バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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紺碧の棺②、あるいは魂の同化

 

 というわけでやってまいりました。

 日本、東京都神海島へ。

 

 ここは有名観光地としてレジャーで訪れる観光客も沢山いる、海が綺麗な亜熱帯の島だ。

 

 色とりどりの熱帯魚たちが透明度の高い海で舞い踊り、光の反射で水面がキラキラと光る宝石箱の如き美しさ。

 のんびりとした島ながら奇麗なホテルも存在していて、くつろぐには十分。

 ダイビングにヨット体験、海水浴、浜辺遊び等コンテンツは盛沢山だ。

 

 降谷さんがややワクワクとした様子で話しかけてくる。

 

───せっかくだし、観光していかないか?ダイビングとかいいんじゃないか?

───いいですね!僕なら素潜りでもかなりの時間潜っていられますし、特殊な器具を借りるまでもないので楽ですから

 

 前に毒ガスの満ちた仕掛け部屋にルパンと侵入した際の体験から察するに、15分ぐらいなら問題なく息を止めていることが可能だ。

 軽いレジャーであるからして減圧症の発症の恐れがある8mより下まで潜る気も無いし、ちょうどよかろう。

 3、4メートル地点で3分ほど圧力に慣れさせる工程も挟めば完璧だ。

 

 軽く近場の更衣室で着替えて、持ってきた水着姿になる。

 更衣室横にある小さな売店で買ったゴーグルを装着し、砂浜を歩きいざ海の中へ。

 

 気を抜いてゆっくりと水面から5メートルほどの深さまで潜れば、そこは海の楽園だ。

 ひざ下ぐらいしか水のない場所でも魚の姿が見えたほどだ。5メートルも潜れば竜宮城もかくやという絶景となる。

 

───おお!見てくださいゼロ、ニモがいますよニモ!

───カクレクマノミか。凄いな、流石は有名観光地。海の美しさが桁違いだ。今度はダイビングゾーンをつくるのもいいか

───深層意識にですか。魚群AIで人工意識を統一操作する練習になるかもしれませんね。ただ、魚が表層に侵入しないよう対策を練らないといけませんが

───ふふ、そうだな。地上でピチピチ跳ねる趣味は俺達には無いからな

 

 意識内に条件通りに行動する仮想意識、AIを作る技術を確立したのは大分前のことだ。

 池の鯉もこの技術を使って作られていて、泳ぐ、跳ねる等単純なことしかできないが利用の幅はかなり広い。

 

 私が感じ取った電波信号を解読するのにも使われていて、そちらは降谷さんが作ったPC型のAIによって賄われている。

 

 しかし魚群か。魚群制御となると意外と複雑なAIが必要になってくるかもしれない。

 個々の魚のAIを統一し、一匹の魚に見えるよう上手く魚群の位置を調整する必要があるから、最上位AIとして統括役を作成する必要が……。

 

 統括。

 

───そうだ!ちょっと試したいことがあるので、いったん上がります!

───お、おう?どうした安室。なにかあったのか?

 

 何故気が付かなかったのだろうか。

 

 以前から私たちの弱点となる降谷さんの強化計画を考えていたのだが、そこでネックだったのは魂の出力の違いだった。

 私が爪による超人的活動を行ったり、電波すら感じ取れるのは主に魂のエネルギー量が桁外れだったからに他ならない。

 霊体としての格の違い、というべきか。

 

 降谷さんを強化するため、今まではちまちまエネルギーの譲渡をしたり降谷さん自身の位階を上げようと四苦八苦していたのだが。

 そうだ。魚群のように仮想的に一つに統括してしまえばいいのだ。

 

 深層意識内に組み上げるのは、私たちを統合する仮想人格、大きな大きな魚の影。

 二つの魂の輪郭を使って、降谷さんを核により大きく強い仮想の魂を形作る秘儀中の秘儀。

 

───では、行きますよ。そうれ!あー、そうですね、呼び名はえーッと、フェストゥム(祝福:仮名)!

───待て待て、いったい何の、

 

 同化と言えばこれだろう、という名前を叫んで祝福を発動する。

 

 ぐん、と魂が汲み上げられる不思議な感覚。

そして己のふちが、輪郭がどんどんと拡大していく。

 

 成功だ。

 

『これは……何だ?凄いが…俺なのに俺ではないような、言葉に言い表せない全能感だ』

 

 魂の仮想骨格を媒体に、降谷さんを核に私で包む形で成り立った仮想統合魂魄だ。

 その強度は言うに及ばず。

 魂二つ分の力は私以上、並みのファンタジーなら干渉もできないスーパーマンモードである。

 ……たぶん。

 

 ルパンがらみの事件に巻き込まれていると本当に意味不明な状況に巻き込まれることが多々あるので、その辺は景品表示法にひっかかる気がしないでもない。

 

 降谷さんが愉悦の笑みをこらえるかのような顔で己の両手を眺めている。

 はぁ、と熱い吐息。

 

『潜ってみてもいいか。今なら俺もお前と同じことができる気がする』

 

 OK、もちろん降谷さんの好きにしていいぜ!

 今の私は降谷さんの一部。深層心理内ですらない心の声として意識を伝える。

 ……が、伝わったかなコレ。

 己の魂を体の一部として知覚していないと分からないんじゃなかろうか。

 

 降谷さんは私の声が聞こえているのかいないのか、深い海の底へと潜っていく

 6メートルを超え、8メートル、10メートル。

 無意識にあふれる力を肉体にまとわせ、コーティングするように淡く発光しながらイルカのように自在に水をかき分ける。

 

 降谷さんが海ほたるになってしまった……まあ楽しそうだしいいか。

 

『ははは、ははははは!凄い、凄いなこれは!』

 

 私が浸透していく。高次の魂が純粋なるエネルギー源として降谷さんの魂と癒着し、一つの巨大な魂へと成長していく。

 同化する魂を心地よく享受していると、ふと降谷さんが海の中で動きを止めた。

 

『安室、お前も見て……安室?どうした?』

 

 はい、私はここにいますよ。

 

 魂を包んだ外郭をそっと揺らすが、どうやら気付いていない様子。

 みるみる降谷さんの声が揺れ、不安そうに心象空間が冷えてゆく。

 

『安室!返事をしろ!おい!安室!!!』

 

 やはりというべきか、まるで声が聞こえていないらしい。

 仕方ないので一部外郭を解除し、魂をぬるりと分離する。

 癒着していた部分は切り離して降谷さんの方に残してきたので、急に降谷さんの方が力を失って海でおぼれる危険はないはずだ。

 

───はい、どうしましたか?

───どうしたじゃない!お前がどこにも、心象世界のどこにもいなかった…一体何処にいたんだ!?

───あー、それは。あなたの一部になってました。僕の全てを委ねる、といいますか。無事同化できたみたいで、心地よく過ごせましたよ

 

 正確に言うなら同化というより譲渡ともいうべきものなのだが、そこは割愛。

 私という力の全てを降谷さんの管理下に置く、アクロバティック人格統合みたいなものだ。

 もし今後医師から解離性同一性障害の治療のため精神統合してくれみたいな話が出たら、これを主軸にしていけばよかろう。

 

 降谷さんがわなわなと震え、顔面蒼白で私を見た。

 

───お前、それ……いや、今さっきのはつまり…

───かっ顔色酷いですよ!?もしかして海水で冷えましたか!あ、上がりましょうすぐに!僕のことはいいですから!

───良くない!!なぜそんなことをした!

───え?ですから、前々から降谷さん言ってましたよね。僕と同じ景色が見たいと。ちょうど海もきれいでしたし、僕の感覚と同等のものを感じるにはいいタイミングだったと思ったんです

 

 実際、降谷さんも大変満足されたようだ。

 おとぎ話の極彩色の海を思う存分揺蕩うのは至高の体験と言っても過言ではないはずだ。

 

 あれはまさにベストな思い付きであった。

 

───そうか。……すまなかった、俺が、我儘を言って……

───?

 

 降谷さんは消え入りそうな声で私の肩をつかみ、言った。

 

───2度としないと誓ってくれ

───えっ、ですがこれでせっかく降谷さんが私と同じ景色を、

───誓ってくれ!頼む、………お願いだ

 

 冷えた指先が肩に食い込む。

 小刻みに震える手が、食いしばった歯とうつむいた顔とに阻まれて濃い影となる。

 

 私は、何か失敗してしまったらしい。

 

───わかりました

 

 静かに返事をする。

 喜んでもらえると思って空回りとは、まったく人間関係初心者さながらだ。情けない。

 

 不安そうな降谷さんの両腕を解き、優しく微笑む。

 

 なんとかして挽回せねば。

 そう誓いを新たにして、私は己の魂を掻き抱いた。

 




・TIPS
転生者たる「私」は魂の位階が一段違うため、肉体に入っている限りかなりの出力的制限がかけられている。
つまり、本気の場合は肉体が無いほうが強い。(バトル漫画並感)
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