バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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戦慄の楽譜③

 

 やや丸っこい子狐の仮面に子供用の藍色の浴衣姿が夜に映える。

 蝶々型に美しく結ばれた帯が揺れ、おそろいの赤い房飾りがおさげのように風に靡く。

 

 そんな手作り子狐仮面を顔からずらしてぎりぎりと歯軋りするコナン君に、私はにんまりと笑って声をかけた。

 

「ごん、お前だったのか……」

「……」

 

 ごすっ、とコナン君の膝蹴りが脛に良い一撃となって決まった。

 「ふぎゅ!?」と思わず痛みにしゃがみ込む。

 怒りのあまり無言なのは分からんでもないが、こんなタイミングで黄金の左を決めなくても。

 

 実はこの木彫りの狐面、私と降谷さんの手作りという世界に二つとない品だったりする。

 木彫りが私、着彩が降谷さんだ。

 柄も伝統的なものとは少し異なり、創作性がかなり高く中々カッコの良い出来栄えとなっている。

 

 だというのにコナン君は気に入らない様子。

 忌々し気に仮面を見てははぁ……と特大のため息をついている。失礼な奴め。

 

 さて、計画はこうだ。

 

 私とコナン君で親子狐を演じながら秋庭さんを袋に入れたまま堂々とホール内へ侵入。

 爆弾を解体して犯人を制圧。

 その後、元から中にいたと見せかけて秋庭怜子を観客の目の前で攫い、さっさとトンズラというわけだ。

 

 足元の石を手当たり次第にその辺へ投げ飛ばしている探偵君の両肩を持ち、私は優しく声をかけた。

 

「痛たたた……うう、酷いよコナン君。まったく。それで、準備はいいかい?」

「よくない。全く良くない。俺はコソ泥はしない」

「事件を解決しなくてもいいのかい探偵君。このままだと観客の皆は蘭ちゃんを含め爆死だよ?」

「ぐっ、うおおお蘭んんんんん……!」

 

 頭を抱えて小刻みに震えながらコナン君はのけぞった。

 そしてそのままブンブンとヘドバンをキメる。セキセイインコ並みに激しくキレのあるヘドバンだ。

 おいたわしや名探偵殿……こんなにも錯乱されて……。

 

 「別にこの程度、正義を成すためのコラテラルダメージに過ぎないだろ。大げさな」と平然としている降谷さんとは対照的だ。

 とはいえ、降谷さんは降谷さんで割り切り過ぎなところはあるが。大丈夫かお巡りさんよ。

 

 最近の風見さんの萎びれ具合と言ったら、古びた生鮮野菜だってもうちょっと元気があるという惨状なのだ。

 私の動きを抑えたい上層部の意向とガンガン行こうぜな降谷さんの間に挟まれて、常に痛そうに胃の辺りをさすっている姿のなんと哀れなことよ。

 

 やさぐれたコナン君の様子を遠目に見ながら、降谷さんはうーんと一つ頷いた。

 

───まぁ確かに、十代というと少し理想に潔癖なところがあるよな。俺も覚えがある

───今以上に過激派なゼロってもはや想像がつかないんですが。日本政治に怒りを募らせて学生運動で催涙弾とか投げられてたりしたんです?

───さすがに過激派過ぎるだろ……どんな想像力してるんだ。もうちょっと大人しかったさ

 

 ホントにござるかぁ?大学の講堂で火炎瓶とか投げてなかったよね?

 等とくだらない話で戯れていれば、背に背負った大きな袋から顔を出した秋庭さんが苦言を呈した。

 

「何いつまでも遊んでるのよ。これに入ってれば、落とさないで無事中に入れてくれるのよね?」

「もちろん。この程度の軽い荷物、突入には何も問題はないさ」

「…ならいいわ。それにしても、貴方がかのルパン一味って話。本当なの?」

「ははは。どうでしょうか。貴方はどう思われます?」

 

 ルパンの一味かどうかについては濁す。

 YESと答えてもNOと答えても後々問題になりそうだからな。白とも黒ともつかない虹色のごまかしが最善なことも時にはある。

 

「まあ、ホール内に入れるならどっちだっていいけれど。少なくとも義賊の類なのね、貴方たちって」

「待って怜子さん僕をサラッと賊の中に含めないでくれる!?」

「坊やだって私の部屋に勝手に入ってきて物色してたじゃない。小さいうちからそれって、立派に賊の才能あるわよ」

「蘭、俺はここで力尽きるがお前は生きろ…」

 

 余りの精神的苦痛に辞世の句を詠み始めたコナン君だが、割とその件に関しては自業自得である。

 違法捜査は公安の特権なので、いち探偵が乱用したらいかんのだよ。

 公安でも違法捜査は駄目だろうって?そんな本当のことを言ってはいけない……。

 

「そろそろ行くよコナン君。僕の左肩にしっかり掴まって。安全ベルトがあるとはいえ、落ちたら命はないからね」

「……うん、頼んだよ安室さん」

 

 では、作戦開始だ。

 まだ火に囲まれていない壁へと狙いをつけ、一気に駆け寄る。

 

 派手な紅白柄の着物姿の不審者が野次馬をかき分けて火の方へと走り寄るものだから、警察も消防も驚いて私を制止しようとする。

 

 そこで捕まる前にホール屋上へとフックを引っ掛け、巻き上げる勢いを利用して大ジャンプ。

 この巻き上げはコナン君の持つ探偵道具、伸縮サスペンダーの技術を応用しているらしい。

 道理で意味不明なほど射程が長いわけである。

 

 キャー、という地上の悲鳴と放水車の音、そして再びの爆発による喧噪とが重なり合う。

 

 警察官の「あれは…フォックステイルだ!ルパン一味の!捜査二課に連絡を入れろ!!」と叫ぶ声が聞こえた。

 やっぱりアイコンが強いと同定が早いな。

 

 あっ、「あの子供はなんだ!?」と騒いでいる警官がいる。

 私と似たような和装に仮面姿の子供ということで目を引いたのだろう。

 しめしめこれで逃げられんぞ、などと姑息なことを考えているなど露とも知らず、コナン君は振り落とされないよう必死で私の肩にしがみついている。

 

 無事炎の壁を抜けてホール屋上へ着地。

 

 そのまま煙を避けながら急いで中に入れば、廊下は異様なほどに静まり返り、外の喧騒をまるで感じさせない静寂に包まれていた。

 さすがは完全防音で謳われるコンサートホール。

 あの爆発が多少の建物の揺れにしかならないとは、堅牢な造りだ。

 

 袋から秋庭さんを出せば、秋庭さんは乱れた髪をかき上げて「まったく暑苦しかったわ」と苦言を呈した。

 この人はこの人で肝の据わり方が半端ないな。

 

「じゃあ僕は爆弾の発見と解体に取り掛かるよ。コナン君は犯人の特定を頼む」

「うん。見つけたら連絡するよ。それで、怜子さんはなんとかして爆破までの時間を稼いで!」

「どこまでできるかはわからないけど、やってみるわ」

 

 なにげに秋庭さんが一番無茶ぶりだが、そこは考えないこととする。

 原作のように大乱闘スマッシュブラザーズばりにコンサートに乱入してもらえばよかろう。

 実際あれは「挑戦者が現れました!」以外の何物でもなかったからな。

 

 

 そんなわけで一時解散。

 

 私はコンサートホールの舞台裏を中心にこっそり電波を探索して右往左往した。

 やはり電波感知と悪意感知の万能さは何物にも代えがたい。

 

 探索の結果、不審な通信をしている大きな爆弾が一つあったので、降谷さんに代わって解体してもらう。

 

 信号処理回りはともかく、爆破機構については素人っぽい単純な作りで5分もあればバラすのに不足しない程度のモノだったらしい。

 「拍子抜けだな」と降谷さんが息をついていた。

 

 原作はコナン君たちの発見が遅くなってかなりのタイムロスとなってしまったが、今回はまだ時間が十分にある。

 怜子さんがコンサートに乱入し、アメージンググレースが始まったのが聞こえる。

 

 ついでにセンサーと連動している中継機の方も解体しようか、とよっこいしょと腰を上げる。

 中央の爆弾の作りを見る限り、信号を受信しなくなったら緊急爆破、みたいなトラップは仕掛けられていないみたいだからな。

 

 コナン君にショートメッセージで連絡を入れれば、すぐに返信があった。

 

『ホール中央の爆弾解体完了。中継機解体に移る』

『道中でセンサーを発見して取り外し済みのため、中継機解体は不要。これから犯人のいる部屋に突入する』

 

 早ぇんよコナン君や。

 RTAじゃないんだから、まだアメージンググレース終わってないぞ。

 

 仕方ないので私も犯人のいる部屋へと急行。

 おそらくここに潜んでいるはず…という部屋の隣に来て気配による位置把握に勤しんだ。

 直で乗り込むとどうしても敵を警戒させてしまうからな。

 子供一人という油断させるような状況が望ましい。

 

 壁に額を当てて意識を集中させると、気配の位置がサーモグラフィーのように脳内に位置取りを教えてくれる。

 お、敵はどうやら爆破ボタンが使えないことを理解して拳銃を取り出したらしい。

 

 私は鉄爪で円形に壁を切り抜き、ひと息に突入した。

 秘技!切り刻み武装解除の術!

 

 視界に対象が映るか映らないかのスピード感でもって銃を細切れに、着ていた服を細かくカットして丸裸に。

 何が起きたかわからないらしい犯人の爺さんが慌てて私の姿を視認し、銃を向けようとして……それが鉄くずになっていることに気が付いた。

 そして同時に自分が生まれたままの姿になっていることに気が付いたらしい。

 局部を必死で隠してソファの後ろに隠れ、生娘のように恥じらった。

 

「本当につまらぬものを切ってしまったわけだが。コナン君、無事かい?」

「大丈夫だけど……はは、アンタ、石川五エ門の弟子って本当なんだな」

「僕、君には基本的に嘘はつかないようにしているからね。探偵相手に不利な賭けはしないよ」

 

 犯人の惨状に半笑いのコナン君を置いて、私は首トンで意識を奪った後、ちゃっちゃと部屋のカーテンを裂いて犯人を縛り上げた。

 

「あとは……怜子さんの回収と撤退かな。パトカーたくさん来てるよ、きっと。最悪銭形警部が湧いてるから、その時は覚悟しないといけない」

「わ、湧いてるって……」

「銭形警部はね、無から湧くんだよ。知らないのかい?」

 

 具体的には逃走経路にあるマンホールからニュッ!って出現したりする。

 あの時は本気で口から心臓出るかと思った。

 何処をどうしたらそこから出てくることになるの…。

 

 とまあ、無駄口はそのへんにしておこう。

 

 万雷の喝采に包まれるホール内を、巻き取り式フックを使ってコナン君と共に天井より一足飛びで壇上へと飛び降りる。

 突然の闖入者に会場は騒然としているものの、流石は高級コンサート。

 有象無象とは客の質が違うらしく、ざわめいてはいるものの混乱が起きる様子はない。

 

 コナン君から借りた蝶ネクタイ型変声機を用い、壇上で一言。

 

【この歌声はいただいた】

 

 そうやってルパンお馴染みの犯行宣言を形式上終えた後、困惑する秋庭さんを俵抱きにして天井近くまでロープを巻き取る。

 天井へと爪を振るい、分厚い防音壁をずんばらりん。

 切り落とされた建材が舞台上に轟音を立てて落下し、ようやく観客たちは事態を把握したらしい。

 悲鳴を上げて逃げ出そうとし始めた。

 

 が、外は現在火の海だ。

 先回りし、構造的に耐久力の高そうで意図的にまだ火の来ていない一か所をアーチ状に切り開いておいた。

 まだ火が回っていない箇所だが、恐らくは今ごろ消防があのアーチからなだれ込んでいることだろう。

 

 彼らの指示に従って避難を開始してくれればいいのだが。

 

 ピアニストの堂本さんが「秋庭君!」と叫んでいるが、それは無視。

 後で無事帰すので心配しないでほしい。

 

 天井から外に出れば警察のヘリが2機ほど、私たちを照らし出していた。

 包囲完了、といったところか。

 

「だからヤだったのに!!!!僕もうおうち帰る!!!」

「落ち着かないかコナン君。この程度でルパン一味が捕まるとでも思ってるのかい?」

「俺はルパン一味じゃねえ!!!くそっ、こうなりゃヤケだ!俺が今から隙を作るから、その間にフックでも何でも使ってこの場から脱出するぞ!」

「了解。やっぱり君怪盗の才能あるとおもうよ」

「そこ、黙る!」

 

 コナン君にピシャリと怒られる。すまんて。

 

 「こんな状況で本当に逃げられるの?」と緊張のはらんだ声で秋庭さんが私の胴体に縋り付いた。

 流石にここまで包囲されていると不安が先立つのだろう。

 

「大丈夫ですよ。何も心配いりません」

「どうしてそう言い切れるのよ。その爪で警察官を蹴散らすとでもいうのかしら」

「いやいや。もっとスマート且つスムーズだよ。なにせ……」

 

 僕らには名探偵がついているからね。

 

 キック力増強シューズのダイヤルをキリキリと回し、蹴りの予備動作。

 バチバチと電気の弾ける音。閃光。

 コナン君が静かに目を見開いた。

 

「いっ、けぇえええ!!」

 

 射出したボールを上空高くへと蹴り上げたその瞬間、夜空で目もくらむような盛大な花火が上がる。

 勢いに押されたのか、警察のヘリが僅かに揺らめく。

 

 今だ!という声に私は急いでフックをヘリへと引っかけ、森の奥の方へと大ジャンプした。

 外側の火がだいぶ鎮火されていたのもあり、警官たちは花火の音と光量とにくらまされて私たちの姿を一瞬見失ってしまったらしい。

 私たちの姿は夜に紛れ、闇に紛れて見えなくなる。

 

 「フォックステイルが逃げたぞ!」「子供もいた!」などと警官達の叫び声が遠くから聞こえてくる。

 空では花火の光の跡がキラキラと落ちていく。

 

 劇場版出の超兵器・花火ボール。

 もう作ってもらってたのか、なんてちょっぴり感慨深くなったりもする。

 

「俺はもう終わりだ……コソ泥として一生を刑務所で過ごすんだ……うう…」

「コナン君は気にしすぎなんだってば。大丈夫大丈夫。捕まらなければ犯罪じゃないし」

「そう言う問題じゃねーんだよバーロー!」

 

 地上に降りた後は全力疾走だ。

 危機を脱して集中力が途切れたらしいコナン君がナーバスになっている。

 魂が出そうなほど沈鬱な顔をしているというのに全力疾走をやめない姿は、十分過ぎるほど怪盗の才能を感じさせた。

 

「秋庭さんはこの後ルパンを通して正式に帰宅できるよ。ただ、しばらくは隠れ住むことになると思うけど。不便をかけてごめんね」

「いいわよ。犯人も分かったし、爆破も防いだ。コンサートにも出られた。言うことないわ」

 

 森を目隠しにやや遠めのコインパーキングに止めたRX-7に急いで向かい、秋庭さんを車に積んであった目立たない服に着替えさせる。

 私達もそれぞれ己の服へと着替え直し、本日の仕事はこれにて終了。

 

 早くルパンに一報を入れてそっちの筋から秋庭さんを自宅に返さないとなぁ、なんて思いつつ。

 

 ポコポコ怒るコナン君を送る車内で、秋庭さんのアメージング・グレース生美声を聞かせてもらいながらの帰宅となったのであった。

 

「……明日の記事、ぜってーこの件が一面だよな?」

「そうだね子狐君」

「やめろ!やめてくれぇ!俺は違うんだ!!」

「花火で警官を蹴散らす姿、なかなか格好よかったわよ、ボウヤ」

「ミ゜ッ」

 

 ああ、秋庭さんにトドメを刺されてしまった。哀れな……。

 




・日本のニュースを見ての各々の反応
ルパン「wwwwwww」(大草原で声が出ない)
五エ門「拙者の…息子……?」(宇宙猫)
次元「ありゃ有望株だな。どっから見つけてきたんだ?」
不二子「嫌ね、狐ちゃんより私の方が美人よ!」
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