とか憂鬱が過ぎる。

 運転できないわけじゃないが、感覚が鋭敏だからこそ車の一歩外は即死圏内だと分かって怯えが先に来てしまうのだ。

 

 速い……お外怖い……。

 

 なお、助手席にはコナン君が例の事件で使われた予告状の写しを持っている。

 裏には現場となった観覧車の写真付き。

 

「そろそろ休憩しようか。次のパーキングエリアで止まるからね」

「おう。サンキュー、安室さん」

 

 本当に休憩したいのは私の方なのだが、それはおくびにも出さず。

 PAにつけばつつがなく駐車場へ車を停め、お互いシートベルトを外してドアを開ける。

 

 と、そこで私の胸を狙い遠距離狙撃!

 

 警棒で軽く振り払えば、銃弾はアスファルトへぶつかって跳ね返り、茂みへ落下した。

 「銃声!?」とコナン君が素早く車の間に身を伏せた。

 君は君で場慣れしすぎだろうに。平和な日本という概念を返してくれ。

 

「ちょっと狩ってくるから待ってて。風見さんに引き渡さないと」

「おい、一人で大丈夫なのかよ!?相手はスナイパーライフル持ってるんだぞ!」

「次弾が無いためおそらくは単独犯。腕は悪くないがその程度。敵対組織の鉄砲玉かな。負ける要素が見当たらない」

「お、おう……」

「でも油断は禁物って学んだばかりだからね。慎重に行ってくるよ」

 

 引き気味の回答のコナン君を尻目に敵の位置を確認して、そこで。

 あ。

 

「前言撤回。君も来て」

「へ?」

「まだ別の刺客がいる。君を狙ってるみたいだから、ここに残してくと人質にされかねない」

「…大人気だな、オメー……」

 

 呆れたような口調のコナン君を素早く小脇に抱え込み、移動しやすいように低く腰を落とす。

 

 さっき入り口から駐車場に入ってきた黒い乗用車。

 それとSA建物内にて土産物を物色するふりをしている男性3人組。

 

 彼らは間違いなく私、すなわちバーボンを狙って動いている。

 私の警戒に内側の降谷さんが困ったようにきょろきょろと外の様子をうかがう。

 

───中で見てても全然そんな気配感じられないんだが、本当なのか?

───僕は降谷さんより感覚が鋭敏ですから。まあ、仕様って奴ですよ

───変な仕様多いな

 

 変って言うな。

 私が魂のみの存在であることに起因する仕様なのだし仕方ないと思ってあきらめてくれ。

 

 15分後。

 

 入り口から入ってきた黒い乗用車はボンネットに飛び乗ってフロントガラスを片手でぶち破り、運転手をつまみ出して早期決着。

 観光客ぶった鉄砲玉三人は発砲してきたもののずぶの素人。

 コナン君を背負ったまま軽く人のいない壁の方へはじき返し、手加減に手加減を重ねた回し蹴りを一発で終了だった。

 

 「ほんと人間じゃねーよアンタ」ともはや笑いしか出ないらしいコナン君を軽く小突いて非難する。

 

「失敬な。ルパン一味よりは人間じみてるつもりだよ」

「刀一本で機関銃の一斉掃射をはじき返すやつらと比較すんな!人外頂上決戦でも開くつもりかよ!」

「あ、訂正すると機関銃の一斉掃射をはじき返すぐらいなら僕でもできる」

「なん……だと……」

 

 今にもBLEACHのBGMが流れだしそうなほど見事な「なん…だと…」を披露され、私は内心でだけ「掲載誌が違うと思うよ!!!」と叫んだ。

 畳に大の字になって寝ていた着流し姿の降谷さんが「け、けいさいし?」と疑問符を飛ばしていたが、それは割愛。

 

 

 そんな諸々もあり、パーキングエリアを出たのは休憩開始からおよそ30分後になっていた。

 

 

 

 

 

 墓は寂れた田舎町の端の林の中に隠れるようにして立っていた。

 

 山々に囲まれ、鳥の鳴き声、虫のさざめき、あと変な叫び声みたいな小動物の声などが聞こえてくる。

 山のわきにクマ出没注意の看板が見える。洒落にならない。

 

 私は近場にある異常なほど広い駐車場へと車を停め、コナン君と寺の隣にある墓場へと向かった。

 駐車場から出ようとした、その時。

 

「よお、ウルフドッグ。俺のことは覚えているか」

 

 高い石垣の裏からするりと姿を現したのは、黒い帽子に同色のロングコートを合わせた長身の男。

 長い銀髪を揺らし、その三白眼を凶悪に細めて私たちを見ている。

 黒の組織幹部、コードネームはジン。

 

 恐らくは待ち伏せしていたのだろう。

 

 コナン君が驚愕に硬直している。

 ジンにしては低く不機嫌そうな声色で、まずいな、と思った私は早めに手札の一枚目を切った。

 

「ええ。今回は失礼しました、ジン。情けないことに不覚を取ったみたいで」

「………、なんだ。話じゃ記憶を失っちまったって聞いていたが、ガセだったみてぇだな」

「いえ。最初は僕も完璧に記憶が飛んでましたよ。けれど短期的なものだったみたいで、すぐに回復したんです」

「そいつはよかった。てめえには組織のためまだまだ働いてもらわねーといけねぇからな」

 

 声色に喜色が乗る。急に上機嫌じゃん。

 カバーストーリー①、記憶喪失は嘘ではないが、すぐに回復した設定。

 数々のNOCを始末し、嘘に敏感な彼相手に完全なる嘘は悪手。

 できる限り真実のみで話をして、どうしても嘘をつかなければならないときは真実の一端を混ぜて話すこと。

 

 これ以上突っ込まれることを避けるため、意図的に話題をずらす。

 

「そういえば、病院をうろついていた刑事さんが話していたんですが、風戸医師を殺したのは貴方ですよね」

「ああ。組織の顔たるテメーに泥を塗ったんだからな。本当なら楽には死なせねぇところだが…サツがうろついてやがったから時間がかけられなかった」

 

 ぶわり、とジンの殺気が漏れ出してくる。

 これで残り香に近しいってんだからこの人の殺気も相当である。

 コナン君が完全に私の後ろに隠れてしまった。

 

「そんな、あの程度の小物にジンの銃弾なんて勿体ないですよ。すみません、僕の気のゆるみであなたに迷惑をかけて」

「かまいやしねぇよ。ベルモットの奴も煩く喚いてやがったからな。物のついでだ」

 

 ジンは吸っていたタバコを落とし、靴でにじり消した。

 私に対しては相変わらずの鷹揚さだ。

 面倒臭がりのジンがこんな些事で本当に出向くなんて思ってもみなかったため、私としてもちょっとばかり友情を感じざるを得ない。

 

 当社比で柔らかな笑顔を私に向け、ジンは帽子を深く被り直した。

 

「しかし、テメーが無事だったんなら俺も先走っちまったってことか。テメェ自身に引き裂かせてやれなくて悪かったな」

「いえ。心配してくれてありがとうございます、ジン」

 

 いや私NOCやけどな…舐め腐った爆弾犯を後腐れ無く消してくれてありがとナス…。

 

 一番聞きたい話を聞けたからか、そこでようやく私の後ろで硬直するコナン君に気がついたらしい。

 じろり、と人殺しさながらの眼をコナン君へと向ける。

 

「しかし…そいつはなんだ、ウルフドッグ」

「コナン君ですよ。僕の表の顔である探偵の付き合いで、面倒を見ることになっていまして」

 

 ニコッと含みを持たせてコナン君の両肩を持ち、顔を寄せた。

 イメージは届いたばかりのお取り寄せ冷凍黒毛和牛に頬ずりする感じ。

 

 ジンは私の意図を正確に読み取り、凶悪な相貌をさらに凶悪に吊り上げて笑った。

 

「ほう。獣が牧畜たぁ皮肉なこともあるもんだな。脂の乗るまで育てて、懐いた家畜をその手で引き裂いてやろうってか」

「可愛いでしょう。誰にもとられないように守ってるんです。ジンも手を出しちゃだめですよ」

「獣の餌に手を出す馬鹿はいねぇよ。そいつはテメーだけの肉だ」

 

 つまり、仲良しのフリをして後々殺してやろうと企んでいる説。

 別に嘘自体はついていない。

 探偵の付き合いで面倒を見ることになったことも、私が彼を守っていることも。

 どちらも真実だし、ジンに手出ししてほしくないことまでも嘘の一つも含まれていない。

 

 そこでようやくコナン君も再起動したのか、実に幼なげな演技で私の服の裾を掴んだままジンを見上げた。

 

「お兄さん、何を話してるの。怖いお顔だよ?」

 

 ちょっと舌足らず、かつ理知的な色を含めて。

 流石伝説的大女優の息子。

 無力な良家の子息感が凄い完璧な演技である。

 

 それはそれは悪辣な顔をしたジンが「さて。何の話だろうなァ」と返事した。

 なんでコイツは話してるだけで殺人犯みたいな顔をするの。

 

「それで、テメーはこんな田舎くんだりまで何のために来たんだ」

「墓参りですよ。コナン君の付き添いでね」

「墓参り?」

 

 柄じゃない、とでも言いたげな顔でジンが眉間に皺を寄せる。

 まあ確かにウルフドッグの柄ではないわな。

 

 コナン君がそこで素早くフォローに入る。

 

「あのねあのね、僕、すっごく危険な目にあってね。でも助かって、それは死んじゃったおまわりさんが見ててくれたからって刑事さんから聞いたんだよ!」

「この間の爆破事件にこの子が巻き込まれまして。前の事件被害者である警察官の墓参りをすることになったんです」

 

 私が軽く事情を説明すれば、ジンはついに声を上げて笑い始めた。

 というかドンドン上機嫌になってくなこの人。

 天井知らずか?

 

「あのウルフドッグがサツの墓参りたぁ!おちおち成仏もできねぇな!」

 

 すっかりテンションアゲアゲになったジンは、そのまま踵を返して片手を上げる。

 降谷さんの記憶が戻ったら後で飲みに誘おう。

 この辺はアフターケアも重要である。

 

「邪魔したな、ウルフドッグ。その若鳥のモツ、せいぜい味わって喰うと良い」

 

 そう言い残し、ジンはポルシェ356aにて去っていった。

 

 

 

 

 そうして。

 墓の前で私たちはついに時を待つ。

 

 墓を軽く掃除し、花を手向け、水を入れ、お線香を上げて2人で合掌する。

 降谷さんを心の奥底から引き上げ、どうにも落ち着かないらしい彼に声をかける。

 

───よく聞いて

 

 墓に置かれた紙の裏には観覧車の写真が印刷されてある。

 七十二番目の席がギラついて見える。

 

 コナン君が静かに、ゆっくりと決定的な文言を読み上げた。

 

「──勇敢なる警察官よ。君の勇気を称えて褒美を与えよう。もう一つのもっと大きな花火の在処のヒントを表示するのは爆発3秒前」

「!!!!」

 

 驚愕に見開かれる瞳。

 我は円卓の騎士なり。

 眠っていた間に失った友を、一番悔いたのは彼自身のはずだ。

 

 コナン君自身、この文言を見て…体験している。

 だからこそその時の緊張と決意を、誰よりも強く再現できる。

 

「……健闘を祈る」

「───ッあ」

 

 供えられた観覧車の絵が風に吹かれて舞う。

 高く高くに舞い上がり、風に乗って見えなくなるほど高く高く。

 

 故人を悼むように。

 

 降谷零がそっと泣き言を漏らすように、静かに俯いた。

 

「……ちょっと強引が過ぎるんじゃないか、コナン君。俺、普通に涙が出てきそうなんだが」

「ははは。ごめんね、ゼロさん。………おかえりなさい」

 

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