バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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ライと任務

 

 あれからいくつかの任務をこなし、本日はライの護衛兼任務補助だ。

 原作に登場する幹部たちの日常やら素顔やらは実に見ていて楽しいが、任務の大変さは据え置きである。

 

 特に、つい先日に行った長期潜入中のピンガへの物資輸送は非常に面倒くさかった。

 潜入先が建設予定の軍事施設顔負けの海の要塞であるからして、ただ接触するだけでも表の手続き裏の根回し、様々必要だった。

 それだけ頑張ってようやく会ったピンガは開口一番「なんだ、ガキかよ」だし。

 あんただって十分若いでしょうがよぉ!

 

 なんて叫ぶわけにもいかず、私はウォッカの教えに従い無言でピンガの頬に鉤爪を突き付けた。

 ウォッカいわく。

 殺気を混ぜたオメェの爪をヒタヒタ頬にあててやりゃ、たいていのやつは黙るってもんよ、とのこと。

 

 なんという肉体言語。これだから裏社会は野蛮で嫌になっちゃうワ。

 殺気とともに鉤爪の刃をひたりと当てれば、ピンガは黙りこくった。

 いくらネームドの幹部とはいえ、この距離で負けるほど降谷零の肉体は弱くない。

 インファイトという分野に於いて組織で私に勝てるものはいない。なにせ鍛え抜かれた戦士が火事場の力を常時発揮しているような異常な肉体能力なのだ。

 負けるとしたら石川五エ門とかその辺りぐらいだろう。

 

「ちっ、冗談も分からねぇのかよ」と両手を挙げて吐き捨てるピンガに私も爪を降ろしたが、そこで再びピンガがニヤリ。

 

 袖から素早く取り出した暗器で私の顔面を狙ったのだ。

 マジで素行悪いなピンガ。でもその暗器の出し方カッコイイな。私もやりたい。

 私の肉体性能だと見てから回避余裕でしたになるので、そのまま暗器を爪でへし折って腹を蹴飛ばしたけれど。

 

 最近手加減も上手くなってきたので蹴った結果内臓破裂とかの憂き目にもあわず、ピンガは激しく咳き込んで「化け物野郎!」と叫ぶにとどまったのであった。

 

 なんて、過去に思いをはせるのはここまで。

 後ろからやってきた気配を感じ取り、ビルの屋上にて私は振り向いて一礼した。

 

「先日ぶりですね。今回スポッターも務めさせていただきます、バーボンです」

「……テメェが俺と組むってのか」

「はい」

 

 黒いライフルバッグを背負ったライは、黒い長髪をビル風に靡かせながら平坦な声で返事した。

 ピンガと違い、この男の言い回しに挑発の意図等は何もない。

 お前じゃ力不足だと言いたいのだろうと百人が百人思うだろうが、恐らくは単に事実確認しただけのぽやっとさんである。

 面白いかよ。どうしてこんなんになるまで放っておいたんだ。

 

 やや口の悪い赤井さんという珍しい存在に興味津々になりつつ、私は望遠鏡等各種用具をそろえたバッグを持ち上げた。

 いつも通りホテルを取り、スケジュール組みをこなしつつ周辺地図や当日の天候情報等を用意。

 場合によってはセスナの手配もするのだが、今回は普通に公共交通機関を使うことになった。

 

「できるのか?」

「そちらも技能として叩き込まれています。不足はないかと」

「そうか」

 

 ちなみに、この技能はコルンから教えてもらったものだったりする。

 キャンティが別任務の時も仕事ができるようにということで、口数の少ないことで有名な彼から直接指導を賜ることができたのだ。

 口数が少なすぎて理解に苦労はしたが、流石は本職。

 身についてしまえばキャンティの方にも「さっすが便利屋バーボン!」と褒められる安定性となった。

 あと便利屋って呼ぶのは止めて。なんか面倒な仕事が増えそうなので。

 

 

 

 というわけで当日。

 

 向こうにもどうやらやり手がいたらしい。

 先回り的に私たちが陣取ったビルの屋上へ人員を配置し、強襲をかけてきたのだ。

 

「死ねェッ!!」

 

 大きなナタで切り掛かってきた黄色い派手なシャツの男に、ライフルを構えたライは驚いて振り返った。

 完全な死角、かつ予測していなかったそれにさすがのライも気配を察知することはできなかったらしい。

 振り下ろされるナタにライは無防備のままだった。

 

 まあ、獣並みの感知能力を持つ私には吐息でバレバレだったが。

 念の為持ってきてよかった、鉤爪。

 すかさず横から爪で一薙ぎすれば、男は胸に切り裂かれたような三つの傷を付けて鉄柵へと叩きつけられた。

 

 静音性を重視しすぎて銃を使わなかったのが敗因だな。

 銃を使っていれば私もライを守らなくてはならないためもう1ターン稼げただろうに。

 

 でも背後に迫るナタ男ってめっちゃ怖いな、ホラー映画か?

 

「テメェ……人型のleopard(ヒョウ)だとは聞いていたが、まさにそのものだな」

「はい?」

 

 血まみれの爪をまじまじと見て眉を顰めるライに、私は首を傾げた。

 確かに珍しいだろうが、ジンあたりから私の戦い方は事前に聞いてただろうに。

 

 ジンはことあるごとに私の戦いぶりについて吹聴するのが妙に好きなのだ。

 凶暴なウルフドッグだとか、血に濡れた肉食獣だとか、盛るにも程がある謳い文句でポエムを唱えたりね。

 恐らくは銃すら使わず近接戦で人を惨殺するバーボンの残忍さ、みたいな所を気に入っているのだと思われる。

 

 別に残忍なわけじゃなくて、私が本能全開の肉体を操りきれなくてどうしても手加減できないのが原因なのだけど。

 私だって好きで血まみれになってないわい。銃のセンスゼロなんだから仕方ないだろ!!!

 

「ああ、派手に汚してすみません。片付けは僕の方でしておきますので、先ずは任務の方に集中しましょう」

「……いや、今日のところは引くぞ。奴らも俺たちの存在に気づいているはずだ」

「いいので?任務失敗となりますが」

「失敗を重ねる趣味はないんでな。やるならテメェ一人でやりな」

 

 突き放すような言い方だが、その目には心配のような色が浮かんでいる。

 任務失敗には結構な制裁が科されるのが組織のやり方だ。

 今回の件もライは結構な責め苦を負うことになるだろう。……が、私は実は比較的責任が軽い。

 

 あくまで側付きだという立場と、私の評価はどちらかというと接待される幹部陣からの評価に依存しているからだ。

 逆に言えば、幹部を不快にさせれば容易に首が飛ぶのもこの仕事ではあるのだが。

 ジン辺りと仕事する時は本当に神経を使う。下手したらその場で射殺だからね、射殺。勘弁してほしい。

 

 あと、どうでもいいのだがライって私のこと未成年だと思ってる臭いな。

 降谷零は御年26のバリバリ成人男性なのでその認識は今すぐ改めてください。

 

「僕の方も派手に爪を振るう命令は受けておりません。では、撤退しましょうか。組織からの命は追ってご連絡いたします」

「ああ」

 

 言葉少なに撤退する私たちは、アッという間に夜の闇へと紛れて消えた。

 任務失敗でもライなら私の評価を悪くは言わないだろう、と無条件に信じる私も私である。

 

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