バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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明日はスランプによる速度低下のため更新が一話のみになるかも…
申し訳ない……


閑話 ゼロの休日

 

 私達のなんてことはない休日について話をしようと思う。

 

 朝。

 まず涼しいうちに河原に沿って真っすぐ10kmほど朝の走り込みだ。

 これは朝に強い降谷さんの日課で、その後橋下に陣取って腕立てやら腹筋やらを一通り行う。

 

 その間私は何をしているかというと、むにゃむにゃしながら武家屋敷の中の寝室に敷いた布団で転がっているだけだ。

 朝が弱いから仕方ないね。寝汚いって言うな。

 

 ごちゃごちゃと小道具やら趣味の玩具やらが転がった雑然とした部屋で、走る降谷さんを尻目にぐっすりすやすや。

 布団を跳ね飛ばして畳の上に転がっていれば、時折降谷さんが様子を見に来る。

 隣室の降谷さんの部屋は整って掃除も行き届き、とても奇麗だ。

 

 何処でこの差が出てしまったのか。

 ときおり見かねた降谷さんが片付けに来てくれるが、私はされるがままいつも布団で丸くなるのみである。

 

「この空想品のPCは動かないしもういらないだろ!」

「んー」

「こっちの謎の三角のやつなんだこれ?捨てるぞ!」

「あい」

 

 という駄目さ加減である。

 基本私の趣味は寝ることなんだ。仕方なかろう。

 

 さて、運動も終われば次は朝ご飯の時間だ。

 

 朝ご飯を作るのは主に降谷さんの方だ。

 私も作れることは作れるが、作ること自体が趣味の降谷さんと違い私は食べられればそれでいいといったずぼらさんだ。

 ストレス発散を兼ねて降谷さんが作る方が効率的、ということでこの配置となっている。

 

 深層心理のお屋敷で寝こけている私を「朝だぞ!!!!起きろ!!!」と発声練習ばりの大声でたたき起こし、布団から引きずり出して縁側へ放り投げる。

 そして嵐のように去っていき、朝ご飯を作る準備に入るというわけである。

 受け身に失敗すると首をヤることになるため、強制的に起きざるを得ないところがみそだ。

 

 あまりにもパワー系な母ちゃん、降谷零。

 

 以前は「だらしないぞ、自分で起きろ」と言ったこともあったのだが、私が自分用に凄まじい爆音で鳴る目覚まし時計を心象世界にセットしたところ……。

 私はぐっすりで起きないわ、表まで爆音が鳴り続けてどえらい幻聴に悩まされるわで酷く怒られてしまったものだ。

 それ以来降谷さんが起こしてくれるようになったのだというわけだ。

 

 そんなこんなで朝ご飯が完成すれば、それは旅館で出てくるような見事な和定食だ。

 

 丁寧な白だしのお吸い物に、しょうがの香りがいいアクセントになる美しいサバの味噌煮。

 専門店から取り寄せた美味しい白菜の漬物には白米がよく合う。

 量は無論男の一人暮らしだとしても少々多め。運動量自体が多いから仕方ない。

 

 そうして食べ終われば、私が洗いものと洗濯物を片付けて、午前中は屋敷の図書室の整備だ。

 

 風見さんが持ってきてくれた資料だったり図書館から借りてきた一般知識の山だったりをどんどん心象世界へと取り込んでいく。

 コナン君とやむを得ず巻き込まれた事件記録ももちろん忘れない。

 

 また、この間記憶喪失になった時に記憶に関わる記載がまるで無くて苦労したので、それ以降は日常生活の記録も入れている。

 もしあの時私まで記憶喪失になっていたら本当に大変なことになっていた。

 なので、人間関係図や忘れてはならない黒の組織の仕事体系、公安の連絡先、表の顔「安室透」の生活圏詳細などありったけのデータを入れてある。

 

 私も鉤爪の使い方、気配の消し方、銃弾のはじき方等のQ&Aを分かりやすく入れておいた。

 それを読んだ降谷さんが「つまり…どういうことだ……?」と背後に宇宙を背負ってしまったので、その辺は今後の課題かもしれない。

 

 

 

 午後はポアロで平和にアルバイトだ。

 

 今日のバイトは私の担当なので、いつも通り目立たない無難な白のシャツを着て出勤する。

 飲食店のバイトと言えばとんでもないお客様が何かとクレームをつけてくる印象だが、この喫茶店に関してはそうでもない。

 昔は妃弁護士が頻繁に出没して背後に立ってくれていたことと、そもそも客層が落ち着いた富裕層ばかりだったということもある。

 

 米花町、高級住宅街だからね……世界的小説家と伝説的大女優の屋敷もあるし。

 阿笠邸だって邸宅という名にふさわしい金のかかり具合だ。

 近所に鈴木財閥ご令嬢が住んでいるのを加味すれば、そりゃもう治安は良い……はずである。

 

 ……?

 妙だな……。

 

 なにはともあれ。

 せっせと各種メニューを用意し、手早くかつ丁寧にコーヒー類を入れてお客さんの元へと運んでいく。

 降谷さんほど記憶力は無いが、これでも幹部の側仕えとして色々こなしている身だ。

 暇を持て余した降谷さんが時折浮上しては「そこの客、ウィンナーコーヒーとハムサンドがまだだぞ」と教えてくれるものの、基本は私一人での作業となる。

 

 夕方ごろになると女子高生がやってきて、降谷さんの顔面の良さにキャーキャーワーワーと歓声を上げるホストクラブタイムとなる。

 適当に相槌を打ってはいたいけな女子高生からカフェオレ代を巻き上げるアコギな商売だ。

 梓さんとかには「なんかこう……安室さんがいると今にもシャンパンタワーとか出てきそうですよね」などと言われたが。それはそれ。

 

 実際には女子高生の群れに恋愛相談とかされる程度の可愛いものだ。

 私も人間関係操作のプロであるからして。

 

 降谷さんに「入れ込み過ぎると恋愛沙汰で面倒くさいことになるぞ」と言われていたが、その辺の好感度調整を私が怠るはずもない。

 きちんと力関係を把握して恋愛ルートじゃなくて友情ルート兼アイドルルートに持って行っている。

 もし恋愛感情を抱いても結局言い出せずに終わる関係というか。

 

 亡きピスコに軽く教授してもらった集団における権力関係の割り出し方などを参考に、校区ごとにどの程度入り込めばいいのか計算して。

 特に三つ隣の校区からやってきている子たちの中に酷いいじめを受けているらしい女の子がいたので、最近はちょっとずつばれない程度にテコ入れを行っている。

 反発を生まない程度のプラス荷重を継続的にかけて、緩やかな関係改善を図る。

 

 これで多少はいじめが止めばいいのだが。

 

 降谷さんには「お前は本当に器用だな。俺もお前ぐらい世渡りがうまければ若いころ苦労せずに済んだかもしれない」と年寄りみたいなことを言われたこともある。

 彼は彼で本当に顔面で苦労しているのだろう。女性不信気味だし。

 

 ベルモットとか峰不二子さんとかに近付かれると地味に鳥肌が立っている降谷さんである。

 一体過去に何があったのだろうか。

 

 ちなみに、女子高生らとは意外と親密になったので、学校周りの情報収集もスムーズだ。

 たぶんポアロバイト辞めることになったら泣かれるだろうが、ズッ友だよ…!みたいにみんなでプリクラ撮りに行くことになるだろう。

 本当は写真はNGなのだが、描き込みと加工でこっそり顔を隠すのでノー問題である。

 

 乙女心を弄ぶ悪い大人というなかれ。

 

 

 

 

 そうこうしているうちに蘭ちゃんとコナンが帰ってくる時間だ。

 

 毛利探偵事務所の上、毛利家の居住スペースへ合鍵を使って入り込み、冷蔵庫をあさる。

 あらかじめ買っておいた食材で降谷さんが夕食を作る手はずになっている。

 今日はリッチかつボリュームのある牛丼だ。運動部で疲れた体に染み渡る蘭ちゃんの大好物。

 

 学業に家事にと忙しい蘭ちゃんを慮って時々こうして私達が家事の手伝いに来ているのだが、蘭ちゃんには大好評だ。

 これで園子ちゃんと一緒にカフェへ寄り道する時間ができたとかで、散々頭を下げられた。

 

 私達も決して暇なわけではないが、こうして若き子女の貴重な青春時代の時間を守れたというのなら後悔などあるはずもなく。

 降谷さんも喜んで協力しているというわけである。

 そこにとことこと階段を上る小さな足音。

 

 お、この足音はコナン君か。

 

 若干背伸びして扉を開けたのは、体に対してずいぶん大きいランドセルを背負ったコナン君であった。

 

「ただいまー……あ。安室さん」

「遅かったねコナン君。少年探偵団と近所の探索にでも行っていたのかい?」

「うん。友達の猫を探してて、そうしたらちょうどアパートの一室で死体が見つかってね」

「!?!?」

 

 話の流れが急転直下過ぎて降谷さんが驚愕に固まってしまった。

 1話完結アニメオリジナルみたいなのを乗り越えてきたらしい。道理で遅いはずだ。

 

 その十分後、麻雀俱楽部から帰宅する途中で蘭ちゃんに発見され締め上げられた毛利探偵も帰宅。

 毛利一家と一緒に皿を出し、そのまま一緒にいただきます。

 毛利探偵の武勇伝を軽く聞き流しながらTVのニュースに管を巻き、夜も更けてきたあたりでお暇する。

 

 「本当にいつもありがとうございます!」と丁寧に頭を下げる蘭ちゃんに軽く手を振りつつ、RX-7を緩やかに発進させる。

 

 夜の繁華街は本当に光が尽きず、煌めく地上の星となって車窓に映りこんでは消えてゆく。

 降谷さんは自らハンドルを取りつつ、私へと静かに問いかけた。

 

───お前は、消えたりしないよな?

───貴方が必要としている限り、僕はここにいるはずだ。多重人格ってそういうものでしょう?

───………そうだな

 

 アンニュイな気持ちになるときもたまにはあるのだろう。

 心の声に音はなく、ただ沈黙だけが車内に満ちる。

 夜のネオンが五色に光る。

 

 降谷さんはただ黙って、真っ直ぐにフロントガラスの向こう側へと視線を向け続けていた。

 

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