バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
横浜海洋大学からのデータ奪取任務はスムーズに終わった。
大学構内に侵入した後キュラソーがデータを奪取し、私が校内に火を放つ。
私達が0時に侵入を開始しようとしたころには、既に昼に起きたという不審者侵入事件の影響で校内には人っ子一人残ってはいなかった。
恐らくはコナン君の策だろう。
どうせこうなると思ったから、わざとコナン君に情報を流して先に人払いをしてもらったのだ。
つまり工数削減というやつである。
「用意がいいな。流石ウルフドッグだ」とキュラソーに褒められたが、それもこれもコナン君のおかげ。
さらりと笑って「貴方に苦労はかけられませんから」と返事したが、他人の功績に全力で乗っかるズルい大人のそれに違いない。
データを奪取すればあとは後片付けと組織への報告が残っている。
翌日昼にジン&ウォッカのいつものペアと合流し、状況を報告。
非常に満足げなジンを適当にヨイショしておけばお仕事も終了だ。
その間にコナン君の劇場版も終了し、ミラクルランドで一部爆発が起きたり怪盗KIDが出現したりと騒動があったらしい。
報告後に急いでミラクルランドに戻れば、事件解決にホッとする毛利探偵にラリアットを喰らった。
どうやら「安室透はその責任感から一人で先走って調査に向かった」というカバーストーリーがコナン君の手により流布されていたようだ。
毛利探偵から「おめぇ心配かけんじゃねぇ!!」とお叱りを受けてしまった。
実際は大学に火を放つ放火犯だったのだが、それはコナン君との間だけの秘密である。
貴重な資料や研究結果、たくさんの高価な研究用機器が炎に巻かれて消えたことに、コナン君は沈んだ表情をしていた。
別に私という反社会的組織のメンバーの犯行なんだからコナン君が気に病むことではないのに。
そして横浜海洋大学放火事件(未解決)の報道も一息ついた、本日。
私は某国のルパン三世のアジトまでやってきていた。
「相変わらず派手な服だこと。五エ門も含めて和服が二人もいるとは妙な気分だぜ」
「───何か問題でもあるか、ルパン三世」
「うむ。余人ならまず服装に目が行ってしまいお主自身の身体的特徴を覚えていることはまれだろう。よい服だ」
「五エ門さんはそれ、褒めてるんです……?」
今の私たちの服装は奇妙そのものだ。
赤と白を基調とした和装に、赤い房飾りのついた狐面を被るコスプレ具合。
これは風見さんプレゼンツの私たちの正体を隠すための盾のようなものだ。
風見さんはこれについて往年のヨーコちゃんの妖狐コスをイメージして、などと語って降谷さんにマジ殴りされそうになっていた。
非常に中性的な見た目で、着物の型こそ男性用のそれだが、男装の麗人といっても通るような不思議な妖艶さを醸し出している。
これも性別を特定しにくくするための偽装工作の一種。
ルパンという超級の有名人と共に行動するにあたり、できうる限り情報を伏せるための苦肉の策だ。
そこで両手に鉤爪を装備しているのだから、見る人が見ればバレバレではあるのだが。
そんな珍妙な見た目であるからして、降谷さんはハリネズミのように尖った意識でイラついておられる。
ただでさえ童顔を気にしているのに、そこに女子扱いが加われば言わずもがな。
自分で着ておいて烈火のごとく怒る理不尽極まりない降谷さんを、「やー、事情を知らなきゃ俺様でも口説いてたかも?」とか「かわいーじゃない降谷ちゃん?」とか揶揄うものだからそりゃもう大惨事である。
ボクシングで挑んで軽くルパンに組み伏せられ、あまりの屈辱に屋敷の中に引きこもってしまわれたこともある。
おいたわしや……降谷さん。でも勝てないに決まってるやんね……。
とまぁ、格好については置いておいて。
今日の目当ては仮アジトから目と鼻の先の富豪の邸宅にあるビッグジュエルである。
先に予告状を送っておいたようで、今は警察と連携したSPや資材を投入した防犯設備でギッチギチだ。
最新型の巨大な金庫に各種センサーなどそうそうたる仕掛けはまるでカラクリ城の如し。
皆で黄色い逃走用のアンティーク車に乗り込み、夜の闇に紛れながら予告通りの時間にお邪魔します。
入り口は2秒フラットで解錠。三段階のトラップを越え、徘徊する刑事さんたちを尻目に電子錠の前へ。
この電子錠もルパンなら「ちょちょいのちょいとな!」で終わるが、今回は降谷さんにお任せだ。
今回のメインは降谷さんの電子錠解錠スキルの復習テストも兼ねているのだ。
とはいえ、やはり学び始めたばかりの降谷さんでは突破に時間がかかる。
「なあ、まだなの降谷ちゃん。もう警備員来ちまうぜ?」
「あと少しで……くそっ!」
ルパンにからかわれ、つい汚い言葉が漏れ出てしまう降谷さん。
落ち着いて、貴方ならできるでしょう、と精神世界の内側から語り掛ければ、多少は息が整ったようだった。
「ッ、開いた!」
「おー、若干時間はかかってっけど、まぁ妥協の範囲内?うーん、合格!」
「っしゃあ!」
降谷さん思わずガッツポーズ。あのルパン三世に認められたと思うとそりゃ嬉しいよね。
解錠した二重の鉄製扉を開いて中へ侵入すれば、正面から大勢の足音がこちらへと向かってくるのが分かった。
短機関銃4丁、拳銃6丁。広いホール内に計12人。
「あらら。待ち伏せ」
ルパンがコミカルに肩をすくめてちらりと私に目線を向けた。
表へ出ていた降谷さんと入れ替わり、私が肉の身体の瞳を開ける。
やれ!ルパンだ!と怒号が飛ぶ。
そして短機関銃による怒涛の銃撃。
私は軽く走り出した。
銃撃の間を走り抜けるように鉤爪で一閃。
瞬間、ばらばらと服が切り裂かれ、銃器が崩れ、靴も防具も細切れになっていく。
五エ門先生直伝の秘技・武装解除の術である。
とはいえ、未だ私の腕では成功率は二割程度。それ以外は皮膚を引き裂いてしまい男女問わず体中に酷い傷跡を残してしまう。
今回は珍しく全員成功したのか、ぎゃあああ!と叫んで床を転がりまわる人はいなかった。
「うむ。その調子で精進するといい」
「はい、日々練習を欠かさぬようにします」
満足げな五エ門師匠に一礼して、私たちはさらに奥へと進んでいく。
と、その時。
「ルパ~~ン!!逮捕だァ!!!」
響く声は毎度おなじみ。ルパンを探して三千里のスーパー警部、銭形さんである。
マジでどこにでも現れるうえ、ルパンが犯行しているタイミングをピンポイントで襲撃してくるのだからその凄まじさがわかるというもの。
割とマジに紅子様レベルでファンタジーな御人である。
「げぇ、もうとっつぁんここを嗅ぎ付けてきたのか!えらく早くない?」
「勘だったが一晩ヤマを張った甲斐があった。今日という今日は逃がさんぞ!!」
「勘ってとっつぁん…どゆことなの…?」
困惑するルパン三世とかいうレアなもの───銭形警部関連だとわりとよく見る───に私も居心地の悪い嫌な予感がして。
銭形警部はこちらへと振り向いてビシィ!と私の方を指差した。
「それと君!新たなルパン一味に加わった赤い爪痕!フォックステイル!どういう経緯でルパン一味に加わったのかは知らんが、容赦はせん!」
「…………」
説明しよう!
フォックステイルとは、私の残す鉤爪の跡が、狐のしっぽのように見えることから名付けられた渾名である!
狐なのか犬なのか狼なのか猫なのか豹なのかジャガーなのか。これが分からない。
ひとまず野生動物なのだろう。きっと。たぶん。
「おーおー、フォックステイルちゃんたち、人気者になっちゃって!」
「これもまた修行の一部。心してかかるよう」
「俺ここにいる必要あるか?」
一人だけ誰も弟子がいない状態で拗ね気味の次元が帰りたそうにしている。
「まーまーそういわずに!」とルパンに肩を持たれ、ぶすっと煙草をくわえる様子は若干の憐れみを誘う。
ちなみに、次元の降谷さんに対する評価は「早撃ちの才能はねぇな。というか、銃に関する伸びしろがもうほとんどねぇ」。
私への評価は無言の末のクソデカため息であった。失礼の極みか?
「やはりフォックステイルがルパンに教えを受けているというのは本当だったようだな。どういう風の吹き回しだ?」
「いやー、俺たちも迷ったんだけどな。こいつがどうしてもって言うから仕方なくね」
「弟子を育てるというのは己を育てるに通ずるものがある。それが実感できたのは僥倖であった」
「お、おう。そうか……」
案外充実しているっぽい弟子育成生活を感じたのか、ちょっとだけ銭形警部がたじろいだ。
そしてぶるぶると首を振り、もう一度気合を入れなおす。
「だとしても!わしのすることは変わらん!今度こそ逮捕だルパン!!!」
「全員一路逃走開始ぃー!各自臨機応変に対処ぉ!」
それって具体的にどうすりゃいいんだよ!?
私は内心叫びながら、銭形警部の追跡を命からがら振り切るのであった。
おかしい…お告げが聞こえにくくなって来た。
やはりスランプか。
祈祷をせねば。