バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
「アン・ボニー、メアリー・リードの宝ぁ?」
「ええ。今話題になっているそうですよ。日本の神海島で女海賊が隠した宝が発掘されたと」
ルパンのアジトの一つでだらだらしつつ、私は持ち込んだ私物のレゴブロックで巨大なルパン像を作りながらルパンへと話しかけた。
次元の吸う煙草の煙がくゆり、氷を入れた酒のグラスが表面に水滴を滴らせる。
薄暗い室内に香るのは夜の退廃、夜を駆ける大泥棒の矜持である。
そんな中にあって幼児じみたビビットな色彩のレゴブロックが等身大でルパンを象るさまはどうしてもシュール極まりない。
だが、さっき一仕事終えてアジトへ入ってきた不二子さんがレゴ像を見て「あら、こうしてみるとルパンもなかなかいい男じゃない」と珍しくデレを見せたため本人は大喜び。
私に「何体でも作っていいかんな!」と言って上機嫌で像と肩を組んで踊り出すなどしている。
次元さんが「やめろやめろ、部屋が狭くなるだろうが!」とお怒りにもかかわらず、ルパンはどこ吹く風。
「お前も作ってもらえよ、俺とおそろいだぜぇ?」「いらねーよ!」と漫才を繰り広げていた。
いやあ、心象風景内でレゴにいそしんでたらハマってしまいましてな。
現実でもこうしてレゴで無駄な超大作を作り出すという悲しき成人男性となってしまったのである。
現在自宅で制作中なのは米花町の精巧なレゴ模型だ。
ルパン像が終わったらこちらも本格的に取り掛かりたい。
なお、降谷さんはこれについて「思う存分作ると良い。俺も時々混ぜてくれ」と完全なる男親の顔をしていた。
私5歳児説がどんどん強化されている気がしてならない。
「アンボニーだかのしょぼそうなお宝よりもさぁ、お前の息子だよ息子。秋庭怜子とやらは俺らで返しとくから、お前は早く息子の紹介をしてくれよ。な?」
「俺もそいつは興味があるな。あの機転、なかなか有望な奴なんだろ。もう五エ門は会ったって話じゃねーか」
興味津々、といった様子でルパンがグイッとソファから身を乗り出してくる。
堂本ホールでの爆破事件は、予想通りメディアによって大きく報じられることとなった。
『フォックステイル、子連れで盗みに入る!』『子狐参戦、フォックステイルの実子の可能性』『ソプラノ歌手・秋庭怜子誘拐か!未だ行方掴めず』、エトセトラ。
キャラクター性の強さもあり、もはや一種の祭り状態だ。
どのTV局も点ければ緊急特番と言った有様で、ルパン一味の知名度の高さがうかがえる。
日本のメディアこそ私の和装から推定男として報じているものの、海外メディアは完全に女扱いだ。
「ルパン一味の女狐」だとか「妖艶なる大妖狐、美しき歌手を攫う」だとか言いたい放題。
SNSではバズ話題をかっさらい、動画サイトは私たちの切り抜きがあふれかえり。
正体不明の金髪褐色肌の狐面怪盗、仮面を外せば妖艶な狐獣人系人妻、なんて創作漫画まで現れてもうてんやわんやだ。
変態は散れ!散れ!どうしてこんなことばっかり食いつきがいいんだ!
性癖の煮凝りか?
これにはコナン君も降谷さんもカンカンで、「誰が安室さんの息子だよ!?つか俺はルパン一味じゃねぇ!!!」「誰が巨乳人妻狐獣人怪盗だ!!目が腐ってるのかアメリカ野郎!」と地獄みたいな視線でネット記事を睨んだり畳の上をゴロゴロしたり。
ほぼ収拾がつかない状況であった。
漫画を初めて目にしたときなんか、羞恥と怒りのあまり昇天しかけたよね、降谷さん……。
あんなどうしようもないことで私の魂との同化率が上がるとか思ってもみなかったよ…。
しかも、事件後日々をぎこちなく過ごすコナン君の元に五エ門師匠が出現。
「飴ちゃんを…あげようね…」などと言ってコナン君にベッコウ飴の入った袋を渡すなどしたらしいのだ。
なんというか、通学路に出現する新種の不審者かな?という様相である。
実際保護者連絡網に不審者出現の連絡は入ったらしい。
なんということでしょう。
コナン君が「おじさん、石川五エ門だよね?」と声をかけた瞬間、残像が見えるほどの速度で逃走。
いつものスケボーを持っていなかったコナン君を置いてけぼりにしてそのまま国外逃亡していった。
たぶん、メディアに親子親子言われすぎて洗脳されたのだと思われる。
そういう謎にピュアなところがあるのが五エ門師匠であるからして。
「コナン君にも都合があるんですから勘弁してください。本人は探偵になりたいそうで、今回のことも緊急措置だと言い張っていますし」
「けどよぉ、あの逃げっぷりと手際の良さは十分すぎるぐらい見込みがあると思うんだけどなぁ~この俺様が言うんだから間違いない」
「それは僕も思いました。普通に初心者の頃の僕らより手慣れてましたね」
流石は天下の主人公。
花火ボールを打ち出す発想から逃走経路確保までの時間がとんでもなく早かった。
判断力の勝利というか、地頭の良さがにじみ出ている。
と、そこで私は五エ門師匠が先ほどから熱心に何やら金属片のようなものを磨いていることに気が付いた。
大半は布に包まれていて見えないが、何らかの武器……だろうか。
「そういえば、五エ門師匠は何を作ってるんですか?」
「これか。うむ。そろそろ完成ゆえ渡すべきか」
そうして。
布から取り出されたのは、輝かんばかりに磨き抜かれた一対の鉄爪であった。
美しい曲線。
丁寧に加工された持ち手は柔らかな革で包まれ、鮮やかな組紐のようなもので結ばれている。
何処とも言えず和を感じさせる風貌に、日本刀じみた爪が光を反射する。
私はそのあまりの美しさにほう、とため息をついた。
「隕鉄をもとにした特殊な合金で作った刃を、オリジナル・メタルという特殊な研ぎ石によって磨いた代物だ。斬鉄剣ならぬ斬鉄爪、と呼べるだろう」
受け取るが良い、我が弟子。と五エ門が爪を差し出す。
「いいのですか?それは……秘伝、と言ってもいい代物では」
「免許皆伝の証だ。受け取るが良い」
そう言って差し出された爪はずっしりと重く、滑るような輝きで私を魅了した。
とんでもねーもん渡されてしまったな……。これ、ほぼ斬鉄剣と製法一緒だろ。
試し切りをしたい、と言い出せば、五エ門師匠は予想していたように視線を隣の部屋へ向けた。
「そういうと思って金属製の案山子を設置しておいた」とこともなげに言う五エ門師匠の優しさが天元突破している。
あと、斬鉄の心地を試してみたいことを見越して当然のように鉄製を用意するあたり、やはりさすがは剣士である。
「ありがとうございます!試してみます!」
「うむ。やはり新たな刃を握ると血がたぎるもの」
早速手に鉤爪を付けると案山子の前へ立ち、そのまま力を抜いて素早く一閃。
シッ、と首を落とすように刃を滑らせる。
すると、金属の塊がバターのように切断され、滑るような独特な感触での斬鉄が成ったではないか!
普段の爪でも斬鉄できないわけではないが、この倍は集中力と腕力が必要になっただろう。
───すご、凄いですよこれ!!豆腐でも切るように金属が切断できて!降谷さんもやってみます!?
───素人が使えばせっかくの刃を痛めそうだから遠慮しておく。というか、当たり前のように斬鉄やってるお前がおかしい
戦闘中、降谷さんと私が両方表に出ているときなんかも斬鉄は可能だから、降谷さんも斬鉄の感覚自体は掴めているはずなのだが。
やはりまだまだ魂の同期が足りないという事なのだろう。
「じゃあ、メアリー・リードとアン・ボニーの宝については僕一人で行ってきますね。単なるトレジャーハントなので銭形警部が出現する可能性は低そうですし」
「いってら~。でも止めといたほうがいいぜ?なーんか食指が動かないって言うか、骨折り損のくたびれ儲けって感じがするんだよな。次元はどう思う?」
「そりゃいつものことだろ。たまにはコイツも海でのんびりってのも気分転換になるだろうし、いいんじゃねえか?」
「おー、そりゃそうだな。じゃ、子供連れてレジャーを楽しんでこいよぉ!」
「───誰が俺の子供だ。コナン君は協力者であって実子じゃない!」
「息子君にゃタイミング見て会いてえから、日本にはいずれ行くべきかもな。次元、いつ空いてる?」
「来月の仕事終わりはどうだ。プレゼントの選定がてら宝石物色してな」
「───俺の話を聞け!!!!───あとコナン君は潔癖なのでプレゼントは盗品じゃないほうが喜ばれますよ───そういう問題か…?」
みんな女海賊の宝よりコナン君に興味津々のようだ。
この辺、さすがはルパン一味と思わざるを得ない。宝への勘が他とはけた違いだ。
実際、この女海賊の宝は実際は財宝などではなく隠した帆船の在処を示しているため、骨折り損のくたびれ儲けというのは実に的確だったりする。
「まあいいか。じゃあ、ひとまず僕は宝を発掘がてらコナン君の予定を聞いてみます。不意打ちで捕まえようとしてくるかもしれませんが、その辺はいいですよね?」
「おー!そのぐらい活きが良くなきゃ会いに行った甲斐がねーってもんよ。なぁ?」
私が存在しない女海賊の財宝にわざわざ向かうのは、劇場版見たさというか、ファン心理みたいなところでしかない。
当時の本物の海賊旗だけでも入手して、コナン劇場版ファングッズとして取っておく心づもりだ。
実は迷宮の十字路でも妖刀村正の一本を強盗団から入手済みだ。
ベイカー街の亡霊でおなじみ、本格VR機器コクーンもテロ容疑の証拠品として公安が接収、という名目で1機確保してある。
降谷さんには「お前の趣味はよくわからん」と言われてしまったが、この辺は転生者であるが故。
私と完全に憑依合一すれば降谷さんにも知識が共有されるかもしれないので、その時を待ってもらうとする。
さて。それでは行かん!劇場版名探偵コナン、紺碧の棺が舞台、神海島へ!
性癖の煮凝り氏「同人誌は見つけ次第燃やす。全てを燃やし尽くす」
ルパン「」(笑いすぎて酸欠)