バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
五エ門先生の勧めで歌舞伎を一緒に見ることになった本日です。
先日の仏像盗難未遂は、私の連絡を受けた公安の人員によって、全ての盗人を無事逮捕することに成功した。
スムーズに偽シャム猫から地上の人員について聞き出せたのが大きい。
まだ計画失敗がバレる前だったから、時間との勝負に勝ったということか。
レディ・スカイを盗って逃げたとの一報が回った直ぐ後に、不二子さんから「ねぇ狐ちゃん。あたしにプレゼントしてくれない?」とイタズラげな電話がかかってきたことは言うまでもない。
彼女も耳が早いことだ。
流石に鈴木相談役のレディ・スカイを盗むわけにはいかないので、代わりに鈴木財閥系列の個数限定コスメを渡すことを約束した。
実はここにくるまでの間で相談役からのお土産として渡されていたんだよね。
女性のみとのことだったが、知り合いの女性に渡したいと言えば特別にもらうことができた。
コナン君には「ベルモットへのプレゼント?」と胡乱な顔をされたものだが。
まぁ、不二子さんへたまには顔を繋ぎ直すのも悪くないだろう。
さて、歌舞伎の話に戻ろう。
演目は「石川五右衛門」。場所は銀座の歌舞伎座。
石川の一族の流れを学ぶのにちょうどいい、ということで私もお呼ばれしたのだ。
すっかり一族の一員として認められているようで嬉しい限りだ。
ここにくる前にレゴで等身大の石川五右衛門像を作ったら、アジトのど真ん中に大切そうに飾ってくれたので嬉しい限りだ。
ルパンに「五エ門ーここ邪魔なんだけどぉ…」とか言われてたが、五エ門師匠は聞かなかったことにしていた。
感動のあまり本当に聞こえていなかった可能性も視野に入る震え具合だったが、真実やいかに。
「師匠、もう直ぐ開演ですね。僕、歌舞伎なんて初めて見ますよ───俺は3回目だな。高校のイベントと大学時代に一度見に行ったから」
「そうか。我ら一族の歴史を今に残す名作だ。じっくり堪能するといい」
「はい、師匠!───日本の誇るユネスコ無形文化財だからな。俺達も触れておいて損はない」
満足げな降谷さんが歌舞伎の語源から歴史まで堂々と語り出すのを聴きながら、私はざわめきの残る観客席で開演の時を待った。
どうでもいいけど歌舞伎の歴史を丸暗記してるのか降谷さんや。
前々から日本厄介ヲタクだと思ってはいたけど、そこまでとは……コナン君にまたドン引きされるぞ。
なお、師匠は観客席に着物姿に正座で構える姿がガチのガチ。
隣に座っていてなんとなく居心地に支障が出てくるまである異様な光景である。
ルパンは劇の間銀座の街で時間を潰している予定だ。
彼らも付き合いがいいというか、仲がいい一味だよね。
開演してしばらく。
五エ門先生が感動の涙を流した!
泣ける部分あったかな……私が冷めてるだけなのか?
と、そんな平和な休日の歌舞伎座で。
急に忍者が襲ってくるのがルパン映画クオリティ。
不意に現れた忍びが、意味不明すぎる起爆札をつけた苦無を投げてくる事態に、観客は大パニックだ。
思わず五エ門師匠と二人立ち上がって観客に当たらないよう手裏剣を弾けば、敵忍者が増える増える。
5人を超えて7人、8人。
というか現代日本で敵忍者って単語を使う日が来るとは思ってもみなかった。
まず忍者が現役なのが圧倒的におかしい。
師匠に軽く目配せすれば、場所を変えるよう目線だけで指示があった。
ここで潰すのではなく、外へ逃げて隠れている残りも巻き上げろとのこと。
仕方ないので斬鉄爪を出して忍者達を間引きつつ、走って歌舞伎座の外へ。
───面倒な。銀座の街が大混乱になるぞ
───しかし、ここで残党を逃すとどこまでも追ってきかねません。多少の混乱は避けられないでしょう
───くそ、忍者なら忍者らしく主君たる日本に仕えてその忠誠を見せていろよ!
過激派な降谷さんは置いておいて、まずは当座を凌がねば。
忍者の放つ爆弾でどんどんビルが爆破されていく。
ちょっとしたどころではないテロ状態だ。
降谷さんの眉間の皺がどんどん深くなる。機嫌もリンクして急降下。
そこに銭形警部が現れた頃には、イライラした顔で舌打ちをし出すまでになっていた。
毎度のことですけど怖いから落ち着いてください。
ルパン一味と一緒にいるならこのぐらいよくあることじゃないですか。
よくあるのが間違いだと言われれば返す言葉はないが。
そこでふと、師匠がルパンと別方向に逃げようとしているのを見つけた。
やや困って近づけば、師匠が私の手を掴んで深刻な表情で頷いた。
「師匠!一体どこに……」
「来い。伝えねばならんことがある。それと……ルパン。狙われているのは拙者だ。お主はこれ以上関わるな。追ってくるようなら斬る」
ぶっきらぼうだが、どこか頑なな声色だった。
私を連れて行こうとするのは、同じ斬鉄武器の使い手だからか。それとも一族として認めてくれているからか。
ルパンはさらりと引いたようだった。
ここで深入りして亀裂を決定的にするよりも、先回りしてルパンの有用性を示す形にしたいのだろう。
この辺、ルパンのバランス感覚が時折羨ましくなる。
何事においても卒がないというか、各分野のエキスパートを煮詰めたみたいな人だよね。
別れ際にルパンがちらりと私を見た。
あいよ、情報は後で私からルパンへ流すから安心してくださいな。
ルパンと別れ、五エ門師匠はズンズンと道を進んでいく。
スマホも持ってないが故に掲示してある電車の時刻表を見て確認し、どこぞへと向かおうとしているようだ。
「師匠、どこへ行く気ですか」
「これから、拙者達の祖先が残した巻物を取りに行く」
「巻物?」
「斬鉄剣の製法に関わる巻物だ、と伝えられている」
そこまで聞いてようやく、それがルパンアニメスペシャル『燃えよ斬鉄剣』なのだと気がついた。
『燃えよ斬鉄剣』は斬鉄剣の製法に関わる歴史と闇、騒動を描いたアニメスペシャルだ。
五エ門の幼馴染である桔梗という女性が出たり、斬鉄剣よりも硬いとされる合金が出てきたり。五エ門主軸の話であることも注目すべきポイントだ。
じっとり五エ門師匠に絡みつく静かな悪意に、私は気合いを入れ直した。
と、そこで降谷さんが困惑した声で私に語りかけてきた。
───なんだ、この…言葉にできない不愉快な臭いのようなものは
───悪意ですよ。人の悪感情、害意、悪意の類が発する気配。私の魂が馴染んだせいか、降谷さんも感じ取れるようになったんですね
───これが悪意?こんな物質的で悪質なものが、人の感情なのか!?
海での一件から、私が地道に降谷さんに魂の余剰エネルギーを供給している成果が出てきたようだ。
怒られるかもしれないから、夜寝ている間にこっそりこそこそ降谷さんの魂に力を送り込んで。
現在では魂がかなり丸々と太ってきた感じもしている。
よしよし。この調子で育つといい……とほくそ笑む。
ここのところ、強制的に昼寝を取らせられるからエネルギーが余って仕方なかったんだよな。
前に魂を切り離した時の傷もとっくに癒えたし。
私はくすくすと内心のみで笑った。
はやく、私と同じになるといい。
同じほどに強く、死を超えて意識を保ち魂のみで思考する怪物に。
そうすれば苦しまない。悲しまない。
私みたいに己が無力に嘆き悶えることもない。
きっとそうだ。そうに決まっている。
さあ。
決して何者にも害されない自由を、貴方の手に齎そう。
それがなされた時。
私はようやく不要となるのだ。
降谷氏「ヤンデレとか今時流行らないぞ?」
バボ「ゑっ?」(驚愕)(エッ)(青天の霹靂)