バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
掘削作業が無事終わり、金庫に到着したナリ。
五エ門先生に金庫の床を切り落としてもらい、そのまま光学センサーが光る金庫内へと不二子さんが侵入する。
実は上方向の切断掘削は私ではまだうまく切れずに周囲を崩落させてしまう危険性があるため、この辺は五エ門先生にやってもらうことになっているのだ。
五エ門先生には「武器性能の問題もある。そろそろお主も新しい武具を調達するタイミングか」と慰めてもらったが。
とはいえ、やはり力量不足も否めない。
未熟未熟。
キンキラキンに輝く金塊の山は、その実悲しいメッキ張りの偽物だ。
奥の方にある金塊の一つを不二子さんが持ってきた偽物とすり替え、金庫内の金塊一つを失敬する。
その様子に次元が不思議そうな顔をした。
「おい、どうした?一つだけ先に盗み出してどうする気だ」
「ワンちゃん達がこの金塊に嫌な予感がするって教えてくれてね。念には念を。あたし、金にならない仕事はしないから」
「……マジか。こりゃルパンにも知らせねーとな」
金塊をどん、と地面に置いて不二子さんが私に目配せした。
ラジャー不二子さん。切り裂きます。
「……シッ!」
金塊に爪を振り下ろし、醜い爪痕を意図的に残す。
しかして。
その断面からは鈍い鉛の色が覗いていた。
うげっと次元さんが顔を顰める。
不二子さんは大きなため息とともに額に手を当てている。
「計画は変更だな。ったく、本物はどこへ隠したんだ?」
「こんな大規模な隠し金庫を作っておいて、ぜーんぶ偽物なんて酷いわ!ああもうっ、何がなんでも本物の在処を見つけてやるんだから!」
「つか、相変わらずオメーらの勘はどうなってんだよ。なんか受信してるんじゃねーだろうな」
「ははは。単なる勘に過ぎませんよ」
敢えて言うなら、偉大なるモンキー・パンチ神のお告げを受信してると言えるかもしれない。
私達は順次撤退。
後日情報共有されてアテが外れたルパンが「あー、そゆこと」と事態を読んでいたような顔をして頷いていた。
さて、ハズレ金庫事件より5日。
いよいよ時は満ち、脱出のタイミングとなった。
脱出計画は簡単だ。
島内部に爆弾を仕掛けて、敵を撹乱。
その隙に乗じて隠し船で脱出。
ルパンがレーザー搭載衛星のプログラムを書き換え、船の狙撃を防ぐ。
以上である。
たしか原作では、衛星のプログラム書き換えソフトに罠が仕掛けられていて計画は失敗。
船は爆破されほとんど全ての人員が海の藻屑になるのだったか。
私は雑な理由…つまりは勘を言い訳におずおずと不二子さんに話しかけた。
「あの。念のため救命用の小型ボートを積んでおいていいですか」
「いいけど…この船は中継地に着いたら足がつかないよう捨てる予定よ?」
「金庫の件もそうですが、なにか僕達の動きが向こうに流れているような気がして。嫌な予感がするんです」
表情を暗くすれば、不二子さんも考え込んだようだった。
「……そうね。人数分のボートは積んでおきましょう。それと、有事の際はすぐに船を離れられるよう通達を」
「はい。タランチュラ穏健派のメンバーには此方から伝えておきます」
「ねぇワンちゃん達。前は断られたけど、私と仕事する気は本当に無いかしら。報酬は山分けでもいいわよ?」
ウインクして私に微笑みかける不二子さんは美しく艶やかだ。
船の端でタバコを吸っていた次元が「止めとけ止めとけ」と首を振っているのが遠くに見える。
山分け、のワードでどれだけルパン達が騙されてきたのかが分かる表情である。
「ありがたいお言葉ですが……僕らは未だ修行中の身。あなたと2人で仕事をするには力不足が過ぎますよ」
「謙虚なのは美徳だけど、過ぎればそれも嫌味よ?その辺の有象無象なら軽く蹴散らせる万能の狐。フォックステイル(狐の尾)は九つある、そうでしょう?」
「ははは。少なくとも、五エ門先生に一度でも膝をつかせるぐらいにはならないと、この道で独り立ちは怖くてできませんよ」
マジで五エ門と軽く切りあえるモブとか出現するルパン世界の裏社会は魔境がすぎるからな。
不二子さんが「んもう、ワンちゃん達は真面目で理想が高すぎるのよ」とポコポコ怒っている。
すまんて……でも本気で命が幾つあっても足りないからルパン傘下からは抜けれぬのだ。
と、雑談をしていれば気づけば作戦決行時間。
島中に仕掛けた爆弾が爆破され、多くの建物が吹っ飛び、沢山の死者が出て、凄まじい地響きがここまで伝わっている。
同時に私達の船に現れたのはタランチュラの首魁、ゴルドー率いる暗殺集団。
ナイフを、マシンガンを、暗器を片手に悪辣な笑みで殺しの時を今か今かと待っている。
ゴルドーが濃紺のマントをたなびかせ、ニヤリと見下すような悪質な笑い方をした。
「コソ泥風情が、よくもまあ引っ掻き回してくれたものだ」
軽く片手を上げ、ゴルドーは前置きもそこそこに開戦の合図をする。
「やれ」
20は下らない特級の暗殺者達が、一斉に船へと駆け降りてくる。
迎え討つはタランチュラ穏健派の一団と、同時に銃を構える不二子さん、次元さん。
そして刀を抜いて精神を統一する、我らが無敵の斬鉄侍、五エ門師匠だ。
私はまず大きく跳び、五エ門師匠と背中合わせになった。
「拙者が強者を相手にする。お主はまず数を間引け」
「承知しました。───任せてくれ」
乱戦のためブーメランは使えない。
特に厄介なサブマシンガン持ちを狙い、爪で一体一体確実に処理していく。
背後は五エ門先生がいるから大丈夫。私も五エ門先生の背中を守りつつ、敵の肩を切り裂き、敵の足を挫き。
戦闘員が多い分、原作より確実に戦況は私達へと傾きつつあった。
それに面白くなさそうな顔をするのが首魁・ゴルドーだ。
とん、と軽い動作で前へ出て、穏健派の人員を瞬く間に三人亡き者にする。
戦線が大きく崩れそうだ。
私は急ぎフォローに入ることを選択する。
「先生、ゴルドーが動き出しました。数はひとまず減らしたので、私も動きます」
「ッ!奴は手強いぞ、深入りはするな」
「了解です!」
急ぎ雑魚を4人ほど蹴散らして、敵の眼前へ。
ボマーというコードネームの穏健派のオジサンがゴルドーにやられそうだったので、鋭い仕込み義手の一撃を代わりに受ける。
ギ、と金属の擦れる音。
震え痺れる腕。明滅する視界。
「ぐ……!」
「なんだ、小娘。俺の相手をしようというのか?」
その凄まじい膂力、圧力に思わずタタラを踏んだ。
霊体である私を超える膂力とかホント化け物だな!
一撃でわかった。
相手は間違いなく格上だ。勝てる見込みは薄い。
振り払って爪を振るが、それは宙を切ってマントを切り裂く。
ゴルドーが予想外、という顔をした。
「誰が、小娘だ!」
「ぬ……思ったよりもやるようだな。だが甘い!」
「!?──ガッ!」
奴は長いサーベル状に変形した義手を、広範囲を薙ぎ払うように思いっきり振り回した。
弾幕の雨で動きづらい中それを私は正面から受けざるを得ず。
刃はなんとか防いだものの、ダメージは甚大だ。
体を強烈に壁へと打ちつけて、先に肉体である降谷さんが気絶する。
前回、この状態で体を無理に動かして私は魂にダメージを負った。
だが今は違う。同じ轍は2度踏まない。
魂を浸透させ、より降谷さんとの一体化を深める。
一時的に私が肉体の主人となり、今まで不完全だった「憑依転生」を完全なるものとする。
新たに生命を得た私がその魂でもって肉体を動かせば、肉の器の限界を超えた一撃を放つことが可能だ。
高次の魂が一時的にでも降りてきたことによる余剰エネルギーを全身にまわし、爆発的な膂力を得る。
雰囲気が変わったことを察したのか、ゴルドーが不快げに目を細めた。
「く、らえ!!」
「先ほどより速い……?面倒な」
一合打ち合い、爪の片側が折れた。
二合打ち合い、筋肉が断裂しかけている。
力に武器も肉体も追いついていない。コンディションは最悪だ。
もうこれ以上やれば死力を尽くすことになる。
引き時だ。
私が敗北による撤退を行おうとしたその時。
む、と苦悶の表情を浮かべてゴルドーが私から距離を取る。
「ふん。その威勢に免じて見逃してやろう。せいぜい海の藻屑にならんようにな!」
そう言い放って、ゴルドーが一部の部下を引き連れて退いていった。
多分、衛星による船体狙撃の時間が近づいてきているのだ。
「総員退避!!!!!上から来るぞ!!!」
私はありったけの力で叫んで小型ボートを海へ放り込む。
気がついた次元さんと五エ門先生、不二子さん、そして一部の穏健派員が素早く乗り込む。
だが全員では無い。
まだタランチュラと戦っている味方が残っている。
とはいえ、五エ門先生がフリー戦力になっていた分だけ、ゴルドーが部下を連れて行った分だけ逃げることのできた穏健派は多かった。
未だナイフ使いと戦う穏健派の冴えない顔の剣使いのおじさんが「俺たちはいい!行けーーっ!」と私達に叫ぶ。
その真意を問う暇もなかった。
空から害意が降ってくる。天高くから悪寒と悍ましいほどの不安感が降ってくる。
フルスロットルで小型ボートのエンジンを回し、船を出した、その瞬間。
空から一条の赤い光が降り注いだ。
爆発。轟音。凄まじい波のうねり。
船は波に揉まれたが、それでもギリギリで転覆することはなかった。
ボマーさんが「皆が、船が……」と呆然と涙を堪えながら海を見送っている。
苦いものは残るが、きっと神の定めた運命よりはマシだ。
そのような暗い空気の残る、やりきれない味の船内だった。
島になんとかして戻れば、本作品の黒幕ことドクターが正体を現していたらしい。
最終決戦に挑むルパンをそっと眺め、同時に島の原子炉に仕掛けられた時限爆弾を適当に解除。
さくっと原作をクリアすれば、あとは島からの脱出のみである。
ルパンが鹵獲した飛行船には金塊が山と積まれていた。
船内の一室では怪我の手当てをするタランチュラ穏健派、そして外を眺めるエレンさんの姿が見える。
どうやら原作と違い、ルパンは金塊もエレンさんも失うことはなかったらしい。
いつの間にか私の後ろまで来ていたルパンがタバコに火をつけた。
「万が一ってことでオメェのくれた解毒剤の成分表が役立った。こいつがなきゃ危なかったかもしんねぇ」
「それは……どこで解毒剤の現物を作ったので?」
「タランチュラの任務で外に出た時にちょいとな。いやぁ、あの偽解毒剤の効果が切れた時は焦ったぜ。エレンの分と合わせて2人分、作らせてもらった」
「役に立てたならよかった。───お前にはまだまだ教えてもらわなきゃならないことがたくさんあるからな。死んでもらったら困る」
「降谷ちゃんたら素直じゃ無いんだからぁ〜!」
バシバシと私の肩を叩くルパンにまた降谷さんが赤くなって怒っている。
これだからいつまで経っても揶揄われるんだよな、などと思いつつ。
ルパンが何気ない動作で、窓から銀の装飾がついたワルサーP38を捨てた。
飛行船から落下した銀のワルサーが朝の光を反射し、キラキラと輝いて見えなくなる。
私はそっと問いかけた。
「……良かったんですか」
「ああ、いいんだ」
タバコの煙がくゆる。彼の胸にあるのは同型の黒いワルサーP38なのだろう。
過去にけりをつけることの、なんと難しいことか。逃げ続けることのなんと安易な、なんと楽なことか。
私達はルパンの後ろ姿にその血塗られた過去を思う。
ルパンはタバコの煙を吐き出して、そっと微笑むだけだった。
「過去にけりをつけに、俺は来たんだからな」
五エ門「ふむ…隕鉄を原材料に合金を…鉤爪の形に…打ち直し……手持ちのものでは斬鉄剣ほどの品質は期待できぬが……」