バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
本当に申し訳ねぇ…これからも拙作をよろしくお願いいたします。
鞍馬寺は少し距離があるので、徒歩で行くには少しばかり億劫だ。
コナン君たちは平次君とバイクに二人乗りで、私は公共交通機関を乗り継いでバスで現地へ向かう事とする。
すまんなぁ、と平次君は謝っていたが、その辺は仕方のないことだ。
貴船神社を通り過ぎ、西門前で待ち合わせをして山道を昇っていく。
僧正ヶ谷の不動堂が見えてきたところで不穏な気配と共にこちらへの殺気が肌を撫ぜた。
どうやら今を時めく強盗団・源氏蛍が首魁、西条大河が服部君の持ち物目当てにやってきたようだ。
ちなみにどうして強盗団の首魁が服部君を狙うのかというと、幼いころに服部君が拾った水晶片がたまたま強盗団の狙っている仏像の一部だったことが原因だ。
水晶片を殺してでも奪い取り、盗んだ仏像にはめ込むことで売っぱらう時の価値を上げよう、という寸法らしい。
コスパの悪い仕事ぶりである。
肉体自体の感覚の鋭敏化により、降谷さんの方もその気配を察知できたようだ。
「弓矢とはまた時代錯誤な…」と困惑して男の様子をうかがっている。
弓は重いしかさばるし使用に際し高い力量が必要だし、これを主武装にしているあたり犯人の義経リスペクトも相当だよね。
私はうーんとあくびして、こちらへ向けて弓を構える男の気配を注視した。
ふむ。ちょいと威嚇するか。
リラックスし、服部君達の最後尾、服部君の隣にわざと陣取って時を待つ。
手には黒い薄手の合革っぽい手袋をつける。阿笠博士に作ってもらった、滑らず付け心地の良い万能手袋だ。
殺気の主は原作通りに服部君に狙いを定めたようだった。
矢を射る弦のぎりぎりとした音。
此方へと向かう風切音。
殺意。
「っ、危ない服部!!」
コナン君が叫んだ。
だが私はゆったりと、そのままの体勢で手袋を嵌めた手を後ろに伸ばした。
ギッ、と。
なんてことのないように、矢を摘み取る。
誰かの息を呑む声。
「嫌だなぁ、服部君を狙ったんですよね……命は要らないという意思表示と捉えても?」
袖の下から仕込み爪を出し、振り返ってありったけの殺気を叩きつける。
犯人は狼狽え、脱兎の如く逃げ出したようだった。
「ッ、逃すかよ!」
「待て工藤、こっちや!」
走り出すコナン君を素早くバイクに乗った服部君がつかみ上げる。
勢いよく唸るエンジン音。夕暮れ時にフロントライトが鮮烈に木々を照らし出す。
ヴヴヴヴヴン、と遠くなっていく音に、私はしょぼんと一人不動堂の前で立ち尽くしていた。
さらっと置いていかれてしまった……。低い建物ばかりの京都ではフックも使えないし。足も無い。
───なんだこれ。置いてけぼりとか、人の気持ちをまるで考えてない
───ですよね。大変傷付きました。これはコナン君を蘭ちゃんネタで揶揄うしかない
───よし、工藤新一の過去の経歴を洗って恥ずかしいアレソレを全てつまびらかにしてやろう
何と降谷さんたら、悪魔のような発想をしていらっしゃる。いいぞもっとやれ。
大人げない大人2人のぶつくさとした帰り道はゆったりだ。
なんだかんだと不貞腐れながら、山を降りて貴船神社へ。
その後はバスでのんびりと。夜の観光名所にもちらっと寄りつつ、自分で自分のご機嫌をとる悲しい帰路だ。
下手なカメラよりずっと鮮明な私の視界を使い、美しい京都の夜景を存分に書庫へと描き写していく。
───いい景色だ。この仕事が終わったら、2人で日本各地をゆっくり旅するのも良いかもしれないな
───実は僕、草津温泉に行ってみたかったんですよ。まったり温泉入って湯畑プリン食べて。良くありません?
───いいなそれ!これまで無駄に溜まった銀行口座の金をパーっと使って高級旅館に泊まりたいな。高級和牛の肉寿司とかも食べたい
などと欲望を丸出しにしつつ、私たちはようやく茶屋へとたどり着く。
茶屋内はねっとりとした悪意、恐怖、恣意的な罠に包まれていたが、まぁ想定の範囲内。
盗賊団のメンバーが二人もいるんだから、そんな空気にもなるだろう。
空気の悪さに微塵も気が付いていないらしい毛利探偵が舞妓さんに気色の悪い絡み方をしていたので、すこしばかり間に入って咳払い。
「うおっ安室!いつの間に!」と怒っていたから、「もうすぐ蘭さんたちも来ますから、もう少しだけシャキッとしたほうがいいと思いますよ。娘さんの空手の腕前は貴方が一番よく分かっているでしょう」と忠告しておく。
しょぼしょぼに小さくなった毛利探偵は、「で、では私はこの辺で…」と舞妓さんから離れていった。
そうそう。キャバクラじゃないんだから、社会人としてそのぐらい節度ある態度をしてもらわなければ。
「ちょっと、アンタさん、すこしええか」
ふと、後ろから声をかけられたので振り返ると、それは窃盗団源氏蛍の弁慶、西条大河であった。
彼はいかにも今ここに着いたように朗らかに店へと上がり、知己のような気やすさを装ってこちらへと話しかけてくる。
「さっきはいい腕でしたね。ええ、構いませんよ」
「………行こか」
さっき射かけたのはお前だろう、というメッセージをふんだんに含んだ口調で嗤えば、西条はごくりと生唾を飲んだようだった。
2人で店を出て、人通りの少ない河原の暗闇に紛れれば周囲に声はほとんど届かない。
お互いの顔がギリギリ分かる程度の暗さで、西条はようやく口を開いた。
「……あの小僧を狙うたんは謝る。まさかルパンの筋のお気に入りやとは思てへんかったんや」
「ルパンの筋?なんのことかわからないな」
私は平たんな口調ですっとぼけた。
相手はどうやら私がルパン一味、性別・容貌不明のフォックステイルだと気が付いているらしい。
一体何でそんなことを、と思案すれば、一つ思い当たる点があった。
鉤爪だ。
私はあの時、威嚇のために長袖の下から鉤爪を出した。
あの特徴的な武器と肌色、髪色から推測したとすれば一応説明はつく。
とはいえ。
肌色髪色武器と三点をそろえてしまえば誰でも成りすましが可能なので、今後私の知名度が高くなればなるほど同定はしづらくなるだろうが。
それとも、私の殺気や身のこなし込みでの判断か?
「誤魔化さんでもええ。うちは細々とやってるさかい、アンタみたいな大御所とことを構える気はあらへん」
「そうかい。なら僕の連れには手は出さないようにね。白毫なんて欠けてても、仏像を売りに出すことぐらいできるだろう?」
「…敵わへんな。そないなとこまで分かっとったんか。ええわ、約束する。あの小僧どもに手出しはしいひんさかい、うちの仕事にも手ぇ出さんといて」
「いいだろう。だが、約束が破られたら。分かっているな」
いつぞかにピンガがやっていた暗器の取り出しを真似て、じゃっと爪を出す。
これカッコイイからいつかやってみたかったんだよな。
ぶんぶんと首を縦に振る小物臭い西条を置いて、私は宿屋に戻る。
それを上から赤外線カメラ付きの眼鏡で監視する影が一つ。
コナン君、君何処にでもいるなほんと……。
降谷さんの希望旅行地……博多、函館(ゆっくり美味いもん食べたい)
バボの希望旅行地……下呂、草津、箱根(温泉!温泉!温泉!)