バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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番外 ワルサーP38②

 

 やってきました、タランチュラ穏健派のアジト。

 

 穏健派とは。

 タランチュラの構成員のほとんどは「殺しこそが生き甲斐」「生き血を啜る刃物を舐めるのが好き」とか、そういうタイプの殺人鬼ばかりだ。

 というより、そういう人員を意図的に集めたと言ったほうがいいか。

 

 しかし一部はそうではない。

 親に売られた子供、事情があって服役していたもの、冤罪。

 あるいは、改心した者。

 

 そのような人間達が殺戮の日々を厭い、寄り合って作ったのが穏健派のアジトであった。

 

 そのアジトに居を構えながら、現在私と次元さんはざっくざっくとスコップを片手に穴を掘る作業に勤しんでいた。

 

 目的は金塊があるとされる金庫まで、直通の穴を掘ること。

 古典的脱獄囚みたいな古めかしさ漂う作戦だが、まあこの際良いとしよう。

 

 悲しきは、この島の隠し金庫にある金塊は金メッキされただけの偽物という事実ぐらいか。

 原作知識とはいえ作戦開始前から失敗が分かっていると元気が出ないものよ。

 

 ちなみに、私がこの地味な掘削作業に回された理由は、地下を掘っていて時折固い岩盤なんかに当たった時のための斬鉄・斬石要員としてだ。

 

 また今、カキンとスコップが硬い岩に弾かれる音がして次元さんが私たちを呼んでいる。

 

「おーい、まただ。頼んだぜ安室」

「はい。それでは除去を開始します」

 

 鉤爪を構え、精神統一。

 そして賽の目に幾度も振り下ろす。

 

 そして私が下の一層を手で取り出すと、バランスを失った岩は一斉に崩れ落ちた。

 

「おー、お見事。やっぱオメェらが居ると話が早くて助かるぜ」

「このぐらい五エ門先生を呼ぶまでのこともありませんから」

「相変わらず真面目だな。なんつーか、ルパンもお前らの性根の良さを1ミリでもいいから学んでほしいぜ」

「でも、ああいう自由さがルパンさんのいいところでしょう?」

「まぁな」

 

 適当な雑談をしつつ崩れた石を回収して手押し車に乗せる。

 軽く成人男性の体重を置ける重さになるが、私の膂力にかかればこの程度軽いものよ。

 

 横で見ていたボマーというコードネームのおじさんが「おめさん、若ぇのにやるなぁ!」と感嘆の声を上げた。

 軽く「いえいえ、この程度。ボマーさんも採掘お疲れ様です」とペコリと一礼しておく。

 

 横穴の入り口付近まで戻ると、そこでは暇を持て余した不二子さんが私に手を振っていた。

 

 ぞっと降谷さんが全身に鳥肌を立てる。

 ベルモット的な妖艶な美女が苦手な降谷さんだが、不二子さんの方は私たちを気に入っているらしい。

 

 不二子さんはイイ笑顔で投げキッスをしていた。

 

「ワンちゃん達。調子はどう?」

「順調です。このままであればあと半日で金庫まで辿り着くでしょう」

「まあ!いい子ね。素直で聞き分けが良くて、ねえ、私と一緒に組まない?」

「ははは。ルパンさんのご執心を取るなんて大それたことできませんよ。それより……」

 

 顔を曇らせてそれっぽい表情を作り、私は金庫の中にある金塊について布石を撒くこととする。

 

「金庫の中にあったという金塊の山ですが。なんだか妙な胸騒ぎがします。曖昧な表現で申し訳ないのですが、嫌な予感がするというか」

「……そう。ワンちゃん達の勘の鋭さは馬鹿にできないものね。いいわ。最悪の事態を想定しておきましょう」

「ありがとうございます、不二子さん」

 

 「そうと決まればやることはたくさんあるわね」と不二子さんが立ち上がる。

 颯爽と柑橘類の気配がする髪をたなびかせ、ハイヒールで土を踏みしめ去っていく。

 その美しいプロポーションには一つの欠けすらなく、美の精髄を人型に固めたような完璧さのみが備わっている。

 

───よくあんなのと会話できるな、お前

───そりゃ、向こうもプロですから。初手でお互いどの程度まで踏み込んで会話するか合意が取れるので気楽な相手ですよ

 

 目線を合わせ、一言会話した時点で人間関係の距離感を示し合わせられるこの気楽さよ。

 踏み込みすぎず、かと言って突き放さない。

 ポアロで会う女子高生の群れとは比べ物にならない安らぎだ。

 

───解らん…なんだそれ……超能力の一種か…?

 

 毒蜘蛛でも見たような顔で引いている降谷さんに、私は苦笑しかできなかった。

 降谷さんは女性恐怖症が過ぎるのでもっとなんとかしたほうがいいと思う、最近の私です。

 

 

 

 

 さて。

 石切りの合間に、解毒剤作成役のドクターのPCへハッキングしてデータをこっそり盗み出す。

 

 タランチュラという暗殺集団は、その人員の統制に特殊な毒を使っている。

 その毒は構成員全員に蜘蛛型の刺青として打たれていて、そのままであれば数分と待たず中毒死する。

 それを防いでいるのがこの島に立ち込める特殊なガスだ。

 島から出るガスを吸っている限り毒は中和され、毒が体内を巡っているにもかかわらず自由な行動が許されるという。

 

 そんな仕組みを使って人員の逃走や離反を防いでいるのだ。

 

 そしてなんと、ルパンと不二子さんも捕まった際この毒を打たれたらしく。

 2人は中和ガスが立ち込めるこの島から出られなくなってしまったのだ。

 

 原作知識を知っている私は、解毒剤作成担当のドクターが裏切ることを知っている。

 こうやってこっそり解毒剤の成分表を盗み出すのは、このあと少しでもルパンの苦労が減らせればと思ってのことだ。

 

 とはいえ、ルパンと互角に戦える上に知略勝負ができるスーパーハイスペック黒幕からデータを盗み出すのだ。

 

 万全には万全を期し、深層心理内の書庫に書き写す形で痕跡を残さないようにしている。

 傍目には起動状態のPCをただ眺めているようにしか見えないだろう。

 

───書き終わりましたか、ゼロ

───ああ。だがフェイクの可能性は?

───勿論あるでしょう。すでに八つものフェイクを掴まされそうになったんですから

───ルパン並の用意周到さだな。面倒な…!

 

 私達は深層心理の書庫内にデータを刻み込むと、2人揃って大きなため息をついた。

 上へ戻り、エレンという名前の女性暗殺者と2人でコーヒーを飲むルパンへと歩み寄る。

 

 ちらっとだけ私を見て、ルパンはふっと笑った。

 

「しーんぱいし過ぎなんだよ、降谷ちゃん達は!ダイジョーブダイジョーブ!力抜いて!」

「ですが…」

「降谷ちゃん達が俺を思ってやってくれてんのは分かってるぜ?けど、俺様はルパン三世。この程度でやられるような雑魚とは違うの!」

 

 私たちが何をやっていたかを理解した上で、「別にデータが偽物でも自分なら大丈夫」と勇気付けてくれるこの鷹揚さ、この偉大さよ。

 私は敵わないな、と感嘆に似た心地で自然と笑顔になることを止められなかった。

 

「ルパンさん、僕達にデータ奪取の高度訓練をつけてくれませんか?───この件が終わったらでいい。頼む。俺達のプライドに賭けて、このままではいられない」

「ぬふふ。そういう向上心の強いところ、嫌いじゃないぜぇ?OK、おじさんがビシビシ鍛えちゃうぞ〜!」

「よろしくお願いします、ルパン三世」

 

 アニメスペシャル恒例単発ヒロイン、エレンさんが困惑の表情でこちらを見ている。

 

「ルパン、お前の仲間か?」

「そ。二重人格キャラの安室ちゃん。人格で技能を分けてっから、十徳ナイフみたいに色々できる有望な新人だよ」

「……そうか。……ん?お前、男か」

「男だが」

 

 ややイラつき気味の心を何とか鎮めた降谷さんが棘の残る口調で答える。

 着痩せするタイプの降谷さんが体型を隠す和服を着ると、どうしても色合いと相まって女性的に見えてしまうのは仕方ない。

 日本人が見れば袴やらの形で一目で男だとわかるんだけどね。

 

 そんなこんなで、脱出の時まですぐそこだ。

 これから大騒動のラストスパートがかかるから、無事ちゃんと生き残らなければならない。

 

 ルパン世界の生存難度の高さに辟易としつつ、今日という日は過ぎていくのである。

 




ルパン達の弟子評
ルパン「真面目で揶揄い甲斐がある可愛い後輩」
五エ門「共に切磋琢磨する1人の剣士」
次元「表の真面目さで裏を不器用に生き抜く目の離せない若者」
不二子「この道でも生きてけそうな見所ある子」
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