バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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燃えよ斬鉄剣④

 

 香港の陳珍忠の屋敷に潜入の今現在です。

 

 陳珍忠というのは、本作「燃えよ斬鉄剣」の悪役にして香港マフィアのトップだ。

 スケベな小男で割と騙されやすいところがあるが、資金力は十分以上。

 変な化学兵器から不可思議な合金を作るための施設まで己の組織一つでやってみせる、なかなかの金持ちだ。

 

 さて、そんな男の屋敷に五エ門、桔梗、私の3人で警備の合間を縫って入ってきたわけだが。

 五エ門師匠は割とこの辺雑らしく、「しらみつぶしに探してゆこう」との提案だった。

 内部の見取り図を事前に入手しないあたり、やはり武力で突破できるということの万能さが垣間見える。

 

私は付近の建築業者からあらかじめ入手した古い見取り図を脳内書庫から取り出しながら、五エ門師匠に提案した。

 

「いえ。人の気配を追っていきましょう。そこまで大切な物なら、人のいない場所に置いておくとは考えづらい……どの距離に何人いるのかぐらいは僕が分かります」

「そうか。…だが、見取り図がなければ正確な隠し場所は難しいか」

「そちらも入手済みです。とはいえ、建物の基礎の図だけですので、後に自前で増設した分は想像するしかありませんが…」

「いや、それだけでも助かる。これなら随分と手間が省けるであろう」

 

 桔梗が私の言葉を聞いて眉を顰めた。

 おそらくここで時間稼ぎをして五エ門師匠から巻物を盗む心づもりだったのだろう。

 

 悪あがきに因縁をつけてきた。

 

「どの距離に何人いるか正確に分かるだって?それ、本当かい?ほら吹いてるんじゃないだろうね」

「疑うんならあなたは来なくてもかまいませんよ」

「フン。五エ門も、弟子は選ぶことだね」

 

 鼻で笑う桔梗に、ピキッとプライドエベレスト男・降谷さんが青筋を立てた。

 

───このアマ、引き裂いてやろうか

───爪を尖らせないでくださいゼロ。あっちも思惑があってディスってるんですから

 

 深層心理内で魂を鋭利に尖らせて爪状に固める降谷さんを宥め、苦笑いする。

 そんな小技どこで覚えたんだ。私の見よう見まねか?本当に器用だな降谷さんも…。

 

「ではあっちに……というか、なんか外から銭形警部の気配がするんですが」

「なに!それはまずいな。手早く済ませねば見つかりかねん。それに、奴がいるという事はルパンもいるという事だ」

 

 銭形警部、気配が濃密過ぎて個人の特定すらできてしまう件。

 悪意とかは無いんだが、こう、素晴らしいまでの気迫というか。

 スカウターが故障するレベルの圧倒的生命力に「5万…10万…まだまだ上がるだと!?」となるんだよね。

 それにしても本気でどこにでもいるな銭形警部。

 フィールドに時間経過でPOPする難敵モンスターか?

 

 急いで庭に面した寝室にするりと入り込めば、桔梗がじゃれ合うと見せかけて師匠の懐を探り出した。

 巻物を探しているらしい。

 残念ながら巻物はすでに灰となり、情報は私達の頭の中にのみ存在するのだがな。

 

 私は赤面する五エ門師匠をじとっと見つめた。

 

「破廉恥ですよ師匠。敵の根城で何をやっているんですか」

「……つくづく邪魔なガキだね。弟子ってんなら身分を弁えたらどうなんだい?」

 

 バチバチと五エ門師匠を挟んで睨み合う私達に五エ門師匠がため息をついた。

 騙されてるのは師匠の方なんだよなぁ。

 

 私はこっそり一計を案じ、ルパンの気配を探った。

 

 ルパンはいつも気配なんてまるで感じられない生きたステルス機なのだが、今は輪郭すら感じられるくっきり具合だ。

 おそらく向こうからわざと私に分かるように気配を発しているのだろう。

 これは……SOS?

 

 私は表情を消して五エ門師匠に提案した。

 

「下ですね。地下室があるみたいです。下品でストレートな悪意…あれが陳珍忠でしょう」

「っ、そこへ急ぎ向かおう!」

「待って!罠という可能性はない?」

「…虎穴に入らずんば虎子を得ず。危険は百も承知。我らは龍の置物を取り返す必要があろう」

「でも……」

 

 桔梗はなんとなく焦っているというか、私たちの決定に風向きの悪いものを感じているようだ。

 本当に陳珍忠のところから龍の置物が盗られるのは、陳珍忠の協力者として都合が悪いのだろう。

 

 急いで地下室真上の書斎へとやってきて、大きな本棚を気合い一閃。

 そこに現れた地下への階段を急いで降りてゆく。

 暗い室内に怪しげな機材の光だけが差し込み、高笑いする陳珍忠の声のみが反響している。

 

 ここが隠し場所だ。

 陳珍忠の手に龍の置物が握られている。

 

 こちらに気がついた陳珍忠が、ニヤニヤと悪質な笑みを浮かべてこちらを見た。

 

「おや、来ましたか石川五エ門。おそかったですねぇ、ルパンは今頃あの部屋で殺し合っていますよ?」

「……捨ておけ。拙者たちはそれよりもあの龍の置物の奪取を優先すべきだ」

 

 じり、と五エ門師匠が重心を落とす。

 護衛である柘植の幻斎が前へ出て、刀に手をかけた。

 

「師匠。ルパンは僕たちの二人目の師匠でもあります。見捨てるなんてできませんよ」

「……」

 

 ちらり、とこちらを見て五エ門は何も答えなかった。

 好きにしろ、ということなのだろう。

 

 私はふっと笑って爪を取り出した。

 同時に桔梗に邪魔されないうちに素早く隣の部屋の壁へと接近。

 思い切り切りつける。

 

 壁が崩れ落ちると同時に、煙が一気にこちらへ流れ込んできた。

 

原作知識から考えるに、これは人に殺し合いを強要させる特殊な薬剤が含まれた煙だろう。

陳珍忠の意向で、捕らえたルパン達に殺し合いをさせようと用意された罠の類だ。

 

その特殊な薬剤が一気に部屋へと雪崩れ込み、陳珍忠は大慌てで叫んだ。

 

「バカな、こっち側に穴を開けたら煙がこの部屋に来てしまうではないか!!」

「委細承知!師匠は息を止めていてください。すぐ済ませます」

 

 煙を掻き分けて部屋に駆け込めば、ルパンは飄々と次元の腕を固めて盾にして不二子さんの攻撃を凌いでいた。

 

「おお、降谷ちゃんたち!ちょーっと助けに来るのが遅いんじゃないの?」

「すみません、全速力ではあったんですが出遅れました。今からこの龍の置物をもって外まで一直線に突っ切ります」

「あれま。いつのまに」

「───俺が盗った。お前に教えられた窃盗術が初めて生きたな───ゼロも悪い人間になってしまいました」

 

 煙がこっちの部屋に流れ込んできた初動で降谷さんに代わり、そのまま掻っ攫って来たのだ。

 手ぐせが悪い降谷さんとか解釈違いも甚だしいが、これはこれで技術の一つ。

 降谷さん自身も満足そうだし、私が口を出す義理もなかろう。

 

「じゃ、行きますよ。師匠!屋敷の外まで走ります!」

「そこまでだ。好き勝手してくれたな!」

 

 行く手を阻むは柘植の幻斎だ。

 伊賀流の忍者で、陳珍忠の配下である忍者集団の頭領。

 常に複数人の影武者を用意し、幾度殺してもルパンの行く手を阻んでくる強敵。

 

 幻斎を前に私は足を止めた。

 これでは壁の破壊は難しい。皆の息も続く保証がない。

 

 五エ門師匠が前へ進み出て、斬鉄剣を抜刀した。

 煙の中にあってもなお輝かしい刃の煌めきが光を反射する。

 

「拙者が道を開く。お主は目の前の敵に集中しろ!」

「……承知しました!幻斎は任せてください!」

「じゃあ俺様は正気を失っちまってる次元や不二子ちゃんの相手をしようかね」

 

 柘植の幻斎は、容貌こそ雑魚っぽく見えるものの、平然と銃弾を刀ではじくタイプの人外の猛者だ。

 私の斬鉄爪で素早くすれ違いざまに5撃、6撃。

 それを全ていなして、幻斎が切りかかってくる。

 

 とはいえ、だ。

 ルパン黒幕級を相手取るにあたり、私も無策ではない。

 

 唐突に幻斎が血を吐いた。

 

「かはっ……な、ぜ……」

「魂の見えざる爪です。貴方の魂全て、いただきます」

 

 爪の先から魂へと干渉。

 相手のそれをじゅるりと溶かして純粋なエネルギーとして吸収する。

 その経験、知識。全ていただいていく。

 

 と、その時。

 降谷さんが絶叫した。

 

───待て待て待て待て聞いてない何だこれキッッッッッッッッモ!!

───落ち着いてください。溶かした魂は書庫に保管されるだけで私たちが触れる必要はありませんから

───そういう問題じゃない!実家の居間に知らんジジイが勝手に入ってきたら嫌だろ!!そういう話だ!

 

 それは嫌って言うか悲鳴を上げて警察呼ぶレベルだな…。

 

───う…すみません、二度と使わないようにします

───そうしろ!!くそ、俺は今から中を徹底的に大掃除する!外はお前に任せた!

 

 そんなに嫌か。

 あっ除菌スプレーとか実体化しだしたぞ!できるんだそんなの…。

 

 仕方ないので今のうちに本の形に固めた幻斎の知恵・知識から該当の情報を抜き出して…。

 ああ降谷さん待って!まだ焼却処分しないで!

 

 記憶をたどれば、どうやらやはり桔梗は彼の仲間で、その証拠の在処もつかめた。

 五エ門の幼馴染という事で幻斎としても桔梗が心変わりすることを警戒していたようだ。

 

 いざという時のため桔梗を脅せる手を残していたらしい。

 

 しかし凄いな。

 彼らは原作では「影武者」と表現していたが、そんなものではない。

 自分が五人六人いるようなものだ。記憶も情報も徹底的に共有して、いつだれが死んでも問題ないように動いている。

 流石は忍。

 

 奥で逃げようと藻掻いている陳珍忠の頭をひと撫でで落とし、そのついでに桔梗の裏切りのデータをサラッとUSBメモリに移す。

 人に殺し合いをさせる悪質な煙はまだ中に充満しているが、私が表に出ている以上特に効果はない。

 深層心理も途中で気が付いた降谷さんが深度を下げているので、薬剤に降谷さんが触れる恐れも無いだろう。

 

 煙を恐れて誰も中に入ってこない中、悠々とデータを奪取して外に出る……と、先に出ていたルパンが次元の運転する車に乗って逃げ去っていくところだった。

 こっちだ!という五エ門師匠の声に導かれ、車を追って全速力。

 巻取り式フックを車の後ろに射出して引っ掛け、そのまま一気に車へ乗り込む。

 

 そこにはルパンのみならず五エ門師匠もいた。

 うん?桔梗がいないが……。

 

 

 

 

 

 ルパン達と安全なところまで逃げ伸びてから、私は満を持してルパンへと証拠データを提出した。

 場所は近場のホテルの一室。

 三部屋とってあって、一つは不二子さん用、あとは次元とルパン、私と五エ門という割り振りである。

 

 私は折り畳みPCにUSBに移してあったデータを表示し、その決定的な動画証拠を突きつけた。

 

「桔梗の裏切りを裏付けるデータを入手しました。これをどうぞ」

「おお……遅いと思ったらそんなことやってたのねぇ」

「ばかな!」

 

 五エ門師匠が烈火の表情で私を睨みつける。

 凄まじい殺気だ。勝てるわけがない、という力量の差と気迫に思わず尻込みする。

 

「死んだ女の名誉までも穢す気か!」

 

 死んだ女?

 そうか、道中に罠にかかって、原作と同じように獰猛な鰐がウヨウヨ泳ぐ池に落ちたのか。

 桔梗によって行われる死の偽装でしかないが、師匠は引っかかってしまっているらしい。

 

「……これを見てください」

 

 私は自分と降谷さんの魂を混ぜて硬質化させ、指から鋭く一振り、刃を現出させた。

 

「不可視たる魂の爪。僕らの魂を刃の形で表出する……そうですね、超能力の類です」

「わーお。意味わかんね」

「いよいよビックリ人間化してきたな」

 

 ルパンと次元さんが面白がってジロジロ見てくる。

 ちょっとつつこうとしたので「危険ですからお手を触れずに」と注意した。

 指落ちるぞ。

 

「これを突き刺すことで、相手の魂を消化して己の力にすることが可能です───もう二度とやらないがな。気持ち悪すぎる」

「うげぇ!なんだそりゃ!趣味悪ぃぞお前!」

「うん、そんな顔されるのは分かってました。ホントにもう二度としないので、安心してください」

 

 吐きそうな顔をするルパンに微妙な気持ちになりつつ、まぁちょっと私も発想が悪かったかなと反省。

 便利とはいえ降谷さんにも怒られてしまったし、この技は封印しよう。

 

「そこで、柘植の幻斎の記憶を読み漁ったところ、定期的にある人物と情報交換をしている記憶が浮かび上がりました」

「!」

「それが桔梗でした。どうやら80年前龍の置物を国外に持ち出したのも、桔梗の曽祖父のようです」

 

 わなわなと五エ門師匠が震える。

 信じていた幼馴染みが裏切っていると知った時の驚愕はいかばかりか、私では想像するほかない。

 無言の降谷さんが心象世界で目を伏せた。

 

「目的はその財と力で以て世界を屈服させること。曾祖父のしでかしたことによって彼女も暗く苦しい幼少期を歩んだようですから、それがコンプレックスになっていたのでしょう」

「それは……」

「自分を虐げた世の中を見返してやる、というドス黒い意志に変わっても仕方ない環境でした」

 

 五エ門は無言だった。

 当主だからこそ分からない一族の闇が存在する。

 それを否定できない立場だからこそ思い悩むのだ。

 

「この龍の置物はお返しします。僕の脳内にしかない巻物の内容も、折を見て復元しましょう」

「いんや、待てよ降谷ちゃん達。あの女は死んじゃいねーぜ。逃げ出す女の気配があった。きっと今頃息を潜めて計画を練り直してるだろうぜ」

 

 おおこわい、とルパンが大袈裟に身を震わせた。

 五エ門師匠はもはや下を向いたままぐるぐると感情を目まぐるしく交差させていた。

 

「ならまだ巻物には戻さねーほうがいいな。少なくとも、桔梗とかいう女をどうにかするまではな」

「そうそう。龍の置物は五エ門が管理するとして。巻物を覚えてる降谷ちゃん達はそのまま巻物に起こさず俺らの胸の内に留めとくべきかね」

 

 次元さんがたばこに火をつけた。

 煙が僅かにくゆり、ゆっくりと上へ昇ってゆく。

 五エ門師匠は無言だった。

 

「五エ門、いいな」

「…………龍の置物は、預かる」

 

 そう絞り出すように口にして、私へと視線を向ける。

 

「迷惑を、かけた。かたじけない」

「構いません。僕は日本にいますから、進展があったら連絡してください」

 

 

 

 

 後日。

 ルパンから電話があった。

 桔梗と柘植の幻斎を仕留めたと、そのような端的な連絡だった。

 

 私は詳しい内容には触れず、了解したとだけ伝えた。

 止めを刺したのは五エ門だったそうだが、その詳細は明らかにはなっていない。

 

 

 私達はその日、少しだけ夜空を見上げた。

 




次回、赤井さん回。異次元の狙撃手。
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