バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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戦慄の楽譜①

 

 季節は春。

 有名な音楽スクール、堂本音楽アカデミーの練習室が爆発したというニュースが世間を賑わしている。

 

 また爆発か……というか半月前は七夕だったんだがなぁ、と思いつつの「戦慄の楽譜」突入である。

 

 そろそろ服の入れ替えが面倒臭過ぎて全季節分クローゼットに出しっぱなしになっている今日この頃だ。

 降谷さんには「だらしないぞ」と良い顔をされないが、下手すれば一週間で季節が逆転するんだから仕方なかろう。

 

 降谷さんの様子がおかしくなってから、割とすぐに変化は訪れた。

 

 なぜか心象空間の私の部屋に知育おもちゃを何気なく置いて行ったり。

 「嫌なことは嫌っていうんだぞ」やら「何でも相談して良いからな」やらと優しく声掛けしてくれたり。

 空き時間に一緒に塗り絵をすることになったり。

 

 私は……5歳児だった……?

 

 つい背後に宇宙を背負うことになったが、主人格のいうことは絶対。

 突如父性に目覚めてしまったらしい独身29歳降谷零の命令に従い、私は一心に手工芸やレゴブロックに勤しんだ。

 子供用とはいえ、意外と凝り出すと楽しいんだよね。

 

 つい降谷さんと二人で張り合って、日本の名城一覧〜レゴブロック編〜を次々築城してしまって屋敷内を圧迫するなどした。

 

 なお、途中から日本の城に飽きてドイツのメルヘン城、ノイシュヴァンシュタイン城を作ったら「酷い背信だぞ!!!」と降谷さんからの検閲が入ってしまった。

 なのですぐさま修正。

 「東京ディズニーランドのシンデレラ城です」と言い張ることでことなきを得た。

 いいんだそれで……。

 

 と、そんな感じでひとまずの関係修復は成ったのだが、日々の事件は待ってはくれない。

 

 合唱コンクールがあるらしい帝丹小学校の合唱練習に付き合うため、私は保護者枠で学校舎へとやってきていた。

 あとはピアノの心得のある蘭ちゃん、その付き添いかつ歌唱指導役の園子ちゃんだ。

 

 音楽室につけば、1年B組の有志の一部児童はわーわーと各々楽しんでいた。

 コナン君達が見張っていたようで音楽室内が荒れていることはなかったが、一年の子達一人で特別教室に放牧って地味に不安大だよな。

 ピアノとかおもちゃにされてそう。

 

「それで、時間も有限なんだし早めに練習を開始しないの?」

 

 そこに見慣れない性格のキツイ美人が一人。

 私は劇場版越しに彼女のことを知っているが、降谷さんの方も堂本音楽アカデミーの件で顔は知っていたようだ。

 

「あなたは…秋庭怜子さんですか?ソプラノ歌手の」

「ええ。そこの子に歌唱指導を依頼されてね」

「それはそれは。貴方ほどの歌手に指導してもらえるとは、一生ものの学びとなりますよ」

「そうならなきゃ困るわ。私が少ない時間を縫って教えにきてるんだもの」

 

 うーん。さすがは隠れたファンの多いツンデレ系女王様。

 言葉選びにコツのいるキツイ性格の持ち主である。

 

 そこで気がついたのだが、彼女が持ってきたバッグから香り立つような仄かな悪意を感じる。

 

 子供達の合唱を聞きながら、教室の壁にもたれかかって彼女のバッグを観察する。

 毒殺しようと言うほどの悪意は感じない。

 少し動けなくなってもらおう……くらいの、致死性の感じられない毒のはずだ。

 確か原作だと喉を枯らせる薬が混入されていたのだったか。

 

 あと、どうでもいいけどコナン君すごい音痴だな。

 私も生来音感には自信があるが、自分がおかしいんじゃないかと思うくらい、びっくりするほど一音も合っていない。

 同じ想いらしい秋庭怜子が眉間に皺を寄せている。

 

 彼女ぐらいの立場になってくると、ここまで救いようのない音痴にはなかなか会えないだろう。

 

 聞いているうちに喉が渇いたのだろう。

 バッグから水筒を取り出したあたりで私も動く。

 

「飲まないように。そのお茶、嫌な予感がします」

「なに、急に。どういうつもり?」

「僕、匂いには敏感なんです。そのお茶、異臭がしますよ。堂本音楽アカデミーに起きている事件を鑑みて、それを飲むのはお勧めしません」

「……別に何も感じないけど。けど、忠告は受け取っておくわ」

 

 かなりの無理筋だったが、彼女は思ったより素直にお茶をバッグに戻した。

 「後で警察の方に提出を。一応鑑識に見てもらいましょう」と言い添えれば、「…わかったわよ」と返事をもらえた。

 

 すると、駆け寄ってきたコナン君が厳しい表情をして私に詰め寄る。

 

「何があったの?」

「秋庭さんの水筒の麦茶に異物混入してる可能性あり、ってとこかな。毒物だと思う」

「!目暮警部に連絡しないと!」

「頼むよ。秋庭さんが狙われているとするなら、彼女の身が危険だ」

 

 コナン君は頷き、急いで目暮警部への直通の番号にかけている。

 小学生の電話一本で緊急呼び出しされる華の警視庁捜査一課叩き上げ警部って何……?

 などと若干の疑問を覚えつつ。

 

 降谷さんは降谷さんで「こういう時コナン君は話が早くていいな」と満足げである。

 私の悪意察知とかいう謎能力の説明をしなくて良いのは楽だが、これで良いのか日本警察。

 

 駆けつけた目暮警部、佐藤刑事、高木刑事のいつメンが秋庭さんから麦茶の入った水筒を受け取った。

 

 少し早いが、合唱練習もおしまいだ。

 子供を送っていこうと私が立ち上がると、秋庭さんも「私も行くわ」と言葉少なに立ち上がる。

 どうやら子供達が心配らしい。

 

 夕暮れの街を歩いていくと、道中コナン君の携帯に電話がかかってきた。

 

 鑑定の結果どうやら炎症を起こす薬物が混入されていたようで、飲んでいれば4日は喉が潰れて声が出ない状況になっていただろうとのこと。

 目暮警部は「やはり秋庭さんのコンサート妨害を狙っていたのだろう」と深刻な声色だった。

 確かこの後、犯人がトラックを使って秋庭さんを轢き倒そうとするのだったか。

 

 私はさりげなく子供達の列の最後尾に立ち、ゆっくりとこちらへ悪意を向けるトラックを視認した。

 

「コナン君。今から走るよ。後ろのトラック、僕らを轢き殺す気だ」

「は、お前何言って………嘘だろ。オメーら走れ!!!」

 

 一気にスピードを上げて道横の標識を薙ぎ倒したトラックに、コナン君は血相を変えた。

 

 ひとまず運動能力の低いらしい子供二人を両手で抱え、ひと息に民家の塀を飛び越えて中へ下ろした。

 秋庭怜子から引き離してしまえば安全だからな。ここまで追ってくることはないだろう。

 

 急いで戻れば、横道へ逃げ込んだ少年探偵団達が無事に逃げ延びていた。

 反対側に逃げた…秋庭怜子が必死に走っている。

 

 「安室さん!」とコナン君が叫んだ。

 ラジャーです名探偵。もうすっかりコナン君の探偵道具扱いの私だが、特に意見することなく頷いてみせる。

 

 転んで目の前にトラックの迫る秋庭怜子を抱えて、ワイヤーフックを民家の屋根に引っ掛けて一気に飛ぶ。

 

 高さが足りない分は脚力で補い、一気に巻き返す勢いを使って民家の屋根へ。

 「そんな…嘘でしょ」と呆然とする秋庭怜子をお姫様抱きで優しく抱え、私は走り去るトラックを見つめていた。

 どうやら逃げに入ったようだ。

 

 安全を確認してから屋根を降りれば、むすっとした秋庭怜子が私の腕をペシペシ叩いた。

 

「いつまで抱えてるのよ。下ろして」

「はい。それと、今回のようなことがあるといけないので帰りは送って行きますよ」

「警察の人もいるし結構。初対面の男に自宅を教えるなんて論外よ」

 

 これは秋庭さん流に言った「ありがとう。でも貴方が巻き添えになって危険だから気持ちだけ受け取っておくわ」の意である。

 

───この女、何様だ?

───同じ女王様系ですもんね。降谷さんとは波長が合わな………あ、今のはオフレコで

───誰が女王様系だ。後で覚悟しておけよ

 

 妖怪プライドエベレスト男と、意図的な冨岡義勇系ツンデレ女王様では相性のいいはずもなく。

 

 慌ててやってきた高木刑事に送られて、秋庭怜子は帰っていったのであった。

 




降谷「精神科作業療法……自然を増やして、食事も……書籍の取り寄せが必要…やはり風見に行って専門医を手配してもらうか」
風見「ついに治療を受ける気になってくれたんですね!」(ほろり)
降谷「あ゛???」
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