バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
はてさて、降谷さんの記憶が無事戻ったところで検査のため1日だけ追加で入院し、無事自由の身となった私です。
入院している間に暗殺が合計3回、爆破未遂が5回ほどあったが、全て適当に回避して風見さんへバトンタッチした。
痺れこそ残るものの、この程度の雑魚にとられるほど私は甘くない。
私を殺そうなんざ100年早いんだよ。
また、退院する日の午前中、私が荷物の片づけをしている最中にルパン三世と愉快なご一行があらわれた。
やれ油断しすぎだとかやれ免許皆伝取消だとか散々揶揄われ、さすがの私も泣きそうである。
三流以下って言わないで……あと降谷さんは顔真っ赤にして怒り狂うのは止めなされ…。
肝心の五エ門先生はというと、腕を組んだままうむ、と一つ頷く。
「油断慢心の色が見える。地雷原走り込み50周を課すので、来週末は空けておくよう」
「………じょ、冗談ですよね……?───それはさすがに俺死ぬんじゃないか?」
「冗談などではない。このままでは遠からずお主は慢心に引きずられ死に至る。であるのなら、ここで引き締めは必須」
「つ、つまり情けない死にざまを見せる前にここで引導を渡してやると…?───結局死ぬんじゃないか!!!」
「精神統一し雑念を捨てれば生き残る道もある。まぁ、大概は死ぬが」
やっぱり死ぬんだ!!!五エ門先生の人でなし!!!
私達の悲鳴とルパンの馬鹿笑いとが交差し、実にやかましい病室に看護師さんが「お静かに!!」と怒鳴り込んでくるまでこの喧騒は続いたのであった。
看護師さんに病室では禁煙、と注意され萎びる次元を添えて。
また、コナン君はコナン君でほんの一日目を離した隙にとんでもない事件に巻き込まれていた。
どうやら、コクーンという脳に接続して五感を仮想空間にダイブさせる次世代型ゲーム機の試遊会に参加したようだ。
まさにVRMMOの概念の走りになるビッグイベント。
人工知能ノアズアークの乱入でデスゲームと化してしまったようだが、それはそれで乙なもの。
というか絶対これ名作劇場版として有名なベイカー街の亡霊だ。
私もVRMMOやりたかったーーと帰ってきたコナン君に散々訴えたら、「いやあのゲームは子供だけ……ああ、そういや5歳だったな、オメー」と半笑いで言われてしまった。
いくら主人公さまとて許せぬ!
瞬時に湯婆婆と化した私はコナン君の柔らかなほっぺを散々揉みしだき、「やめやめ痛い痛いひゃからひゃめろっへ」という声を無視して悪を成敗した。
また、5歳という言葉にハッとした降谷さんが突如深層心理内におもちゃ部屋を作る計画を練り始めたので、丁寧に辞退申し上げた。
5年前に憑依したのは確かだが、私は断じて5歳児ではないのでそこんところはよく理解するように。
いや待て、お見舞いに来たルパン一行が私へのお土産にデカいキャラ物のぬいぐるみをいくつも押し付けてきたのは、私が5歳児だってことを言外に言っていたのか?
もはやすべてが疑心暗鬼。
深層心理内で怒りの爪素振りをする今日この頃なのである。
そんなわけで、退院してしばらくたったのち。
私達は毛利探偵の依頼人に指定され、とあるテーマパークまで来ていた。
名前はミラクルランド。
劇場版『探偵たちの鎮魂歌』に登場する比較的新しめのテーマパークだ。
降谷さんの運転するレンタカーで少年探偵団を乗せて約1時間。
到着したお城風の洒落たホテルへ入れば、待ち構えていた秘書さんに大ホールへ通され、椅子に座るよう指示される。
私はそこで秘書さんから香るような緩やかな悪意を感じ取った。
この人は事件の真相は詳しくは知らないものの、依頼人……つまり犯人のやってることを理解して黙っている人だったか。
私の警戒に気付いて不思議そうな顔をしたコナン君に、私はそっと耳打ちした。
「悪意と害意を感じる。おそらく、ターゲットは僕らだ」
「悪意?なんでまた……この人は依頼人だろ。俺らに危害を加える理由が無い」
コナン君の困惑顔をそのままに椅子へと座る。感じる波長からして椅子の内部から通信用の電波が発せられている。
たしか椅子のひじ掛け部分が指紋読み取り用の部位になっていたのだったか。
流石に潜入捜査官の指紋をくれてやるわけにはいかないので、その部位には触らないよう注意する。
配られたミラクルランドの1日フリーパスIDからは滴り落ちるような作り手の悪意が見える。
C-4付きの爆発する腕時計型入場パスなんてろくでもない物、良く作ろうなんて思ったな。
席の関係上、私の隣にいるのは毛利探偵のみ。
ミラクルランド遊び放題のVIP用パスにげんなりしている毛利探偵──高所恐怖症の毛利探偵にジェットコースターなどもっての外なのだろう──のパスをひったくり、私はにっこり笑った。
「これは後でつけましょう」
「え、おお……」
「おや、お二人ともミラクルランドには行かれないので?無くされると再発行はできませんよ?」とパスを付けるよう誘導する秘書さんに対し、私は有無を言わさぬ強い口調で答える。
「大きくて邪魔ですからね、依頼が終わった後で付ければいいでしょう。ね、毛利先生」
「そ…そうだな…?」
私の頑なな意思を感じ取ったのか、秘書さんは黙りこくった。
おそらくは依頼人から「必ずIDはつけさせろ」という類の指示を受けていたのだろう。
「少々お待ちください、今電話がかかってきておりまして……失礼します」と着信があったふりをして素早く退出していく。
恐らくは予想外の事態が起こったということで依頼人の意見をうかがっているはずだ。
コナン君が慌ててこっちへ駆け寄ってきて、疑問を耳打ちする。
「おい、どういうことだよ。まさかこのIDになんかあるんじゃねーだろうな!?」
「直感だと爆発する気がする」
「おおおおおおい!!!!?いやどういうことだよ!?」
原作知識、なんてファンタジーチックな理由以外は直感しかないからな。コナン君の求める論理的な根拠などは無い。
ただこれは間違いなく爆発するし、人ひとりの命を奪うには十分な量の爆薬が仕掛けられている。
私は大きくため息をついた。降谷さんが黙ったまま怒気をにじませている。
退出していた秘書さんが戻ってきて、「失礼しました。それでは話に戻りましょう」といって何事も無かったかのようにカーテンを閉めていく。
どうやら依頼人からこのままでのGOサインが出たのだろう。
娘の毛利蘭や子供たちには爆弾を設置できたので、それで十分人質になると考えたのだと思われる。
ホール中央の大きなモニターに明かりがともり、そこに犯人のシルエットのみが映し出される。
犯罪者の言は割愛。
要は事件の真実を暴いてほしい。真実に至れなかったら殺す、という事だけだからな。
皆が腕につけたフリーパスIDが爆弾だと説明する犯人の声は若干の不満が滲んでいた。
静かな声の中に嘲笑を混ぜ、「そのパスを付けなかった賢しらな二人は別だが。他の5人は24時間が過ぎた時点でIDが爆発する」と言い放つ外道さよ。
「な……お前、分かってて俺からIDを奪ったのか、安室!!」
「いえ。ただ、嫌な予感がしたので。僕、直感には自信があるんです。すみません。蘭さんを止められなくて」
「……そりゃおめー、仕方ねーだろ。直感じゃ、理由もなんも説明できねーんだからよ…」
毛利探偵が困った顔で目をそらす。どちらにせよ娘が人質に取られている以上、毛利探偵に選択肢などない。
コナン君の腕にももちろんパスが巻かれている。
多少の傷を許容できるのなら私が鉤爪でパスのバンドを切り落とすことも可能だが……外したことを検知して爆発する機能があった場合が厄介だ。
───つくづく、爆発物を使うテロリストに縁がある。
降谷さんの吐き捨てるような声が心象世界に響いた。